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「ピアノで歌う」― 村松崇継 インタビュー



インタビュー

 映画『メアリと魔女の花』、『8年越しの花嫁』など数々の映画音楽を手掛けながら、12月15日にはMay J.とのコラボ曲を配信限定リリースしアーティストとしての活動をさらに広げている村松崇継にインタビューを敢行。2018年1月にはビルボードライブで2回目の単独公演を控える彼に、作曲家、ピアニスト、そしてアーティストとしての活動する上での信念や思い描くビジョンを語ってもらった。

ピアノで歌う

――村松さんは在学中から映画音楽を手掛けられてきていますが、ライブ活動に力を入れていこう意識したのは最近ですか?

村松崇継:ライブはもともと好きなんですけど、どうしても映画音楽の制作が多かった時代はコンスタントにできなくて、自分でもモヤモヤしていました。良い音楽をライブでお届けして”映画音楽の村松崇継”という周囲のイメージを覆したいなと思って最近ライブ活動に力を入れるようになりました。

――映画音楽を作りながら、ライブを並行してやられるアーティストは結構いらっしゃるのでしょうか?

村松:フィルム・コンサートをしている方はたくさんいらっしゃると思いますけど、ライブという形でやる方は少ないんじゃないかと思います。もともとアーティスト活動をしたいと思っていたのですが、いつのまにか映像作品の仕事が増えて、制作や締切に追われていたので20代後半から30代前半の時はライブを入れにくくなってしまったんです。もちろん映像音楽の作曲も楽しいのですが、それだけだと、まだまだ音楽活動として物足りなさを感じてまして。ポップスが大好きなので、色々なボーカリストとコラボしてみたいです。映画音楽を中心にやっていると、「ライブはジャズをやるんですか?」って思われがちなのですが、そうではないんです。

――10代の頃に観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をきっかけに映画音楽にのめり込まれたそうですが、その頃から今のようなヴィジョンを抱いていたのですか?

村松:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がきっかけで映画音楽に目覚めた、というエピソードがけっこう出ていますが、大学時代はバンドを3つくらい掛け持ちして色んな音楽をやっていて、当時はたくさんライブをやっていました。

――理想としているアーティストはいらっしゃいますか?

村松:デイヴィッド・フォスターですね。映画音楽を手掛け、ボーカリストをプロデュースして、ご自身のライブもしているのは理想的だなと思いますね。「ウィンター・ゲームス」というカルガリーオリンピックの公式テーマソングや「摩天楼はバラ色に」という彼が音楽を手掛けた映画をテレビで見て彼を知って、いろいろ調べたらホイットニー・ヒューストンやシカゴの曲もやっていて、こういうアーティストになりたいなぁと思いました。一番最初に手にしたアルバムはデイヴィッド・フォスターの『シンフォニー・セッションズ』でした。


▲『シンフォニー・セッションズ』

――なぜデイヴィッド・フォスターが村松さんの琴線に触れたのですか?

村松:デイヴィッド・フォスターは、クラシックがベースにあって、クラシックのアプローチがしっかりしている上で”ポップ”なんです。これをできる人は全世界で彼くらいだと思います。クラシックからジャズに向かっていく人は多いのですが、クラシックがベースにあって王道なポップスができる人は彼以外にいないですね。僕もそのポジションに行きたい思ってます。ピアノのインストでジャズをやる人はいますけど、ポップスをやっている人はあまりいなくて、僕はピアノのポップスを突き詰めていきたいですね。ライブでもポップさを絶対に失いたくなくないと思っています。

――ジャズはシーンがありますけど、ピアノでポップスというのはシーンがないですよね。

村松:そうですね。昔「ピアノのインストだとジャズかクラシックに寄らないと難しいよ」ってレーベルの方から言われましたけど、僕は「ピアニストがポップスをやる」という点にこだわっているんです。ライブでも「ピアノを弾く」のではなく「ピアノで歌う」つもりでやっていて、基本はあくまでポップスなんです。

――テクニカルな部分を見せたいとかはない?

村松:もちろん間奏とか、部分部分ではあるかもしれませんが、基本は僕の曲、メロディ、歌を聴いて下さいという感覚です。

――そういう感覚はポップスのボーカリストと一緒ですね?

村松:そうかもしれないですね。実際に声を出して歌っていないだけで、「僕はピアノで歌っていますよ。」と。ピアノはアドリブや伴奏するだけではなく、歌うものでもあるんだと。曲の想いや伝えたいことをピアノで歌いたいですね。

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デイヴィッド・フォスタースタイル

――ピアニストだけではなく、ボーカリストからも影響を受けることはあるんですか?

村松:それはすごくありますね。ボーカリストの歌い方を参考にしたりしますね。マイケル・ブーブレとかジョシュ・グローバンとか。

――村松さん自身が歌っていないのが不思議なくらい歌が好きですね。

村松:そうですね(笑)。

――今回リリースされたMay J.さんとのコラボ曲はどのようにして決まったのですか?

村松:May J.さんとはラジオの番組で初めてお会いして、そこですごく意気投合しました。May J.さんも好きなプロデューサーにデイヴィッド・フォスターを挙げていて、「村松さんを見ていると日本のデイヴィッド・フォスターみたい」と言って頂き、今の時代にハマるバラードを作りたいねと二人で話していて、今回のコラボに繋がりました。僕の曲は振れ幅が広くて、ポップス歌唱のような部分があったり、クラッシック寄りな部分があるんですけど、May J.さんはとても柔軟に歌っていただき、本当に素晴らしかったです。いつか一緒にステージに立てたらいいなとも思っています。

――国内外を問わず、今後コラボしたいアーティストはいますか?

村松:チャーリー・プースですね。ピアノも好きなんですけど、声や歌い方がすごく好きで、僕の曲でもすごくうまくいきそうな気がします。僕の曲は音域が広いので、日本だとそれこそMay J.さんとか平井堅さんのようなボーカリストがハマると思います。最近はEDM系のアーティストとコラボしたり、冒険させて頂いているので、今後もジャンルレスに、いろんなアーティストと一緒にやって、それをライブにも活かしていけたら面白いなと思っています。

――映画音楽を制作するときは「ピアノで歌う」というのを意識しているのですか?

村松:作品や演出家によりますね。「村松さんに任せます。」という場合は意識することもありますし、監督や演出家の求めるものに徹する場合もあります。ここ2、3年は僕の音楽を好きと言って頂いている方とご一緒させて頂く機会が多いので、自分のスタイルを活かせていると思います。

――ちなみに、先日公開された『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の音楽も手掛けていますが、こちらの制作はいかがでしたか?

村松:瀬々監督は『64 -ロクヨン-』でもご一緒させていただいて、音楽にもこだわりがある方ですね。今回はどこで見つけてきたんですかっていうくらい古いアイルランドのバンドの曲を参考に聴かせてもらって、すごく勉強になりました。『8年越しの花嫁』はストーリーもすごく深みのある映画なので、是非劇場で観ていただきたいですね。

――『8年越しの花嫁 奇跡の実話』のようなラブストーリーだったり、『64 -ロクヨン-』のようなサスペンスだったり、『メアリと魔女の花』のようなファンタジーだったり、幅が広いですね。

村松:映画は大好きなので、ホラー映画以外であればどんなジャンルでも大丈夫です。常にいろんな映画を観ていますが、自分だったらこういう曲を書くなって考えながら観て勉強したりもしています。

――一種の職業病で、映画を観てても音楽ばかり気になってストーリーが入ってこないということもありませんか?

村松:初めて観るときは(ストーリーは)入ってこないですね(笑)。映画音楽の作曲家は曲のミックスまで行うのですが、今は5.1chサラウンドで音楽が劇場を回るようにミックスすることもあるので、そういった部分も注目しています。特に『パイレーツ・オブ・カリビアン』などディズニー映画はやっぱりミックスがすごく作り込まれていて勉強になりますね。あとはやっぱり曲のアレンジも気にしながら観ています。

――曲のミックスまでやるんですね。5.1chサラウンドだと、いわゆるレコード作品とはまったく違う感覚ですね。

村松:そうですね。そこは全く別物として考えないとダメですね。ただ、映画音楽ばかりやっているとアーティストとしての感覚がなくなってしまうので、ビルボードライブでのライブのように、ちゃんとした環境でシンプルな編成のライブをやって、目の前のお客さんに聴いてもらうこともすごく大事だと思います。

――いまアーティスト活動と映画音楽の仕事とうまく両立できてきていると思いますが、今後さらにやってみたいことはありますか?

村松:いろんなアーティストの方々をプロデュースして、そのアーティストの魅力を最大限に引き出して新たな音楽を提供したいですね。プロデュースもやりながら、自分のライブもやっていきたいですね。まさにデイヴィッド・フォスタースタイルです(笑)。

写真

村松崇継 Marc Miles Shanti Snyder「映画 8年越しの花嫁 奇跡の実話 オリジナル・サウンドトラック」

映画 8年越しの花嫁 奇跡の実話 オリジナル・サウンドトラック

2017/12/13 RELEASE
SOST-1026 ¥ 2,547(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.出逢い
  2. 02.二人の歩み
  3. 03.Catch The Wind
  4. 04.病室に運ばれた麻衣
  5. 05.移り行く時
  6. 06.尚志の旅路
  7. 07.見えなくなる道
  8. 08.Gilderoy
  9. 09.Richie’s Lady
  10. 10.Periwinkle
  11. 11.戻らない記憶のかけら
  12. 12.戻したい記憶への想い
  13. 13.記憶の渦
  14. 14.思い出の地での決意
  15. 15.尚志の決断
  16. 16.My bonnie,bonnie Boy
  17. 17.繋がり始めた新たな糸
  18. 18.8年越しの花嫁

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