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fumika 『その声消えないよ feat. Sunya』 インタビュー
「こんなんじゃ駄目だ、まだまだいけるな、もっとやれることあるなって」
第1回レコチョクオーディションで10000人を超える応募者の中からグランプリを獲得し、昨年メジャーデビューを果たした22歳の女性シンガー fumika。「取材にしてもライブにしても毎回が勝負」と語る彼女は、音楽不況の中でどう戦っているのか?
「いつも挑戦はしていますね」「苦しくなった先に何かがあると思うんです」――。彼女の葛藤と強い決意がここに。
ロンドン五輪選手との出逢いで感じたこと
--デビューから一年経ちましたけど、この一年はfumikaさんにとってどんな一年でしたか?
fumika:ものすごく早い一年でした。取材にしてもライブにしても毎回が勝負なので、一回一回集中していると意外と毎日は早く過ぎていくんだなぁって。あと、デビュー前に国歌斉唱させて頂いたヤフードームでこの間、また唄を歌う事ができたんです。デビュー前に歌ったときは少し硬くなっていたけど、今回は本当に心の底から楽しめて、開放感に満ちていた。気持ちの面で少し強くなれたのかなって。そういう自分の成長を少しでも感じることができたので、たかが一年されど一年という感じですね。以前にも増して楽しめています、音楽を。
--2月に出演した【ナマオト vol.6】ではバンド形式のライブを披露しましたけど、あのときも気持ち良さそうでしたね。
fumika:やっぱり違いますね、バンドだと。音の振動で肌が震えるんですよ。音と自分の声が一体になる感じが分かるというか。お客さんにも伝わっている様子がステージからも分かったので気持ち良かったですね。ワンマンライブはバンドでやることが夢です!
--この一年、数々のイベントやライブに出演してきましたけど、他の出演者から刺激を受けることもありました?
fumika:毎回ですよ。自分の出番が終わると他のアーティストさんのライブを観るんですけど、パフォーマンスもMCも全部勉強になりますね。
--BiSさんやTomato n' Pineさんなどと同じイベントへ出演したこともありますけど、アイドルから刺激を受けることもあります?
fumika:もちろんです。当たり前ですけど、ステージを観ていてもプロだなぁって思いますし、“自分の見せ方”が一番勉強になりますね。あと、盛り上げるのも上手! ノリを作り出すこと、お客さんを楽しませることが上手ですよね。だから、私も色々な人の良いところに刺激を受けつつ自分のオリジナリティーを作っていきたいと思っています。
--また、fumikaさんはアスリートの方とも仲が良いですよね。ロンドン五輪で銀メダルを獲得したバドミントン 藤井瑞希選手は“戦友”だと仰っていますし、自身のブログには卓球 福原愛選手などと遊んだことを書いていますし。
fumika:ほんと、ご縁ってあるものですよね。元々は瑞希ちゃんが私の「たいせつな光」という曲を好きだと言ってくれて、ライブにも来てくれるようになって交流が始まったんです。それでこの間、オリンピックが終わって瑞希ちゃんと遊ぶときに「(福原)愛ちゃんもfumikaの曲いいって言ってくれているから連れていくね」って言われて、福原愛ちゃんと新体操の田中琴乃ちゃんと4人で卓球やバドミントンをやったんです。ただ、ラケットを持つとみんな目つきが……(笑)。特に愛ちゃんは穏やかな性格なんですけど、競技になると違う。やっぱりアスリートだなぁって思いましたね。 br> そうやってみんなで遊んでいて思ったんですけど、アスリートもアーティストも結局は努力なんですよね。だから、3人とも自分に厳しいですし、周りに対してもサバサバしている。そういう部分は自分とも少し似ているかもしれないなって思いました。
--向上心を強く持っている点も共通していますよね。
fumika:でも、アスリートの方とお話していると“もっと”って思いますね。こんなんじゃ駄目だ、まだまだいけるな、もっとやれることあるなって。時間は人に平等だけど、自分でどれだけ大事に使うかっていうことが大切だなぁって。
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Interviewer:武川春奈|Photo:杉岡祐樹
“涙ソング3部作”を出す理由
--そして、9月26日には“涙ソング3部作”の第2弾『その声消えないよ feat. Sunya』をリリースしますけど、そもそも“涙ソング3部作”を発表するきっかけは何だったんでしょう?
fumika:私は小さい頃から泣き虫で、福岡から上京してきたときもよく泣いていたんです。何で周囲の期待に応えられないんだろう、好きなことをやっているのにどうして上手くいかないんだろうって。泣くのは自分が弱いからだと思い、泣くのをやめようと心がけたこともあったんですけど、涙って我慢しても出ちゃうものなんですよね。結局は泣いちゃうんです。でも、泣いた後って一歩進んだ気がするというか、泣く前と泣いた後では自分の中の何かが違う気がするんですよね。それは、悲しみや辛さ、自分のいらないモノを涙と一緒に流しているからだと思うんです。人間はそうやって本能的に立ち上がろうと、前に進もうとしているんじゃないかなって。その人間の強さが美しいなと思ったんです。
--なるほど。
fumika:あと、涙は喜怒哀楽によって成分が違うらしいんです。質も量も味も。恋愛、夢、家族、友達、色々な想いの詰まった涙がありますけど、喜怒哀楽で涙を流すなんて人間ならではのことですよね? だから、泣くことは恥ずかしいことだったりするかもしれないけど、そういう人間らしい部分を歌ってみたいなと思って、今回の涙ソング3部作を企画しました。
--第1弾・2弾ともに田中隼人(注1)さんがサウンドプロデュースを手掛けていますけど、初めてタッグを組んでみて如何でしたか?
fumika:田中隼人さんに「曲を作るにあたってどこに気をつけたんですか?」って訊いたときに、「人の感情を揺さぶるようなピアノのメロディに気をつけて作った」と仰っていて。それは楽曲を聴いたときに私が真っ先に感じたことと全く一緒だったんですよ。それにも驚きましたし、練習を積んで楽曲が完成したときに感想を伺ったら「思った通りに出来ていたよ」って仰って下さったので、ホっとしましたね。
--第1弾でWISEさん、第2弾ではSunyaさんとコラボしていますけど、フィーチャリングアーティストを迎えることも初めてですよね。そういった意味では“涙ソング3部作”はfumikaさんにとって挑戦でもあったのでしょうか?
fumika:うーん…いつも挑戦はしていますね。今回だけが特別ではなくて常に挑戦。今までもこれかれからも。そこは変らないと思います。でも、第1弾・2弾で“渋谷ティーンズ クルコレランキング”(注2)の1位を獲得できたことは嬉しかったですね。顔も曲名も伏せた状態で100人くらいの学生が聴いて、「この曲いいじゃん」って思ってもらえるのはかなり嬉しい。
--また、「その声消えないよ feat. Sunya」ではfumikaさんの表情豊かな歌声が印象的でした。
fumika:色々な曲を聴くようになったし、ボイストレーニングも行っているし、表現の付け方は昔に比べたら成長しているのかもしれないですけど、今回はSunyaさんの存在が大きい気がします。波に例えると私の声が“押し寄せる波”で、Sunyaさんが“引き潮”になっている感じ。この曲は失恋から立ち直ろうとしている女性の心を綴っていて、心は前に進もうとしているけど体は過去に向いている。忘れたいけど想い出に浸っていたい、その狭間で葛藤している様子を描いているんですよね。私とSunyaさんが歌うことによって、その葛藤をよりリアルに表現できたのかもしれない。
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Interviewer:武川春奈|Photo:杉岡祐樹
他の女性シンガーに対するライバル意識は?
--fumikaさんと同じ“女性シンガー”は数多く存在しますけど、その中で更に突出するためには何が必要だと思いますか?
fumika:うーん………難しいですけど、色んなものをインプットすることですかね。毎日聴く音楽、本、映画、全然足りてないと思うんですよね。もっともっとインプットして、考えて、どんどんそれをアウトプット出来るようにならないといけない。なんていうか、止まってしまうともったいない。
--私自身もこの仕事をしていてそれが大事だと思うんですけど、正直その状態って苦しくないですか?
fumika:でも、その後ですよね。苦しくなった先に何かがあると思うんです。これは人から聞いた話なんですけど、雑巾を絞るじゃないですか(ジェスチャーしながら)。もう水が一滴も出ないと思って更にギュって絞ると最後の一滴が出るんです。その一滴が大事なんですって。この一滴の部分で成長できるっていう話を聞いたんです。だから、体調を崩したりすることはプロとして駄目ですけど、私もそれくらい自分を追い詰めて、最後の一滴を出せるように頑張らないといけない。それでこそ成長できるんだっていうことを、アスリートの方たちも言ってました。……苦しくなったりします?
--私は今まさになっている状態です(笑)。
fumika:じゃあ、もうすぐ最後の一滴を出せるのかもしれないですね。もちろん私も苦しくなることはありますよ。だけど、そんなときは原点でもあるレコチョクオーディションのことを思い出します。あとは大好きなシンディ・ローパーを聴きまくったりとか。「頑張れる!頑張れる!」って自分自身を応援しています。
--原点が励ましになるんですね。
fumika:どうしても歌手になりたくて、何度もオーディションを受けては落とされ、やっとの思いで掴めたものなので、レコチョクオーディションのことは忘れないですね。
--因みに、他の女性シンガーに対してライバル意識みたいなものはあったりします?
fumika:ないと言ったら嘘になりますけど、だからといって自分が歌いたい曲や出していきたい作品は絶対に曲げたくないです。歌が好きで、音楽が好きで、歌手になりたくてオーディションを受けた、そういう自分の道は逸れたくない。今自分が必死で頑張っていれば、もっと色々な人が意識してくれるレベルにまでいけると思うので。それはもっと先のことかもしれないですけど、続けることが大事。今ここにいるってことがそういうことだと思うので。
--じゃあ、fumikaさんが歌を通して伝えたいこととは?
fumika:「fumikaがやれているなら私もやれるかもしれない」って思ってもらえるようなアーティストでいたいんですよね。寄り添えるような、というか。だから、私の作品には一貫して光がある。今回の“涙ソング3部作”にしても明るい面がどこかにあるんですよね。
--また、11月7日には“涙ソング3部作”とは別に、フジテレビ“ノイタミナ”枠アニメ『ロボティクス・ノーツ』エンディングテーマ「海風のブレイブ」をリリースします。
fumika:決まったときは驚いたのと同時に、期待と不安が入り混じりました。今まではagehasprings(注3)の方たちに楽曲を手掛けてもらっていたんですけど、今回はゲームの原作を手掛けた志倉千代丸さんが書き下ろしてくださったので、ちゃんと自分が歌えるのかという不安もありましたし。でも、結局は自分らしく歌えたので良かったかなと。今までにない楽曲で新鮮でしたね。また違った私を見て頂けるかと思います。
--アニメやゲームファンにも聴いてもらえるチャンスですしね。では、デビュー2年目に突入し、fumikaというアーティストは今後はどうなっていくんでしょう?
fumika:これからも挑戦し続ける。もっと、もっとできるはずだから。おばあちゃんになってもその気持ちは変らないと思います。あとは、色々なモノに刺激を受けて消化した先に確立した“fumika”をどんどんアップデートし続けて行きたいと思っています。
Music Video
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Interviewer:武川春奈|Photo:杉岡祐樹
その声消えないよ feat.Sunya
2012/09/26 RELEASE
BVCL-423 ¥ 1,320(税込)
Disc01
- 01.その声消えないよ feat.Sunya
- 02.Superstar
- 03.その声消えないよ (fumika only Ver.)
- 04.その声消えないよ (Backing Track)
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