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ACIDMAN 『式日』 インタビュー
ACIDMAN、約一年ぶりのインタビュー登場!アルバム『green chord』リリース以来、そのアルバムを引っ提げたツアー、初の日本武道館公演、10-FEET、RIZEと共に全国を駆け巡った【Trinity Trip】、そして『REMIND』『UNFOLD』『式日』のシングル3部作のリリースと、その足を止めることなく「世界は変えられる」と邁進してきたACIDMAN。完成したという次なるアルバムに向けての軌跡を本人たちに語ってもらった。
もう残高ゼロ円。そこまでやれたライブ。
--アルバム『green chord』リリースタイミング以来、約一年ぶりのインタビューになりますので、まずはここ一年のお復習いをさせて頂きたいんですけれども、【ACIDMAN LIVE TOUR“green chord”】、初の日本武道館公演などを経て、『green chord』というアルバムが自身たちの中でどんな印象の作品になっていったか、まず聞かせてもらってもいいですか?
大木伸夫:ツアーを経て、新しいアルバムを録って、今それが出来た気持ちで『green chord』を振り返ると、あの作品は、実態のないモノを何とか手に入れて、身にしていこうという気持ちがすごく表れていたというか、すごく迷いつつも肯定的なモノを何とか手に入れようとしていたアルバムかなという気がします。
--ちなみに去年の【ACIDMAN LIVE TOUR“green chord”】自体は、3人にとってどんな印象のツアーになったんでしょうか?
大木伸夫:去年は、4人編成だった頃から数えると結成10周年だったんですよ。で、ひとつひとつのことがあたりまえになりそうな時期に、今までの流れをちょっと変えることができたツアー。惰性で行かないように気を付けた感じのツアーでしたね。『green chord』が5枚目のアルバムだったんで、アルバムを引っ提げた全国ツアーだけでも5回まわってて、インディーズの頃も加えると6回まわってて、なんとなく順序も分かってたし、スタッフもみんな一緒だし、この曲がこうなったらこうなるとかも分かってるし、で、どこどこのホテルに泊まってとかね、だんだん慣れてきて。で、その慣れっていうのが一番怖いので、それをなるべく打破するというか、「これはあたりまえじゃなくて、新しい第一歩としてめちゃくちゃ大事なんだ」っていうのを考えながらやってました。
--そういう意味では、ライブDVD『ACIDMAN LIVE TOUR"green chord"in日本武道館』のオマケに収録されていた、一悟さんへのドッキリもその一環というか。
大木伸夫:なんていうか、一悟を騙すことによって・・・、今ちょっと、さっきまで真面目なインタビューをしていたので、真面目な話でもいいですか(笑)。真面目な考えで言うと、一悟自身の良さを引き立たせないといけないと、俺は最初からずっと思っていて。それでなんとか一悟をネタにした場を作りたいと本気で考えていて。ふざけてるんだけど(笑)実は考えてやっているっていう。
浦山一悟:ダイエット企画もそうですけど、有り難いと思いますよ。自分から行けないんで、周りがそんな風にちゃんとやってくれて。で、なんか、面白い風に映ってて、DVDには。普段そんなことあんまりないのに(笑)。そういう音楽だけじゃなくて、人間的なところも考えてやってくれてるんだな~って、感謝してますね。
--僕は日本武道館の公演に伺わせて頂いたんですけど、あの日は、個人的にもさっきインタビューしたばかりのバンドのメンバーが居たり、仲の良い友達や業界関係者、とにかく知ってる人に開演前からたくさん会って、いかにACIDMANがその音楽を通して大きな円を創り上げてきたかを体感したんですけど、そういう感覚は3人の中にもありました?
大木伸夫:そうですね。武道館は、ライブの後に感じましたね。ライブのときにも感じたモノはあって、それは何かって言ったら「これだけの人が聴いてくれているんだ」っていう喜びと、それと同時に「これだけの人にしか届いていないんだ」っていう悲しみがあって。で、あとは冷静に一所懸命やっていたっていうのがあって、特に「武道館はやっぱり凄かったなぁ」っていうのは、そのときはなかったんです。でも終わってから、いろんな人に武道館の話を振られて、「やっぱり歴史のある場所っていうモノにはそれなりの意味があって、自分たちがそこでやれたっていうことは、すごく意味のあることだったんだな」というのを感じて。よく「集大成的な感じだったんじゃないですか?」って言われてもピンと来なかったんですけど、今は「集大成的なライブだったんじゃないかな」って思う。貯金を全部使ったみたいな。もう残高ゼロ円。そこまでやれたライブだったんじゃないかな。
--ちなみにあの日、僕は武道館で初めてモッシュやダイブが起きているのを目にしました(笑)。ステージから観ててどんな気分でした?
大木伸夫:嬉しいっちゃ嬉しいですけど、ライブやってる最中は武道館っていう感覚がないんスよ。人が多くて、みんなでノってくれて、楽しいって気持ちはあるけど、「すげぇなぁ」みたいなのはあんまりなくて、意外と冷静でした。
佐藤雅俊:俺はもう楽しかったですよ。ステージに出ていった瞬間から、あの空間全部が自分たちを観に来てくれた人たちで、それが立体的に見れたし、歓声もすごく大きいし、もう楽しくてしょうがなかった。またやりたいです。
浦山一悟:俺は、いろんなところで言ってるんですけど、本気で緊張してて、ガチガチなんですよ、前半の方とか。なので、そういう目線でもう一回DVDを観て頂ければ、それがすごくよく分かると思います(笑)。でも後半は解れてきて、すごく楽しめましたね。
--あの日の武道館ライブの打ち上げで、大木さんに挨拶したら第一声が「一悟はもっとやれる」って(笑)。
(一同笑)
佐藤雅俊:やってて分かるんですよ。後ろからガチガチなのが伝わってきてて(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
限界を自分の中で超えたい気持ち
--で、そんな日本武道館公演を終えて、少し間隔が空くのかなと思ったら、ほとんど間隔を開けずにシングル『REMIND』のリリース。
大木伸夫:楽曲がもうあったんですよ。『green chord』を録り終わってからすぐに、『REMIND』は曲としてなんとなく形が出来ていたので、だから無理してとかじゃなく、早く出したかったんです。
--で、その『REMIND』の熱量が凄まじくてですね。それこそ過去最大の熱量をもったアッパーチューンを作ってやろうという意思のもとに生まれた曲のような印象を受けたんですが。
大木伸夫:そうですね。それは『green chord』っていうアルバムを作り終えたからそういう気持ちになったんです。ひとつのまとまったモノが出来ると、今度はそこで出来なかったことのフラストレーションで楽曲を作り出すので、そのフラストレーションを一気に出したというか、良い悪いとか、早い遅いとか、叫んでる叫んでないとか、そんなの関係なくて、本当に音楽がどーのこーのとかじゃなくて、ただ単に激情の曲が出来ればなと思って。だから歌詩の内容もシンプルで、人の本質のエネルギーというか、人が本来持っているめちゃくちゃ熱いエモーションをぶつけてるんです。
--その『REMIND』を僕はライブでも聴かせてもらっているんですけど、オーディエンスはもちろんなんですが、ステージ上の3人のエネルギーのほとばしりっぷりが半端なくてですね。ライブでやると否応なしにそうなる楽曲ではありますか?
大木伸夫:そうですね。早いし、歌も高いし、それっていうのは、きっと限界を自分の中で超えたい気持ちだと思うんですよ。だからライブで毎回毎回出来るかどうか不安になりながらやってるし、歌えるかどうかとか、持つかどうかとか、そういう気持ちがすごく強いですね、この曲は。余裕でやるっていうよりも必死にやらないと出来ない曲。声が出ないんですよ、必死にやらないと。歌いきれないし、最後まで。もう1番の段階で死にかけるんで。そこを曲のエネルギーを借りながら何とかギリギリやるっていう。
浦山一悟:『REMIND』は速いですね。でもただ速いだけだと伝わらない。ライブとかでもタイトなモノをちゃんとしないと、その速さが伝わらないんです。だからちょっと冷静になってキックとかバスドラとかベースの絡みとかを意識してやらないといけないので、そういう点ではすごく気が張る曲ですね。
佐藤雅俊:まず衝動をマックスに持っていかないといけない曲。で、衝動をマックスにしながら、何とか曲として成立させるために抑えるところは抑えるというか、ちゃんと一音一音大事にするっていう。そうしたあらゆるパワーをいかにぶつけるかっていう気持ちでやってますね。
--で、僕がその『REMIND』をライブで初めて聴いたのが、RIZE、10-FEETと行ったツアー【Trinity Trip】の東京公演だったんですけど、あの対バンツアーはどういった経緯で実現されたものだったんですか?
大木伸夫:最初は、イベンターの企画だったんですよ。で、「10周年のバンドを集めてツアーをまわらないか」みたいなことを言われて。でも俺ら10周年だったとは言え、3人で走り出してからは8周年だし、「どうかな?」って感じだったんですけど、でもメンツが10-FEETとRIZEっていう、みんなプライベートでも仲良い奴らだから「やりてぇな」って感じで、やって。で、あのイベントのスタートはそんな感じだったんだけど、みんながそれぞれ言いだしたイベントかのようなイベントになりましたね、結果的に。
--10-FEETのTAKUMAさんも言ってましたけど、3組のファンが3組のライブすべてにウワァ~!ってなっていた感じがすごく美しかったんですが、そこは感動した部分でした?
大木伸夫:感動的でしたね。最初の会場からそうだったんで。ただ、ツアーが始まる前にJESSEとTAKUMAと俺で対談したりしてて、3人とも同じ意見だったのが「どうなるのかね?」だったんですよ。「カラーが全然違うし、上手く行くのかね?」みたいな話をしていたんですけど、実際には全然そんなことなくて。俺らが思っている以上に俺らの音楽を聴いてくれるファンは温かいし、いろんなモノを求めてるんだなっていうのをヒシヒシと感じました。
--10-FEETのTAKUMAさんが打ち上げの度に頭が真っ白になるまで飲みまくったという話をしていましたが(笑)、実際どんな感じだったんですか?
大木伸夫:俺は公演が続くときはあんまり飲まなかったんですけど、TAKUMAとJESSEは飲んでましたね、ちゃんと(笑)。ちゃんと飲んで、ちゃんとライブやってたから、それは「すげぇな」と思って。なので、俺はそこまで酷い飲み方はしてないですね。強いので、俺は。
浦山一悟:最終日の打ち上げが一番凄かったね。最後はもう素っ裸で。TAKUMAも素っ裸で。初めて分かり合えた気がしましたね。
--そこでようやく!?
浦山一悟:そこでようやく(笑)。
佐藤雅俊:本当に良い対バンツアーだったんですよ。3バンドがライバルかつファミリーのような一体感があって、すごく親近感があって、すごく刺激にもなったし、勉強にもなったし、酒も上手かった。
--あと、正直なところ、ACIDMANのライブって、ちょっと前まではワンマンとイベントのときのテンションの違いを僕は感じていたんですよ。ただあの日は、それこそ武道館にも負けないエネルギーがステージにも客席にもあったと思うんですね。
大木伸夫:【Trinity Trip】はお互いを高め合えたっていうのもありますね。それぞれがリハから本気でやってるし、みんながみんなどんどん仲良くなっていくし、あとお客さんのみんながそれを受け入れてくれているから、普通のイベントよりは、自分の中でちょっと違ったんだと思う。意気込みが。
--ACIDMANの精神力が強化していっているからでもあるんじゃないですか?
大木伸夫:最近ライブしてて、それは思いますね。不安があんまりないので。相当肝が据わってきたというか、気合いは入ってきているので。それは、武道館や【Trinity Trip】が良いキッカケになってると思いますね。そういう場所場所でちゃんと結果を出せているからあんまり臆することがない。緊張はしますけど。
--そういう意味では、今のACIDMANは怖いもんなしな気がするんですが、実際のところどうですか?
大木伸夫:怖いもんはないですね、元々。どんな優れた格好良いバンドとか憧れのバンドと対バンしても負ける気はしないですね、いつでも。負けていたとしても(笑)、自分の中では、本当の意味で「これはダメだ」みたいなのは、ほとんどないですね。それは「俺らがダントツすげぇんだぜ」っていう意味じゃなくて、それぞれのバンドをちゃんと認めるんだけど、でも自分たちのやり方、このスタイルのナンバーワンはウチらしかないっていう。
Interviewer:平賀哲雄
より世界を変えられる可能性
--ちなみにここ数年のACIDMANの高いテンション、どんどん良いもんが放出できるようになっている状況というのは、いろんな要素があると思うんですが、何が一番大きくて成立しているものなんですかね?
大木伸夫:本当いろんなことがありすぎて、何が一番とかは言えないですね。でも逃げずにちゃんと戦ってきたので。それは自分ともそうだし、メンバーともそうだし、スタッフともそうだし。いろんなことがありましたけどね、逃げないというのが一番大事じゃないですかね。
--そうして走り続けて、派手なテレビ露出などはせず、誠心誠意すげぇ作品とすげぇライブを打ち出してきて、その結果としてのオリコンのTOP10入りとか、数年前のシーンではありえない形だと思うんですが。
大木伸夫:俺ら、順位は10位以内とか入るんだけど、アルバムで。でも枚数で言ったら全然少ないので、そこを語るにはまだまだ力不足なんですけど。ただシーンが変わってきているのは、すごく感じます。デビュー前は「なんで今更バンドやるんですか?」「なんで今更スリーピースのバンドなんですか?誰もやってないのに」みたいな感じだったんだけど、今やスリーピースのバンドも多いし、ロックフェスティバルもすごくいっぱいやってるし、なんか、一度死にかけてきた“バンド”的なモノがひとつのスタンスになってきたっていうのは、すごく感じるんですね。それは、当時、自分たちもその一端を担っていたから。それは良いことだし、でもこれは甘んじたらすぐに崩れてしまう幻想でしかないと思うので、それをちゃんとしたモノにしなきゃいけないので、そのためには想像のその先のその先を表現していかないとダメ。なので、そこは常に甘んじないようにしてますね。
--で、先程触れた【Trinity Trip】でも披露していた『UNFOLD』が昨年末にリリースされました。熱量を前へ前へ叩き付けた『REMIND』から一転、全方位に熱量を広げていくような楽曲となりましたが、こうした曲が生まれた背景には何があったんでしょうか?
大木伸夫:まずは悲しみを表現したかったんですけど、その悲しみの中の中心にいる人間が、悲しみだけを見てるんじゃなくて、そこに射す光を見るか、その裏側にある世界を想像する。そういう奴の歌ですね。誰だって「全てが終わる」っていう考えに行き着くじゃないですか、どんな奴でも考えれば絶対「すべては終わって、儚くて、無意味で、悲しくて、残酷なモノだ。世の中、すべてそれに満たされてる」って思うんだけど、でもそれに酔いしれたままの奴がいっぱいいたら、まぁ一人でもいたら多分ダメだと思う。その裏に世界はあって、そこが裂けてまた光が射して・・・というモノをちゃんと信じてる奴の歌というか。それは俺もそうだし、みんなもそうだと思うんですよ。だから生きてるんだと思うんですよ。だから死にたくても死ねない人がほとんどで。「こんなに苦しいのに一生懸命生きて」っていうのは何なのか?っていうのは、その先に美しいことがあると思ってるからだし、光が射すと思ってるからだし。『UNFOLD』はそういう奴の歌ですね。
--個人的には、それこそ前回のインタビューで大木さんが話してくれた、2012年で終わる第四アトランティス文明の話じゃないですけど、それぐらいの展開を表現している曲なのかなって。どうでしょう?
大木伸夫:俺も感じますね。それは終末論ではないんだけど、2012年っていうのは、俺がスピリチュアルな世界で、完全ドップリにではないけど、意外と信じていて。精神的な話なんですけど、ネガティブな気持ちって集まれば集まるほど、それはネガティブなまま崩れて、互いにどんどん増殖していくんです。けど、そこにポジティブなモノをポーンって一個弾くだけで、ポジティブって広がるんですよね。そうなってきて、地球とか自然とかこの星の摂理とか、そういうモノをみんな意識し出すことによって、だんだん波長があって、矯正されていく。そうして2012年までにそういう人たちがいっぱい増えるっていう話があって。
で、そういう話を信じてる友人がいるんですけど、そいつ曰く「だんだん良くなってきてるんじゃないか」って。地球レベルで言ったら、エコがどーのこーのとか。ちょっと胡散臭いのがいっぱいありますけど、みんなが地球に目を向けだした、宇宙に目を向けだした。でっかいもんをちゃんと見るようになってきたのかなって。それは良いことだと思いますね。--そういう状況が出来上がっていけばいくほど、ACIDMAN的には『UNFOLD』のようなメッセージをどんどん訴えていかないといけないと。
大木伸夫:訴えていかないといけないですね。もうそれしか俺の中で術がないので。そういう風なことを歌うしか。これからもずっとそうだし。ただ格好良くて音楽やってるだけじゃなく、ひとつの表現の一部として音楽をやっているので。
--そして、『REMIND』『UNFOLD』と来て、この度、3部作シングル第3弾『式日』がリリースされます。まず自身ではこの楽曲の仕上がりにどんな印象や感想を持たれていますか?
大木伸夫:とにかく張りのある、生き生きとしたモノが出来たと思っています。煮詰めて作ったわけじゃなくて、ポン!とメロディが生まれたんですけど、それをちゃんと邪魔することなく、伸び伸びと録れたなって。歌もちゃんと歌えたし。そういう感じですね。
--あの、正直、今回の3部作で一番僕が驚いたのが、この『式日』で。簡単に言っちゃうと、めちゃくちゃ明るいじゃないですか?この煌びやかさの理由は何なんでしょうか?
大木伸夫:特に理由はないと思うんですけどね。まぁ憶えてないんですけど(笑)。家でポン!と生まれたメロディを携帯に録ったのは、憶えてます。何でも好きだからメロディはいろいろ思い浮かぶ。その中の一曲なんで「なんで?」っていうのは分かんないですけどね、とにかく伸び伸びと、自分のストッパーが外れた感じで曲を作ってるんで、アルバムに向けて。そうなると、どんな曲でもハッキリしてくる。混沌的なモノを昇華し切ってるので、だからちゃんとしてるんだと思います。
--「あれは春という鮮やかな光」というフレーズもありますが、誰が聴いたってポジティブなイメージが湧く曲ですよね。で、僕はその“誰が聴いても”というところを少なからず意識したからこその、この明るさなのかなと思ったりしたんですが、実際のところはどうですか?
大木伸夫:それはでも常に思ってるかな。この曲だけじゃなくて、いろんな人に聴いてもらいたいし。
--あの、元も子もないことを言うと、外を一歩出れば、もう「なんで?」って思うようなことがわんさか溢れていたりするじゃないですか。光を見出しても見出しても圧倒的に闇の力は溢れていて。でも『式日』を聴くと、“それでもなお”っていう姿勢を感じるんですよ。で、もうACIDMANはこれまでそれを何度も繰り返してきているんだろうなって。
大木伸夫:確かに。詩を書くことにちゃんと自分の中で覚悟が出来たときから、ずーっとそういう詩を書いていて。で、今回というか、これからの目標として、どんどん伝えていきたいという目標があるので、分かりやすくして、でもめちゃくちゃディープで重くて、すごく壮大な世界を描きたい。だから“誰が聴いても”みたいな曲になったのかなぁと思うんですけど、もっともっとやりたいですけどね、分かりやすく。
こうやって熱い想いを語るのも好きだし、飲み屋でこういう話をするのも好きだし、でも人の気持ちってそんなに変わらない。なんていうのかな?まだまだ全然足りないんだけど、歌に乗せてライブで伝えてる方が、より世界を変えられる可能性をヒシヒシ感じる。目の前で説き伏せていくよりは。で、その中で切磋琢磨して、こういう詩が生まれてきてるんですけど、「もっともっとやんなきゃもったいないな」って。こういう場所にいるんだから、ただ音楽やってるだけじゃなく、ちゃんとメッセージを持って、人の気持ちを如何に変えるか?っていう想いを強く持ちながらやらないと、ただのバンドになってしまう、ただの音楽になってしまう。っていうのは、最近感じてます。--そういう意味では、『式日』をライブでやったときの感じには、すごく期待するところですよね。
大木伸夫:そうですねぇ。何とか伝えられれば。全部を分かってもらうのは、ライブは歌詞も聞こえないし、難しいんだけど、そのポジティブなエネルギーと、でもその裏にネガティブなモノがいるんだという覚悟と、それはちゃんと伝えられればなと思いますね。
--ちなみに今回のシングル3部作のような曲が湧き上がってきたことに対しては、どんなことを思います?
大木伸夫:シングル3部作もそうだし、この次出るアルバムは、追求することよりも直感的に出たモノを信じてポンポン作っていって、アルバムの全体像とか全然考えずに、本当に垂れ流しみたいな感じで曲を作ったんですよ。それが最終的にすごく綺麗にまとまって、ひとつのエネルギーを発していたので、「良い精神状態でやれたんだな」と思いますね。
--では、また次回、そのアルバムについて詳しく話を聞かせてください。
大木伸夫:はい、よろしくお願いします。
Interviewer:平賀哲雄
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