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【祝!2作連続全米1位獲得】異能かつ異色ながら、ミリオン・ヒットを生み出す天才=ザ・ウィークエンドの軌跡
ザ・ウィークエンドという奇妙な名前を持つシンガーが目につくようになったのはつい最近のことだ。最初はいかにもアンダーグラウンドなイメージを持っていたが、いつしか名実ともにメジャー・アーティストとしての地位を築いた。これまでのR&Bアーティストとはあきらかに一線を画した彼の音楽は、今やジャンルを超えて熱狂的なファンを獲得している。ここでは最新作『スターボーイ』の全米1位を記念して、異能かつ異色ながら、ミリオン・ヒットを生み出す天才の軌跡を追ってみたい。
ジェレミー・ローズとの出会い、ミックステープが大絶賛
ザ・ウィークエンドは、1990年生まれカナダ出身。本名はエイベル・マッコネン・テスファイ。ルーツはエチオピアにあるという。10代前半でドラッグを覚えるなど、穏やかでない少年時代を過ごすが少しずつ音楽に興味を持ち始める。プロデューサーのジェレミー・ローズに出会った彼は、ダークなR&Bを作り始め、徐々にウィークエンド流の作風を形作っていく。そして、2010年に「What You Need」、「Loft Music」、「The Morning」の3曲をYouTubeにアップロード。まったく無名だったにも関わらず、大きな話題を呼ぶことになった。
さらに、2011年の3月に初のミックステープ『House Of Balloons』をリリースするや、800万ダウンロードという驚異的な人気を呼ぶ。ピッチフォークやFACTといった英米の音楽メディアによって大絶賛され、地元トロントでは初のライヴも行った。同年の8月には同じくカナダ出身のドレイクがフィーチャーされた第2弾『Thursday』、12月にはマイケル・ジャクソンのカヴァーを含む第3弾『Echoes Of Silence』を発表。フリーのミックステープのみのリリースだというのに大きな話題を呼んだ。
メジャー契約~初のオリジナル・アルバムで全米2位
2012年に入ると、ユニバーサル傘下のリパブリックとついにメジャー契約。これまでのミックステープにボーナス・トラックを交えて再編したコンピレーション『Trilogy』をリリースした。本作は3枚組という大作ながら、ビルボードのアルバム・チャートでは4位にまで上昇。世界中で大ヒットし、100万枚を超えるセールスを記録した。
2013年の9月には、ついに初のオリジナル・アルバム『Kiss Land』を発表。ビルボードのアルバム・チャートでは初登場2位という快挙をもたらした。そして2014年に新たな展開を見せる。アリアナ・グランデの「Love Me Harder」にフィーチャーされ、その楽曲がビルボードのHot100で7位まで上昇。ザ・ウィークエンドとしての初のベスト10入りとなった。続いて、映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の主題歌「Earned It」がビルボードのHot100で3位を記録する。
世界中のチャートを席巻、グラミー受賞
2015年にはついにシングル「Can't Feel My Face」と「The Hills」がHot100で1位を獲得。これらの楽曲を含むセカンド・アルバム『Beauty Behind The Madness』も大ヒット。本作は英米、カナダ、オーストラリアなど各国で首位となり、誰もが認めるトップスターの地位を築いた。【第58回グラミー賞】では、最優秀R&Bパフォーマンスと最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムの2部門を受賞している。
そして、話題騒然となったダフト・パンクをフィーチャーした先行シングル「Starboy」を収録した3作目となるオリジナル・アルバム『Starboy』を2016年の11月に発表、自身にとって米ビルボード・アルバム・チャート2作目の1位を獲得。Spotifyでは新記録を樹立し、24時間、そして1か月で最も多くストリーミングされたアーティストとなった。
XO really did that : NUMBER 1 album !!! ⚡️⚡️⚡️⚡️⚡️
— The Weeknd (@theweeknd) December 5, 2016
ザ・ウィークエンドが評価される理由とは?
ではなぜ、ザ・ウィークエンドはここまでもてはやされるのだろうか。いちばん大きな理由としては、彼の独特のダークな雰囲気が挙げられる。特に、初期のミックステープに収められた楽曲群を『Trilogy』で確かめてほしい。いわゆるR&Bやヒップホップの定義では収まらず、アンビエントやトリップホップ、ダブステップなど、ダウナーな感覚のサウンドを巧妙に取り入れているのが特徴だ。エチオピア系カナダ人という立場だからなのか、世界のトレンドのど真ん中に位置するというよりも、オルタナティヴでアンダーグラウンドな雰囲気をまとっているのが新鮮だったといえる。ブレイクしてからもその味わいは大幅に変わることなく、新作『Starboy』収録曲でも、ロマンティックスとティアーズ・フォー・フィアーズをサンプリングした「Secrets」など、UKっぽさを押し出した楽曲が印象深い。不穏な時代を反映しているからか、彼が醸し出す雰囲気に惹かれるのも必然かもしれない。
また、彼は他のアーティストとのコラボレーションをうまく利用し、自身の成功に結びつけている。メジャー・デビュー前にはドレイクをフィーチャーして話題になり、その後は大ヒットしたドレイクのセカンド・アルバム『Take Care』(2011年)にも参加している。また、先述の通り大ブレイクのきっかけはアリアナ・グランデだったし、他にもシーア、ラナ・デル・レイ、エド・シーラン、カニエ・ウェスト、ミーク・ミルなどとも共演。新作『Starboy』では、ダフト・パンクだけでなく、ケンドリック・ラマーやフューチャーなども参加している。こういったジャンルを超えたアーティストの吸引力は強力で、おそらく今誰もが共演したがっているアーティストの筆頭といえるだろう。
すでにトップの座を射止めたとはいえ、ザ・ウィークエンドはまだまだ発展途上。今後も予想外の展開が待ち構えているはず。新作が出たばかりだというのに、早くも次回はどんな新しいチャレンジをしてくれるのか、思わず楽しみになってしまうアーティストなのだ。
リリース情報
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Text: 栗本斉
スターボーイ
2016/12/23 RELEASE
UICU-1282 ¥ 2,750(税込)
Disc01
- 01.スターボーイ feat.ダフト・パンク
- 02.パーティー・モンスター
- 03.フォルス・アラーム
- 04.リマインダー
- 05.ロッキン
- 06.シークレッツ
- 07.トゥルー・カラーズ
- 08.スターガール・インタールード feat.ラナ・デル・レイ
- 09.サイドウォークス feat.ケンドリック・ラマー
- 10.シックス・フィート・アンダー
- 11.ラヴ・トゥ・レイ
- 12.ア・ロンリー・ナイト
- 13.アテンション
- 14.オーディナリー・ライフ
- 15.ナッシング・ウィズアウト・ユー
- 16.オール・アイ・ノウ feat.フューチャー
- 17.ダイ・フォー・ユー
- 18.アイ・フィール・イット・カミング feat.ダフト・パンク
- 19.スターボーイ feat.ダフト・パンク (カイゴ・リミックス) (日本盤ボーナス・トラック)
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