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「“最高の音楽”を作ることしか考えてこなかった」― クレイグ・デイヴィッド 最新インタビュー



クレイグ・デイヴィッドインタビュー

 昨年、6年ぶりにリリースされた最新作『Following My Intuition』は、シガラやハードウェル、ケイトラナダといった今が旬のクリエイターたちとの時流に乗ったコラボや、今をときめくジャック・Uやドレイクが絡んで話題となったことは間違いない。しかし、それ以上に、クレイグのカムバックに対する期待感がここ数年フツフツト沸き上がっていたことを忘れてはならず、その結果として実に16年ぶりに全英No.1を獲得。さらに、アリーナ・クラスの会場で行われた全英ツアーは、ソールド・アウトが続出した。このインタビューは、その全英ツアーが終了した直後に行われた。これまでのキャリアを振り返り、改めて音楽に対する愛とリスペクトを語る姿は、ひとりのミュージック・マンとして自信にあふれている。

インタビュアー・訳:湯山惠子(協力:出嶌孝次)

自分の“音楽への愛情”を優先させて、制作に取り組んできた
ずっと“最高の音楽”を作ることしか考えてこなかったんだ

――今回過去の作品がソニーに移って、改めてベスト盤が再リリースされることになりました。最新作『Following My Intuition』は16年ぶりの全英チャート1位となりましたが、あなたがファンの支持を保ちながら、ここまで長く活動してこられた理由、秘訣は何だと思いますか?

クレイグ・デイヴィッド:久しぶりに1位を獲得できたことは、もう最高の気分だったよ!凄く嬉しかったことの1つは、若い世代が僕の音楽を今回初めて知り、『Following My Intuition』を買ってくれたこと。15~16歳のティーンたちが「なぁ、クレイグ・デイヴィッドって知ってるか?あのアルバムいいぜ!」って感じで広まっていったらしいんだ。彼らは僕のデビューした頃なんて赤ん坊だったから、自宅で僕のアルバムの話をすると、家族から「クレイグ・デイヴィッドだったら、まずはこれを聴け」って初期の曲を勧められて、「どうして知ってたんだろう!」って不思議がっていたみたいだよ(笑)。つまり、『Following My Intuition』で新たなファン層を獲得したんだ。クレイジーな話だよね(笑)。

ここまで長く活動できたのは、きっと皆が共感できる歌詞と常にフレッシュなサウンドを手に入れてきたからかもしれないね。僕の音楽はいわゆる“オールドスクール”な感じだったり、時代遅れなものではないと思う。僕にとっては、常に才能ある若いクリエイターと組むことはとても大事なことなんだ。これまでの16年間、僕はずっと自分の“音楽への愛情”を優先させて、制作に取り組んできた。つまり、チャートやセールス面での成功に惑わされることはなかった。とにかく、ずっと“最高の音楽”を作ることしか考えてこなかったんだ。



▲ 「Ain't Giving Up」MV


――それでは、過去のアルバムについてそれぞれ訊かせてください。いま振り返ってみて自分にとってどんな意味を持つ作品だったのか、今の目線から紹介してください。 まず、1stアルバム『Born To Do It』(2000年)から。あなたに人気をもたらした2ステップのブームについて、自分ではどのように捉えていますか? また、そこから派生したUKガラージ~グライムの動向には今も関心を抱いていますか?

クレイグ:デビュー前の僕はとにかく音楽制作が大好きで、ヒットを狙うことなんてまったく考えずに『Born To Do It』を制作したんだ。とにかく聴いていて気持ち良くなるような楽曲を作りたかったし、このアルバムを聴いた人たちにも自分と同じように楽しんで欲しかった。自分の“音楽への愛情”を優先させてきた姿勢は一貫して今でも変わらない。 2ステップやUKガラージやグライムは、R&B系のスロー・ジャムにアップテンポなビートを混ぜた感じで、とてもユニークなダンス・ミュージックのスタイルだと思う。僕は子供の頃、ボーイズII メンやR.ケリーなどR&B~ソウル系のアーティストを聴いて育ったから、「Rewind」をレコーディングしたあの頃も、今でも(2ステップ/UKガラージ/グライムは)大好きだよ。

最近UKではメインストリームのアーティストたちがグライムを取り入れているよね。でも思い返せば、1999年~2000年頃UKガラージは大衆的な人気を獲得して、ポップ・スターたちが取り上げていた。メインストリームのポップ・アーティストが取り上げたことで、2003年頃には、アンダーグラウンド系アーティスト勢がよりダークなサウンドのUKガラージものを発表した。同様にグライムもアンダーグランドなものから10年を経過してオーバーグラウンドへと移行していった。ダブステップのブームが起きた時もそう。もともとアンダーグラウンドなところから始まり、後にdeadmau5だとかスクリレックスが登場してオーバーグラウンドで盛り上がった後に、またアンダーグラウンドなものに移ったよね。



▲ 「7 Days」MV


――2ndアルバム『Slicker Than Your Average』(2002年)では、前作から関わってきたプロデューサー、フレイザー・T・スミス(Fraser T. Smith)がさらに前に出てきています。現在のフレイザーは、アデルなども手掛ける大物プロデューサーになりましたが、彼の活躍をどのように見守っていますか?

クレイグ:一緒に歴史を作ってきた仲間だから、彼の活躍は本当に嬉しいよ。フレイザーはデビュー・アルバムに収録された僕の曲「Can’t Be Messing Around」をプロデュースしたんだ。彼は2000年から2003年あたりまで僕のバンドのギターも担当していて、アコースティック・ライヴでは一緒にステージに立ったりした。その後、アデル、ジェイムス・モリソン、ケイノ(Kano)、そして最近ではUKアルバム・チャートで首位を獲得したストームズィ(Stormzy)などを成功に導いた。フレイザーは幅広いアーティストを巧みにプロデュースする手腕の持ち主だけど、同時に最高に激しいビートを作れる点にも注目している。だから彼は強烈なリリックを紡ぐラッパーと組んでも、凄いものが生まれてくるんだ

――大ヒットした「Rise & Fall」にスティングを迎えたいきさつは?

クレイグ:この曲で彼の「Shape of My Heart」のギター部分をサンプリングして、楽曲使用の許可を申請する時に、あわせてスティングにゲスト・ヴォーカルとしてレコーディングに参加して貰えないか聞いたんだ。どうやら彼は一番下の娘さんに意見を求めたらしいんだけど、「凄い!クレイグ・デイヴィッドだったら絶対一緒にやるべきよ!」って後押ししてくれたらしいんだ。だから、この子ラボはスティングの娘さんのおかげで実現したんだ(笑)



▲ 「Rise & Fall featuring Sting」MV


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    これまで僕のことを知らなかった若いオーディエンスと新たな関係を築きたいから
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日本では新人のような扱いをされても構わないよ
これまで僕のことを知らなかった若いオーディエンスと新たな関係を築きたいから

――3rdアルバム『The Story Goes...』(2005年)の時にレーベルを移籍しましたが、その経緯を教えてください。

クレイグ:レコード会社とアーティストとの関係って、アーティストが大成功を収めている期間は蜜月だけど、セールスやチャート面で成功を得られないと厳しい状況になってくる。これはビジネスの仕組みだから、仕方ないよね。最初に契約したインディ・レーベルのワイルドスター(Wildstar Records)からワーナー、そしてソニー・・・と今振り返ると、僕は大半のキャリアをメジャー・レーベルで活動してきた。ビジネスが成り立たないと判断したら、レーベルは次のドル箱アーティストに投資するもんだよ。良くない状況の時に悲しんだり、精神的に擦り切れたりせず、アーティストにできることは再びスタジオに入って楽曲作りに取り掛かること。僕はこうして16年間アーティスト活動を継続してきて、去年はグラストンベリーに出演でき、UKチャートで1位を獲得し、そして16,000人も収容するロンドンのO2ウェンブリー・アリーナでの2日間を含めUKツアーのすべての公演をソールド・アウトにすることができた。そして、今年は夏フェスへの出演や「TS5」名義でのDJツアーも予定している。レコード会社が付いていることで、こういった環境も整うけど、一番大事なことは最高の音楽を制作すること、そしてライヴ・パフォーマンスで100%出し切ることだ

――この3rdアルバムがArtful DodgerのMark Hillと組んだ最後の作品になりました。そうなった理由は何でしょうか?

クレイグ:マークと僕という2人の音楽好きな若者が好きなことをやって、出来上がった結果が僕のデビュー作だった。マークとは一緒に素晴らしい成功を収めることができて、感謝しているよ。でも、人間っていろんなステージを経て人生が変化していくよね。僕はツアー生活を送り、マークは結婚して家庭を築き、違う世界に住むようになった。でも、もちろん今でも友情関係は続いているよ。僕としては、様々なプロデューサーと仕事することで刺激を受け続け、成長を遂げていきたいし、同じプロデューサーと毎回組むのは難しいと思ったんだ。どんなアーティストにとっても、ひとりのプロデューサーとしか組まないのは間違いだと思う。例えば、マイケル・ジャクソンはクインシー・ジョーンズと組み、素晴らしい音楽を作った。でも、マイケル自身も才能あるクリエイターだから、クインシー以外のプロデューサーとも仕事する必要があった

――テディ・ライリーやR.ケリーとも仕事したことを指していますか?

クレイグ:うん。それから、マイケルはティンバランドとも仕事したよね。ああいった試みによって更なる成長を遂げていったと思うんだ。アーティストは常に前進すべきだと信じているから

――4thアルバムの『Trust Me』(2007年)では、ポップ系のプロデューサーのマーティン・テレフェ(Martin Terefe)など新たなプロデューサーを起用した制体制に大きく変わりました。このチャレンジの狙いは何だったのでしょう?

クレイグ:もともとマーティン・テレフェと出会ったのはあるライティング・セッションだった。1曲共作するつもりで作業を始めたら、あまりにもスムーズに進んで凄くいい気分だったから、「じゃ、もっと共作してみる?」っていう話になったんだ。あっという間に5,6曲書き上がり、気づいた時にはアルバムが完成していたんだ! 「次は誰と組もうか?」なんて考えることもなく・・・ つまり狙いはまったくなく、とても自然な流れだったんだ

――シングル「Hot Stuff (Let’s Dance)」でサンプリングしたデヴィッド・ボウイについて、なにか思い入れがあれば教えてください。

クレイグ:まずデヴィッドに感謝しているのは、「Let’s Dance」のサンプリング使用を許可してくれたこと。そして、僕の「Hot Stuff (Let’s Dance)」を彼がとても気に入ったという感想を聞いた時は最高に嬉しかったよ!デヴィッドの凄いところは、音楽に限らず、人と人を見事に繋げてきた慈悲深さ。この世界をより素晴らしい場所に変えるために、あらゆることを深く考えてきた人だよね。メロディのみならず、彼の深い歌詞はこの世に遺産として永久に残り続けるだろう。非常に高いレベルで物事を見つめてきたアーティストだったから、僕は心からデヴィッドのことを尊敬している。フロウのことしか考えずに、まったく意味のない歌詞を書いてるアーティストは、デヴィッドの歌詞を見習うべきだと思うね



▲ 「Hot Stuff, Let's Dance」MV


――2008年版の『Greatest Hits』に新曲として収録されていた「Insomnia」は、当時のニーヨ(Ne-Yo)やクリス・ブラウン(Chris Brown)に寄せたようなダンス・トラックです。これは当時のUSのR&Bシーンを意識したものだったのでしょうか?

クレイグ:僕は子供の頃からアメリカのヒップホップやR&Bの大ファンだから、基本的には音楽的な影響を昔から強く受けてきたと思う。子供の頃からバッドボーイものやR.ケリー、それから初期のティンバランドなんかを聴いて育ったからね。でも、日本のアーティスト、例えばマイティ・クラウンがジャマイカのレゲエを単に模倣するだけじゃなくて、彼ら独自の個性を表現しているのと同じように、僕もイギリス人らしさや自分の個性を保っているつもりだ。それは、僕の歌詞に反映されていると思う。アメリカ文化をテーマにした歌詞とはまったく異なるから。そうだなぁ、もしかしたら一時期フロリダのマイアミに住んでいた時期があるから、アメリカのヒップホップやR&Bからさらに音楽的影響は受けたかもしれないね



▲ 「Insomnia」MV


――少し気が早いかもしれませんが、『Following My Intuition』に続く新作はどのような作品になるでしょうか?

クレイグ:UKツアーが先週終わったから、早速今日から新作レコーディングに入るよ。ニュー・アルバムはデビュー作『Born To Do It』の時代のエネルギーを保ちつつ、2017~2018年らしいサウンド・プロダクションになる予定。名前はまだ言わないけど、素晴らしいプロデューサーたちと組んで、最高のR&Bアルバムにしたい。『Following My Intuition』で成功を収めることができたし、次作でも失うものは何もないから、前に突き進むのみだ!

――これまで何度か来日されていますが、日本や日本のオーディエンスについてどのような印象を持っていますか? また、日本にもあなたのコアなファンが少なからず存在する状況についてどう受け止めていますか?

クレイグ:デビューの時から僕を応援してくれた日本のファンに愛を送りたい。彼らには心から感謝しているよ。日本のオーディエンスは音楽に対する知識が凄くて、いつも驚かされるね! 例えば、僕自身がすっかり忘れていたリミックス・ヴァージョンのことを日本のファンは覚えていたりするんだ(笑)

――しばらく日本でライヴを行っていませんが、今後の来日公演の可能性はありますか?

クレイグ:先週ロンドンのウェンブリー公演はもの凄く盛り上がったし、今回のUKツアーはすべてソールド・アウトという嬉しい状況だから、ぜひこのショーを日本でも実現させたいよ! 日本にはしばらく行ってないから、たとえデビュー前の新人のような扱いをされても、僕は構わない。次に日本へ行く時は、これまで僕のことを知らなかった若いオーディエンスとも新たな関係を築きたいから、今からワクワクしているよ!



▲ 「One More Time」Live At The Summertime Ball 2016


クレイグ・デイヴィッド「リワインド:ベスト・オブ・クレイグ・デイヴィッド」

リワインド:ベスト・オブ・クレイグ・デイヴィッド

2017/05/24 RELEASE
SICP-5328 ¥ 1,980(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.フィル・ミー・イン
  2. 02.7 デイズ
  3. 03.ライズ&フォール (フィーチャリング・スティング)
  4. 04.インソムニア
  5. 05.ホワッツ・ユア・フレイヴァ?
  6. 06.ウォーキング・アウェイ
  7. 07.ホエアズ・ユア・ラヴ (フィーチャリング・ティンチー・ストライダー)
  8. 08.ユー・ドント・ミス・ユア・ウォーター
  9. 09.ランデヴー
  10. 10.スパニッシュ
  11. 11.オール・ザ・ウェイ
  12. 12.ジャスト・マイ・イマジネイション
  13. 13.ワールド・フィルド・ウィズ・ラヴ
  14. 14.ドント・ラヴ・ユー・ノー・モア
  15. 15.6・オブ・1・シング
  16. 16.ヒドゥン・アジェンダ
  17. 17.リワインド
  18. 18.ホット・スタッフ(レッツ・ダンス)
  19. 19.キー・トゥ・マイ・ハート

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