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面影ラッキーホール 『ティピカル・アフェア』インタビュー

面影ラッキーホール 『ティピカル・アフェア』 インタビュー

待ちに待った衝撃! 本年度No.1問題作が完成

その豊潤さに耳からウロコが落ちまくる、いなたくも心地良いサウンド+万人に通じるストーリー性で、聴き手の心をワシ掴む唯一無二の詞世界……。面影ラッキーホールが初登場です!
活動歴10年を超えながら、年々注目度を増しつつある中、3年ぶりのニューアルバムを完成させた彼らから、中心メンバー aCKy(vo / 全作詞担当)とSinner-Yang(b / プロデューサー)を招き、お話を伺ってきました! 全音楽ファンからミュージシャンまで、必読です。

「えっ!? こんなアタシが地上波の主題歌!?」

--先日、シャフト×キングレコードのアニメ主題歌を担当したミュージシャンが、一堂に会するイベントに出演しました。アニメファン中心の会場を、面影ラッキーホールの世界観で埋め尽くしていく感じが、とにかく衝撃的でした。

aCKy:ソッチの住人さんがドキドキしながら、怖いモノ見たさにコッチをチラ見している感じは、ほのぼのしましたね。僕らはやっぱりアウェイが燃えるんですよ。自分ら目当てのお客さんだけを前に演るのって、親戚の前で歌うのに近いというか、ちょっと恥ずかしいんですよね。昔から一盗二卑三妾四妻って言うじゃないですか?(笑)。アウェイ感はモチベーションが上がりますよね。主題歌を担当した時もそういう心持ちでしたね。

Sinner-Yang:いつものファンを目の前にしてライブやるのは嫁とのSEXみたいなもんだから、めんどくさいし照れくさいね。

--確かに『あたしだけにかけて』でも、アニメファンに衝撃を与えましたよね。

aCKy:まぁ俺らも興味がアニメに向かっていなかっただけで、偏執的にマニアックなところとか、本来の体質はアニメファンと似たりよったりだけどね……

Sinner-Yang:でも、俺たちはリア充だから、いっぱい素人の女とSEXしてますよ。そこは奴らとは違うぞと(笑)。あれっ、こういう話題はしちゃダメなんだっけ?

--全然OKです! 自分は「けだものだもの」の愛読者ですから。では、アニメ主題歌を制作する上で、いつもと違う意気込みはありましたか?

aCKy:13話分毎回違う歌詞を作るっていうのは燃えましたよ。縛りや規制をかけられた方がうれしいんですよ。これはアニメ制作側からのリクエストで、先方は「こんな無理を本当にお願いできるんでしょうか?」って恐縮してたけど、こちら的にはNGなしだから“何でもすぐにサセちゃう娘”状態でね(笑)。

Sinner-Yang:で、そうなってしまうのは何故かというと、引け目があるからなんだよねー(笑)。「えっ!? こんなアタシが地上波の主題歌!? ホントなの……?」っていう引け目ね。こういう心理は男女間にも応用可能だから、だからみんなもその辺は有効利用した方がいいと思うよ(笑)。

--なるほど(笑)。話は変わりますが、近年は技術の発展により、配信音源や動画など、音楽の発信方法も様変わりしました。

Sinner-Yang:震災以降、本当に不愉快なのは “被災者の魂の為に”みたいな思い上がった自主発信の曲が、ネット上に溢れてたこと。知り合いにも何人かそういうのやってるのがいて、そいつらとは今後付き合いを一切断つつもりです(笑)。

aCKy:まあ、自分が救われたいんでしょうけど、それを“自分は良いことしてる”と錯覚されちゃうとキツいですよね。自分が楽になるって言えてるのであれば、それはまだ分かるけどね。

Sinner-Yang:こういった時に、音楽は実際的には何の力もないじゃないですか。で、“そんな音楽とは何だ?”ってところから始めなきゃいけないはずなのに、何らかの力が、効果があるって前提で始めていることの迂闊さにビックリするんですよ。
またね、例えばこのインタビューも、そちらから「お話を伺いたい」と言って頂いて、初めて僕らは発言する資格を得る訳ですよ。発言するか否かは、問われるか否かだと思うんです。訊かれてもいないことをその場の気分で自己発信するというのは、理解に苦しみますね。それはブログであれTwitterであれ、全部がそうだと思いますね。公衆の面前のオナニーが芸になるのは愛染恭子かジム・モリスンだけでしょ(笑)。

--意図が改ざんされてしまうというメディアへの不信感が増しているからこそ、よりダイレクトに発信できる方法を選ぶ、というのもあるのではないでしょうか?

Sinner-Yang:メディアへの不信感を持てるほど、メディアと乖離した目線や思想を持ててる人なんているのかな? 要するに、今の日本で電○や博○堂のフィルターを通さずに直に世界に触れられる人なんて、まずいないんじゃないかってことです。ダイレクト発信が増えてるのはメディアへの不信感とかじゃなくて、敷居の低さ、志の低さだけだと思いますよ。

きっと僕らがやっている意図 ―――って言うほど大したモノではないけど、それはさっき話に出た野音イベントの時もお客さんと共有できたとはまったく思えない。でも、それで良いんですよ、真意を共有しあうなんて気持ち悪いでしょ。ただ、あの日の僕らの演奏には何らかの反応があった。笑ってる奴が多かったから。それだけで十分なんですよ。
意図は改ざんされたり、曲解されてはじめて立体的になるんじゃないですかね。逆に言えばジャーナリズムを含むメディアの価値は、作品や表現に作者自身も気付かない意図を見出すところにあるんじゃないかと思います。また、それはお客さんの権利でもありますね。

aCKy:ライブに限って言うと、リサイタルとかがいいんですよ。ステージと客席との関係性がね。ステージに立つ者は常に上から目線であり、お金を頂いて観てもらっているという意味では客席が上から演者を見ている。その関係性が理想ですね。

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--音楽を制作していく上で、軸になっていくのはやっぱり楽曲になるのでしょうか?

Sinner-Yang:僕は三人編成のソリッドなロックバンドとかが凄く苦手なんですよ。あの純度の高さについて行けないっていうか、全員が運命共同体的にまっしぐらに進んでいるのを見ると、北朝鮮のパレードにしか思えないんです(笑)。バラバラな人間が10人以上も集まって、てんでに勝手なことを自由にやるっていうのが理想。純度を下げて雑味を出したい。それで全くの治外法権じゃ流石にアレだから、何かひとつだけルールを持つとしたら、aCKyの詞を尊重すると。それくらいですかね。

aCKy:“自分たちの伝えたい何か……”なんて自発的な気持ちはなくて、いつでも何かへのカウンターなんです。世の中がどうなっているのか? っていうところから、それへの回答を見つけてやっている感じ。で、何故そうなるのかというと、引け目です(笑)。ほら、そういう女の子って努力するじゃないですか、フェラとか一生懸命頑張ったり……。良い女は、ただ寝てればいい(笑)。

--因みに、これまで歌詞の内容でお叱りを受けたことは?

aCKy:まぁ叱られるほど世間に認知されてないですから(笑)。そりゃ月9の主題歌が『ゴムまり』だったら、各方面から叱られると思いますけどね。

--そうした歌詞に対するサウンドのクオリティがズバ抜けている。これが面影ラッキーホールの凄味だと思うんです。

Sinner-Yang:もともとがシャレだし、どうせ死ぬまでのヒマつぶしなんですけどね。ただしシャレだからこそフザケてやっちゃ、シャレにもならない。だから真面目にやってますよね、サウンド作りも。

--6月8日にはニューアルバム『ティピカル・アフェア』をリリースしましたが、アルバム制作においてコンセプトなどは設けるのでしょうか?

Sinner-Yang:そういうのは考えないですね。何故かというと、アルバムが余り好きじゃないんです。リスナーとしてもね。元々が歌謡曲マニアだったりソウルマニアだったりするんで曲単位でしか興味ないし、考えない。アルバム単位で聴くのって、白人ロック至上主義のカルチャーでしょ。
それにほら、コンセプトアルバムなんていうのは元々はレコード会社が単価を上げるために作った幻想だから。僕らは1曲ごとに良い・悪い・好き・嫌いを評価してもらえればと思います。

--タイトルは直訳すると“典型的な情事”になるのでしょうか?

Sinner-Yang:“ありがちなこと”ですね。曲もそうだし詞もそうだし、聴いてるあなたもそうだし俺もそう、っていうね。前回のアルバムの曲だけど『パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏』なんて、毎年夏の風物詩としてニュースになってるくらい“ありがちなこと”じゃないですか(笑)。まぁそれが歌になっていることは日本……、世界を見渡しても初かもしれないですけど(笑)。

--ステージで演奏することや、音楽を発信することも特殊ではない、という感覚をお持ちなのでしょうか?

Sinner-Yang:さっきも話しましたけど、そもそもライブだろうがCDだろうが発表するということは、「人様にお願いされて」初めて可能なことなわけです。だから個人レベルではものすごく特殊な責任ある立場だし、特殊なことですよね。だけど、視点をヒキにして社会レベルで見れば、CDを発売する、みたいなことは“ティピカル・アフェア”でしょう。Billboard JAPANさんだって毎月のように取材をオファーされて、「えー……、コレですかぁ……。じゃあ出稿にして下さい」みたいなティピカル・アフェアがあるでしょ?(笑)

この間の野音のライブだって、アニメファンに囲まれたアウェイの状況で演奏するって、僕らにとってはスペシャルなことだけど、隣の霞ヶ関ビルの屋上から俯瞰したら、「はいはい、今日もイベントやってるんだね」ってことですよね。現代人ならマストでしょう、そうやって視点のヨリとヒキをコントロールする感覚は。

--ただ、aCKyさんの書く詞に登場する人物は、俯瞰しない方が多いように思うのですが。

Sinner-Yang:俯瞰した人物を描こうとすると、ポップミュージックの4分の尺には収まらないですよ。……あと、結局aCKyの詞は一人称が“アタシ”だったりするでしょ? 一人称では、俯瞰している様子は書けない。俯瞰を描くなら三人称ですよ。ドストエフスキーだってそうじゃん。

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--とはいえ、M-02『セカンドのラブ』で描かれている、彼女や奥さんのいる男性をいつも好きになってしまう女性には、ふと俯瞰になる瞬間がありますよね?

Sinner-Yang:あれはね、俯瞰じゃないんですよ。俯瞰しているような擬態で負の要素を入れて、自分の気持ちを盛り上げている。“明菜”っていう概念です(笑)。持論なんですけど、全ての女性は明菜として生まれてくる。成長するに従って、自分の中での明菜度をどんどん失って、つまらない普通の女性になっていくんです。

aCKy:それを普通は「社会性がある」って言うんだけどね(笑)。

--そんな中、稀に明菜度を保ったまま成長する女性がいると。

aCKy:そうそう。付き合ってみたら「……コイツ、明菜か?」って気付く、みたいな(笑)。

Sinner-Yang:因みに、僕たちはふたりとも、生まれた時は永ちゃんだったんですけどね。……まあ、40歳以下の人たちには通じねえか(笑)。

--では、『ゴムまり』の主人公も明菜になるのですか?

Sinner-Yang:あれは畠山鈴香です。秋田連続児童殺害事件の(笑)。

aCKy:この曲はPVがあるんで観てください。で、どう思うかは任せます(笑)。

--自分はこの曲、大好きなんですけど、タイトルの意味に気付けるくだりがあるじゃないですか(2:49~)。身につまされる物語にグッと胸が苦しくなった直後、美しいギターがキランと鳴る。この流れが見事すぎるんです!

Sinner-Yang:それは素直にうれしいですね。僕も『ゴムまり』の出来は納得してます。

aCKy:よく漫画家さんとか小説家さんがさ、“後はキャラクターが勝手に動いてくれる”みたいな表現をするじゃないですか。最近、それが分かるようになってきたんですよ。“だって、こうきたらこうでしょ?”っていう、それこそティピカル・アフェアなんですけど、その主人公がこういう物語にしてくれるんです。ただ、『ゴムまり』は最後までなかなかできなかったですね。最近は完全に分業制が進んでいて、今回は全部、曲が先だったんですけど、インストの状態にもの凄い名曲感があったんですよ。

--では、曲を先に作っていく中で、歌詞の仕上がりを最も意外だと感じた曲は?

Sinner-Yang:特にはないかも。今回はどんなメロディの動き方をするとトンデモない言葉がaCKyから出てくるのか、それだけ考えて曲作ったんです。そうやってるとメロディに対して「大体こうくるだろうな」って言葉が想定できてくるんですよ。

aCKy:『セカンドのラブ』のAメロの最後にある「タララン♪」ってメロディなら、“ダメね”しかないじゃん?(笑) もしくは“バカね”しかないよねっていう、阿吽(あ・うん)の呼吸。

Sinner-Yang:そうそう。aCKyはどの音程をどういう風に歌った時に一番嫌な感じがするのかとか、そういうところをあらためて研究しましたね(笑)。

--なるほどー! そういえば前作では、様々な作曲者を招いていましたよね?

Sinner-Yang:そうでしたね。このバンドをヒキのプロデューサー的な視点で見ると、せっかくaCKyという稀代の作詞家がいるのに、僕を含めてメンバー内にそれに見合った優秀なメロディメイカーとしての人材がいない。だったら弱点を外注で補うぜっていう、極めてドラスティックな外資系企業的発想で、前作『Whydunit?』を作ったんです。
結果、弱点は補えました。そこは想定内。だけど、どの曲も元々の作曲家のデモを超えられてない気もしたんですよ。そこで思ったのは、面影ラッキーホールにとっては“どうやったらaCKyからトンでもない言葉を引き出せるか”を考えることのほうが、メロディメイカーとして優秀かどうかよりも重要なのではってことでした。外注で解決するような簡単な話じゃないんだなって。だから今回は殆ど僕が曲を書いてるんです。バンドはアウトソーシング出来ない。外資系企業とは違うんですよ(笑)。

……こんな素人みたいなことに今更気付いた。あの時に「もしドラ」読んでたら、回り道せずに済んだかもしれません(笑)。

--では、アルバム『ティピカル・アフェア』はどのような方に聴いてもらいたいですか?

Sinner-Yang:「良いなぁ~……。このアルバムを作った人に抱かれてみたい!」って思うような、35~50歳くらいで容姿端麗な熟女さん。

aCKy:そんで、できれば後々面倒臭くない方がいいですね(笑)。

面影ラッキーホール

面影ラッキーホール「ゴムまり」

面影ラッキーホール「typical affair」

typical affair

2011/06/08 RELEASE
PCD-28015 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ラブホチェックアウト後の朝マック
  2. 02.セカンドのラブ
  3. 03.ゆびきり
  4. 04.ゴムまり
  5. 05.背中もよう
  6. 06.今夜、悪魔は天使に負けない
  7. 07.あたしだけにかけて
  8. 08.涙のかわくまで
  9. 09.SO-SO-I-DE (LIVE at O-EAST)

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