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スコット&リバース最新作『ニマイメ』発売記念特集

スコリバ

 数々の名盤を生み出し日本でも大きく支持を集めているロサンゼルス出身バンド=weezerのリバース・クオモと、元々はALLiSTERというシカゴ産ロック・バンドのメンバーで現在は日本でMONOEYESのメンバーとしても活躍している、スコット・マーフィー。そんな2人によるJ-POPプロジェクト=スコット&リバース(通称“スコリバ”)が2017年4月12日、ニュー・アルバム『ニマイメ』をリリースした。前作から約4年ぶり、プロジェクト第2弾となる今作の魅力を、豪華なゲスト・ラインアップの紹介とともに紐解いていく。

最新作『ニマイメ』に込められた想い

 J-POPよりもJ-POPらしい。スコリバの音楽からはそんな印象を受ける。日本語の響きの美しさや情緒的なメロディーライン。私たち日本人が日々享受しているからこそ気付けないJ-POPのエッセンスが客観的な視点から取り込まれ、アメリカ仕込みのスケール感やリズムセンスと絶妙な融合を果たしているのがスコット&リバースの音楽だ。1stアルバム『スコットとリバース』ではその化学反応の新鮮さを楽しむことができたが、今作ではその融合がより自然なものとなっており、そのうえでの実験的な試みがプラスアルファとしてプロジェクトをアップグレードさせている。

 「すでにアルバム1枚リリースしたことでお互いの性格やどんな感じで曲を制作するのかわかっていた分、逆に今作はそんなに苦労はしなかったと思う」とスコットが語り、リバースも「前作はただ純粋に日本語で歌うことを楽しんだけど、今回はもっとチャンレジしたいと思ったんだ。日本語で歌いつつ、サウンド面で新しいことを成し遂げたいってね」と話した今作の魅力にフォーカスする前に、まずはここで一度、スコット&リバースというプロジェクトの足跡を振り返ってみたいと思う。

 アメリカの音楽シーンで数々の功績を残してきたこの2人を結びつけたのは“日本が好き”という共通項だった。スコットはたまたま入った沖縄の屋台で流れていたTHE BOOMの「島唄」を聴いたことがきっかけで日本の文化にのめり込み始めたのだという。リバースはウィーザーの作品でも日本の浮世絵をアートワークに採用するなど、もともと親日家として知られていたが、2006年に結婚した日本人女性との生活の中で流れる日本の音楽に徐々に関心を抱くようになっていく。



▲Scott & Rivers - HOMELY GIRL


 共通の友人であるエンジニアを介して意気投合し、2008年にこのプロジェクトを始動させた2人は、2012年の【RADIO CRAZY】や【COUNTDOWN JAPAN 12/13】といった年末音楽フェスティバルで初お披露目を果たし、2013年1月にはデビュー・ソング「HOMELY GIRL」を配信リリース。その2か月後に1stアルバム『スコットとリバース』を発表し、以降もライブを中心に精力的な活動を続けてきたが、2014年をもってしばしの活動休止期間に突入――。

CD
▲『ニマイメ』

 それから2年、2016年8月にMONGOL800のキヨサクとRIP SLYMEのPESをゲストに迎えた新曲2曲を発表してシーンに復活を果たし、ついに2017年4月12日、プロジェクト第2章の本格的な幕開けを告げる、約4年ぶりのオリジナル・アルバム『ニマイメ』がリリースとなったのだ。

 上記の先行シングル2曲はこのアルバムの魅力を象徴していると言っていい。RIP SLYMEのPESをフィーチャリングした「FUN IN THE SUN feat.PES(RIP SLYME)」では、まずリバースの日本語の上達っぷりに驚かされる。スコットは現在日本に住んでいて、細美武士らと組んでいるMONOEYESでも自分以外メンバー日本人という環境に身を置いているので、その日本語力には納得できるのだが、一方のリバースもそのスコットに勝るとも劣らない滑らかな日本語ヴォーカルを披露しており、だからこそ、PESが披露するラップとの融合が心地よく耳に響いてくる。また、MONGOL800のキヨサクをゲストに迎えた「Doo Wop feat.キヨサク(MONGOL800)」は、Aメロのヴォーカルのメロディーがそのほかのパートでも随所に登場することに加え、“Doo Wop”というフレーズのリフレインや、“1番→2番→大サビ→落ちサビ転調→最後のサビ”といった流れがJ-POPの王道的展開といえるだろう。



▲Scott & Rivers 『Doo Wop feat.キヨサク(MONGOL800)』


 アルバムの最後に収録されている「変わらぬ想い」はmiwaをゲストに迎えたナンバーで、2月にリリースされた彼女の最新アルバム『SPLASH☆WORLD』にも収録されている。同作ではスコットとリバースがコーラスを務めていたが、『ニマイメ』に収録されているヴァージョンでは2人がメイン・ボーカルを、miwaがコーラスを担当。スコリバのライブでは昔から披露されていた楽曲だが、アルバム収録の際に真っ先にコラボレーターとして思い浮かんだのがmiwaだったとのこと。涙腺をダイレクトに刺激するグッド・メロディーと感傷的な歌詞がウィーザーの「パーフェクト・シチュエーション」を彷彿とさせるミドル・バラードだ。そして、中盤でアクセントの役割を果たす「スコリバのテーマ」については、本人たちも“名刺代わり的な曲”だと語っている。“我らはスコリバ/海を越えてやってきた/洋楽じゃない”と声高らかに宣言する、文字通り彼らのテーマソングとなる1曲だ。スコット曰く「僕のメロコアのルーツが出てる」疾走感あふれるポップ・パンク・ナンバーとなっている。



▲Scott & Rivers 『変わらぬ想い with miwa』


 さらに、「君はサイクロン」ではデス・キャブ・フォー・キューティーのベン・ギバードがリバースとの共同作曲で参加していたり、「本音なんだ。」ではオズマのダニエル・ブランメルとウィーザーのスコット・シュライナーがバンド・メンバーとしてレコーディングに参加していたりと、今作では海外からの豪華ゲスト・アーティストもクレジットに華を添えている。

 作品タイトルの“ニマイメ”は、2枚目のアルバムであることを意味すると同時に、“色男”だとか、もう少しカジュアルに言うと“かっこいい”を意味する歌舞伎用語であったりするのだが、まだまだJ-POPには“ニマイメ”になる余地がいくらでもあるのだと主張する1枚だ。だからこそ、「ガラパゴス化した日本の音楽は面白くない」なんて思っている音楽リスナーにこそ聴いてほしい。 去年のインタビュー では目下の目標として、“CDショップの邦楽フロアに作品が置かれること”を挙げていたが、一体これを置く場所として邦楽フロア以外にどこがあるというのか。世界をまたにかけて活躍する2人のミュージシャンが作り出した、この紛うことなきJ-POP作品にぜひ注目してほしい。




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