Billboard JAPAN


Special

野宮真貴×カジヒデキ 渋谷発 春の90'sポップ談義

野宮真貴カジヒデキ対談

 2017年5月のゴールデン・ウィークに大阪と東京のビルボードライブで【野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。】を開催する野宮真貴。そして、この4月にデビュー当時のバンド、ブリッジの再結成ライブを果たしたカジヒデキ。まさに「渋谷系」を21世紀に繋げる二人がパーソナリティーを担当する東京・渋谷のコミュニティラジオで、再評価される「渋谷系」「90'sポップス」について語ってもらった。

フリッパーズ・ギターがつなぐ「青春」

野宮真貴:カジくんと二人で毎週月曜日に「渋谷のラジオの渋谷系」という番組のパーソナリティを始めてこの春で1年。私はおしゃべりが少し苦手なので、最初は訓練だと思ってお引き受けしたんですが、カジくんの温かい人柄に助けられて、今では月曜日が楽しみなくらいになりました。

カジヒデキ:番組ではお互いの曲や好きな曲をかけたり、ゲストを呼んだり、コミュニティFMの「渋谷のラジオ」らしく、自由で楽しい雰囲気でおしゃべりしています。

野宮:この番組がご縁で、渋谷区の歌を歌わせてもらうことになったり、渋谷系らしい広がりもあって。

カジ:そうそう。渋谷区基本構想の歌「YOU MAKE SHIBUYA」は、野宮さんが歌い、僕が作曲させてもらいましたね。

野宮:カジくんとは私のデビュー30周年頃から親しくさせてもらっているけど、90年代の渋谷系の頃は実はあまりおつき合いする機会がなかったですね。 あの頃は今のようなフェスもほとんどなかったし。

カジ:僕は80年代からずっとピチカート・ファイヴのファンだったので、野宮さんのことは憧れの先輩として見ていました。ソロになってからの野宮さんのリサイタル「エレガンス中毒」(2008年)にもうかがいました。

野宮:私の30周年記念アルバム『30〜Greatest Covers & More!!!〜』(2012)でピチカートのセルフ・カヴァー「メッセージ・ソング」をカジくんにプロデュースしてもらってからは、ぐっと距離が近づいて。

カジ:そうですね。渋谷O-EASTで行われた一夜限りの30周年記念ライヴにも参加させてもらったし、僕のアルバム『ICE CREAM MAN』(2014)でも野宮さんと「雨降り都市」をデュエットさせていただいたり。

CD
▲『カメラ・トーク』

野宮:2014年の私の「ビルボードライブ」のステージでカジくんと一緒にフリッパーズ・ギターの「ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマー・ビューティー計画」(『CAMERA TALK』1990)を歌ったのも大好評で。元はといえばあのカヴァーを提案してくれたのもカジくんだったね。

カジ:野宮さんと歌うなら、あの曲が良いと閃いたんですよ。フリッパーズのオリジナルにはピチカート・ファイヴの初代ヴォーカリスト、佐々木麻美子さんがコーラスで参加していて、羨ましいなぁと思っていたんで(笑)。

野宮:その頃のカジくんは、まだソロではなくてブリッジにいたの?

カジ:そうですね。ブリッシはまだメジャー・デビューはしていなかったけど、フリッパーズとは同じシーンの仲間だったし、ネオアコやギター・ポップなど好きな音楽も共通していました。4月に22年ぶりにブリッジの再結成ライブが行われることになったきっかけも小山田(圭吾)くんの一言だったんですよ。

野宮:そうだったのね?

カジ:去年の夏にCorneliusのアメリカ・ツアーの公開ゲネプロがあって、その時にフリッパーズやブリッジとも親交のあったPenny Arcadeの再結成を聞いて、小山田くんが「カジくんもブリッジやれば?」と。それがきっかけで、再結成に動き始め、2月のPenny Arcadeのライブにシークレット・ゲストとして出演したんです。

野宮:今日も番組でブリッジの可愛い曲をかけましたね。

カジ:春っぽい雰囲気の曲ということで選んだんですが、ブリッジは春夏向きの曲が多かったし、僕にとってはまさに青春そのものでした。今日番組でかけたピチカート・ファイヴの「ベイビィ・ポータブル・ロック」(1996)も春にはピッタリの曲ですね。

新しい世代にも響く90年代サウンド

野宮:私もこの数年続けている「野宮真貴 渋谷系を歌う」シリーズで、ピチカート時代の曲や、渋谷系とそのルーツを歌うようになって、あらためてその色褪せない魅力に気がついたところはありますね。

カジ:野宮さんが歌う小沢健二さんの「ぼくらが旅に出る理由」を最初にライブで聴いた時は本当に感動的でした。

野宮:時が経つと歌詞も当時とは違って聴こえるところもあって、味わい深くなりますよね。

カジ:アルバム『世界は愛を求めてる。~野宮真貴、渋谷系を歌う。~』(2015)も、渋谷系スタンダードなアレンジがすごく新鮮だったし、やっぱり渋谷系のクィーンである野宮さん自身が歌うことで訴求力があるんですよね。

野宮:5月3日に『野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~』というニューアルバムをリリースするんですが、今回は夏のヴァカンスに聞きたくなるような渋谷系とそのルーツの名曲を歌うことになりました。

カジ:今回も渋谷系やポップ・マニアをくすぐる選曲で楽しみですね。小西康陽さんがPUFFYの吉村由美さんに書き下ろした「V・A・C・A・T・I・O・N」や、フリッパーズ・ギター・チーム制作の渡辺満里奈さんの「大好きなシャツ」も収録されるとか。

野宮:私はこのシリーズで、日本のポップ・ミュージックにはまだまだ素敵な曲がたくさんあることを伝えていきたいと思っているんです。

カジ:僕がブリッジでデビューした頃は、フリッパーズはすでに解散していましたが、その影響力はすごかった。当時僕がアルバイトをしていた渋谷のレコード店では若い女の子たちが80年代のネオアコや60年代の映画のサントラをこぞって買い求めていたし、今思えばけっこうマニアックなレコードも売れていました。ピチカートの小西さんも、その牽引役の一人でした。

野宮:そうでしたね。先日、私のステージで共演したGLIM SPANKYの松尾レミさんは、ご両親がピチカートの大ファンで、子どもの頃から聴いてくれていたんですって。

カジ:あのステージでレミさんが歌ったピチカートの「スーパースター」や「If I were a groupie」も新鮮でしたね。野宮さんの生朗読も良かったし。 野宮 レミさんはピチカートのアルバムでは『オーヴァードーズ』(1994)が好きらしくて、それもロックな彼女らしいなと思って。ここに来て、新しい世代が育ってきているのも嬉しいですね。


写真


再評価のポイントは音楽的完成度の高さ

カジ:最近、若い世代の間で7インチのレコードやカセットテープが「可愛い」と注目されるようになったけど、90年代の渋谷系の頃も「オシャレ」や「可愛い」というセンスは重要でしたね。アルバムのジャケットや雑誌の広告なんかも、みんな競い合うようにセンスに磨きをかけていたし。

野宮:そうね。コンサートや街に出かける時はオシャレして、その時間を思いきり楽しむ。そんな弾む気持ちに渋谷系の音楽はピッタリだったのかもね。

カジ:そうそう。野宮さんのファッションやセンスにはみんな憧れていたし、季節でいえば春から夏にかけてのウキウキするような気分にピチカートやフリッパーズ・ギターや小沢健二さんの曲はフィットしたんだと思いますね。

カジ:僕も昨年、ソロ・デビュー20周年を迎えましたが、フリッパーズの二人や野宮さんが今も現役で活躍されていているのは嬉しいし、すごく励みになりますね。みなさんが、20年の時を経ても話題になるのは、ただ「オシャレ」というだけではなく、やはり音楽の完成度が高かったからだと思うんです。

野宮:それは私もステージやレコーディングで歌う度に感じますね。「渋谷系スタンダード化計画」を始めてからは特に。

カジ:だから今のシーンに繋がる普遍性のある音楽として再評価されているんじゃないのかな。

野宮:私もデビュー30周年以降、セルフ・カヴァーを積極的に歌うようになってからは、ファンの人たちの喜んでいただける反応を見ると、今までいい曲を歌ってきたんだなと思うし、その良さを歌い継いでゆくのは「使命」なのかなと思うようになりましたね。

カジ:最近は僕も90年代には接点のなかったようなバンドの人たちと仲良くなる機会が増えて、「実はファンだった」と打ち明けられたり(笑)、長く続けていると思いもよらないことが起きたりしますね。

野宮:そんなカジくんも、実はゴスの時代があったんでしょ? 『デトロイト・メタル・シティ』はカジくんがモデルという説もあるくらい(笑)。

カジ:ありました(笑)。ブリッジを結成する前ですけどね。

野宮:でも、カジくんは、いつまでも短パンの似合うキャラでいてほしいな。

カジ:僕も野宮さんを追いかけて、このまま25周年、30周年までいけたらと思ってます! 野宮さんの次回の「ビルボードライブ」も楽しみにしています。

野宮:GWの「ビルボードライブ」では、アルバムと連動した“夏のヴァカンスの名曲”をお届けしますので、どうぞお楽しみに。秋冬公演とは違う春夏コレクションの素敵な歌をぜひ聴きにいらしてください。



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「野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。」のプレイリストを公開!

 新作アルバム『野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~』のリリースと2017年5月のゴールデン・ウィークに大阪、名古屋、東京で開催される【野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。】のライブをテーマに野宮真貴にインタビューを敢行。冒頭の3曲は、アルバム『野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。』の原曲となった楽曲、4~12曲目は、5月開催のライブ【野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。】でカバーをする候補とのこと。一足早くバカンス気分を感じられるこのプレイリストで予習しておこう。


01. V.A.C.A.T.I.O.N. - 吉村由美

 小西康陽さんがパフィーの吉村由美さんに描き下ろした曲。小西さんの楽曲の魅力であるユーモアが全面に出た曲。歌っていて楽しかったです。


02. Wonderful Summer - Robin Ward

 「野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。」のタイトル曲。素敵なメロディの夏の曲ですが、どこかもの悲しい。過ぎゆく夏に聴きたい曲です。


03. 大好きなシャツ(1990旅行大作戦) - 渡辺満里奈

 私のニューアルバムでは渡辺満里奈さんがボーカル参加してくれて、当時と変わらない歌声にちょっと感動しました。とても楽しいレコーディングでした。この曲と聴き比べて見るのも楽しいですよ。


04. Mon oncle (from "Mon oncle") - Frank Barcellini

 ジャック・タチの映画と音楽は、渋谷系には必須アイテム。おしゃれでスマートでリラックスできる曲です。


05. Our Day Will Come - Amy Winehouse

 エイミー・ワインハウスは私のとても好きなヴォーカリスト。2012年のビルボードライブ「野宮真貴、渋谷系を歌う」でも演奏しました。


06. マイ・ピュア・レディ - 尾崎亜美

 ビルボードライブでも披露した尾崎亜美さんの名曲。夏の恋の歌ですね。


07. Mas Que Nada - Sérgio Mendes & Brasil '66

 夏の定番「マシュ・ケ・ナダ」。私が初めて買ってもらったレコードでもあります。


08. Solveig Sandnes - Marie

 スウェーデンの渋谷系です。夏を感じさせる素敵な曲。


09. 小麦色のマーメイド - 松田聖子(作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂)

 ユーミン&松本隆コンピの松田聖子の曲は、渋谷系。夏の聖子さんの曲といえばこれです。


10. 海を見ていた午後 - Hi-Fi SET

 もう一曲、荒井由実時代のユーミンの名曲。ハイ・ファイ・セットの歌声も素晴らしい。


11. 真夏の出来事 - 平山三紀

 渋谷系のルーツの一人、筒美京平さんの夏の代表曲です。


12. 白い波 (WAVE) - ヒデとロザンナ

 日本人でいち早く本場のブラジルのミュージシャンと交流を持った渡辺貞夫さんの代表曲。


Billboard JAPANのApple Musicプレイリストはこちらから>>>

野宮真貴「野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。 ~Wonderful Summer~」

野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。 ~Wonderful Summer~

2017/05/03 RELEASE
UICZ-4394 ¥ 2,547(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.WONDERFUL SUMMER [feat.Smooth Ace]
  2. 02.大好きなシャツ(1990旅行大作戦)
  3. 03.V・A・C・A・T・I・O・N
  4. 04.夏の恋人 [feat.Smooth Ace]
  5. 05.サマー・ガール [feat.Smooth Ace]
  6. 06.真夏の昼の夢
  7. 07.七夕の夜、君に逢いたい [feat.Smooth Ace]
  8. 08.世界、西原商会の世界! ~ボッサ・ヴァージョン~ [Bonus Tracks]
  9. 09.[MC]Talk with 横山剣 from CKB (『野宮真貴、渋谷系を歌う。~Valentine Special~』 実況録音@モーションブルー横浜 2017年2月11&12日) [Bonus
  10. 10.CINDERELLA LIBERTY (『野宮真貴、渋谷系を歌う。~Valentine Special~』 実況録音@モーションブルー横浜 2017年2月11&12日) [Bonus Tracks]
  11. 11.[MC]Talk with 松尾レミ from GLIM SPANKY (『野宮真貴、渋谷系を歌う。~Valentine Special~』 実況録音@モーションブルー横浜 2017年2月11&12日
  12. 12.SUPERSTAR [Bonus Tracks] (『野宮真貴、渋谷系を歌う。~Valentine Special~』 実況録音@モーションブルー横浜 2017年2月11&12日) [Bonus

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