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クリスティーナ・アギレラ『リベレーション』発売記念特集~ポップス界の女王に至るまでの道のり



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 グラミー賞5冠、全米No.1シングル5曲、さらに主演映画『バーレスク』でゴールデン・グローブ賞にもノミネートされるなど、デビューから約20年に亘りエンターテイメント界のトップに君臨し続けるポップス界の女王=クリスティーナ・アギレラ。【解放】と冠された6年ぶりとなるニュー・アルバム『リベレーション』は配信スタートと同時に日本を含む全48か国のiTunesチャートで1位を獲得。いよいよ6月27日に国内盤のリリースを迎える。先月の米ビルボード・ミュージック・アワードで初めてライヴで披露し会場から喝采を浴びた新曲「フォール・イン・ライン」を始め、新作には彼女の人生を映しだすパワフルなメッセージが込められた曲が収録されているが、ここに至るまでの彼女の道のりをキャリアとともにひも解いてみよう。


▲Christina Aguilera - Fall In Line (Official Video) ft. Demi Lovato

「誰にも自分なりの“マリア”がいると思う」

 いわゆるアイドルとして出発して大ブレイクしながらも、ただスマイルを浮かべてキャッチーな歌を歌っていることに不満を覚え、主導権を自ら握って脱皮の道を探る……というのは、よくあるシナリオだ。しかし実際に、そのスマイルの下に隠していたクリエイティヴィティやパーソナルな葛藤を作品に反映させて、音楽的に冒険し、評価を獲得して、息の長いキャリアを築くことに成功した人は決して多くない。このクリスティーナ・アギレラはまさに、そういう稀有な女性のひとりだ。80年にニューヨークに生まれ、幼い頃から歌を愛してショウビズ界を志し、12歳の時には子供向けの人気バラエティ番組『ミッキーマウスクラブ』に出演。これを足掛かりに99年にアルバム『クリスティーナ・アギレラ』でデビューすると、早速3曲のシングルを全米ナンバーワンに送り込み、グラミー賞最優秀新人賞に輝いたのである。



▲Christina Aguilera - Genie In A Bottle


 同アルバムでまずは類稀な歌唱力を印象付けた彼女は、セカンド『ストリップト』(02年)で一気に本性を現す。そう、ソングライティングとプロダクションに自ら関わり、幅広いサウンドを取り入れて、自分が歌いたいことを歌い、鳴らしたい音を鳴らして、タイトル通りに素の自分を挑発的につきつけたのだ。

 またクリスティーナはこの時初めて、父による家庭内暴力で深いトラウマを負ったことを曲に綴り、誰の支配も受けずに自由に生きるという自分の信条を、力強いメッセージ・ソングに託した。彼女のテーマソングと呼べる『ビューティフル』然り、『ファイター』然り……。ヴィジュアル面でも別人のようなワイルドなスタイルで物議を醸したが、アルバムはまたもや大ヒットを記録し、メディアの絶賛を浴びることになる。



▲Christina Aguilera - Beautiful (Official Video)


 こうして自分の実力を証明したクリスティーナは、以来作品ごとにサウンドとヴィジュアルを刷新し、常に挑戦的なスタンスを維持してきた。サード『バック・トゥ・ベーシックス』(06年)では、20世紀半ばのジャズやブルースやソウルを、レトロモダンな感覚でアップデート。ファッションも、グラマラスな往年の女優風にシフトさせたものだ。



▲Christina Aguilera - Ain't No Other Man (Video Main)


 かと思えば、結婚と出産を経て着手した次の『バイオニック』(10年)では未来に飛んで、先鋭的インディ・アーティストたちとコラボし、エレクトロニックなサウンドで実験。フューチャリスティックな感覚を前面に押し出した。また10年11月には初主演映画『バーレスク』が公開されて、ハリウッドに進出。ミュージカル映画とあってサントラには彼女の声を満載し、こちらもヒットを博している。



▲Christina Aguilera - Show Me How You Burlesque


 そして、12年には5枚目の『ロータス』がお目見え。シングル曲『ユア・ボディ』を手掛けたマックス・マーティンを筆頭に売れっ子プロデューサーを集めて、コンテンポラリーなポップ・ミュージックに歩み寄る一方、自分の最大の武器である“歌”を改めて追及した。

 それから最新作『リベレーション』が届くまでには6年の空白が空いたが、その理由としてはまず、ふたりめの子が誕生したという事情があった。だがそれだけでなくクリスティーナは、最初の10年余りのキャリアを踏まえて自分をリセットし、再び脱皮する道を探っていたようだ。いみじくも彼女は、「私は行き詰まってしまった気がして、真実に立ち返る必要があった。なぜ自分が情熱を見失って道から外れてしまったのか、考えてみる時間を持つべきだったのよ」と語っている。

 そのプロセスを解くキーワードが、“マリア”だ。カニエ・ウェストがプロデュースしたオープニング曲のタイトルであり、彼女のミドルネームでもあり、自分の中にいる、音楽への情熱にあふれる女の子の名前であり、本作はそんなマリアを探す旅なのである。また、カニエとはほかにも先行シングル『アクセレラレイト』でコラボし、セクシーなラヴソング『ライク・アイ・ドゥ』ではアンダーソン・パークを起用。クリスティーナの関心がヒップホップに向いていたことが分かるが、雑食志向の人だけに、ほかにもダンスホールありロックあり、濃い味付けのサウンドと、いつになく表情豊かな歌声をスリリングに競わせている。



▲Christina Aguilera - Accelerate (Official Video) ft. Ty Dolla $ign, 2 Chainz




▲Christina Aguilera - Like I Do (Lyric Video) ft. GoldLink


 そんな中でもやっぱり、歌い手としての彼女が最大の威力を発揮するのは、熱いメッセージを込めたアンセムの数々だろう。『フォール・イン・ライン』がその好例だが、『ビューティフル』とも呼応するこの曲は、クリスティーナに憧れて育ったデミ・ロヴァートをゲストに迎えたフェミニスト賛歌。“あなたの肉体と魂はあなた自身のものなのよ”と諭す彼女の視線は明らかに、娘を持つ母親の、業界の荒波を乗りきったベテラン・アーティストの視線だ。

  

 こうして、ひとりの女性としてこれまでに学んだことを聴き手と分かち合い、マリアと再会したクリスティーナ。パワーを全開にして表舞台に復帰した彼女は、デミやカミラ・カベロやアリアナ・グランデら、自分をお手本にしてきた若手が大活躍している中、使命感を新たにしたようだ。「ほら、誰にも自分なりの“マリア”がいると思うの――自分の内側にいて、仕事や家庭のために隠しておかなくてはならなかった、夢見る子供を。だからこのアルバムを通じてリスナーに、私みたいに自分を発見してもらって、自分を自由にするために必要な、解放と自立心と力とインスピレーションを与えられたらと願っているわ」。



▲Where’s Maria? (Liberation by Christina Aguilera)


クリスティーナ・アギレラ「リベレーション」

リベレーション

2018/06/27 RELEASE
SICP-5786 ¥ 2,640(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.リベレーション
  2. 02.サーチング・フォー・マリア
  3. 03.マリア
  4. 04.シック・オブ・シッティン
  5. 05.ドリーマーズ
  6. 06.フォール・イン・ライン feat.デミ・ロヴァート
  7. 07.ライト・ムーヴズ feat.ケイダ & シェンシーア
  8. 08.ライク・アイ・ドゥ feat.ゴールドリンク
  9. 09.ディザーヴ
  10. 10.トゥワイス
  11. 11.アイ・ドント・ニード・イット・エニモア (インタールード)
  12. 12.アクセレレイト feat.タイ・ダラー・サイン & 2チェインズ
  13. 13.パイプ feat.XNDA
  14. 14.マゾヒスト
  15. 15.アンレス・イッツ・ウィズ・ユー

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