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ACIDMAN 『A beautiful greed』 インタビュー
前アルバム『LIFE』で「ひとつ決着が付いた感がすごくある」と大木伸夫(vo,g)が語るほどの、ひとつの到達点へと登り詰めたACIDMAN。世界の終末を突き付け、そこからの再生を匂わせてエンディングを迎えたあのストーリーの先には一体どんな表現が生まれるのか?
それは世界の終末と誕生のループを終わらせるかの如く、全編終末思想を根付かせた楽曲群、すべての終焉=グランドフィナーレには“我々の理想郷があってほしい”という願いで構築されていた。果たしてその表現の背景にはどんな衝動や想いがあるのだろうか。ACIDMAN史上最大のスケールでお届けされるニューアルバム『A beautiful greed』について、詳しく話を訊かせてもらった。
結局は「欲望すらも美しいんだな」って
--アルバム『A beautiful greed』、まず自分たちでは仕上がりにどんな印象や感想を持たれているか聞かせてもらえますか?
大木伸夫:かなり満足してますね。完成してから聴き直すと大概「もっとこうしておけば」っていうのが出てくるんだけど、今回はほとんどなくて。完成してからあんまり時間を置いていないのに、もうすでに客観的に聴ける。あっと言う間に手元から離れて「あ、次はこの曲か」「これ、良い曲だな」って思いながら聴けるアルバムなので、多分感覚的に満足いってるんだろうなって。もう絞り出しきって「これ以上はないモノが出来た」っていう感じではないし、まだまだやれることは溢れているけど、聴いていると素直に「良いアルバムだな」って思える。こういう感覚は意外と初めてかな。
浦山一悟:すごく濃いアルバムだと思います。個性的なプレイヤーが集まってひとつのチームになっているような。で、チームとしても超強いみたいな。それぐらいの勢いと広がりと深さ、そういうのが全部詰まったアルバムだなぁと思いますね。
佐藤雅俊:今回は否応なしにリスナーの耳をガッと掴んで、作品の中のACIDMANの世界に引き込むパワーに満ちてる。で、引き込んで、ストーリーに乗せて、最後には良い感動が得られる。そういうアルバムになったんじゃないかと思います。
--大木さんは前作『LIFE』リリース時のインタビューで「ひとつ決着が付いた感がすごくある」と言っていたんですが、そのある種の達成感から今回のアルバムの世界や熱量を生み出すまでには、どんな流れがあったんでしょう?
大木伸夫:自分の中でひとつのピリオドが『LIFE』で付いてて、なんかスッキリしたんですよ。で、次は果たして何がやりたいか?となったときに、すげぇ純粋でシンプルな考えになって、とにかくエグいことがやりたくなったんです。「レタスばっかり食ってたけど、ゴーヤもやっぱ食べたいな」みたいな(笑)。そういうパンチのあるモノがやりたくなっている気持ちに今回は準じようと思って。どれだけ自分がやりたいことをとことん追求して、ワガママ放題できるか?それをちょっとしたテーマにしてて。で、タイトルに“greed”って付いてますけど、非情に見えるまでの強欲さを表現することに。
--その発想に辿りついたのはいつ頃?
大木伸夫:結局『I stand free』までは『LIFE』の流れなんですよ、気持ち的に。だから『I stand free』を録り終わったぐらいかな。本当にすっきりしちゃってて、他の空白の部分がどんどん広がってきて「こっち埋めてねぇな」って。エグいところを埋めたくなってきて、そこからスウィッチが切り替わった。
--そこに至るまでの、いくつかトピックをピンポイントで振り返りたいんですが、『LIFE』リリースタイミングで久しぶりに「ミュージックステーション」出演。『式日』の披露がありました。
大木伸夫:急に決まったんだよね。「1週間後に出演決まりました」「えぇ!?」って。それで気合い入れてやろうって。ただ、もう単純に「良い番組だから出よう」っていう感じでしたね。聴かせたいし、広めたいし、もちろん出られるのは嬉しいんだけど、どの程度の効果があるのかまでは分からないんですよ。露出すること=世に広まることって感じがしなくて。だからとても良い番組だから出たい、純粋にそれだけ。変な見られ方をしようが気にしないし、そこには覚悟があるから。
佐藤雅俊:番組の内容ですよね。「ミュージックステーション」は音楽を大事にしてくれているのがすごく分かるし、「トップランナー」だってそうだし。そういう場所に出て自分らの音楽を伝えられたら嬉しいっていう。もちろん世の中に迎合する気なんて全くないから、ウチのスタンスは崩さないんですけど。そういう意味では音楽をバラエティ化しているような番組とかは、音楽に対する姿勢としてちょっと違うと思うからあんまり出たくない。絶対ダメっていう訳ではないけれども、自分たちの音楽を伝えるのであれば「ミュージックステーション」や「トップランナー」のような番組が良いっていう感じですね。
--そんなメディア露出もありつつ『LIFE』を引っ提げた全国ツアー【ACIDMAN LIVE TOUR "LIFE"】へ。僕はファイナルの幕張メッセ国際展示場公演を観させて頂いたのですが、自身ではあの日の公演にはどんな印象や想いがありますか?
大木伸夫:自分の精神的な弱さなのか分かんないけど、空調アレルギーでツアーの序盤から咳が止まんなくなっちゃって。騙し騙しにやったツアーで結構しんどかったんですよ。気持ち的にもいっぱいいっぱいで、張り詰めてて。で、幕張のときは更に酷くて。ただ、結果として「すげぇ良いライブだったんだな」っていうのを後々から気付いて。頑張ってるって言ったら軽くなっちゃうかもしれないんだけど、本当に頑張ってたから。記憶もないぐらいだし。決して良いライブが出来たとは思わないけど、熱量はすごくあったし、すごくファンに助けられたし、前年の武道館のときの倍ぐらいのアンケートが集まって「すげぇ良かった」ってみんな言ってくれて。ストレートに意見を言ってくる友達とかも「武道館のときより全然良かった」って言ってくれて。そこで「音楽をやってて良かった」って思いました。いつも信念として持っていた「気持ちを伝えることが大事だ」っていうことが、自分のハプニングによってより実感できたんで、とても有意義なツアーになりました。
--個人的には『LIFE』の、世界が終末を迎えるまでの流れを、より強く体感できたライブで。特に終盤の『world symphony』『ある証明』があっての『UNFOLD』『TO THE WORLD'S END』という流れは、懸命に生命を爆発させて生きようとしているのに無情にも世界が終わる、という状況に対しての悲しみや悔しさをオーディエンスに感じさせたと思います。大木さんが声を詰まらして、オーディエンスがそこをカバーするように必死に『ある証明』を歌い叫んで、僕が知る限りでは、初めて大木さんが涙を流す場面がありましたし。
大木伸夫:あの涙は悔しさでしたね。悔しさと不甲斐なさ、それしかあの瞬間にはなかった。それまで張り詰めていたから何とか感情を音楽だけに乗せることが出来たんだけど、ついMCで「体調悪くて」とか言っちゃったから一瞬気が緩んじゃって。そのときにもう全部弾けちゃって、伝えるとかじゃなくなった。どんなに歌をうたってても悲しみの方が強くなってしまって「こんなんじゃ歌えねぇや!」みたいな気持ちの涙でしたね。
--それがこちら側からすると、世界が終わることに対する悔しさとして映りこんで。
大木伸夫:そうですね。そことリンクしたと思うんですね。張り詰めているときの緊張感からホッとした瞬間に涙が出るじゃないですか、人間って。ライブじゃなくても、日常の中での戦いの中でも、一歩緊張感の外に出た瞬間に感動の涙なのか悲しみの涙なのか分かんないけど、感情が溢れ出るじゃないですか。それがリアルな自分の体験としても楽曲の世界としても、あの瞬間にやってきてリンクした。それはDVDを観てて思いました。「上手くできてるな」って。
--そんな前代未聞の表現を『LIFE』とそのツアーで形にしてみせたACIDMANが、『A beautiful greed』ではどんな表現をするのか。注目していた人も多かったと思うんですが、まずこのアルバムタイトルに込めた意味や想いを聞かせてもらえますか?
大木伸夫:タイトルは最後の最後に付けたんですけど“greed”っていうキーワードだけが最初からあったんです。で、10曲ぐらい曲が録れていって、だんだん曲順を決めたり各楽曲のタイトルを決めたり、その全体像を包むパッケージを考えるときに「俺は一体何が言いたかったんだろうな?」って。“greed”をキーワードに突き進んでいろいろ描いてきたけど、結局最後の方はすごく美しくまとまっていて。これはただの“greed”じゃ収まんないなって。とても美しいモノが出来たから、もう単純にそれで“beautiful”だと。
で、そこから発展するんですよ。人間の欲望って物凄くエグくて汚くてドロドロしてて残酷だけど、でも世界ってとっても美しいじゃないですか。人間だけじゃなく、あらゆる生き物は本当にえげつなくて、生存本能のままに残酷なことをしていて。でも全体像を見ると物凄く美しい世界であり、人間が力を合わせてやることってとても素晴らしく、意義があることだったりする。そう思うとひとつの“greed”っていうのは単なる汚いモノではなくて、大きな美しいモノを作るために必要なモノであり、結局は「欲望すらも美しいんだな」って自分で認識を変えたんです。
ジャケットもそのときにアイデアがちょうど生まれて。これが全宇宙を占める空間だとして、全宇宙っていうのは三次元の宇宙だけじゃなく、パラレルワールドも含める全ての存在だとして、そこの一点にひとつの宇宙があるとする。これはキリム絨毯っていうトルコの絨毯で、すっごい緻密に細かく縫われているんだけど、そこに居たら自分が何なのか分からないんですね。ぎっちぎちに絡まり合いながら存在しているから。でも意識を一瞬高次元に持っていくと、とっても美しい模様を描いている。俺らはいろんな絡まり合いの中に生きていて、その一部でしかないんだけど、とっても美しいモノの一部を担っているんだなって。それで最後の最後に『A beautiful greed』に。最初は『beautiful greed』だったんだけど響き的に「ビューティフルサンデー」みたいで嫌だなと思って“A”を(笑)。
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Interviewer:平賀哲雄
A beautiful greed
2009/07/29 RELEASE
TOCT-26841 ¥ 2,934(税込)
Disc01
- 01.A beautiful greed (introduction)
- 02.±0
- 03.CARVE WITH THE SENSE
- 04.Who are you?
- 05.Under the rain
- 06.ファンタジア
- 07.星のひとひら
- 08.HUM
- 09.ucess (inst.)
- 10.Bright & Right
- 11.I stand free
- 12.OVER
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