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中島美嘉 『BEST』インタビュー
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--今回ベストアルバム『BEST』に辿り着くまでの軌跡を振り返ると、どんなことを思ったりします?
中島美嘉:基本的な価値観とかスタイルはデビュー当時から変わってないんですけど、確実に強くなってますね、歌に対する想いが。それはキッカケがあっていきなり変わったと言うよりは、歌う度に徐々に強くなっていった感じなんですけど。
--その辺は『BEST』を聴いても感じますね。ちなみに今回のベストアルバムをリリースする話っていうのはいつ頃からあったんですか?
中島美嘉:少し前に、なんとなく「そろそろなのかな?」みたいな話はみんなでしていて。シングルもいっぱい出してきていたので。ただ一時忙しくてそのときはベストの話は進まなかったんですけど、ある日突然「美嘉、ベスト出すぞ」って言われて、「あ~、はい」みたいな(笑)。そこからは早かったですね。ただ選曲は迷いましたね、全部のシングルを入れられるわけではなかったので。スタッフの意見やファンの方が求めている曲も考慮したり、これまで出した三枚のオリジナルアルバムからそれぞれ万遍なく入れたいと思ったり。他にも収録したい曲はいっぱいあったんですけどね。
--二枚組案とかは出なかったんですか?
中島美嘉:出たんですけど、あんまり好きじゃないんですよね。なんでなんだろう?・・・なので一枚のアルバムにするのは大前提だったんですよ。
--そんな悩みに悩んで選曲された『BEST』なんですけど、一曲目に『AMAZING GRACE』を再録したものが収録されてるんですよね。この曲をもう一度レコーディングしようと思ったのは?
中島美嘉:デビューシングルは『STARS』なんですけど、『AMAZING GRACE』はデビュー前のドラマの中で歌っていた曲なので、私にとっては『AMAZING GRACE』がデビュー曲なんですよ。そういう意味でも思い入れの強い曲だったので、歌い直したいなと思って。あと、この『BEST』で初めて私の作品を手にする人もいると思うので、今の気持ちで歌ったものを聴いてほしかったっていうのもあるし、デビュー当時からずっとファンでいてくれてる人たちに感謝の意味を込めたかったんですよ。
--なるほど。それと今回の『AMAZING GRACE』は、綾戸智絵さんがピアノを弾かれているわけですが、実際に一緒にやってみていかがでした?
中島美嘉:楽しかったです。すごくいろんなことを教えてくださったんですけど、教え方が本当に気持ちいいんですよね。
--どういった経緯で共演が実現したんですか?
中島美嘉:最初は歌を教えてもらおうって言ってたんですけどね。前回のツアーのライブに綾戸さんが来て下さって、私の『AMAZING GRACE』を聴いてもらって、それが今回のキッカケになった感じです。
--そして『STARS』。この曲も今回歌い直しているんですよね?
中島美嘉:そうですね。とっても有り難いことにこの曲も歌い続けさせてもらっているので、久しぶりに歌った感っていうのはあんまりなくて。でも「改めて難しい曲だな」とは思いましたね。あと、最初に録ったものと聴き比べるとやっぱり違います。歌い方が変わったっていうよりは声そのものが変わったのかも知れないんですけど。
--そこっていうのは意識的に変えていったものなんですかね?それとも本当に自然に変わっていった感じ?
中島美嘉:いろんな曲を歌っていく中で声質が変わっていった部分もあると思うし、技術の面でも追加されていったのが自然と重なっていって、それが出てるんだと思いますけどね。
--中島美嘉っていうアーティストは本当にいろんなタイプの曲を歌ってきて、いろんな要素を取り入れながら成長してきた印象が強いんですけど、その背景には“中島美嘉=何か”そういった決められた場所にいるのが嫌だっていう強い思いがあったのかなって思うんですけど、実際のところはどうですか?
中島美嘉:そうですね。ジャンル分けされることは好きではないし、“私は私でいい”っていう感じで、どこにも属したくない。それはデビュー当時から変わりませんね。
--そういった思いもあってこそだと思うのですが、これまで多くのバラード曲を歌ってきてますけど、すべてのバラードに新鮮みがあるというか、同じ印象を与えるものがふたつとないですよね。だから聴いてて飽きないんですよ、「またバラードか・・・」って思わせない。
中島美嘉:それは曲ごとに分けてるからだと思いますね。バラードっていう括りで分けてないし、歌ってきてないんですよね。『STARS』ではこう歌ったから『WILL』も同じように歌おうっていうのがない。一曲ごとに考えて歌っているんですよ。だからそういう印象を与えるのかも知れないですね。
Interviewer:平賀哲雄
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--では、本当は全曲触れていきたいんですが(笑)時間に限りもあるので、何曲かピックアップさせて頂く形で他の収録曲についても触れていきたいんですが、まずはバラードの話の流れで『WILL』についてお話を聞かせてもらえますか?
中島美嘉:『WILL』も『AMAZING GRACE』や『STARS』と一緒で私の中で今も続いている曲ですね。今年のツアーでも歌い続けているし、過去のものにはなってないというか。どこに行っても『WILL』は歌ってほしいと言ってくださるので、ずっと新鮮な気持ちでいれますね。あと、いつも無心で歌ってます。
--続いて『FIND THE WAY』。僕はこの曲にどれだけ救われたか分からないぐらいなんですけど(笑)。
中島美嘉:(笑)。『FIND THE WAY』はびっくりするぐらいレコーディングが早かった曲ですね。多分それだけ相性が良かったんだと思うんですけど、すべてがすごく上手くいった曲。ただ歌詞だけはものすごく大変だったんですけど、レコーディングは順調でしたね。
--『FIND THE WAY』の歌詞はある意味、救いの歌だと思うんですけど、そういった歌詞を中島美嘉に書かせた背景にはどんなものがあったりしたんですか?
中島美嘉:みんながいろいろアドバイスをくれたのが大きいんですけど、(「機動戦士ガンダムSEED」の)エンディングテーマっていうのもあったので、そこにはテーマもあったりしたんですけど、それをあんまり誇張したくなかったんですよね。いろんな意味にもとれるような内容にしたかったんですよ。そういった歌詞に仕上げるまでにみんなから何度も何度もダメだしをもらっては書き直して、「もうそんなに言うなら書けないよ!」って思うぐらい(笑)何度も書きましたね。忘れられない一曲です。
--歌詞を書き始めてから歌や音楽に対する取り組み方って変わったりしました?
中島美嘉:多少ですね。私は自分が書いた詞でも誰かが書いてくれた詞でも変わらないから、“絶対自分で書かなきゃ歌いたくない”っていう感じでもないんですよね。誰が書いても良い詞は良い詞だから、そこははっきりと「私にはこの詞は書けないから」って思うんですよ。それを歌うことによって勉強にもなるし。自分で書いた方がファンへの影響力はもっと増すとは思うんですけどね。私を好きで私の曲を聴いてくれている人は「美嘉ちゃんがこう思ってるなら」って感じたりする。なので責任感は増しますけどね、なおさら。でもそれ以外はあんまり変わらないです。
--自分で書いた詞でもそうでない詞でもその世界に入っていく作業はあったりするんですか?それとも自然に入っていける感じですか?
中島美嘉:いろいろ考えなくても入れるんですよ、いつも。イントロが流れてくればすぐ切り替えが出来るので、そこは考えたことはないですね。
--続いて『雪の華』。冬のスタンダードナンバーにもなりつつある曲ですが、この曲にはどんな印象を持っていますか?
中島美嘉:「みんな好きだな~」と(笑)。なんでなんだろう?私自身も『雪の華』を最初に聴いたときは、「すっごい良い曲!」って純粋に思ったから、みんなも同じ感性や気持ちでいるんだなって思ったんですけど、私はどの曲も同じように可愛いから、なぜ『雪の華』が突出してみんな好きなんだろう?っていう(笑)不思議な気持ちではあるんだけど、嬉しいです。
--ここまでお話を聞かせてもらった曲以外にも良いバラードは『BEST』にも多数収録されているわけですが、バラードのような感情移入を肝とするナンバーを歌い続けていく中で、葉加瀬太郎さんとのコラボレーションは中島美嘉というアーティストに大きな影響を与えたんじゃないかなって思ってるんですけど。
中島美嘉:そうかもしれない。私、コラボレーションがすごく苦手で、誰かと一緒にやるのがすごく苦手だったんですよ。食わず嫌いというのも多分あるとは思うんですけど、「きっと上手くいかない」ってどっかで思っちゃうんですよね。私はすごくハッキリ物を言うタイプだし、それで傷つけるのも嫌だったり、自分の世界観を勝手に曲げられるのがすごく嫌だったり、変な雑念をもらいたくなかったからそれまでコラボレーションはやらなかったんですよ。ただ葉加瀬さんは、失礼かも知れないんですけど、同じ価値観だったのかもしれない。周りに影響される方ではもちろんないし、周りの意見を気にしているばかりではないので、それを見ていてなおさら自信がついたんですよね、自分のやり方に。「これでいいんだ」と思わせてくれた出逢いでしたね。
--古き良き時代の日本の曲を歌うことに関してはどうでした?
中島美嘉:違和感はなかったです。最初は少し「う~ん」って思いましたけど、歌ってみると「曲は曲なんだな」って。「今の時代のものと同じように音楽だな」って。
--そう感じられるからどんなタイプの曲でも吸収していけるんでしょうね。
中島美嘉:そうじゃないですかね。ジャンルもそうだし、時代もそうだし、分けて考えないからっていうのは大きいと思います。
Interviewer:平賀哲雄
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--そういったスタイルだからこそ歌うことが出来た曲ってたくさんあると思うんですけど、例えば『Love Addict』。かなりジャズの要素が濃いナンバーですけど、あれを吸収するのってかなり難易度が高いというか。
中島美嘉:大変でした(笑)。いまだにうまくは歌えませんね。すんなり歌えることはあんまりない。なので、今も吸収中だったりするんですけど。ただライブで歌うときはそういうことは気にしないですね、上手い下手なんてどうでもいい、楽しければいい、みたいな(笑)。自分で後から聴いて「ひっどいな」って思うんですけど、「まぁいいか、楽しそうだし」って思うことにしてるんです(笑)。
--先日リリースされたばかりのライブDVD『MIKA NAKASHIMA LET'S MUSIC TOUR 2005』を見ても?
中島美嘉:「まだまだだな」って思いますね(笑)。「最後までみんないてくれてありがとう」って思います(笑)。でもコンサートって私が一番重要としている“楽しさ”とか“気持ち”が伝わってるならいいなって思うんですよね。それが何より大事なので。
--あと、難易度が高そうなナンバーと言えば『SEVEN』。
中島美嘉:『SEVEN』も『Love Addict』ぐらいの衝撃はありましたね、最初。「歌えるかな~?」って。でも実際に歌ってみたらめちゃくちゃ楽しかったですけどね。普通のポップスとしてはとても衝撃的な曲だと思うんだけど、自分のステージで歌うとそんなに違和感がない気がしてるんですよ。だからとっても自然に盛り上がれる曲だなって。この曲が鳴ると「お!」って感じがするっていうか、気持ち良く体が動ける曲だから好きですね。
-そして、サードアルバムでも『Fed up』という曲でロックにチャレンジして、そのすぐ後に発表されたのが『GLAMOROUS SKY』で、また新境地を開拓。中島美嘉:確かに今まで歌ってこなかったタイプの曲ではあるんですけど、ロックを歌っているつもりはないんですよ。ロックが何なのか私は分からないっていうのもあるんですけど、自分に似合うと思える曲を探しているだけなので。ただ『GLAMOROUS SKY』は中島美嘉としては歌えない曲なんですよね、だからその時点でなんとなく“NANA”になれてたんです。
--「NANA」の著者である矢沢あいさんが手掛けてきた『GLAMOROUS SKY』の歌詞をどういう風に解釈して歌いました?
中島美嘉:ちょっと難しかったですね、最初は。でも「NANA」の原作者である矢沢さんが書き下ろして下さった詞なので、自分の中で解釈し、十分理解した上で歌いました。
--気持ち的には演技して歌ったんですか?
中島美嘉:「演技をして」って言われたんです、周りから。最初は普通に歌っちゃってたんで。だからすっごいハマっちゃって、何度歌ってもダメになって、ブースの中に居すぎてワケわかんなくなっちゃって。多分4、5回録り直したと思うんですけど。で、作曲を手掛けてくださったHYDEさんに来ていただいて、やっとOKテイクが録れて。HYDEさんが歌いながら教えてくれたんですよ。
--そんな『GLAMOROUS SKY』に至るまで全14曲入りの『BEST』がこうして完成すると、気になるのが今後の中島美嘉なんですけど。
中島美嘉:変わらないですね、ずっと。自分が楽しむことを先に考えて今までもやってきてるから、これからも、とにかく信頼してる人たちと一緒に楽しく音楽をやっていくだけというか。何も考えてない。本当に自分の中に予定ないですからね、可哀相なぐらい(笑)。いつも直前で決めて動く感じなので。何かを前もって決められてると、希望がないじゃないですか。どこに行くとか決まってないから希望があって、いろいろ出来る感じが私はするので。決められるのはやっぱり好きじゃないです。
--なるほど。では、自分で歌う曲をどういう基準で決めていったりしてるんですか?
中島美嘉:直感。頭では考えない。
--「これ、歌うの難しそうだなぁ」とかも考えない?
中島美嘉:そう!だから決めた後で苦しむ(笑)。決めるときは、体が動く曲、リズムに乗るとかそういうことではないんだけど、「おぉ!」って思える曲を選ぶので、実際に歌ってみてから「ヤバイ」っていつも思いますね(笑)。
--あと、自分で曲を書こうとかは思わないんですか?
中島美嘉:私、楽器も出来ないし、音符も読めないんですよ。鼻歌でなら作れると思うんだけど(笑)、どっか変に完璧主義だから中途半端なのを人に聴かせたくないんですよ。どんなに身内でも。だから出来ない。ピアノをイチから習い始めて弾けるようになったら曲作ろうかな。
--そのご予定は?
中島美嘉:ピアノは「習わなきゃ」ってずっと言ってるんですよ(笑)。なんか始められないんですよね~。
--弾き語りが出来たらカッコイイ曲いっぱいありますからね。
中島美嘉:ねぇ。
--期待してます(笑)。あと、今回ベストアルバムのタイミングでのインタビューなので、少し大きい質問をしたいんですが、いつまでも中島美嘉として歌っていきたい気持ちは大きいですか?
中島美嘉:そうですね。5年後、10年後も気持ちは変わらないまま成長できたらイイと思う。だからこれからも同じように歌っていく。環境はどうなっていくか分からないけど、そこは変わらないですね。あとは、いつまでも楽しんで生きていたいなって思いますね。
--分かりました。では、最後に読者の皆さんにメッセージをよろしくお願いします。
中島美嘉:・・・(何て言えばいいのか)困るね~(笑)。みんなも今を大切に楽しく生きてください(笑)!
Interviewer:平賀哲雄
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