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THE BEATNIKS(高橋幸宏+鈴木慶一)インタビュー~ザ・ビートニクス・オン・ザ・ロード



インタビュー

今年5月に7年ぶりとなるアルバム『EXITENTIALIST A XIE XIE(エキジテンシャリスト・ア・シェーシェー)』をリリースした高橋幸宏と鈴木慶一によるユニット、ザ・ビートニクス。1981年の結成以来、それぞれの活動を続けながらザ・ビートニクスにしか出来ない独自の音楽で双方のファンの熱い支持を獲得。長いキャリアを誇る二人が影響を受けた音楽をオマージュのように散りばめながら作り上げた新作は、大人のロックの新たな境地でもある。

8月には東京と大阪の[ビルボードライブ]でのステージに加えて、「SUMMER SONIC 2018」の[Billboard JAPAN Stage]にも登場するザ・ビートニクスが、アルバムの経緯からオマージュとなった音楽、二人の関係性やライブについて語る。

ザ・ビートニクスと赤塚不二夫の関係!?

――今回のザ・ビートニクスの活動は去年から始まっていましたね。

鈴木慶一:去年の5月に開催された赤塚不二夫さんの生誕80周年記念イベント「バカ田大学祭ライブ」の出演から始まったんだよね。そこでせっかくの機会だから、新曲「シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya」と「鼻持ちならないブルーのスカーフ、グレーの腕章」をつくり、ライブでも披露した。

高橋幸宏:その後も野外フェス「森、道、市場2017」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に出演、ワーハピ(「WORLDHAPPINESS」)の僕のステージでも新曲2曲を演奏したね。

鈴木慶一:『J-MELO』という番組のオープニングテーマ「Softly-Softly」もつくったから、去年の夏にはザ・ビートニクスとしての新曲がすでに3曲できていたんだ。

――「シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya」は、やはり赤塚不二夫さんを連想しますね。

高橋:慶一はバカ田大学OBですから(笑)。

鈴木:そう。卒業証書は持っている(笑)。

高橋:2013年の『WORLD HAPPINESS』ではフジオプロにキー・ヴィジュアルをお願いして、「Theおそ松くんズ」という一夜限りのバンドを結成したこともあったし、今年はTVアニメ「おそ松さん」のエンディング・テーマ「大人÷6×子供×6」(”The おそ松さんズ with 松野家6兄弟”)を慶一と二人で共作したり、赤塚さん絡みは何かと多いね。



▲ 「シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya」


――アルバムにはあらかじめテーマはあったのでしょうか?

鈴木:特になかったね。2011年の前作『LAST TRAIN TO EXITOWN』のときは、ビートニク研究というテーマはありましたけど、今回は自由な発想で二人でどんどん曲をつくっていった。前作の時は幸宏のメモで「1曲目インスト、2曲目アップテンポ」とか曲順のイメージだけはあったけどね(笑)。

高橋:そう。曲もまだ出来てないのにね(笑)。ザ・ビートニクスはほとんど準備しないんです。

鈴木:1981年の1st(『EXITENTIALISM〜出口主義』)は少し準備してたんじゃない?

高橋:87年(『EXITENTIALIST A GO GO ビートで行こう』)のときは二人で合宿したよね。伊豆まで機材を運んで、毎晩みんなでご飯食べて、釣りして、温泉入って、1週間でたった2曲しかできなかった(笑)。

鈴木:それがいまや1日1曲。前作からさらにスピードアップした。なぜかというと二人が同時進行で作業できるから。

高橋:スタジオでは僕がキーボードで曲をつくっている隣で慶一が平気で大きい音でギター弾いているんです。いわば二人羽織状態。

鈴木:二人とも音が鳴っていても気にならないんだ。曲のキーも決まってないのに先に間奏だけ録音したりして(笑)。今の録音方法だとアイデアを思いついたらすぐに録れるし、録ったものは絶対使うぞという発想になるんだよね。

高橋:曲の構想も二人で同時に考えているんですよ。「この曲はワンコードでいこう」「そうだね。大きいサビは要らないね」と、決断が早い。だから、今回はレノン=マッカートニーみたいに共作なんです。

サウンドの多彩さはロックの蓄積の証

――ニール・ヤングの「I’ve Been Waiting For You」のカヴァーには意表を突かれました。

高橋:ビートニクス史上いちばんロックだよね。

鈴木:1曲目のインストの後はガーンとルードなギターでいきたいと、幸宏が言ったんだよね。

高橋:「I’ve Been Waiting For You」は、ASH =AFTER SCHOOL HANGOUT(ドラマーの林立夫と沼澤尚を中心に結成されたカヴァー・ユニット)で演奏したことがあってね。最初はデヴィッド・ボウイのカヴァーをロキシー・ミュージックみたいにやるイメージだったんだけど、気がついたらどんどんギターが増えて、計7本!

鈴木:ミックスダウンのときにも2本入れたもんね。「まだ入れるか!」ってくらい。

高橋:この曲が入ってるニール・ヤングの1stが大好きなんだよね。

鈴木:そこからニール・ヤングがいたバッファロー・スプリングフィールドのリフを思い出して、テンポを変えて「鼻持ちならないブルーのスカーフ、グレーの腕章」にこっそり入れてみたり。

高橋:そう。遊びで弾いているうちに二人が今まで聴いてきたロック・イディオムが色んなところに入ってきたんだよね。

鈴木:私は幸宏のギターの指示を待つ身でしたよ(笑)。

高橋:慶一は、最近は自ら「気持ちが分かるギタリスト」と呼んでいます(笑)。同世代だから、あのバンドのあの曲のあのフレーズで分かるから話が早い。

鈴木:プロコル・ハルム、モビー・グレープ、アラン・トゥーサン、ビーチボーイズ……今回はオマージュとしてあえて入れてみた。

――「ほどよい大きさの漁師の島」のメンフィス・サウンドも新鮮ですね。

鈴木:気持ちとしてはアラン・トゥーサン「サザン・ナイト」なんだけど、このテンポなら幸宏が得意なアル・ジャクソンでいけると言ったんでね。

高橋:この曲のギターは佐橋(佳幸)くんがいいだろうとお願いして、ほとんど一発OKだった。

――同じグループの曲とは思えないくらい幅広い要素が入っていますね。

鈴木:私も「BEAT印のDOUBLE BUBBLE」のイントロのオルガンを弾いているときにそう思った。あれはラスカルズを目指しつつ、どこかファンクの要素もあるね。でも、どんなサウンドでも歌が入るとザ・ビートニクスになるんだ。メンフィス・サウンドでもソウルフルに歌い上げることはしないから。

高橋:それは歌えないもん(笑)。あと、歌詞も今回は深いしね。

――以前にも増して痛切な歌詞があって、胸を衝かれます。

高橋:慶一の書く歌詞が何やら予言めいているという説もあるけど、よく考えたら僕たちもそういう歳になっちゃったってことなんだよね。

鈴木:「Brocken Spectre」の歌詞は、幸宏のお母さんをイメージして書いたんだ。「今もずっと音楽をつくっているよ」ということを歌にしたかった。そうしたら、うちのお袋が亡くなっちゃって。

高橋:二人のお母さんが空の上から見ていることになったね。

――「Speckled Bandages」の歌詞も衝撃でした。

高橋:最初は「これ、辛すぎて歌えない」って言ったと思う。

鈴木:テーマとしては映画や小説にはあるし、身の回りにもこういうリアルは起きているからね。それをポップ・ミュージックの範疇で描いてみてもいいんじゃないかと。

高橋:僕が好きな俳優、ジャン=ルイ・トランティニャンが主演した映画『愛、アムール』の世界だよね。慶一も観たことあるのかと思っていたら、観てないらしい。でも、これは究極の愛のかたちでもあるし、ラブソングという救いはあると思う。

鈴木:だからお互いのロック・ヒストリーと今の世相、そこに生と死とユーモアが織り込まれたアルバムということになるのかな。

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怒りがモチベーションとなった時に活動!?

――1981年から断続的にザ・ビートニクスを続けられているのは同世代共通の音楽体験があるからなんでしょうか?

鈴木:そうだね。ただ、それを今に響くアルバムにするには「策」が要る。「それやっちゃうとモロだよ」というのは二人とも避ける。その案配のバランスがお互い似ているような気がするね。

高橋:1981年の1stのときからプロダクションのほとんどを二人だけでやってきたというのは大きいかもしれないね。

鈴木:1stの頃は幸宏が過去にどんな音楽を聴いてきたかあまり知らなかったんだけど、幸宏のラジオ番組でかける音楽が「おっ、センス良いな」ってちょっと上から目線ですが(笑)感じたし、あとはジョークが通じたのも大きかったと思うね。

――ザ・ビートニクスは、怒りがモチベーションとなった時に活動すると言われていますが?

鈴木:1stのときは確かに怒っていたね。

高橋:1981年はYMOの『BGM』『テクノデリック』やプロデュース作などを含めると計11枚のアルバムを制作していた年で、ロンドンに半年いて東京に戻ってきたら、クリスタル族っていう中庸で安全な人種が増えていたんですよ。僕にはそれが何とも奇異に見えてしょうがなかった。

鈴木:幸宏はロンドンでニューウェイヴが変容していく刺激的なシーンを体感していたから、そのギャップが怒りになったんだろうね。

高橋:そう。それで慶一と誰もやらないような実験的なことをやろうってことになってザ・ビートニクスを結成した。その後も続いたのはザ・ビートニクスにしかできないことがあるからなんだと思う。



▲ 「THE BEATNIKS 19812001 トレイラー」


――この10年は、お二人ともソロに加え、幸宏さんがpupa、METAFIVE、慶一さんはControversial Spark、No Lie-Senseとさまざまなユニットでも活動されてきましたが、お互いに共通点があるとすれば?

鈴木:ユニットの多さはお互い似たようなもんだね。

高橋:共通点は、二人とも弱虫なところかな。ヤバそうになったら逃げるもんね(笑)。

鈴木:うん。逃げ足は早いね(笑)。

高橋:でも、逃げちゃった方が強いんですよ。

鈴木:そう。退路は常に確保しておく。だからストレスがないし、続けていけるんですよ。

「SUMMER SONIC 2018」での競演ラインナップにも注目

――8月は[ビルボードライブ]と「SUMMER SONIC 2018」にザ・ビートニクスとして立ちます。

鈴木:私は[ビルボードライブ]は、2016年のはちみつぱいの結成45周年記念のステージ以来になるのかな。

高橋:僕は小坂忠さんのステージに出演したのが最初。[ビルボードライブ]で観たアーティストで、僕が思い出深いのは何と言ってもバート・バカラックですね。

鈴木:ギタリストのエフェクターが見えたり、ドラムセットが真上から見えるのもマニアにはたまらないんだよね。私もガース・ハドソンのキーボードのセッティングとフアナ・モリーナの足元はガン見しましたよ。

高橋:今回のザ・ビートニクスは、バンドに新作のレコーディングにも参加したまりん(砂原良徳)や昔からずっと一緒にやっている矢口(博康)くんもいるから、新旧取り混ぜたセットリストにはなると思います。

鈴木:ステージはメンバーでいっぱいになるけど、ツイン・ドラムを至近距離で見られるのは貴重ですよ。

――「SUMMER SONIC 2018」の[Billboard JAPAN Stage]では、ニック・ヘイワードやネッド・ドヒニー&ヘイミッシュ・スチュアートも同じステージに登場します。

高橋:ニック・ヘイワードのソロのデビュー・アルバムの日本盤は僕がライナーノーツを書いたんだけど、新作をリリースしたんだよね。昔会ったときは可愛い男の子だったけど、彼もいい感じの大人の男になったね。

鈴木:ネッド・ドヒニーは『ハード・キャンディ』が有名だけど、私は1stも好きなんだ。ヘイミッシュ・スチュアートは、ポール・マッカートニーとも良い仕事をしているよね。

高橋:ネッド・ドヒニーはLAにドヒニー・ドライヴという通りがあるほどの財閥の家系なんでしょ? マイペースで長く音楽を続けている英米日のラインナップというのも面白いね。

鈴木:サマソニのステージは屋外なので、ザ・ビートニクスもまた違う雰囲気にはなるだろうね。私はサマソニは初めてなので、楽しみにしてます。

THE BEATNIKS「EXITENTIALIST A XIE XIE」

EXITENTIALIST A XIE XIE

2018/05/09 RELEASE
COCB-54260 ¥ 3,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Crepuscular Rays
  2. 02.I’ve Been Waiting For You
  3. 03.鼻持ちならないブルーのスカーフ、グレーの腕章
  4. 04.Brocken Spectre
  5. 05.ほどよい大きさの漁師の島
  6. 06.Softly-Softly
  7. 07.BEAT印のDOUBLE BUBBLE
  8. 08.Unfinished Love ~Full of Scratches~
  9. 09.Speckled Bandages
  10. 10.シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya

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