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特集:松下奈緒~The Complete Album Review
アーティストおよび女優として確固たる地位を築いた松下奈緒。学生時代より活動を始め、CDデビューを果たしてから10年以上経つが、ピュアでフレッシュなイメージは保ったまま成長している。ここでは、ピアニスト、そしてヴォーカリストとしての彼女にフォーカス。これまでに発表したすべてのアルバムを紐解きながら、その魅力に迫ってみたい。
(2006年)
3歳よりピアノを習い、東京音楽大学でもピアノを専攻しているという経歴を生かした、記念すべきファースト・アルバム。すでに女優としても活躍していたこともあって話題を呼んだが、演奏は実に堅実で美しい。リリカルな自作曲のピアノ・ソロ「chocolat」に始まり、GONTITIと共演した「露草」、出演映画で演奏していた楽曲をまとめた「アジアンタムブルー組曲」など楽曲も充実。そして彼女らしい可憐さが表現された「わんこ」で幕を閉じる。
(2007年)
すでに女優として多忙を極めていた時期であるが、音楽用語で“少しずつ”を意味するアルバム・タイトルが付けられた2作目。シンガーとしてのデビュー曲「Moonshine~月あかり~」をメインにヴォーカル曲が3曲収められた。ピアノ曲に関しても、アグレッシヴでダンサブルな「Together」、自身主演の映画「未来予想図」によせDREAMS COME TRUEの名曲を自らアレンジした「未来予想図II(ピアノバージョン)」、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』のオープニングテーマとバラエティに富んでいる。
(2008年)
自身が小学校の先生役として主演した映画のサウンドトラック。初めて本格的に映画音楽を手がけた記念碑だ。流麗なオーケストレーションを配した「奈津子のテーマ」から始まり、ピアノ・ソロからロック・テイストのインストまで幅広い楽曲を提供し、ストーリーを盛り上げる重要な役割を担っている。本作を手がけたことにより、作曲家、編曲家としても大きくステップアップしたといえるだろう。生徒たちの合唱をバックに歌う主題歌「流れる雲よりもはやく」も印象深い。
(2009年)
女優として輝かしいキャリアを積み重ねてきたが、あらためてピアノと向き合ったという3作目のオリジナル・アルバム。全曲インストで、まさに原点回帰。CMタイアップにもなった冒頭の「f」からソリッドで力強いタッチの演奏が聴け、意識の高さが伝わってくる。サンバ・タッチの「Carnival night」や、情熱的で少しエキゾチックな「Balloon」などは新境地といってもいいだろう。静謐でメランコリックな演奏も多く、緩急を自在に使い分けるセンスが見事だ。
(2012年)
ベスト・アルバム『Scene25 ~Best of Nao Matsushita』(2010年)を挟み、3年ぶりに発表した4作目のオリジナル・アルバム。NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」でヒロインを演じたことで、名実ともに国民的女優となったが、ピアノに対する向き合い方は相変わらず真摯なことが伝わる。川村結花が作詞作曲を手がけた「青空」などヴォーカル・ナンバーも3曲収録。これまで以上に情感豊かになったピアノの演奏とともに、アーティストとしての充実度を感じられる作品だ。
(2013年)
これまでもヴォーカル曲はたびたび披露してきたが、この5作目ではシンガーとしての魅力を最大限に引き出した。川村結花の「永遠のハジメテ」、古内東子の「泣けるほど逢いたい」といった女性シンガー・ソングライターによる書き下ろし曲をメインに据えているが、自身も作詞を手がけた「The Way To You」も話題性が高い一曲だ。歌が主役ではあるが、しっかりとピアノの演奏も収められており、多彩な才能を持つアーティストであることを打ち出すことに成功した。
▲ 「泣けるほど逢いたい(short ver.)」
(2015年)
前作に引き続き、ヴォーカル・ナンバーをメインにした6作目。優しく切ない「君は」から始まり、オールディーズ風のアレンジがポップな「うんとしあわせになろう」、スケール感のあるバラード「Wish」など、さらに成熟した彼女の声の表現力を味わえる作品に仕上がっている。一方で、「Shine ~concerto for VISEGRAD~」のようなオーケストラを従えた大作もあり、絶妙なバランスで松下奈緒のアーティスト性を示した充実作。タイアップも多く、いかに彼女の楽曲が求められているのかがよくわかる。
▲ 「松下奈緒 アルバム「Music Box」 MVメドレー」
(2016年)
CDデビュー10周年を記念して発表されたベスト・アルバム。2枚組仕様になっており、1枚目にはインスト・ナンバー、2枚目にはヴォーカル曲を収めている。この10年の軌跡が一望できるのはもちろんだが、3曲の新曲が加わることで次のステージへの期待が高まる。女優としては言うまでもないが、作曲家、ピアニスト、シンガーといったマルチな才能はまだまだ進化中。ライヴでのパフォーマンスも含め、音楽を生み出すアーティストとしての松下奈緒の今後に注目したい。
▲ 「松下奈緒 「THE BEST ~10 years story~」History Movie」
公演情報
prime nights~2018
ビルボードライブ大阪:2018/11/16(金)-17(土)
11/16 1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
11/17 1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ東京:2018/11/24(土)-25(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
【BAND MEMBERS】
松下 奈緒 / マツシタ ナオ(Piano, Vocals)
河野 伸 / コウノ シン(Keyboards)
竹下 欣伸 / タケシタ ヨシノブ(Bass)
小笠原 拓海 / オガサワラ タクミ(Drums)
石成 正人 / イシナリ マサト(Guitar)
小寺 里奈 / コデラ リナ(Violin)
鈴木 圭 / スズキ ケイ(Saxophone)
関連リンク
Text: 風奏陽
THE BEST ~10 years story~
2016/12/07 RELEASE
ESCL-4757/8 ¥ 4,074(税込)
Disc01
- 01.ありがとう (ピアノバージョン)
- 02.f
- 03.Jazz chocolat
- 04.TRUE BLUE
- 05.break down
- 06.エカテリーナのための協奏曲
- 07.Save the Dream
- 08.GRACE~princess rose~
- 09.旅人のテーマ
- 10.わんこ
- 11.Carnival night
- 12.Together
- 13.escape
- 14.Impressive
- 15.Tir na nOg
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