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傳田真央 『I AM』インタビュー
10年目にして2ndオリジナルアルバムのリリース。通常のシーンのサイクルからすれば異例中の異例。しかもメジャーのど真ん中、今年最も大きな音楽ムーブメントとなった"セツナ系ラブソング"の歌い手として大きな注目を集める中でのリリースである。一度表舞台から姿を消した者に冷酷なはずのシーンへ、最高の笑顔と"女子力"でもって軽やかに舞い戻り、往年のファンのみならず日本中の女の子を虜にしつつある傳田真央。そんな彼女がこの上ない自信を持って世に放つ、切なさだけに収まらない『I AM』について、とっても嬉しそ~~~っ!に語ってもらった。
迷いや憧れ 解き放てる未来まで 歌い続けたい
--いきなり余談になってしまいますが、映画「THIS IS IT」を観たときのブログを読んで。かつて『Human Nature』をカバーしたぐらいのマイケル好きな傳田真央がね、あの映画を観て何を感じたのか聞きたかったんです。
傳田真央:2回観に行っちゃいましたよ。感動しましたね。元々マイコーはレジェンドだし、天使っぽいじゃないですか。人間離れしてるし。お役目があって地上に降りてきた感じがすごくしていたけど、あの映画を観て「やっぱりそうなんだなぁ」と思って。本当に身を削って、ちゃんとお役目を果たしたアーティストなんだなと感じました。あと、私たちが日頃「頑張らなきゃ」って思ってることと次元が違う、地球レベル、宇宙レベルで物事が考えられる人なのに、でも彼の音楽は誰もが楽しんでその世界に入れる。っていうのが本当に素晴らしいなと思っていて。身近にある素晴らしい芸術。それが……優しいって思った。
--そんな「THIS IS IT」が公開される少し前、傳田真央からもビッグニュースが幾つか届きました。まずセルフリメイク曲『耳もとにいるよ...~Ring the bells REPRISE~』の配信。そもそもあの曲をリメイクしようと思ったのは?
傳田真央:あの曲を作った二十歳前後の当時は、そんなに狙いもなく、本当に何気なく作った曲だったんですけど、何だかんだやりながら10年近くも歌い続けさせて頂いて。で、今年になってライブをたくさんやらせてもらってるんですけど、やっぱりこの曲はみんな歌ってくれるし、これだけの時間が経っても未だに愛してもらってるんだなぁって。振り返ってみればすごく大切な曲。で、音楽の聴き方も変化していく中で、最近は「着うたとかで『耳もとにいるよ...』出ないんですか?」って聞かれたり、リクエストをたくさんもらったりしていたんですよ。それで「今の街の風景とか、今のみんなの恋愛スタイルに合うような形でもう1回この曲を聴いてもらえたらな」って思って、リメイクをすることにしました。
--その生まれ変わった『耳もとにいるよ...』には、自身ではどんな印象や感想を?
傳田真央:最高潮(笑)。自分でもよく聴いちゃってます。2009年になって新しい傳田真央の作品をいろいろ追求させてもらってきて、本当にリアリティのある恋愛観だったりとか、どうすればみんなの生活の中に入り込んでいけるかとか考えて、歌詞とかも書き直させてもらって。今はみんなやっぱり携帯を通して恋愛してると思うんですけど、最初に私が『耳もとにいるよ...』を書いた当時はまだ携帯も白黒で(笑)。でもそのときにたまたま"携帯電話を通した遠距離恋愛"っていうテーマで曲を書いてて。で、今はその曲がよりリアルに響くような時代になってるんですよね。そして傳田真央のクリエーターとしてのスキルも2009年バージョンに更新されているということで、そこは遺憾なく発揮したいなと思って作ったのが、今回のバージョン。だから一言一言すごくリアルに書けたんじゃないかなって思ってるんですけど。
--その中でラストの「いつの日にか心に秘めた迷いや憧れ 解き放てる未来(とき)まで 歌い続けたい」というフレーズは変えずに歌ってるのが良くて。これ、今聴くと凄く重みを持った願いですよね。あの頃の真央ちゃんが今の傳田真央に向けて放った言葉のようにも聞こえるし。それを感じたとき涙を堪えるのが大変でした。
傳田真央:ほんと、不思議ですよね。今振り返ってみれば、二十歳ぐらいのときなんてすごく子供だし、全然何にも分かってない感じだったのに、よくこんな言葉を書いていたなって。二十歳の傳田真央さんが「しっかりしなさい」とか「ほらね!」って言っているような感じがする。で、この曲は2009年バージョンにパワーアップするべくいろいろリメイクしたんですけど「いつの日にか心に秘めた迷いや憧れ 解き放てる未来(とき)まで 歌い続けたい」の部分っていうのは、私も全然手を付けようと思わなかったし、誰もそこに手を付けようとしなかったんですよね。「この曲は元祖・携帯恋愛ソングだから、それを極めよう」みたいなことを言っていて、そう考えるとそこのフレーズって別に恋愛観のことじゃないし、アーティストとしてのスピリットの部分なんですよ。だからそこを自然に残していたことも不思議だなって思うし。
--あのフレーズは傳田真央に10年間変わらなかった信念があった証拠ですよ。
傳田真央:そうかもしれないですね。
--あと、あのフレーズに行く前のタメ。あれは反則です。
傳田真央:そこに気付きましたか(笑)。すごい。でも"間"ってすごく感動するんですよね。ライブで歌っててもあの一瞬でお客さんとお互いに噛み締める何かがある。心の目配せみたいな。
--で、こちらもアルバムにも収録される曲になりますが『My Style』。米倉涼子主演のドラマ「交渉人~THE NEGOTIATOR~」主題歌に大抜擢されたナンバーです。ブログのタイトルじゃないですけど、まさに"女子力"を歌った強い曲ですよね。
傳田真央:この曲の製作過程で傳田はまた更にいろいろ勉強させて頂いて、バージョンアップをしまして、更に最強に(笑)。最近物凄く「女子、女子」って1日10回以上口にしていて、ブログのタイトルも"女子力"にしちゃったりとか。数ヶ月前まではそんなの自分の毎日のテーマに全然無かったと思うんですけど、なんだかこう、最近は「女子、女子」言ってシャキっとしてますね。これまでも女の子たちの心に秘めた涙を見つめながら曲を書いたりしていたんですけど、今は「女子たちが日々こんな風にひたむきに頑張ってる!」みたいなところに対して男心が出ちゃう。燃えちゃう!みたいな(笑)。で、今回『My Style』の曲作りの話を頂いたときに、今まで私は切ない曲ばかり書いてきて"涙の女王"とか言って頂いてて、いかに切なさをリアルに描写するかとか、そういうのは結構いろいろ突き詰めてきていたんですけど、今回米倉涼子さん主演のドラマ「交渉人~THE NEGOTIATOR~」の主題歌ということで、ドラマのプロデューサー、その人も最強のウーマン、素敵最強女子なんですけど、その方に「今の時代を生きる女性たちは心が折れそうになりながらも毎日頑張ってる。そういう人たちが力強く明日も頑張れるような曲を書いて下さい。女性像としては米倉涼子さん。大人で強い、ブレない女性」というテーマを頂いて、その瞬間にちょっと「傳田ピンチ!」みたいな。
--(笑)。
傳田真央:涙を武器にできなくなったんですね。今までの自分の慣れてるスタイルが通用しなくなった。それで歌詞作りが大変で、時間もなくて、ドラマの主題歌だし、すごくプレッシャーもあって。ライブ活動もすごく忙しかったので、本当に眠れない日々が続く中で書いていたんですけど、その自分の辛さが曲にも反映されたかなと。まさにリアリティを持って曲が最強になった。最初は女子を応援するべく「頑張れ」って言いたいんだけど、例えば泣いている子に「大丈夫だよ、頑張ってね」ってただ言っても励ませないじゃないですか。だから悩んで。どうしても言葉が形だけになってしまったりとかして。でも最終的には新境地を見つけられました。
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Interviewer:平賀哲雄
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