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日本武道館ロック・ライヴ50周年! 押さえておくべき10の“ライヴatブドーカン”
1966年6月30日。ザ・ビートルズの初来日公演が、日本武道館で行われた。1964年に東京オリンピックの柔道競技会場として建設された武道館は、日本武道の聖地といわれていた。そのため、ザ・ビートルズがコンサートを行なうことで、「武道文化の冒涜」など賛否両論を呼ぶが、その後も多くの伝説的なライヴが行われ、今日ではすっかり国内外のアーティストにとってステイタスあるライヴ会場として親しまれている。
武道館で初めてロック・コンサートが行われてから今年で50年。ここでは、記録に残っている伝説のライヴを紹介しよう。
TOP Photos: Redferns / Eric Clapton Photo: Getty Images
1966年の6月30日から7月2日にかけての3日間で、全5回の日本公演が行われた。当時は『リボルバー』を録音した直後ということもあり、メンバーはライヴに対して消極的だった。実際、その演奏は緻密なレコーディング作品と比べると、かなり雑でテンションも低かったという。とはいえ、初来日ということで熱狂的に迎えられ伝説のライヴとなったことには違いない。当時はテレビ中継が入ったため、貴重な映像が記録されてた。1992年に初日の夜の部の公演がVHSとレーザーディスクで発売されたが、現在は廃盤となっている。
▲ 「Smoke On The Water Live in Japan 1972」
初めて武道館ライヴ(ライブ・レポートはこちら)がアルバム化された記念碑的な一枚。ジャケットにも武道館の写真が使われているが、実際には収録曲7曲のうち2曲のみで、5曲は大阪公演のテイクだった。1972年というとイアン・ギランがヴォーカリストとして加入した第二期パープルの絶頂期であり、演奏や録音のクオリティも非常に高い。メンバーもこの演奏を気に入り、当初は日本限定発売の予定だったが、海外でも『Made In Japan』というタイトルでリリース。米ビルボードのアルバム・チャートでは6位まで上昇した。
70年代のスワンプ・ロックを代表するレオン・ラッセルが1973年11月に来日した際の記録(ライブ・レポートはこちら)。こんな渋いアーティストが武道館でライヴを行っていることが驚きだが、当時はカーペンターズが「ア・ソング・フォー・ユー」をカヴァーして人気が高かったことも実現した理由のひとつだろう。とはいえ、ここではその名曲はワンフレーズにとどまり、基本的にはカントリーやゴスペルなどを取り入れたスワンプ・サウンドをバックに、枯れた味わいのヴォーカルを聴かせてくれる。
~イエスタデイ・ワンス・モア 武道館1974』
▲ 「Sing」
そのカーペンターズも、三度の武道館公演を行っている。最初は1972年だが、その2年後の1974年に行ったライヴの模様(ライブ・レポートはこちら)が、2001年になって映像商品化され日の目を見ることとなった。1973年発表のアルバム『ナウ・アンド・ゼン』が日本でも大ヒットした後ということもあり、演奏も人気も絶頂期の記録といっていいだろう。アルバムからのオールディーズ・メドレーを中盤の核に配置し、前後で代表曲を多数披露。「シング」ではひばり合唱団がバック・コーラスを務めている。
▲ 「I Only Wanna Be With You」
アイドル・バンドとして絶大な人気を誇った英国エディンバラ出身のグループ、ベイ・シティ・ローラーズ。当初は演奏が出来ないとか、TV出演時に口パクだったとかいろいろと揶揄されたが、ある程度のキャリアを経た1977年10月の武道館ライヴでは、パワーポップ・バンドとしての魅力が全開。「二人だけのデート」や「サタデー・ナイト」などの代表曲が勢いのある演奏で楽しめる。
ノーベル文学賞受賞で話題沸騰中のボブ・ディラン。彼もまた何度も来日公演を行っているが、初来日の1978年ではなんと8日間の武道館公演を行った(ライブ・レポートはこちら)。この時のバンドは、パーカションやサックス、女性コーラス3人などを含む10数人の大所帯。分厚いサウンドで代表曲を多数披露し、2枚組のボリュームでライヴ盤が発表された。本作も当初は日本限定発売だったが、その後世界中でリリースされ、米ビルボードのアルバム・チャートでは13位にまで上昇している。
▲ 「Ain't That A Shame」
ハードかつポップな音楽性で人気を集めたチープ・トリックだが、1977年のデビュー当初は本国のアメリカよりも日本のほうが人気が高かった。そのため、1978年4月の初来日公演で、早くも武道館ライヴを成功させる。「甘い罠」や「サレンダー」といったポップなロックンロールが多く、初期の勢いが感じられるライヴ盤の傑作だ。本作は米国に逆輸入されてヒットし、彼らのブレイクのきっかけを作っただけでなく、世界中に「ブドーカン」の名前を広めることとなった。
~エリック・クラプトン・ライヴ・アット武道館』
1974年に初来日して以来、エリック・クラプトンにとって武道館はホームといっていいほど多数の公演を行っている。実際、海外アーティストでは武道館公演最多記録を持っているほどだ。本作は、1979年12月に行われた4度目の来日公演の2枚組ドキュメント。アルバート・リーを中心としたバンド編成で、「レイ・ダウン・サリー」や「アフター・ミッドナイト」、「コカイン」といったヒット・ナンバーをブルージーな演奏で聴かせてくれる。
ドイツのギタリスト、マイケル・シェンカー率いるMSGは、ポップなメロディとキャッチーなギターリフを駆使した楽曲作りに定評があり、日本では非常に人気の高いハードロック/ヘヴィメタルのグループ。デビューは1980年だが、早くも1981年の8月には武道館ライヴを実現させている。その時のライヴ盤が2枚組で発表された本作。ゲイリー・バーデンやコージー・パウエルが在籍していた絶頂期の記録としても貴重だ。
▲ 「Heat Of The Moment」
70年代のプログレッシヴ・ロック・シーンを作り上げたテクニシャンたちが集結したスーパー・グループのエイジア。1982年にデビューし、翌年の12月に初来日公演を実現させている。ただし、メイン・ヴォーカルだったジョン・ウェットンはアルコール中毒のため一時解雇されていたこともあり、代役でグレッグ・レイクが参加。スティーヴ・ハウ、ジェフ・ダウンズ、カール・パーマーという布陣でなんとか乗り切ったという。このライヴの模様はもともと映像作品のみだったが、2002年にCD化された。
Text: 栗本斉
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