歌うのはちょっと自信がなくて……

－－福原さんは子役時代から歌手活動もされていて、当時からいい歌声だなと個人的に感じております。

福原遥：そうなんですか……私、自分の歌声があんまり好きじゃないんです（笑）。

－－ええ！？（笑） 音楽はお好きですか？

福原遥：好きですよ。最近ですと安室奈美恵さんの歌をよく聴いていますし、聴くのは好きですね。でも、歌うのはちょっと自信がなくて……

－－個人的には今回のシングル『It's Show Time!!』の歌唱もそうですけど、リズムのとり方が独特で歌声の特徴ともマッチしていると思いますし好みです。

福原遥：へえ！ でも歌うのは好きなんです。「自分らしく歌おう」っていつも思っていて、その歌詞にあった歌い方をしようと思って歌っていますね。カラオケとか行って歌うのも好きですし、自分らしく歌おうって。だから小さい頃から楽しんで歌ってきました。

－－カラオケではどんな歌を？

福原遥：「残酷な天使のテーゼ」（テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』オープニングテーマ）とか、LiSAさんの「Rising Hope」（テレビアニメ『魔法科高校の劣等生』オープニングテーマ）とか……

－－アニソンが多いんでしょうか？

福原遥：たまたまですかね。「Rising Hope」はLiSAさんが好きな友達がいて、その友達が歌っているのを聴いて好きになったんです。カラオケでは最初にLiSAさんの曲でワァー！って歌って盛り上がるんですよ、最初と最後は盛り上がる方がいいので、その2曲（「残酷な天使のテーゼ」「Rising Hope」を選曲すること）が多いですね。中盤には、今回共演させていただいた戸松遥さんの曲も入れたりしますし、それとHoneyWorks「告白予行練習 feat.榎本夏樹(CV：戸松遥)」も好きでよく歌います。

－－戸松遥さんの曲ですと「Q&Aリサイタル!」を歌っている福原さんが見てみたいですね。

福原遥：いいですね！ ライブだと「ハルカー！」って掛け声があって、自分が言われてるんじゃないかって思ってドキドキしちゃいました（笑）

戸松遥について、「あ！ 自分と合う部分がある」

－－今作『It's Show Time!!』は『プリキュア』シリーズ放送15周年を記念して制作された、福原さんが主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『声ガール！』の主題歌で、共演されている戸松遥さんと一緒に歌唱を担当されています。お二人は以前から親交が？

福原遥：はじめてお会いしたのは『声ガール！』よりも前で、戸松さんのライブを観させてもらったときに楽屋でご挨拶させていただいたのが最初です。そこで「遥」って同じ名前ですね、みたいなこともお話しましたし、こうして同じ「遥」でご一緒できて本当に嬉しいです。

－－戸松遥さんにはどんな印象を持っているんでしょう？

福原遥：第一印象は「ほんっとにスタイルが良くて、カワイイ！」と思っていて、ライブを観たときにはウワァー！ってすごく元気なパワーを感じましたし、ご挨拶させてもらったときには大人な振る舞いと言うか、人見知りな方なのかなって思いました。私も人見知りなんですけど、「あ！ 自分と合う部分がある」って勝手に感じちゃいましたね。それに憧れの存在でもあったので、『声ガール！』の撮影が決まったときに話しかけていいのか…どうなのか…って、でも勇気を出して話しかけてみたら、とても優しくて！ ステージ上で観る戸松さんとは違って親しみやすさもあって、本当に優しい先輩で「お姉さんだなぁ」「ステキな方だなぁ」って思いました。

－－以前にも『プリキュア』などで共演された声優の かないみか さんからアドバイスをもらっていたお話をされていたり、憧れの先輩役者さんと共演する機会も多くなっていくことは、ご自身の成長において貢献が大きいですよね。

福原遥：本当にそうですよね！ まだまだ未熟なので（笑）。声優のお仕事も、アフレコ現場の経験も少なかったので、みかさんには、現場で必要なことを教えていただいて、色々助けていただきましたし、「隣にいなさい」と言ってくださったので、それから隣にずっと座らせてもらってました。本当に色んな方に支えていただいているので、『声ガール！』の真琴（福原遥演じる主人公）と自分がリンクしたと言うか、「自分にもこういう事があったな」とか思うところも多いですね。

－－『声ガール！』の真琴はどんな役柄でしょう？

福原遥：真琴って自分のことよりも周りのことに目がいって、「私が助けてあげたい！」という気持ちで行動して、それが空回りして逆に助けられてしまったりするんです。でも、そんな真琴には「ステキな心をもっているなあ」って思いますし、自分も見習わないとというか、そういう風になれたらって役と向き合っていると感じますね。

－－その空回りしてしまうところは、ドラマを観ていてもヒヤヒヤします（笑）

福原遥：全部含めて「可愛いな」って思います！ 真琴ってほっとけなかったりとかするし、でもキレイな心をもっているから周りも皆ほっとけないんだなとか、あとキラキラしているなって台本を読んで思ったので、観てくださっている方からも応援してもらえるような真琴を演じていきたいなと思っていましたね。

大泣きして「素敵な作品だったね」って

－－福原さんにもキラキラしたイメージ、ほっとけないようなそんな印象を覚えます。

福原遥：私はそんなことはないです（笑）。

－－ご自身では「福原遥」ってどんな人物と思うんでしょうか？

福原遥：私は、やることが遅いので、ぜんぜん出来ないことだらけです（笑）。

－－それも向上心と捉えられます。では、理想とする役者像などはありますか？

福原遥：私は井上真央さんが大好きで、NHKの朝ドラ『おひさま』をずっと観ていたんです。その作品で自分の考え方が変わったというか、それで元気とか勇気とかもらえたので、人の心を動かしたり、考えも含めて変えられたりすることができるような女優さんになりたいなと思いますね。
この時、くじけいたりしていた時期で自分と重なる部分があって。観ていて、それでも前を向いて頑張ろうと思えたんです。役者さんに限らず、歌とかでもそうですし、なんか人の心を動かすって凄いなあって。

－－心を動かされる作品・音楽に出会えることは素敵なことですよね。最近ではどうでしょう？

福原遥：映画『グレイテスト・ショーマン』ですね。歌で沢山のことが表現されていて、凄いなって思いましたね。家族を守るために頑張っている姿だったり、自分は家族を守るために頑張っているって思い込んでいても、そうじゃなくて、自分のために頑張っていたんだなって気づくシーンがあるんですね、そのとき「あー、自分にもそういう時あるよな」って気付かされたと言いますか。誰かのためを思ってやっていると思うことでも、どこかで自分の方に矢印が向いちゃっていたり、それで失敗したりすることもあるので、考えさせられるなと。

－－福原さんは、作品の見方にこだわりとかあるんでしょうか？

福原遥：私は感情移入しちゃいます。同じ作品を何回か観たりすると最初は主人公の目線で見ていたのに、今度は別のキャラクター目線で見たりもしますし、役者さんの演技とかではなく作品の流れとかで観ていることが多いですかね。

－－役柄、キャラクターに感情移入しちゃうと、思わず泣いちゃったり？

福原遥：そうですね、よく泣いちゃいますよね。『グレイテスト・ショーマン』もめっちゃ泣いちゃいましたし、ホラー（ゾンビ）映画なんですけど『新感染 ファイナル・エクスプレス』でも！（笑）
友達に誘われて何を観るかも知らずに一緒に観に行ったら、ホラーで！ 凄い怖かったんですけど、最終的にどハマりしちゃってて、大泣きして「素敵な作品だったね」って言って帰ってました（笑）。

「本当に戸松さんとユニットを組ませてもらったんだな」って実感

－－現在放送中のドラマ『声ガール！』主題歌の「It's Show Time!!」の話について。まず歌ってみての印象はどうでしたか？

福原遥：すごい明るくて、前向きな曲だなって。テンポ感も良くて、「これから始まるぞ！」みたいな印象でしたね。

－－作詞を前山田健一（ヒャダイン）氏が担当されていますね。

福原遥：そうなんです！ 声優さんの歌になっているので、『声ガール！』の作品にも沿っているし、あまり声優さんを題材にした楽曲はないじゃないですか？ だから、すごく新鮮だなと感じましたね。

－－夢に向かっている人を後押しする、そんなメッセージも感じます。

福原遥：それが一番強いのかなと思うんですけど、他の楽曲にはあまり使われない「モブキャラ」「ジュニアランク」といった声優ワードがあるのも楽しいですよね。

－－「It's Show Time!!」のミュージックビデオでは、ドラマ内でも真琴がしていた抜かれたら抜きかえすような競い歩き的なシーンがありましたね。福原さんは実際でもしちゃうタイプ？

福原遥：うーん、そういったことをしそうな役を演じることは多いんですが、実際やるかと言ったら……

－－そうですよね、実際に抜かれたからって気にしませんよね。

福原遥：気にしないです！（笑） 撮影は、そのままでやっていた感じです。ドラマで演じた真琴の感じというか、戸松さんもドラマと一緒で先輩の設定でしたし。（MVでは）中華屋さんの先輩後輩の関係で、自然に撮影できましたね。

－－MV撮影で印象深いシーンは？

福原遥：2人でダンスをするシーンですね。そこは一曲全部通して撮影したんですけど、その時に「本当に戸松さんとユニットを組ませてもらったんだな」って実感がこみ上げてきて、改めて嬉しいなって感じましたね。目をあわせて笑ったりだとか、一緒に歌ったりだとか、なんか夢のような時間でした。

－－それにMVのメイキング映像も楽しい内容で。

福原遥：そうですね、戸松さんと一日ずーっと一緒の撮影はあまりなかったので、その（MV撮影の）一日で色々とお話させていただいたりとか、一緒に餃子をいっぱい包んだりとか、前より仲が深まったかなと思います。ご飯もご一緒させてもらったりして、すごく嬉しかったです。

自分も応援されながら誰かを応援している感覚

－－福原さんが仲のいい共演者の方から言われることってありますか？

福原遥：「マイペースだね」とか、「変わってるね」とかですかね……自分では何が変わっているのかさっぱりわからないんですけど。

－－演じている役柄含め、万人から愛されるキャラクターだなと感じます。

福原遥：うーん、どうでしょう？ でも、憎めないような、愛されるような役になれたらいいなって思って演じていたりしますね。

－－『声ガール！』でも十分それは伝わってきますし、表現されているなと思います。そしてシングルc/w曲「Try」では、頑張る人の姿が見えてきますし、なにより励まされます。

福原遥：そうですね、この曲はデモを聴いた時とレコーディングで歌っている時とで全然違う感覚だったんです。「It's Show Time!!」もそう感じたんですけど、すごい勇気が出る言葉だったり、なにかを頑張っている人に向けて背中を押せるような温かい言葉がたくさん散りばめられていたので、この曲を歌っている中で自分も応援されながら誰かを応援している感覚があったり。なんか明るくて前向きってだけじゃなくて、一つずつ色んな意味も込められているので、そういった部分もじっくり聴いてみてほしいですね。

－－今作ドラマ、楽曲を通して福原さんが伝えたいことや、逆に伝わってきた思いなどはありますか？

福原遥：『声ガール！』では真琴が一生懸命頑張っている姿を見て、私も頑張らないと！とか、諦めないで怖いから立ち止まるんじゃなくて、思いっきりぶつかってみるっていう思いだったり、そういうのことを伝えられたらいいなって思います。私自身も『声ガール！』をやらせてもらって、作品も共演者の方もキラキラ輝いて見えて、それを見て私も頑張ろう！っていう気持ちになりましたし、すごい真琴からも元気をもらったりだとか、ちゃんと頑張んないといけないんだよって思ったりとかしましたね。この作品もこの歌も、そういう前に進めるような、何か頑張っている人を後押しできるような作品なんだなって、凄く感じました。

20歳になる福原遥が大切にしていきたいこと

－－役者、タレント、歌手としての色んな活動のなかで、福原さんはどう自分を表現していきたいでしょう？

福原遥：自分がこう見られたいだとか、どう評価されたいとか考えたりすることはないんですが、とにかく自分が悔いが残らないようにだとか、ファンの方たちにこういう作品や歌を通してエールを贈れたらいいなって、みんな一緒になって笑顔になれる空間が作れたらいいなって思いますね。
いまは色んな経験をさせていただいているので、一つ一つ後悔のないように一生懸命頑張れたらいいなとか、「あ！自分にはこんな一面もあるのか」とまた新たな発見だとか、もっと自分のパワーを強く出せる場所を見つけられたらいいなとか思いますし、これからも色んな事を経験していきたいです。

－－今年20歳になる福原遥が大切にしていきたいことは？

福原遥：「人を信じる」こと！ なんか凄い熱い感じになっちゃいましたけど、人を信じるというか、自分自身に対してもそうなんですけど、そういう気持ちはブレないようにしたいですね、ひとりの人間として。なんか、素直な気持ちだったりとか、人を信じる気持ちだったりとか、大人になっていく中でもそういう気持ちは常に持って自分が向かっている先、夢などに目指して頑張りたいですね。

－－これまでの活動、言動からもそれは感じられます。

福原遥：『声ガール！』の現場もそうなんですけど、努力している人の努力ってほんと考えられないくらいの努力なんですよ。自分はまだまだだなって感じちゃいます。

－－歌に関してはこれからも？

福原遥：もちろんいっぱい勉強していきたいですね。歌は技術的に足りない部分が多いなと思ってますし、MV撮った時に「リップ」という歌を口ずさみながら表現する撮影に初めて挑戦したんです。まず戸松さんで、そのあと私の撮影だったんですけど、戸松さんは本当にすごくて、歌詞に合わせて色んな表情だとか身振り手振りをされていて、その時に改めてイチから勉強だなって思いましたね。本当に自分がいるところ、場所とか環境に感謝しつつ頑張りたいです。戸松さんのアルバムを聴いて勉強してます。

－－そんな福原さんが今作に関して、人前で歌う姿も見てみたいです！

福原遥：いやー、それは……（笑）。でも、『プリキュア』のステージではファンの方がすごいキラキラした目をしていて、本当に温かくて、家族に囲まれているような空間で、ステージってすっごい楽しいなって思ったんです。だから、（機会をいただけたら）一緒に笑顔になれる場所にしたいなって、みんなで笑顔になれる空間にしたいなって思います。

Interviewer＆Photo：古川泰佑