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「常に目標が変わっていくから、バンドも進化する」― The 1975 来日インタビュー



The 1975 来日インタビュー

 2016年2月にリリースした2ndアルバム『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』が米ビルボード・アルバム・チャート&全英チャートで1位となり、ここ1年間に発表されたイギリスとアイルランドの最優秀アルバムを表彰する、名誉ある【マーキュリー・プライズ】にノミネートされたThe 1975。1月の来日公演に続き、3度目の出演となる【SUMMER SONIC】では、<ソニック・ステージ>のヘッドライナーを務め、バンドの美学と哲学を完璧に捉えた圧巻のステージで魅せ、大きな話題を呼んだ。Billboard JAPANは、東京公演の翌日にフロントマンのマシュー・ヒーリーを直撃。バンドの集大成とも言える今回のステージやいよいよ現地時間で9月15日に発表が迫った【マーキュリー・プライズ】について話を訊いた。
2016年1月来日時のインタビューはこちらから>>>

TOP Photo: ©SUMMER SONIC All Rights Reserved.

人を満足させるためとか、自分たちがやっていることを状況に応じて変えてしまうと、
それは自分を偽ってることになる

−−昨晩のライブ、素晴らしかったです。

マシュー・ヒーリー:ありがとう。楽しんでくれて嬉しいよ。

−−これまで日本で行ったライブの中でも総合的に断トツで良かったのではないか、と思ったのですが、バンド的に手ごたえは?

マシュー:そうかもしれないね。今疲労がピークで、ショーとショーの境目がわからないような状態だけど(笑)。でも、これまでの日本でのキャリアを祝うような祝祭的な雰囲気があったのは確かだね。

−−「Robbers」や「You」などスローな曲も演奏していて、フェスにも関わらず徹底したステージを披露していたのにもバンドとしての成長を感じました。

マシュー:唯一あるルールはベストな曲を演奏すること。フェスに来てる観客にもある程度信用をおいてあげないと。ちゃんと音楽を聴いてくれているファンだったら、ただ単にノリノリなヒットばかり聴きたくはないと思う。だからフェスのセットリストは、頻繁に変えてる。ペースを一定に保つのが難しいけれど。それと「Robbers」は、プレイすることを躊躇してた時期もあったけど、やらなかったらみんなからクレームがきたから、またプレイするようになったんだ(笑)。

 ただ自分たちのショーをやるのみ。人を満足させるためとか、自分たちがやっていることを状況に応じて変えてしまうと、それは自分を偽ってることになる。自分がやっていることを心から信じられるか、というのが大切なんだ。10分おきに、観客を煽ったり、盛り上げたりするのは、僕ららしくないしね。

−−確かに、観客を無理に煽ったりしていなかったのも印象的でした。特にフェスだと、初見の観客が多いので、そうするアーティストも多いので。

マシュー:うんうん、言ってることよくわかるよ。けれど、それだとアーティスト側の自己満足にしかすぎない。一体感を生み出そうとしてるんだけど、逆に観客との距離を深めることになる。それよりその空間に自然と惹き込まれるような感覚の方がいいよね。そうなった時に、ふと初めて一体感を感じる。僕にとってライブってパーソナルなものなんだ。【SUMMER SONIC】のステージのヘッドライナーを務めるのは、軽々しくできることじゃないし、内心ちょっとビビってた部分もあった。未だにステージに上がると、自分がどう見られているのか気になるし。そういったことを対処するには、曲と真摯に向かい合うのみなんだ。

−−ステージ・プロダクションも曲の世界観を巧みに捉えていましたが、あれはフル・プロダクションですか?

マシュー:昨日のステージは通常の7割ぐらいをちゃんと再現できてる。フル・プロダクションの時は、あれに加えて4つのタワーが立ってるんだ。日本は遠いから、残念ながら全部持ってこれないんだよね。でも、僕らのライブ・ステージをちゃんと捉えてたと思う。あの大きなバックスクリーンがあれば、文句はないよ。




−−新作のステージ・プロダクションはどのように構想を練ったのですか?

マシュー:友人のトバイアス・ライランダーと2人で作り上げたんだ。天才的なヴィジュアル・クリエイターで、個人的に気に入ってるナイン・インチ・ネイルズやザ・エックス・エックスのプロダクションも手掛けてる。僕が思い描いていた最新作のピンク、白、ブルーのカラー・スキームと色々な作品を見てもらった―(マーク・)ロスコ、ジェームズ・タレル、ロバート・アーウィンとか、大好きなアーティストの写真をインターネットでみつけてバインダーにまとめてね。まるでアナログなTumblrみたいに。そこから様々な要素を掘り下げていった―ロックンロールって一体なんなだろう、何かがクールに見えるのはなぜだろうとか。そこからシルエットの話になって、アート・インスタレーション風に…演劇のようにパフォーマンスしたら面白いんじゃないか、って。でもセットを作るのではなくて、ライティングで同じような効果を演出したかった。

−−トーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』のようなイメージ?

マシュー:あぁ、あの作品は大きなポイントだったね。とにかくロックンロールの典型で遊んでみたくて、その中でシルエットに興味を惹かれたんだ。

−−加えて、被写界深度・焦点深度で遊んでいるのも、新鮮な演出で興味深かったです。

マシュー:あれは、すごくこだわったんだ。未だに詳しく理解できてないんだけど…画像のピクセル数が低いほど、画像が荒くなっていくから、あの映像をiPhoneで撮った時にちゃんと表現できるスクリーンを探さなきゃいけなかった。最初に試した時は、頭の周りがピクセル化されちゃってうまく写真や映像に残らなかったんだ(笑)。

−−細かいところまで、きちんと作りこんでいるんですね。

マシュー:もちろんだよ。今回のプロダクションが完成するまでに、多くの時間、テクノロジーやリソースが費やされてるんだ。

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