Billboard JAPAN


Special

ウィリー・ハイタワー初来日&最新オリジナル・アルバム『アウト・オブ・ザ・ブルー』発売記念インタビュー



top

 今月(2018年10月)、待望の初来日を控えるウィリー・ハイタワーと、言わずと知れたスティーヴ・クロッパー、そしてハイ・リズム・セクションが一つのステージ揃うという全ソウル・ファン感涙の夢の共演が実現する。まさにサザンソウルのドリームチームと呼ぶべき布陣が、その黄金時代の輝かしいサウンドを、ここ現代の日本に甦らせる。この来日ステージを目前に、伝説的な〈フェイム・スタジオ〉に残した録音で知られる不世出の天才、ウィリー・ハイタワーにインタビューを敢行。9月には最新オリジナル・アルバム『アウト・オブ・ザ・ブルー』をリリースしたばかりのウィリーに様々な質問を投げかけた。

サム・クックは今でも憧れの人

――(70年代半ば以降、長らく表舞台から遠ざかっていましたが)2015年にニューオーリンズのポンデロッサ・ストンプ・フェスティバルに、続いて2017年にイタリアのポレッタ・ソウル・フェスティバルに出演し、見事にカムバックを果たされました。どんなお気持ちでしたか?


ウィリー・ハイタワー(以下:ウィリー):信じられない、という思いでいっぱいだったよ(笑)。なにしろ、ずいぶんと長い間(たくさんの人の前では)歌っていなかったからね。引退していたようなものなのに、みんなとっても歓迎してくれて。しかも、ついに日本にも行けるんだから。こうして復活できて、心からうれしいよ!


――私たち日本のファンも、あなたの復活を心から喜んでいます!


ウィリー:ありがとう。わたしも(日本に行けると思うと)わくわくしてくるよ。


――お生まれは、1940年アラバマ州ギャツデンですね。いまもお住まいだそうですが、どのような所ですか?


ウィリー:そうだねえ、当時からいい所だったよ。時代とともにいろいろなことが変わったから、今のほうがずっといいけれどね。

――音楽を始めたのはいつ頃ですか?


ウィリー:教会で歌うようになったんだ。たしか6才くらいだったと思う。教会の聖歌隊(クワイア)で歌っていたんだ。とくにグループを組んでいたわけじゃないよ。

――その後、カリフォルニアのグループ、ゴスペル・コンソレーターズ(Gospel Consolaters)に参加なさった?


ウィリー:そうそう、よく知ってるねえ。(笑) ツアーも回ったんだ。ええと、6年くらい一緒にいたかな。

――彼らとレコーディングも?


ウィリー:そう、したね。タイトルは「Why Do Men Treat The Lord Like They Do」。わたしが初めて吹き込んだレコードなんだ!

――当時、ゴスペル以外にどんな音楽を聞いていましたか?


ウィリー:R&Bは大好きだったね。歌っていたし。あとはやっぱり教会の音楽かな。

――カントリーミュージックはどうでしょう?


ウィリー:カントリーは前からずっと好きだったんだけど、歌ってはいなかった。でも今度のアルバム『アウト・オブ・ザ・ブルー』で、初めて歌ったんだ。アルバムの大半がカントリー曲なんだ。

――当時、憧れていたシンガーは?


ウィリー:サム・クック。(即答) いまでもわたしの憧れの人だよ。


――とくに惹かれた曲は?


ウィリー:「A Change Is Gonna Come」。それともうひとつある。ええっと、ダーリン♪「You Send Me」。ラジオで聞いて、大好きになったんだ。




▲Sam Cooke - A Change Is Gonna Come (Official Lyric Video)





――その後(NYのプロデューサー兼レコード店主)ボビー・ロビンソン氏と知り合うわけですが、きっかけは?


ウィリー:シェリー(スチュアート)という地元のDJが紹介してくれたんだ。当時、(アラバマ州)バーミングハムの小さなクラブで歌っていたわたしをシェリーが気に入ってくれた。それでシェリーが知り合いだったボビーに電話をして、こういう若者がいると伝えて、ボビーが興味を持ってくれた、というわけなんだ。


――シェリーさんはあなたのマネージャーだった?


ウィリー:いやいや、ラジオのDJだったんだけど、彼がわたしをボビーに紹介してくれたんだよ。


――それでニューヨークに向かったんですね。生まれて初めて?


ウィリー:そのとおり!(爆笑) それはもうえらく興奮したよ。


――ロビンソン氏が制作したレコードはどこで録音したのですか?


ウィリー:キャピトルのアルバムに入っている曲はほぼニューヨーク録音だね。


――資料には、「If I Had A Hammer」はメンフィス録音とありますが。


ウィリー:そうだそうだ、あれはメンフィスだった。スタジオは覚えていないけれど。


――その後、キャピトルからフェイムに移籍しましたね。(フェイムのオーナー)リック・ホール氏と(ハウスバンド)フェイム・ギャングとの録音はいかがでしたか?


ウィリー:それはもう最高だったよ。わたしが仕事をしたプロデューサーのなかでは、リック・ホールがいちばんだったと思う。


――ホール氏のプロデューススタイルは、どのようなものだったのでしょう? 70年頃にフェイムでのセッションの模様を収めた白黒のビデオフッテージを拝見したのですが、ホール氏はとても細かく指示をしていますね。


ウィリー:そのとおり。リック・ホールは、つねにすべてを自分が考えてるとおりにきちんと進ませる、そういう人だった。だから、こっち(歌い手)はそのとおりにきちんとやらないといけないし、途中で投げ出すことは許されない。彼には自分の目指すところがはっきりと見えていた。本当に優れたプロデューサーだったよ。


――フェイム・ギャングについては?


ウィリー:当時一緒にレコーディングをしたバンドのことかな。うん、みんないいミュージシャンだったよ。そうそう、先月(7月末)にこっち(マッスル・ショールズ)でコンサートがあってね(Fame Gang Reunion)、久しぶりにみんなと再会して一緒に演ったんだ!


――キャンディ・ステイトンとトラヴィス・ワマックも出演したイベントですね?


ウィリー:そのとおり! いやあ、楽しかったねえ。


――キャンディさんは何年か前に日本に来たんですよ。


ウィリー:本当に? そうかあ、実は、キャンディと会ったのはこの前が初めてだったんだけど、とってもいい人だったよ。


――ところで、フェイムにはまだ、あなたの未発表録音が残っていると思いますか?


ウィリー:いや、出ているだけじゃないかな。


最新アルバム『アウト・オブ・ザ・ブルー』をリリース

――フェイムのあと、マーキュリーでもすばらしい録音を残していますね。当時吹き込んだ曲のなかで、いちばんのお気に入りは?


ウィリー:「Walk A Mile In My Shoes」。(即答) あの曲がいちばん気に入ってるんだ。それと「It’s A Miracle」も好きだなあ。








――どちらも、日本で歌ってくれますか?


ウィリー:そうだね、日本で早く歌いたいよ。「Walk A Mile In My Shoes」はジョー・サウスの曲で、「It’s A Miracle」はわたしが書いたんだ。


――曲作りはいまもなさっていますか? 曲を書く際の発想はどこから?


ウィリー:うーん、最近は昔ほどじゃないね、たまに書くくらいかな。自分自身のさまざまな経験、それと友だちや知人の話をもとにして曲を作るんだ。


――ニューアルバム『アウト・オブ・ザ・ブルー』の収録曲は?


ウィリー:大半の曲はアルバムのプロデューサー、ビリー・ローソンが選んでくれた。どれもとっても気に入ったから、それで吹き込んだんだ。


――新作は日本でも発売されています。とても良いアルバムですね。新録音のなかでは、この数十年で一、二を争う名作だと思います。スタジオの中で、あなたがとてもリラックスしていた様子が伝わってきます。


ウィリー:昔一緒に演ったミュージシャンもいたから、きみの言うとおり、とてもリラックスできたよ。家にいるような感じかな。(笑)


――だからこそ、モダンな美しいサウンドの奥から、60~70年代の音楽が持っていた温もりや優しさが伝わってくるんですね。


ウィリー:わかってるねえ。そう言ってもらえて本当にうれしいよ。


――ニューアルバムの中で、いちばん好きな曲は?


ウィリー:「I Found You」だね。(即答)




――日本公演では、新曲をたくさん披露しますか?


ウィリー:わたしの古い曲が中心になると思うけれど、「I Found You」は絶対に歌うよ。


――一方で、60年代や70年代に録ったあなたの曲は、アメリカだけでなく、ヨーロッパや日本でも長いあいだ高い人気を誇っています。なぜだと思いますか?


ウィリー:正直、自分でもさっぱりわからないんだ、もう何十年も前の曲なのにね。(笑) どうしてこうなったのか、いまだに理解できないんだけど、こうなってくれて、とにかくうれしくてたまらないよ。(笑)


――これまでにスティーヴ・クロッパー氏と共演したことは?


ウィリー:いや、まだないんだ。だから、それも楽しみなんだよ。


――ハイ・リズムとは?


ウィリー:メンフィスのバンドのことかな? うん、彼らとは昔、少しレコーディングをしたことがあるんだけど(80年代にメンフィスのロイヤル・レコーディング・スタジオで録音後、未発表のままだったが、2007年に日本で発売された)それ以来だから、また一緒にできるのがとっても待ち遠しいね。


――ファンにとっては、夢の共演です。まさに「Memphis Meets Muscle Shoals」というショーになりそうですね。最後に、50年以上(!)も待ち続けている方も少なくない日本のファンにメッセージをお願いします。


ウィリー:みなさん、どうもありがとう。わたしも日本に行けるのが待ち遠しいんだ。特別なショーにするつもりだから、みんな楽しみにしていて欲しい。きっと最高の時間になると思うよ。


ウィリー・ハイタワー「アウト・オブ・ザ・ブルー」

アウト・オブ・ザ・ブルー

2018/09/19 RELEASE
PCD-17786 ¥ 2,970(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.I FOUND YOU
  2. 02.RAINING ALL THE TIME
  3. 03.ROCK ME GENTLY
  4. 04.SOMEWHERE DRY
  5. 05.TIRED OF LOSING YOU
  6. 06.YOU CAN’T LOVE ME (BETTER THAN YOU’RE LOVIN’ ME NOW)
  7. 07.NO GETTIN’ OVER ME
  8. 08.EASY LOVIN’
  9. 09.EVERYBODY WANTS MY GIRL
  10. 10.WHO WHO WHO