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JOE来日記念特集~不動の人気を誇るR&Bシンガー、JOEの魅力

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 セクシー&スムースな歌声で不動の人気を誇るR&Bシンガー、JOEが、待望の最新作『#MyNameIsJoeThomas(ハッシュタグ・マイネームイズジョートーマス)』をリリースし、約2年ぶりに来日公演を行う。約20年もの間、第一線で活躍し、多くの人を虜にしてきた彼の魅力や最新作について、アルバム『Better Days』の頃から通訳として、また国内盤のほとんどの対訳も行っている村松カナ氏が語る。

R&Bにとって欠かせない要素<エモーション>

「R&Bがカムバックしてきた。」

 そんな声を最近よく聞く。しかし現実はその逆で、R&Bはずっと音楽シーンをリードしてきたのではないかと思っている。メインストリームで常に上位に君臨するポップスは長年ずっとR&Bに影響を受けたサウンドから成り立ち、ヒップホップはR&B(そしてソウルやジャズも)をビートにサンプリングしたり、R&Bシンガーとのコラボを経てメインストリームで人気を獲得してきた。それはロックの世界でも同じだ。そもそもロックとR&B=リズム・アンド・ブルースは互いに影響し合って現在のサウンドへと変化してきているわけで、一見全く違うように思えて、実は切っても切れない関係にあるのではないだろうか。音楽そのものが今はさらにクロスオーヴァーされ、ジャンルレスの時代へ突入しているような気さえもするが、それでも昔も今も音楽にとって、特にR&Bにとって欠かせない要素。それは…<エモーション>。



 心の傷=ブルースを、歌(音楽)にする=リズム:リズム&ブルース=R&B。かいつまんで言えば、キリスト教の信仰の強いアメリカで、規律の厳しい教会では御法度として決して曝け出すことの出来なかったようなエモーション=感情も含め、喜怒哀楽の全てを音に合わせて歌うのがブルースであり、それをより聴きやすくしたものがR&Bとも言えるのではないだろうか。教会音楽とは真逆に位置する世俗的音楽とされたR&Bが爆発的人気を博した黄金期である80年代~90年代には、世俗的とはいえ、男性ヴォーカリストが自分の弱さを象徴するような特定の感情を曝け出すことを恥とされていて、愛とセックスや社会的メッセージなど、華やかさや<男らしさ>を表現するような歌が中心だった。そんな時代に登場したのが、自分の弱さを曝け出す強さを持ったジョーだった。弱さを持たない人間なんていない。それを堂々とエモーショナルに歌うジョーは、<タフな男>像を求めがちなこの世界に、真の感情を露わにする別のタフさを表現することが出来る存在の代表格となった。



<感情>を共感し合い、全てを曝け出す

 「I Wanna Know」、「All That I Am」のような甘美で女性の心をくすぐる求愛ソングから、「The Love Scene」や「More and More」など、露骨すぎずも大胆で甘く官能的なバラードまで、ジョーの代表曲からもわかるように、彼の歌は一貫してエモーションを大事にしてきた。2001年に発表されたアルバム『Better Days』の頃から来日の度に通訳として同行させてもらい、この16年間、彼の素顔も少し垣間見てきた筆者としても、彼の<感情表現>に対する一貫した思いには尊敬を超えて、崇敬したくなるほどだ。どんなサウンドにチャレンジしようと、どんな物語を歌で綴ろうと、彼の中から生まれる歌詞とメロディ、そして、彼の口から発せられる歌声が巧みに紡ぎ合わされ、その時のありのままの彼と彼の感情が素直に表現されていく。



 録音されたレコードから流れる彼の歌声でもそう感じるが、彼のライヴ・パフォーマンスは圧巻だ。常に観客と繋がり、互いにそれぞれの歌に込められた<感情>を共感し合うことを大切にするジョーは、その場にいる何百人もの観客1人1人の目を見て語りかけるかのように歌っていく。20年以上もの間、数え切れないほどのショーやパフォーマンスを重ねながら、常にその想いに誠実に、ブレることなく全てを曝け出して来た。そんなジョーだからこそ、多くのコア・ファンを持ち、長年にわたり愛され続けてきているのだろうと思う。



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「これが最後のアルバムになるとジョーが言ってる」

CD
▲『マイ・ネーム・イズ
・ジョー・トーマス』

 2016年11月、約2年半ぶりに発表したオリジナル・スタジオ録音作品12作目となる新作『#MyNameIsJoeThomas(ハッシュタグ・マイネームイズジョートーマス)』。彼にとって最大のヒット作品となった2000年発表の『My Name Is Joe』へのオマージュ、そして続編として制作された本作。彼自身も最も愛する90年代のR&Bへ回帰すると同時に、16年前のシンガー・ソングライターとしての自分の初心に戻り、ピアノ又はギターだけでメロディと歌詞を作るというオーガニックな方法で制作に挑んだ。そして自分が聴いて気持ちいい音楽を自分で表現した作品でもある。90年代R&Bを始め、彼が幼少時代から愛し続けるカントリー、強い影響を受けたソウル、そしてヒップホップ。彼自身が歌っていても気持ちのいい音楽。彼の長年のファンが安心して気持ちよく聴ける音楽。自分が前の世代のアーティスト達に影響を受けて『My Name Is Joe』を制作した時の恩返しをするかのように、新しい世代の人達がインスピレーションを感じて欲しいとの願いを込めて制作した音楽。そんな音楽が詰まっているように思う。


CD
▲『マイ・ネーム・イズ・ジョー』

 往年の名曲をカヴァーしたりするのが常だが、発表されて間もなかったアデルの「Hello」をカヴァーし話題となったことも記憶に新しいだろう。心が赴くままに好きな曲を自分なりの解釈で歌ったその曲も本作に収録していることからも、そんな彼の本作への思いは見えてくるのではないだろうか。ジョーのスウィートなヴォーカルが際立つラヴ・バラードからミッドテンポ、社会的メッセージを込めたアンセムなど、ここで聴くことの出来る彼が今伝えたいメッセージと共に気持ちよくスッと入ってくるメロディは、現代のR&Bで主流のビート先行の楽曲では感じることの出来ない王道のエモーショナルなR&B。流行に媚びることなく、かと言って、時代を無視することなく作り出された2016年のジョー・サウンドと言える。



 本作で最大の話題というよりも、懸念となっているのが、セカンド・シングル『Happy Hour』でコラボレーションしたグッチ・メインが楽曲内で「これが最後のアルバムになるとジョーが言ってる」と示唆したことだろう。ジョーの引退宣言とも取れるその一言にファンは騒然となった。「最後のアルバムだ」と言った彼の言葉の真意とはいったいなんだったのだろう。音楽業界には過小評価されているアーティストが大勢存在するし、ジョーもその1人なのは事実。でも、彼にコア・ファンがいないわけでもなく、新たなファンを招き入れることが出来ないわけでもない。ただ、彼の真価に釣り合う評価がされていないのが現実だというだけ。そんな風に釣り合う評価がされなければ、やはり好きなうちに終わらせた方がいいのではないだろうかと頭をよぎることがある、ということのようだ。聴いてくれる人達がいる限り愛する音楽を続けていきたい。でも、どんなに好きなことでも、どんなに長年キャリアを積んできたことでも、自分の真価をわかってもらえてない気がするとなっただけで誰もが弱気になってしまうこともあるだろう。そんな風に自分の弱気になった部分を曝け出せるのもジョーらしいと思うが、決して正式に引退宣言したことではないようなのでまずは一安心だ。



 そんなジョーが、2017年3月に再び日本へ戻ってくる。日本のファンに愛を届けるために。そして同時に愛を受け取るために。実は新作のためにスティーヴィ・ワンダーと共作/共演し、Take 6をバック・ヴォーカルに迎えた楽曲があったという。音を聴かなくてもヒット間違いなしを約束されそうなそんな楽曲さえも大胆にお蔵入りするほど、今の自分の全てを忠実に伝えようとする誠実さと音楽に対する愛情が詰まった新作を引っ提げての2年ぶりの来日公演。今だからこそ聴きたい、観ておきたい熟成されたパフォーマンスで魅せてくれることだろう。<#最高のジョー・トーマス>を。

 

ジョー「マイ・ネーム・イズ・ジョー・トーマス」

マイ・ネーム・イズ・ジョー・トーマス

2016/12/14 RELEASE
PCD-18819 ¥ 2,695(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Lean Into It
  2. 02.Don’t Lock Me Out
  3. 03.Wear The Night
  4. 04.So I Can Have You Back
  5. 05.No Chance
  6. 06.Happy Hour f/ Gucci Mane
  7. 07.Hollow
  8. 08.Hurricane
  9. 09.Cant’ Run From Love
  10. 10.Tough Guy
  11. 11.Lay you Down
  12. 12.I Swear
  13. 13.Love Centric
  14. 14.Celebrate You
  15. 15.Our Anthem
  16. 16.Hello
  17. 17.Happy Hour (Original Mix) (日本盤のみボーナストラック)

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