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特集:渡辺美里~力強く真っ直ぐな歌声を届け続ける
「My Revolution」の大ヒットから30余年、そして前人未到の20年連続スタジアム公演達成から10余年。その力強く真っ直ぐな歌声をファンに届け続けてきた渡辺美里が、クリスマス・シーズンのビルボードライブに登場する。キャリアを積み重ねながらその輝きを増してきた彼女は、大規模なアリーナから親密で小さな会場まで、その包み込むようなパフォーマンスで魅了してきた。ここでは、そんな稀有なヴォーカリストの足取りを追っておこう。
渡辺美里は、京都府生まれ、東京都出身。幼いころより歌が大好きで、10歳の時にはすでにプロの歌手になることを決意していた。高校生でラグビー部のマネージャーをしながらアマチュア・バンドで活動していた時に、「誰かに歌を聴いてもらわないとはじまらない」と思い、アイドルの登竜門だったミス・セブンティーン・コンテストに出場。最優秀歌唱賞を受賞し、見事にデビューのきっかけを勝ち取った。
1985年5月にケニー・ロギンスのヒット曲をカヴァーしたシングル「I'm free」でデビュー。同年10月にファースト・アルバム『eyes』を発表した。デビュー前からそのアーティスティックなセンスを開花させていた彼女の才能と呼応するかのように、岡村靖幸、小室哲哉、大江千里といった旬のクリエイターたちが楽曲提供を行った。当時人気の高かった山下久美子や白井貴子といった女性ロック・シンガーの系譜として高く評価された一方で、その出自からアイドルとしてカテゴライズされることも多かった。
しかし、そんなことを払拭する決定打として、1986年1月にシングル「My Revolution」をリリース。TBS系ドラマ『セーラー服通り』の主題歌となったこともあり、じわじわとセールスを伸ばし、40万枚を越える大ヒットを記録した。また、作曲を手掛けた小室哲哉は、すでにTM NETWORKとしてデビューしていたとはいえ、まだブレイク前だったということもあり、彼のソングライターとしての出世作にもなった。とにかくこの曲が持つポジティヴなパワーは、当時のティーンエイジャーを中心に圧倒的な支持を得ることになり、渡辺美里はJ-POPシーンの新星として人気を集めることになった。
同年7月には「My Revolution」の他、「Teenage Walk」や「Long Night」といったシングル曲を含むセカンド・アルバム『Lovin' you』を発表。20曲入り2枚組という大作で、10代の邦楽アーティストとしては初の2枚組アルバムであった。前作に続き、岡村靖幸と小室哲哉がメイン・ソングライターとして参加し、初めて渡辺自身が作曲した「Steppin' Now」も収められた。そして、本作で実力派ヴォーカリストとしての基盤を固め、その後の安定したアーティスト活動につなげていった。
また、かねてよりコンサート活動を非常に大切にしていたが、この年の8月にはスタジアム・ツアーを敢行。西武ライオンズ球場は伝説的なライヴとなり、その後西武ドームになってからも、2005年まで20年連続でコンサートを行い、彼女のホームグラウンドとでもいうべき場所となった。翌1987年には、日本武道館を含むアリーナ・ツアーも行い、ライヴ・アーティストとしても確固たる地位を築くことになった。
その後も、親しみやすさの中にも強靭なロック・スピリットを感じさせるヒット・チューンを連発。「悲しいね」(1987年)、「恋したっていいじゃない」(1988年)、「虹をみたかい」(1989年)、「サマータイム ブルース」(1990年)、「卒業」(1991年)、そして「My Revolution -第2章-」(1992年)といった楽曲は、多くのリスナーの共感を得て彼女の代表曲となった。
サード・アルバム『BREATH』(1987年)では全曲の歌詞を自ら手がけ、伊秩弘将や佐橋佳幸といった新たなクリエイターも投入。5作目の『Flower bed』(1989年)では海外レコーディングを行い、TOTOやタワー・オブ・パワーのメンバーが参加した。また、8作目の『BIG WAVE』(1993年)からは小林武史が、10作目の『Spirits』(1996年)からは佐久間正英がプロデュースに関わるなど、外部プロデューサーの起用も積極的にトライした。その後も、数多くの力作アルバムを発表し続けている。
彼女のライヴというと大々的なスタジアム・ツアーのイメージが強かったが、1999年には初のフル・オーケストラとの共演企画「misato '99 春 うたの木」を行った。このコンサートをきっかけに、これまでのバンド編成によるパワフルなライヴだけでなく、アコースティックなテイストのコンサートも多数行い、徐々にヴォーカリストとしてのイメージも広げていった。2004年に初のディナーショウを行ったのも、2014年にミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』に出演したのも、そういった幅広い活動の一環である。
デビュー30周年の集大成として、2016年には横浜アリーナでのコンサートを大成功に終わらせ、同年にはオーケストラとのコンサート・ツアーも行った。数々のヒット曲はもちろんだが、ライヴ・アーティストとしての評価は揺らぐことなく、精力的に活動を続けている。この冬は、ビルボードライブでのクリスマス・ライヴも控えており、彼女のパフォーマンスを間近で観るまたとない機会となるだろう。30年以上のキャリアを経て、さらに輝き続ける渡辺美里の魅力を、年の瀬に存分に味わっていただきたい。
▲ 「ボクはここに」MV
公演情報
渡辺美里 Xmasスペシャル
Billboard Live
You are my Santa Claus
ビルボードライブ東京:2017/12/16(土)-17(日)
1st Stage Open 17:00 Start 18:00 / 2nd Stage Open 20:00 Start 21:00
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2017/12/23(土)-24(日)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
>>公演詳細はこちら
【BAND MEMBERS】
渡辺 美里 / Misato Watanabe (Vocals)
斎藤 有太 / Yuta Saito (Piano, Keyboards)
山口 寛雄 / Hiroo Yamaguchi (Bass)
設楽 博臣 / Hiroomi Shitara (Guitar)
吉田 佳史(from TRICERATOPS) / Yoshifumi Yoshida(Drums)
竹野 昌邦 / Masakuni Takeno (Saxophone) ※12/16のみ
本田 雅人 / Masato Honda (Saxophone)
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Text: 栗本斉
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