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「やってることは、昔となにも変わらないよ。俺はキース・スウェットだからね」-4年ぶりの新作を発表したキース・スウェットのブレない最新インタヴュー



キース・スウェットインタビュー

  メジャー・デビューから来年で30周年を迎えるキース・スウェットが55歳の誕生日(7月22日)にニュー・アルバム『Dress To Impress』を全米リリースした。日本では9月21日に発売される同作(ボーナス・トラック2曲含む)は、約4年半ぶりの新作で、スタジオ録音のオリジナルとしては12作目。内容は、これまでのアルバムとほぼ同じマナーで、日本では愛を込めて“ヤギ声”と呼ばれる鼻濁音系のヴォーカルもあのまま。いつもと変わらぬキース・スウェットがここにいる。

 今年初めに発表されたスロウ・ミディアム“Good Love”、同じく先行発表されたタキヤ・メイソンとの美しいデュエット“Just The 2 Of Us”を含む16曲(日本盤は18曲)入りのアルバムは、どこを切ってもキース・スウェットとしか言いようがないスロウ・ジャムの連続。シルク、ドゥルー・ヒルといった、かつてキースがプロデュースなどで関わった名門男性ヴォーカル・グループとの共演に加え、LSGとしても共に時間を過ごした故ジェラルド・リヴァートとの濃厚な擬似デュエットまでが登場するのだからたまらない。また、バイロン・チェンバースのトーク・ボックスをフィーチャーした曲やブギー・ファンク的なアップ・チューンも用意され、スロウ・ジャムを中心としながらも緩急つけた流れで聴かせる。

 そんな充実の新作を出したキース・スウェットの最新インタヴュー。音楽同様にキース節としか言いようがない発言をお届けしたい。

Text:林 剛 / インタビュー協力:Kana Muramatsu

違うとこなんてないよ。俺はキース・スウェットだからね

−−あなたは過去のインタヴューで新作について訊かれて、「これまでと同じ」「質の高いR&Bを作りたかっただけ」と、“変わらないこと”を強調されてきました。ですが、今回の新作『Dress To Impress』において、これまでと違う部分をあえてあげるとすれば、どんなところでしょう?

キース・スウェット:違うとこなんてないよ。俺はキース・スウェットだからね。アルバムを作るたびに何か違うことをしようと思っていない。ただリスナーの人たちが共感できそうだなと思う音楽にしようとは思ってはいるけどね。みんな、俺=“Twisted”や”Nobody”、“I’ll Give All My Love To You”のようなスロウ・ソングだと思ってるから、そういう期待は裏切らないように、スロウな曲をやりながら若いリスナーも少しは意識をしてアップ・テンポの曲もやっている。昔からファンでいてくれている人たちを失いたくないから、彼らを裏切らないようにしながらも、新しいファン、特に若い世代の人たちにも響くようなサウンドを作るように心掛けているよ。

−−新作は、内容、ヴィジュアルともに、ここ数作ではずば抜けて素晴らしいと思いました。リリースはあなた自身のKDSエンタテインメントからで、配給がRAL(Red Associated Labels)となっていますが、過去2作を出したキダーやeOneの時と比べてどうでしたか?

キース:(今回の環境やKDSから出せたことは)本当に満足している。自分自身を今まで以上に自由に表現する機会を与えられたと思っているし、自分らしい作品をありのまま発表することができたと思っている。音楽業界ではビジネスの仕方が大きく変わってきたし、そのたびに自分でもその時のベストの状態で作品を出そうと心掛けてきた。俺はまだちゃんと時代に合った音楽も作り続けているし、昔のアーティストではなく現在も活躍する存在だと印象づけることが必要だからね。それは心掛けてやっているよ。



−−アルバム・タイトルの〈Dress To Impress〉は“第一印象を良くするために粧し込む”という意味だと思うのですが、そういえばあなたは数年前に『Make It Last Forever: The Do’s and the Don’ts』という恋愛指南本も出していました。その本が今回のアルバムのベースになっていたりしますか?

キース:いや、それはないね。本は全く違うものだ。本は基本的に恋愛関係や夫婦関係において、永遠に関係を続ける(Make It Last Forever)ため、健康的な関係を保ちながら末永く幸せでいるために、すべきことと、すべきでないことについて書いただけだ。恋愛関係において誰もが経験することを書いただけ。人はどうして愛する人と別れたり、やり直したり、また、長続きさせることができたりできなかったりするのか。だから(サブ・タイトルが)〈The Do’s And The Don’ts〉なのさ。でもアルバムは、恋愛関係を続けるうえで起こり得る、あらゆるシナリオを考えて制作していく。実際に自分が経験していたことでなくても、素晴らしいストーリーを素晴らしいメロディに乗せて表現するのがアルバムなんだ。

−−では、『Dress To Impress』というアルバム・タイトルについて教えてください。

キース:〈Dress To Impress〉とは、第一印象で見られること。態度であったり、雰囲気であったり、ルックスであったり、香りであったり……人に強い印象を持ってもらうには、服装だけでなく、話し方であったり、香りであったり、視線であったり、歩き方であったり、あらゆる要素に魅力を感じるかどうかだと思うんだ。ただ表向きの服装だけじゃない。そういうことだ。

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一緒にやる人たちとはヴァイブスが合わないとな
俺の人選の基準はそこだ

−−プロデューサー陣には、ワーリー・モリス、デレク“DOA”アレン、ジェラルド・アイザック、プラティナム・ブラザーズ、ジェリー“Fatz”フラワーズ、ジェイソン“JHot”スコット、ティアース“Kizzo”パーソンなど、過去に付き合いのある人から初顔合わせとなる人までが参加しています。彼らを選んだ基準を教えてください。

キース:一緒にやる人たちとはヴァイブスが合わないとな。俺の人選の基準はそこだ。これまで付き合いがあった人たちの中でも、相性が良くて、いい作品を一緒に作れると確信できる連中さ。相性がいいから、そこから生まれるものも良くなる。やっぱり最高のケミストリーを感じる人たちとしかできないよな。

−−ゲスト陣も、シルクやドゥルー・ヒル、そして故ジェラルド・リヴァートといった、かつて一緒に仕事をした人たちが参加していて、あなたとの繋がりを知るリスナーは喜んだはずです。

キース:シルクは俺が発掘して音楽業界へ紹介したわけだよな(※キース主宰のレーベルKeiaから92年にデビュー)。彼らとはずっと関係を続けてきたわけだから、今回のアルバムを作る時にみんなに参加してもらって、一緒にやろうと思ったんだ。ヤツらは俺のボーイズさ。ドゥルー・ヒルも彼らのデビュー作などに関わってきた。ジェラルド・リヴァートとの“Let’s Go To Bed”は、彼が亡くなる前に彼自身がレコーディングして完成させていた(未発表)曲のひとつで、俺が凄く気に入って、今回、自分のヴォーカルを加えたんだ。ジェラルドのパートを少し削って、そこに自分のパートを加えてデュエット仕様にしたんだよ。

−−“Just The 2 Of Us”でデュエットしている女性シンガーのタキヤ・メイソンはアトランタ在住だそうですが、彼女はどんなシンガーですか?

キース:タキヤは実はこの曲のデモを録るためにスタジオに入ったデモ用のシンガーだったんだ。本当は別のシンガーに歌ってもらうことを予定していて、その人のためのデモを録るために彼女に歌ってもらったんだけど、デモでの彼女の声が最高に良かったから、そのままキープしたんだよ。



−−これまであなたがデュエットしてきた女性シンガーは伸びやかで透明感のある声の持ち主が多いですが、何か好みや基準があるのですか?

キース:グレイト・ヴォイス、それだけだよ。最高の声だと俺が感じたシンガーに歌ってもらっているだけ。俺はヒット曲を出すのに有名なシンガーじゃなきゃいけないとは思ったことがない。曲に合った素晴らしい声、俺が気に入った声なら“レコードに参加してくれよ”ってなるだけさ。俺はそういうやり方をしてるだけ。

−−あなた自身は、近年だとリック・ロスの“Supreme”に客演していましたし、今年はあなたの“Nobody”を引用したクリス・ブラウン“Who’s Gonna (Nobody)”のリミックス版でも歌っていましたが、クリスのリミックスは本人から直接オファーがあったのでしょうか?

キース:クリスから電話があって、依頼された。だからやったんだ。俺が好きな曲をやってるようなアーティストで、相性が合いそうなら俺は誰とでも共演する。クリス・ブラウンがやった(オリジナルの)曲も気に入ったし、みんな彼が好きだからね。彼にノーとはなかなか言えないよ。だってクリス・ブラウンだぜ。

−−そのクリス・ブラウンの曲もそうですが、ここ数年、若手シンガーがあなたの曲を引用した例が目立ちます。ボビー・Vがミックステープ『V-Day』で“Make You Say Ooh”をジャックしたり、オーガスト・アルシーナが“Get Up On It”を使ったり、ブラソン・ティラーもクリスと同じ“Nobody”を引用していました。これらを聴いてどう思いましたか?

キース:サンプルしてもらうのは全然かまわない。彼らが俺の曲を気に入って使ってくれたんだ。光栄に思ってるよ。俺がみんなに聴いてもらいたくて作った曲を長年にわたってたくさんの人たちに聴いてもらって、それを若いアーティストたちが引用するほど気に入ってくれている。俺の曲が彼らにとって深い意味を持つ曲になったわけで、それだけで俺は嬉しい。彼らがサンプルして作った曲も結構気に入ってるよ。

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    これだけ長い間続けてやれることに本当に感謝してる
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約束されたものなどないこの世の中で、
これだけ長い間続けてやれることに本当に感謝してる

−−あなたはスロウ・ジャムを歌うシンガーといったイメージが強いわけですが、改めてスロウ・ジャムの定義をしてもらえますか?

キース:スロウ・ジャム、スロウ・ジャム・ミュージックっていうのは、心から湧き出るエモーショナルな曲のこと。前戯のための音楽。愛する人に自分の気持ちを素直に伝えるためのスロウなテンポのグルーヴ。つまり、愛し合ってる人たちや相手を愛したいと思っているふたりの間にとめどなく沸き起こる、またはその関係の中で感じる全ての感情を相手に伝え、表現するための音楽だ。

−−全米にネットワークされるラジオ番組「The Sweat Hotel」のホストも続けていますが、ここでかかるのは、あなたの音楽に共鳴するようなオールドスクールなR&Bが中心です。実際にどんな基準で曲を選び、何をモットーにマイクに向かっていますか?

キース:オーディエンスとは常に繋がっているべきだと思っている。昔の曲だろうが、人の曲だろうが、自分の曲だろうが、みんなが好きでいてくれているとわかっている曲をかけることを心がけている。新しめの曲であっても、昔のようなクオリティの高い曲を選んでかけているんだ。俺がかける曲を聴いてリスナーが何を思うか、どんな曲が好きかといった意見もちゃんと聞いて選曲に反映させるようにしている。そういう話を一緒にしてくれる人たちのおかげで番組もよくなり、リスナー層がより幅広くなってファンも増えていく。それが俺のやり方だ。

−−あなたは、そのラジオのスピンオフ企画とも言える〈Sweat Hotel Live〉というライヴもやっていて、2007年にはテディ・ライリーやカット・クロース、チャーリー・ウィルソン、シルクらが参加したライヴのDVD/CDも発売しましたが、現在のライヴはどんな感じなのでしょう? 再来日公演にも期待したいところですが。

キース:昔とほとんど変わらないよ。過去の曲から新しい曲まで、いつも同じ曲を演るしね。たいてい同じ7人のバンド・メンバーと一緒にステージに上がって、DVDとほとんど同じような感じだよ。俺を観に来てくれる人たちは、みんなが好きな俺の曲を聴くために来ているからね。日本には、誰かが来てほしいとブッキングしてくれれば、すぐにでも行きたいよ。



−−87年にメジャー・デビューして来年で30年となりますが、改めてこの30年間を振り返ってどう思いますか?

キース:30年間、順調に活動を続けることができて嬉しいよ。それだけ長い間この世界にいれるなんて気分がいい。しかも、今でもファンが大勢いて、現役として活動させてもらえている。自分が好きで楽しんでやっているだけでなく、みんなも楽しんでくれる音楽を続けさせてもらえる機会を与えてくれた神や、周りの人たち、ファンの人たちに感謝せずにはいられない。約束されたものなどないこの世の中で、これだけ長い間続けてやれることに本当に感謝してるし、幸せだと思っているよ。

−−では、今後何か新しいことを始める予定はありますか?

キース:もうほとんどのことはやってきたからなぁ……TV関連も音楽関連も。俳優業はもっとやりたいかな。自分がやりたいと思うことで機会があれば何でもやりたい。とにかくずっと現役として活動し続けていたいし、今やっていることを同じように次の30年も続けてやれたら幸せさ。みんながまだキース・スウェットを愛し続けてくれることを期待するよ(笑)。俺の音楽を聴いて、みんなが幸せを感じてくれて、素晴らしい恋愛をし続けてくれる姿を見ることができたら本望だね。とにかく永遠に残る歌を歌いたいと思いながらやってきただけで、これからも何かを変えようとは思ってない。ずっと歌い続けること、それだけだ。


 予想通り、徹底して“変わらない”ことを強調したキース・スウェット。ジャンルを越境したり融合したりすることが最新の音楽として正義だという考えもある中、この人はR&Bというジャンルに頑なにこだわり、我が道を行く。男女を親密にさせる、そのためだけにキースは歌い続けるのだ。


キース・スウェット「ドレス・トゥ・インプレス」

ドレス・トゥ・インプレス

2016/09/21 RELEASE
SICP-4759 ¥ 2,420(税込)

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Disc01
  1. 01.グッド・ラヴ
  2. 02.トゥナイト
  3. 03.ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス
  4. 04.プリング・アウト・ザ・ワン
  5. 05.スペシャル・ナイト
  6. 06.バック・アンド・フォース
  7. 07.ギヴ・ユー・オール・オブ・ミー
  8. 08.ミッシング・ユー・ライク・クレイジー
  9. 09.ラヴァーズ・アンド・フレンズ
  10. 10.フィールズ・グッド
  11. 11.ベター・ラヴ
  12. 12.ドレスド・トゥ・インプレス
  13. 13.キャント・レット・ユー・ゴー
  14. 14.セイ
  15. 15.ゲット・イット・イン
  16. 16.レッツ・ゴー・トゥ・ベッド
  17. 17.アイ・ウォント・ユー・モア (日本盤ボーナス・トラック)
  18. 18.スペンド・ザ・ナイト (日本盤ボーナス・トラック)

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