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メロディー・ガルドー&ピエール・アデルニ 来日記念特集

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 夜の帳が降りる頃、遥か遠くから聴こえてくるハスキーな歌声……。メロディー・ガルドーの作品を聴くと、こんな情景が浮かび上がってくる。時には優しく、そして時には哀しみに満ちたジャジーなヴォーカルは、人々の心の襞にじんわりと沁み込んでいく。“ニーナ・シモンの再来”ともいわれるブルージーなスタイルでありながら、繊細で内省的な世界を構築する稀有な才能が、まもなく10月に来日。しかも、ブラジル新世代の吟遊詩人、ピエール・アデルニとの共演というスペシャルな内容で、早くもファンの間では話題沸騰中だ。

 メロディー・ガルドーは1985年生まれ、米国ニュー・ジャージー出身。彼女の母親はフォトグラファーで、各地を旅しながら仕事をしていたこともあり、同じ場所で長く生活することがなかったそうだ。とはいえ、9歳の時にピアノを弾き始めたメロディーは、マイルス・デイヴィスやジャニス・ジョプリン、そしてカエターノ・ヴェローゾなど、様々な音楽に魅了されていく。そして、16歳ですでにフィラデルフィアのバーで週末に演奏するほどの腕前になっていた。当時のレパートリーは幅広く、デューク・エリントンからレディオヘッドまでを自在に弾きこなしたという。また、フィラデルフィアの大学に進学してファッションを学び、青春を謳歌していた。

CD
▲『夜と朝の間で』

 しかし、そんな彼女にアクシデントが襲いかかる。2003年11月、自転車に乗っていた時に交通事故に遭遇。背骨を含めて数カ所の複雑骨折の他、頭部を強打し、神経も損傷するという重症となった。幸い一命は取り留めたものの、1年間を病床で過ごすこととなる。この事故の後遺症はいまだ癒えておらず、視覚過敏となったためサングラスを外さずにステージに立つことが出来ないという。しかし、音楽への情熱は消えることなく、治療の一環の音楽セラピーとして曲を書き始め、ギターも弾くようになった。そして、ベッド脇にポータブル・レコーダーを設置し、文字通りベッドルーム・レコーディングをスタートする。2005年にiTunesを通じて、『Some Lessons: The Bedroom Sesions』を発表。この音源がラジオなどで話題となり、ユニバーサル・ミュージックが彼女にレコーディング契約を申し込んだ。

 2008年にヴァーヴ・レーベルから初のフル・アルバム『Worrisome Heart / 夜と朝の間で』を発表。ブルース色が濃厚ながら、室内楽にも似た静謐なジャジー・サウンドをバックに、ハスキーな声で囁くように歌うことで強烈なインパクトを与えた。けっして派手ではないが、聴けば聴くほど味わい深くなる作品の仕上がりは極上。そして、事故とミュージック・セラピーのストーリーも相まって、熱狂的なファンを生むことになる。



CD
▲『マイ・オンリー・スリル』

 ファースト・アルバムの評判が冷めやらぬ翌2009年に、マデリン・ペルーを成功に導いたラリー・クラインと出会い、彼のプロデュースでセカンド・アルバム『My One And Only Thrill / マイ・オンリー・スリル』を発表。ヴィンス・メンドーサによる美しいストリングス・アレンジに寄り添うように、シルキーな歌声を聴かせる大傑作に仕上がった。静かながら奥深い世界は、前作以上の評価を得て確固たる地位を築くことになる。同年にはニューヨーク・ソーホーのアップル・ストアで行われたライヴを収めたEP『Live From SoHo』もリリース。彼女の生演奏の魅力をダイレクトに伝えてくれた。

 2012年にはサード・アルバム『The Absence / アブセンス』を発表。彼女が傾倒しているブラジル音楽やラテン・ミュージックのエッセンスを大胆に取り入れた意欲作で、内省的なイメージはそのままに、これまでにはなかった躍動感が加わった。プロデュースを手がけたのは、映画音楽の仕事で知られるギタリストのヘイター・ペレイラで、ボサノヴァのリズムやバンドネオンの響きを効果的に使ったプロダクションが見事。セクシーなジャケットも含めて、転換期の一作といえる。



CD
▲『カレンシー・オブ・マン』

 2015年には、3年ぶり4作目のアルバム『Currency Of Man / カレンシー・オブ・マン ~出逢いの記憶~』を発表。再びラリー・クラインとタッグを組み、原点回帰とでもいえるジャジーでブルージーなポップを展開する。ヒップホップに影響を受けたビートと、限りなく美しいストリングスが交錯するサウンドに乗せて、内省的な歌世界を披露する姿は、まさに彼女の真骨頂といえるだろう。

 メロディーの独特の声は、リスナーだけでなく多くのミュージシャンも虜にした。そのため、ジャンルや国籍を問わず客演にも多数参加している。ティル・ブレナー『Rio』(2008年)、チャーリー・ヘイデン・カルテット・ウェスト『Sophisticated Ladies』(2010年)、ジェシー・ハリス『Sub Rosa』(2012年)、ジュリエット・グレコ『Ca Se Traverse Et C'est Beau』(2012年)、ヴィニシウス・カントゥアリア『Vinicius Canta Antonio Carlos Jobim』(2015年)などが主な作品だろう。そんな数ある共演の中でも、ブラジルのシンガー・ソングライターであるピエール・アデルニは、2014年の彼のアルバム『Caboclo』で「Limoeiro」と「Melodia E Letra」の2曲でデュエットを披露した盟友である。



CD
▲『Agua Doce』

 ピエール・アデルニは、フランス系の両親を持つブラジル人シンガー・ソングライター。『Casa De Praia / カーザ・ヂ・プライア(浜辺の家)』(2005年)で鮮烈なデビューを果たした。その後は傑作と名高い『Alto Mar / アウト・マール(沖へ)』(2007年)に続き、マデリン・ペルーが参加した他、来日時にインスパイアされて作ったという「Yamagata」などを収録した『Agua Doce / アグア・ドーシ』(2010年)、ダニエル・ジョビンやサラ・タヴァレスなどをゲストに迎えポルトガルで制作された『Bem Me Quer Mar Me Quer / ベン・ミ・ケール・マール・ミ・ケール(君は僕を愛している、海は僕を求めてる)』(2012年)、そして前述の『Caboclo』と、力作を発表し続けている。また、女性シンガー・ソングライターのアレクシア・ボンテンポと組んだユニット、ドーシス・カリオカスとしてもアルバム『Sweet Cariocas』(2008年)をリリースし、ブラジルやフランスでは大きな支持を得ているアーティストのひとりだ。2010年にはユニクロのCMソングにも起用されたので、耳にしたことのある方も多いはずだ。



 今回行われる来日公演は、冒頭に書いた通り、メロディー・ガルドーとピエール・アデルニの特別な共演ステージとなる。しかも、セルジオ・メンデスなどと共演するギタリストのミッチェル・ロング、ブラジルの巨匠バーデン・パウエルの息子であるフィリッペ・バーデン・パウエル、そしてカエターノ・ヴェローゾが信頼するシンガー・ソングライターのダヂという3人がサポートするという贅沢な編成だ。熟練のミュージシャンに囲まれながら、味わい深い歌声を持つ二人がどのようなハーモニーを聴かせるのか。すべての音楽ファン必見のステージといっていいだろう。

 

メロディ・ガルドー ピート・クズマ ラリー・ゴールディングス Clement Ducol ピート・コーペラ Mitchell Long Reese Richardson ディーン・パークス「カレンシー・オブ・マン ~出逢いの記憶~」

カレンシー・オブ・マン ~出逢いの記憶~

2015/06/03 RELEASE
UCCU-1488 ¥ 2,860(税込)

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Disc01
  1. 01.ドント・ミスアンダースタンド
  2. 02.ドント・トーク
  3. 03.イット・ゴナ・カム
  4. 04.バッド・ニュース
  5. 05.シー・ドント・ノウ
  6. 06.パルマス・ダ・ルア
  7. 07.セイム・トゥ・ユー
  8. 08.ノー・マンズ・プライズ
  9. 09.マーチ・フォー・ミンガス
  10. 10.プリーチャーマン
  11. 11.モーニング・サン
  12. 12.イフ・エヴァー・アイ・リコール・ユア・フェイス
  13. 13.ワンス・アイ・ワズ・ラヴド
  14. 14.アフター・ザ・レイン
  15. 15.ベリーイング・マイ・トラブルズ
  16. 16.プリーチャーマン (ラジオ・エディット) (日本盤ボーナス・トラック)

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