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デヴィッド・T.ウォーカーが振り返るDCT recordsとドリカムとの22年~ベスト・アルバム発売記念インタビュー



デヴィッド・T.ウォーカー

 スティーヴィー・ワンダー、マービン・ゲイ、ジャクソン5、ダイアナ・ロスなど、2,500作以上にも及ぶ数多くのトップ・アーティストの作品に参加し、“ギターの神様”とも呼ばれるデヴィッド・T.ウォーカー。10月10日に、DREAMS COME TRUEが主宰するDCT recordsで制作した『Thoughts』(2008)、『Wear My Love』(2009)、『FOR ALL TIME』(2010)の3枚のアルバムと、吉田美和のソロ・アルバム『beauty and harmony 2』(2009)から、デヴィッド・T.ウォーカー自らセレクトしたベスト・アルバム『ミュージック・フォー・ユア・ハート~ベスト・オブ・デヴィッド・T.ウォーカー~』が発売された。そのリリースを記念し、インタビューを実施。ドリカムとの関係性から、楽曲制作、そして来年行われる来日公演への思いなどが、彼の人柄のうかがえるハートフルな言葉で語られた。

DCT recordsとの出会い、そしてDREAMS COME TRUEとの関係性

CD
▲『beauty and harmony』

――今回リリースされたベストアルバムでは、DREAMS COME TRUEがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めるDCT recordsで制作された3枚のアルバムの中から楽曲をセレクトされていますね。

デヴィッド:確か最初は1995年だったかな…DREAMS COME TRUEの2人に出会って、彼らのアルバム制作に参加したんだ。その後も、数えきれないほど彼らのツアーに帯同しているので、長い年月によって培われた関係性があった。他にも、美和さんのソロ・アルバム『beauty and harmony』(1995)、『beauty and harmony 2』の2枚で演奏したり、もちろんDREAMS COME TRUEのアルバム『LOVE UNLIMITED∞』(1996)などでも演奏している。中には、イギリス・ロンドンへ行ってレコーディングした作品もあって、私の第二の故郷である日本や今住んでいるLA、そしてNYで録音した作品もある。お互い尊敬しあっている仲なので、私自身のソロ・アルバムを彼らのレーベルからリリースすることは自然な成り行きだったんだ。彼らは私の音楽の良き理解者で、いつも円滑に物事が進むんだ。

CD
▲『beauty and harmony 2』

――とても深い信頼関係があるからこそ、リリースに至ったのですね。中村正人さん(DREAMS COME TRUE)は、アルバム『Thoughts』でプロデューサーとして参加していますが、彼はどのような存在ですか?

デヴィッド:彼もそして美和さんも、私のことを信じてくれ、自分が信じる作品を作らせてくれた。もちろんアイディアを提案してくれることもある。彼らのバックアップがあったからこそ、私はスタジオで自由になれたし、彼らもそれを後押ししてくれた。自由に作品に取り組むことを可能にしてくれたんだ。70年代からたくさん日本人のプロデューサーと仕事をしたり、日本人アーティストの作品に参加しているけれど、彼らはソウル・ミュージックに対し敬意を持っているから、とてもやりやすいね。

――なるほど。では、一方で、シンガーとしての吉田さんはいかがですか?

デヴィッド:誠実で、彼女もとてもソウルフルな人物なんだ。歌う言葉すべてが心からで、それが常に感じられる。それは彼女の歌声を聴いている観客も同じで、誰もが彼女の正直さを評価していると思う。歌い方からは、彼女の性格も垣間見れるしね。



▲ David T. Walker - Performing Solo at Dreams Come True Wonderland 2003


CD
▲『Thoughts』

――アルバムについての質問に戻りますが、今振り返って思い入れの深いアルバムがあれば教えて下さい。

デヴィッド:どれも特別だけれど、『Thoughts』と3部作のラストとなった『For All Time』には、私の友人のアーティストが数多く参加しているので、レコーディングも思い出深いものだった。2作目の『Wear My Love』は、最小限のプレーヤーとシンガーのバーバラ・モリソンと作り上げたホリデー・アルバムで、スタンダードが多かったね。ほとんどの曲は、幼い頃から慣れ親しんできた楽曲で、ステージ上で歌ったことはないけれど、プライベートで歌ってきたものが大半。シャワーの中などでね(笑)。

――『Wear My Love』ではクリスマス・ソングのカバーが収録されていましたね。デヴィッドはこういったカバー曲と自身のオリジナル曲もプレイされていますが、それぞれ演奏する際に意識していることはありますか?

デヴィッド:あまり違いはないかな。自分で作曲した曲は作品に合うもので、カヴァーは尊敬している、または単純に好きな曲を取り上げている。バリー・ホワイト、クルセイダーズ、ルー・ロウルズなど中には、自分が元曲で演奏しているものもあるし、個人的に知っているアーティストの楽曲もいくつかある。カヴァーは、自分らしさを注入しなければ意味がないと思うので、自分が感じるように表現しているんだ。



▲ 「David T. Walker - You'll Never Find & Love's Theme (Live) [Official Video]」


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音楽とは「人生そのもの」、“ギターの神様”が語る楽曲制作

CD
▲『Wear My Love』

――DCT recordsの3部作とそれ以前の作品では、楽曲制作に違いはありますか?

デヴィッド:そうだな、正直な話、あまり意識的ではなくて、曲は自分のクリエイティヴィティーが高まっている時に自然と生まれるものなんだ。レコーディングに関してもそうだね。60年代から変わらず、とても自然なプロセスなんだ。

――ふと閃いたアイディアなどは、どのように記録しているのですか?

デヴィッド:道を歩いてる時にメロディーが思い浮かぶこともあるからね。オリジナル曲は、ピアノやキーボードを使って書くこともあるんだよ。きっといつもギターを使って曲作りしていると思われているのだろうけれど、そうでもないんだ。とはいえ、完成させるのは必ずギターだね。大体の場合は、曲作りは家で行う。でも、空港、ホテルの部屋、公園など、ギターを持って行けるところでやる時もある。ツアー生活が長いから、ホテルで書かれた曲もたくさんあるんだよ。

――テクノロジーの進化によって、今ではラップトップを使って音楽を録音したり、プロダクションを施すこともできますが、そういった技術は取り入れていますか?

デヴィッド:確かにそうだけれど、私は使わない。アイディアやアウトラインを書き留めておいて、一緒に演奏するミュージシャンと集まって、曲を形にしていく。録音とかチューニングといった部分は、エンジニアが担当してくれている。唯一携わっているのは、ミキシングの部分だね。

CD
▲『FOR ALL TIME』

――基本的には演奏に集中できる環境なんですね。ではその演奏中はどんなことを意識していますか?

デヴィッド:自分らしくあること、そして自由であること。具体的なことは何も考えていなくて、自分が弾いていることを意識するのはギターから音が発せられる直前。もし曲に歌詞がある時は、曲のストーリーを知るために覚えるかもしれない。そうすることで、どのようなエモーションで弾いたらいいのか、というのが見えてくる。私のプレイは、フィーリングとエモーションから成り立っているからね。弾いたら、詞はすぐに忘れてしまうけれど、フィーリングはいつまでも記憶しているものなんだ。


曲作りもそうだね。今は具体的には取り掛かっていないけれど、毎日ギターの練習をしている時に、アイディアが浮かぶので、新曲について考えてはいるよ。それをどこかに書き留めるわけではないんだけれど、必要があれば、頭、またはハートで記憶している。それは、長いことやってきて、音楽が体に沁みついているから可能なんだ。まだ記憶もさほど衰えていないしね(笑)。

――それは楽しみです。またデヴィッドの近年の活動では、アメリカの若者に人気のVULFPECKの楽曲にフィーチャーされ、彼らの新作にも参加しているとお聞きしました。

デヴィッド:私が過去に参加した曲と私の演奏が気に入ってくれたようで、連絡が来たんだ。特に、私がジャクソン5とレコーディングした「帰ってほしいの」(I Want You Back)や「ネヴァー・キャン・セイ・グッドバイ」と言っていたかな。彼らはとてもいい人たちで、いいアイディアだと思ったから快諾して一緒に何曲かレコーディングしたんだ。そして今年の1月にもスタジオ入りして、それらの楽曲は年内にリリースされる彼らの新作に収録される予定なんだ。

――VULFPECKもそうですし、DREAMS COME TRUEもある意味ではそうですが、ご自身より若い世代のアーティストからのオファーがあることについて、どのように感じますか?

デヴィッド:私の作品や経歴に興味を持ってくれる若者がいるのは嬉しいことで、彼らのことをインスパイアするのと同時に、私自身もインスパイアされる。こういったコラボからは、何だか新鮮なフィーリングを感じることができるので学ぶこともある。昔ながらのスタイルと新しいスタイルが融合されているという感覚かな。LAの若い音楽コミュニティが活性化していて、いい音楽が生まれているのは何となく感じているよ。大切なことは、音楽や詞に真実味があるかということ。それが感じられれば、どんなスタイルの音楽であれ…自分があまり興味ない類の音楽でも受け入れることができる。真摯に作品を作っているアーティストは、誰でもリスペクトに値するんだ。



▲ VULFPECK /// Christmas in L.A.


――来年1月には、今回のベストアルバムを携えて来日公演が決定しています。どのようなショウを予定していますか?

デヴィッド:私がダンスして、っていうのは冗談で…(笑)。でも、わからないよ、もしかしたらダンスするかもしれない。確かなのは、とびっきりソウルフルなショーを届けるということ。笑みを浮かべながらね。

――最後に、デヴィッドにとって音楽とは?

デヴィッド:人生そのもの。食べ物のように、私に命を与えてくれるもので、必要不可欠なんだ。私の栄養源で、なかったら生きられないと思うし、それを試みようともしたくないね(笑)。

――ありがとうございます。では日本のファンにメッセージをお願いします。

デヴィッド:みなさんには感謝していて、これまで出会った友人やファンのみなさんに会うのが待ちきれない。彼らの笑顔を見ることを楽しみにしていて、私自身も笑顔で演奏できればと思っているよ。毎日、笑顔で人生を謳歌してほしいね。

――このご時世なので、そのメッセージは特に大事ですね。困難な時ほど、いいアートや音楽が生まれるとも言われていますし。

デヴィッド:それが不可欠ではないけれど、多少は当たっているんじゃないかな。完全に同意はできないけれど、理解はできる。困難で、混沌とした時から生まれるネガティブなエネルギーをポジティブなものに変えることは可能で、私はこれまでそれをやってきた。それは、ぜひみんなにも実践してほしいことだね。



▲David T.Walker『Music For Your Heart ~ Best Of David T. Walker ~』アルバムダイジェスト


デヴィッド・T.ウォーカー「ミュージック・フォー・ユア・ハート ~ベスト・オブ・デヴィッド・T.ウォーカー~」

ミュージック・フォー・ユア・ハート ~ベスト・オブ・デヴィッド・T.ウォーカー~

2017/10/10 RELEASE
UCCR-1064 ¥ 2,750(税込)

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Disc01
  1. 01.Eleanor Rigby
  2. 02.Love’s Theme
  3. 03.あなたのかわいい人
  4. 04.Street Life
  5. 05.God Bless The Child
  6. 06.Holidays Are Mirrors
  7. 07.お願いします
  8. 08.For All Time (Overture)
  9. 09.Global Mindfulness
  10. 10.Justified
  11. 11.Song For My Father
  12. 12.Thoughts
  13. 13.Soul, In Light & Grace
  14. 14.Wear My Love
  15. 15.I Want You

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