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1966カルテット『1966 QUARTET Best of Best 抱きしめたい』インタビュー



1966カルテット 『1966 QUARTET Best of Best 抱きしめたい』 インタビュー

 ビートルズ中心に様々な洋楽アーティストの楽曲をクラシック楽器でカバー、息を吸い込む音や歌い回しまで、新奏法を編み出しながら表現してきた1966カルテット。ビートルズ来日50周年である2016年、彼女たちはかつて誰も踏み込んだことのない次元のコンサートに挑戦する。「ビートルズも新しいことを恐れずやっていった人たちだと思うので」その頭が下がるほどクリエイティヴな活動の背景には、どんな想いが秘められているのか? メンバー4人揃い踏みで語ってくれた。



参加メンバー:松浦梨沙(vn)、花井悠希(vn)、林はるか(vc)、江頭美保(pf)

ビートルズを表現「越えてはいけないと思ってた一線を何歩も越えてる」

--1966カルテット、自分たちではどんなユニットだなと感じていますか?

花井悠希:みんな、元々はクラシックの勉強をずっとしてきてクラシック畑で生きてきたんですけど、そんな私たちがザ・ビートルズやマイケル・ジャクソン、クイーンと洋楽アーティストのカバーをする事によって、元々それらのマニアではなかった4人にしか出来ないであろう新鮮なアプローチを、クラシックの楽器を使ってクラシックや洋楽のファンでなかった人たちにもしていく。そういう架け橋的な存在になれたらいいなと思っていて。

江頭美保:クラシックでもないし、ロックでもないし、ちょうどその間をアプローチしていくことで、そんなに音楽マニアではない人にとっても聴きやすいものを作っている感覚です。

1966カルテット インタビュー
▲左から:林はるか 江頭美保 花井悠希 松浦梨沙

花井悠希:ビートルズも今活動しているバンドではないし、クラシックも……天国にいる人たち?

一同:(笑)

松浦梨沙:歴史上の人たちね! あと、生きている人もいる(笑)。

花井悠希:生きている人ももちろんいるんですけど、そういう今活動していない人たちの音楽って積極的に聴こうと思わない限り、CMなどで流れているものを耳にするぐらいで能動的に聴かないじゃないですか。クラシックにしてもビートルズにしてもそういう音楽を聴くきっかけになればいいなと思って活動してます。

--そもそもどういった経緯で結成されたんですか?

林はるか:私たちのエグゼクティブプロデューサーに高嶋弘之という、日本にビートルズを最初に広めた方がいるんですけれども、その人が昔から「ビートルズの曲をクラシックで表現してみたい」という想いがずっとあって、ビートルズ結成50周年だった2010年に私たちが集められて、高嶋さんの夢を実現するべく結成されたのが1966カルテットです。

--そのプロジェクトに誘われたときはどんな心境だったんですか?

1966カルテット インタビュー
▲林はるか

林はるか:「ビートルズをクラシックで」と言われて、そもそもビートルズのことをそんなによく知らなかったんですけど、でも「なんだか面白そうだな」っていう興味から参加したんです。そしたらビートルズをいろんな場所で自然と聴いていたことに気付いて、音楽の表現の幅が広かったり、いろんなアイデアが盛り込まれていたり、とても奥が深い曲がたくさんあるなと思って、そういうことを4人であーだこーだ言い合いながらいろんな表現を探していくのが楽しくて。

江頭美保:私は4人の中で唯一自分でオーディションを受けて後から入ってきたメンバーなので、みんなみたいにどんなユニットになるのか分からない状態からじゃなくて、最初から「やりたい」という気持ちがあって。私も林さんと同じようにビートルズのファンではなかったんです。でも1966カルテットのみんなの演奏を聴いて「やってみたいな」って思ったんですよね。

松浦梨沙:まさに架け橋だよ。

一同:(笑)

花井悠希:私は最初にお話を頂いたときは「なんだろう?それ」って思って、みんなで音を出してみるまでイメージがなかなか掴めなかったんですけど、ビートルズのカバーがすごくたくさんあるのは知っていて、自分たちもカフェだったり街を歩いている中で出逢うじゃないですか。その中でビートルズのロックだったりとかグルーヴ感、あの格好良さがちゃんと出ているカバーって意外と少ないのかなと思って。だから高嶋さんの意図や、楽譜を見たときに「これだったらビートルズに対するリスペクトの気持ちを本当にぶつけられる」って思って、そこからそれを本当に聴いて頂けるようになるまでは難しかったんですけど、とにかくビートルズの曲を聴き続けて形にしていった感じですね。

--具体的にはどんなところに苦労されたんでしょう?

花井悠希:まずビートルズは歌だけど、1966カルテットには歌詞がない。なので、ちょっとしたシャウトだったり、ちょっとしたしゃくりだったりも音で表現しなきゃいけないし、その感覚を掴むのはすごく難しかったですね。ただ、私とリーダーは基本的にメロディを司ることが多いので……

1966カルテット インタビュー
▲左:花井悠希 右:松浦梨沙

松浦梨沙:司る?

一同:(笑)

松浦梨沙:神様か!

花井悠希:神、光臨(笑)。

松浦梨沙:メロディを司る神様です。

花井悠希:で、この2人(江頭美保&林はるか)はビート感だったりグルーヴ感を作るのを司っている。だからそれぞれ違う難しさがあると思います。

林はるか:クラシックでもリズムを刻んでいくことはあるんですけれども、またそれとは違った刻み方というか……言葉で表現するのは難しいんですけど、聴いててみんながノれるようなビートを作っていくっていうのがクラシックにはない表現だったので、そこは苦労しました。

江頭美保:グルーヴ感を出すのが難しかったんですよね。裏拍でいつも考えるというか、メトロノームを使って練習するときも、裏でメトロノームを鳴らして練習したり、クラシックではやらないようなことをたくさんやりました。

林はるか:あと、どんな音も4人の演奏だけで表現するということを信念としてやってきてるんですけど、例えば「Girl」の中に出てくるような「スゥー」って吸う音を楽器でどう出すか? その為に新しい奏法を研究してみたり、いろんな奏法をこの4人で生み出してる。

1966カルテット インタビュー
▲江頭美保

--クラシックだけやっていたらまずしなかった表現をたくさんしていると。

林はるか:そうですね。

松浦梨沙:鳴らさなかったであろう場所とかあるよね。

江頭美保:越えてはいけないと思っていた一線を何歩も越えてる。例えば、汚い音を出したりとか激しい音を出したりとか。その中で、クラシックのアンサンブルとはまた違って「ロックバンドってこういう感じなんだろうな」っていうのがなんとなく分かってきて、例えばドラムが引っ張っていくとか、ボーカルはもっと自由でいていいとか、始まりの音がもっと前に来てもいいし、逆に遅くなってもいいし、自由なものなんだなっていうのがやっていくうちに分かりました。

--そんな1966カルテット、リーダーの松浦さんはどうして参加しようと思ったんですか?

松浦梨沙:私は何の隔たりもなくて、その前にやっているグループがそういうアプローチに半分足を突っ込んでる感じだったんです。ビートルズはやってないにしてもクラシックだけじゃなくってディズニーだったり、ミュージカル音楽だったり、お客さんが楽しみやすいようなことをしていたので、それがビートルズになって4人で奏でるようになるぐらいの感覚だったんです。なので、特に抵抗もなくて。

花井悠希:みんな総じて言えるのは抵抗はなかったです。「難しそうだな」とかそういうのはあったかもしれないけど、やること自体にはみんな楽しそうと思っていて。

江頭美保:クラシックの世界には「クラシックだけをやる」と決めている方ももちろんいらっしゃるんですけど、私たちはみんなそれぞれにその壁をヒョイっと越えてこれたので、すごく上手く進んだんだと思います。

--4人は1966カルテットに入る前から面識はあったんですか?

花井悠希:ないです。

松浦梨沙:赤の他人(笑)。

--初対面のときはお互いにどんな印象でした?

松浦梨沙:実は本当の初期メンバーっていろいろ候補がいたんですよ。その中でいろいろ落ちていって残ったのがこの4人。だからすごく奇跡的だなと思って。花井ちゃんも本当に最後に「どうする? ひとり足らんよね。ヴァイオリン、どうしよう?」ってなったとき、高嶋さんがポン!って「あ、花井くんっていう娘がいるんだよ」って思い出したからここにいる訳であって、はるちゃんにしても実はもうひとり候補がいたんですけど、たまたま上手いこと流れが合ってふわって入ってきたんです。だから、もっと決まってもいいような人がいたのに、本当にふわって2人とも入ってきた。

花井悠希:気がついたら入ってた(笑)。

松浦梨沙:で、美保ちゃんもオーディションのときに、たまたま帰らずその辺をうろうろしていたから決まったんです。

--うろうろしてたから決まったんですか(笑)?

松浦梨沙:語弊がありますね(笑)。

江頭美保:1回オーディションを受けて、それが終わって帰ったんですけど、なんかモヤモヤしてて「コーヒーでも飲んでから帰ろう」って近くのカフェにいたんです。それで「今日はなんか上手くいかなかったなぁ」って思っていたら、電話がかかってきて「戻ってきてください」って言われて。「え?」ってなったんですけど走って戻って、そしたらそこで加入が決まったので、あのとき近くにいなかったらどうなっていたか分からない。

松浦梨沙:「今から戻ってこれる?」って聞いて「うん」って言わなかったら多分ここにいなかったと思うんで、すごく運命的ではあるなって。

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--すごく運命的で良いなとは思うんですが、今の説明だとみんなただ偶然入れたみたいな印象になりません? もうちょっと勝ち取っていった的なエピソードが……

一同:(笑)

花井悠希:でもオーディションに関してはしっかりやっていて、ある程度絞った中で「もうちょっと演奏聴いてみないと分からないな」となったから、「もうちょっと聴きたいから呼ぼう」と。美保ちゃんの演奏スタイルがオーディションのときだけではウチらと合うのかイマイチよく分からなかったから、もし来れるなら呼んで、それ聴いてよかったら……みたいな感じだったんです。あとは高嶋さんの直感。

松浦梨沙:高嶋さんは本当に直感の人なんです。直感で上手いこと集めてくれた。「はい、閃いた!」それですぐ電話する!みたいな人なんです。

--その結果、4人は1966カルテットとして作品も出し、ステージにも立ち、注目も集め、それまで出逢わなかったリスナーにもたくさん会ってきたと思うんですが、その状況自体にはどんなことを感じていますか?

松浦梨沙:この歳になって日々勉強だなって思うし、「ビートルズってやっぱり凄い人たちなんだな」って凄い人たちから教わるから余計思う。

花井悠希:私たちのいつも近くに高嶋さんがいて、その高嶋さんは直接的にビートルズと関わってきた方で、聴き方もファンの人たちとは違うと思うんですよね。好きな曲も全然違うし。それで直感的な部分も持っている人だから、私たちの演奏に対しても「よく分かんないけど、なんかダメ」とか「なんか良い」なんですけど、でもその直感って全然知らない曲がラジオから流れてきたときに耳に止まるか止まらないか、気持ち良いか不快に思うか、そういう部分にすごく関わってくると思うんですね。だから高嶋さんには「じゃあ、どうすればいいんだ?」って思うこともあるんですけど(笑)、でもそれを言われた中で切磋琢磨するっていうのは、もう6年目になりますけど尽きることがない。

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▲花井悠希

松浦梨沙:それは恵まれてるよね。

花井悠希:そうですね。ビートルズを観てきた人が持ってる直感というものを近くで感じられるので、恵まれてると思います。

江頭美保:聴き方も本当に全然違いますからね。

林はるか:「ここのコーラスは絶対こういう風に聴かせてくれよ」とか言われて、「あ、そういう風に聴いてるんだ?」って思うことが多い。

花井悠希:人って結構マニアックになってくるとコアなものに執着するじゃないですか。だけど、高嶋さんはすごく売れた曲やみんなが知ってるような曲でもちゃんと新鮮な気持ちで「良い曲だ」っていう風に評価できる。私たちもどんどんビートルズを研究していく中でも持ってなきゃいけない感覚だなって思ってます。

--6年間研究してきたビートルズ、今現在はどんな印象になっていますか?

江頭美保:短い期間で、花火のように打ち上がってパーン!と散ってしまって。でもその後もソロで活動していて、とても劇的ですよね。

松浦梨沙:まだウチらは全然理解できてないとも思っていて、ようやくデビュー当時ぐらいの楽曲に対しての理解が深まってきた感じ。でもビートルズは凄いスピードで変化していったじゃないですか。だからまだ演奏していないというのもあるんですけど、後期まで全然追いつけてない。ようやく4人が楽しげに作っていた雰囲気を弾きながら感じられるようにはなったかな?っていう。与えられたものをやるだけじゃなくて、ビートルズを追いかけるだけじゃなくて、咀嚼して、楽しんで、たまにはケンカもして……みたいなアンサンブル力。そうやって作っていくっていうことは理解できるようになったので、これからウチらもどうなっていくのかな?って思います。まだ分からないことだらけだし、ジョンが大きく変化していった頃のものはよく分からない(笑)。まだそこまで理解し切れてないというか、どうしてあの短期間であんなに音楽性が変わっていけたのか。そんなに人間って変われない。ひとつの進行を決めたらそこからは抜け出せない。でもいとも簡単にどんどん変わっていけたっていうのは……凄すぎるんだろうね。

花井悠希:芸術家っていう感じ。そこにあるものの中で自分たちが表現したいものを最大限押し込むというか、詰め込んでるなって思います。後期になってくると、録音技術も発達してきた中で、そういうものも自分たちなりに利用して表現してきた結果がビートルズなのかなって。それにしても、あまりにも進化の仕方が凄いと思います。

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▲左:花井悠希 右:松浦梨沙

松浦梨沙:頭が柔軟なんだろうね。

花井悠希:それでいて吸収力も半端ないんだよね。

松浦梨沙:なんでピアノも出来てギターも出来てドラムも出来るのか、いまだに全然分からん!

花井悠希:今のミュージシャンでもそういう方はいらっしゃいますけど……

松浦梨沙:なんか違う。

江頭美保:元々持ってるものが違う。私は解散してほしくなかったんですけど、ケンカしてしまって、ひとりひとり分かれてしまったことすらビートルズにとって大事なひとつのポイントで、それからも良い曲がどんどん生まれているし、計り知れない感じですよね。

--この4人の中で誰がポールで誰がジョンみたいな担当的なものはあるんですか?

松浦梨沙:一応役割は決まってるんですけど、決まっているとそこに寄っていくもんみたいで……私は一応ジョン・レノン役。

花井悠希:突き抜けてるでしょ?

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▲奥から:林はるか 江頭美保 花井悠希 松浦梨沙

松浦梨沙:でもまだなんで叫びだしたんかは分かってない(笑)。

花井悠希:大丈夫、もうちょっとしたら叫び出すから。

一同:(笑)

花井悠希:そろそろかな、みたいな。

江頭美保:ツインボーカルでポール(花井悠希)とジョン(松浦梨沙)なんですよ。その二人の個性をすごく上手に表現してるなって思います。演奏スタイルもそうですし、本当に似てるなって。

松浦梨沙:この先、変なことを口走らないように気をつけます(笑)。

--で、ジョージ(江頭美保)とリンゴ(林はるか)?

江頭美保:そうです。

--どこまで似ていくのか気になるところですが、林さんは実際にリンゴっぽいところがあるんですか?

1966カルテット インタビュー
▲林はるか

林はるか:どうなんだろう?

花井悠希:でもブレないっていうのかな。周りがあっちやこっちを向いちゃったとしても絶対にブレずにちゃんとそこにいる。そこはリンゴに似てる。

--ビートルズをクラシックで奏でるというアプローチ。それに賛同/共感した背景には、クラシックをもっと一般の人に広めたい想いもあったんでしょうか?

松浦梨沙:そうですね。やっぱり敷居が高いって思われているんで、それをどうにかしたいとは学生の頃からずっと思ってて。よく「ジーパン穿いて行っちゃダメなんでしょ?」って聞かれるんですよ。

一同:聞かれる。

松浦梨沙:その度に「いやいやいや、全然ジーパンで大丈夫だよ」って言っても信じてもらえない、来てもらえない。でも「ビートルズやってるんだったら」ってなるじゃないですか。「ビートルズだったらたしかにジーパンでもいいのかな?」じゃないけど、カジュアルに捉えてもらえる。

花井悠希:ホールの写真とかを目にすると厳かな雰囲気があるから「タキシード着ていったほうがいいのかな?」って思うだろうし、交響曲を聴いてみようと思ってもやっぱり長かったりして「これをちゃんと座って聴こう」と思うのはすごくハードルが高いんですよ。実際にホールに行ってオーケストラを聴くと、そのサウンドの厚みとかに圧倒されてハマる人もいっぱいいるんだけど、音楽の授業で聴いたなんとなくのクラシックのイメージとか、そういうものが足かせになってなかなか来てもらえない。来てさえもらえれば、クラシックのコンサートはどんなコンサートより凄いと思ってもらえるはずなんですけど。

松浦梨沙:楽しいはず。たしかに40分ぐらいじっとしていれば眠くなるときもあるけど、「だったら寝たらええやん」っていうぐらいの気持ちで演者はいるのに、そこの温度差が激しいから、すごく軽く楽しんでもらえるようなクラシックをやったりする訳ですよ。それでも来なかったりする。「絶対CMで聴いたことがある曲しかやらないから」って言っても来ない。「だったら誰も知ってるポップスまでいこう! ロックまでいこう!」ってなったんですけど、遊園地行くみたいな感覚で来たらいいのにね!

花井悠希:うん。本当にひとつのイベントとして選んでもらえるようになったらいいなってずっと思ってて。今、東京に住んでて思うんですけど、みんな、めっちゃイベントごと好きじゃないですか。

松浦梨沙:やってるよね、いろいろね。

花井悠希:そのイベントごと、どれも大体が大盛況な訳ですよ。閑散としていることってほとんどない。みんなイベントを求めてるから、だったら休日にジーパンで来てほしいし、もしクラシックをちょっと上に見てるんだったら着飾って行くのもイベントとしては正解じゃないですか。大事な休日をどう過ごすか考えたときに、ちゃんと聴いたことのないクラシックのコンサートは選びづらいとは思うんだけど、だったらまずはウチらを聴いてみてもらえたらなって。

1966カルテット インタビュー
▲江頭美保

江頭美保:お客さんの中に「1966カルテットを聴いてからクラシックも聴くようになりました」って言ってくれる人も多くて。クラシックって「何を聴いたらいいの?」ってよく聞かれるんですけど、本当に手当たり次第聴いてみて、ビビッと来たものを聴いたらいいんじゃないかなって私は思うんです。その1曲目が私たちのビートルズでも良いんじゃないかなって思うから、とにかく来てもらって聴いてもらうことが一番かなって。

林はるか:私たちは、ビートルズの曲とクラシックの曲を掛け合わせた『アビイ・ロード・ソナタ』っていうアルバムを作らせて頂いていたり、実際にクラシックの曲を4人のアレンジで構成してコンサートで披露したりもしてるんですけど、それまでビートルズしか聴かなかった人たちがクラシックの作品自体にも興味を持ってくれるようになったりしてて。なので、そういう動きも引き続きやっていきたいなって思います。

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--そういった動きをする1966カルテットのような音楽家もいる一方で、「クラシックは敷居が高くていいんだ」っていう方々もいるじゃないですか。そこに対してはどんな想いを持っていたりしますか?

松浦梨沙:それはそれであったらいいと思うんですよ。必要なものだし、そっちで聴きたい人もたくさんいる。でも「初心者が」っていうことですよね。1回でもホールに入ったら2回目ってすごく行きやすいと思うんですよ。だからまずとにかく1回来てもらう。そこから「実は優美な世界もあるんだよ」ってところまで来てくれたら大成功。

花井悠希:だからちゃんと厳かなクラシックはあってほしいし、それはなきゃいけない。だから分業じゃないけど(笑)

松浦梨沙:いや、分業だよ!

花井悠希:私たちはビートルズのカバーをやっているので、そこへ向かう第一歩を提供できるかもしれない。ゆえに私たちはそこを担当する。だから本格的なものは本格的なものでちゃんと残していてほしいし、こっちからそっちへ入っていった人も絶対感動できると思っているので。

林はるか:みんながハマっていくきっかけって、おそらく「友達につれられて来ました」とか「テレビで聴いてハマりました」っていうものが多いと思うんですけど、そのいろんなキッカケの中に「1966カルテットを聴いて好きになりました」を増やせたら、これ以上うれしいことはないなって。

松浦梨沙:万々歳。

--そんな1966カルテットの活動のひとつの集大成でもある『1966 QUARTET Best of Best 抱きしめたい』が絶賛発売中です。自分たちでは、この作品にどんな印象を持たれていますか?

松浦梨沙:今年は「ビートルズ来日50周年」ということしか見ていないので、1966カルテットのベストというよりは、ビートルズにリスペクトを込めて25曲をギュッと入れてみたって感じですね。とにかくビートルズに愛を込めた1枚です。この50年目というのはウチらも待っていたというか、ユニット名を1966カルテットにしているぐらいですから、まずはここというか、第一段階がようやく踏めたかなっていうところなんでね、まだまだこれからの気持ちではいるんですけど。

1966カルテット インタビュー ▲左から:林はるか 江頭美保 花井悠希 松浦梨沙

江頭美保:まだまだ名曲はたくさんありますからね。

林はるか:カバーしてない曲もたくさんある。

花井悠希:あと、私たちはマイケルやクイーンもやっていたりするから、この先はまたビートルズ以外のものをカバーしてもいいだろうし。ビートルズはライフワークにしつつも、よく「あのアーティストをカバーしてほしい」というお話はいただくので、それをやってもいいかもしれないし、まだまだいろんな道を残してる。

--今年はデヴィッド・ボウイやプリンス、グレン・フライ(イーグルス)、モーリス・ホワイト(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)等々、巨星が次々と他界しています。彼らの楽曲を今後カバーしたい想いはある?

江頭美保:凄い年になっちゃいましたよね。

松浦梨沙:亡くなってしまったことは残念ですけど、それをきっかけにして一気に曲を聴く人が増えるじゃないですか。「久しぶりにまた聴いてみよう」とか「この機会に初めて聴いてみよう」って。だから私たちにとってはチャレンジし甲斐があるというか、知らなかった世代の人たちに彼らの曲を聴いてもらえるチャンスだと思うから、その中から自分たちがやっていきたい、やらなきゃいけない曲を見つけられたらいいなと思います。

--他にも今後カバーしてみたい人たちっていますか?

松浦梨沙:私は前からずっと言ってるんですけど、マドンナをやりたくて。あと、レディー・ガガ。そういうアーティストの曲を1回やってみたい。

1966カルテット インタビュー
▲林はるか

林はるか:面白そう。

松浦梨沙:まぁでも出来れば4人グループがいいんですけどね。

花井悠希:マイケルがイレギュラーだったからね。

松浦梨沙:でもマイケルが出来てしまったから「じゃあ、マドンナも出来るんじゃないか」と思っているんだが、出来れば4人グループを選んでいきたい。

--4人グループにしちゃえばいいじゃないですか。「私はマドンナ、あなたはレディー・ガガ、あなたはシンディ・ローパー……」みたいな感じで。

花井悠希:作っちゃうの!?

一同:(笑)

松浦梨沙:でも良いかも!「もしこの4人がユニットを組んだら」みたいな企画アルバム。

1966カルテット インタビュー
▲松浦梨沙

林はるか:歌い口とかそれぞれ違うから面白いかもしれない。

松浦梨沙:架空のグループを作る。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』みたいな。

花井悠希:たしかに! それ良いね! 4人でやる意義もあるし。

松浦梨沙:良いよ? 一人ぐらい日本人いても。

花井悠希:そこの並びに入る日本人!? …………美空ひばりさんしか出てこない。

--ちょうど日本コロムビアだし、完璧じゃないですか(笑)。でも美空ひばりの歌い回しまで表現するってなると、凄いことになりそうですよね。

松浦梨沙:凄いことになるよ!

花井悠希:でもマドンナとかとハマるか分からない(笑)。

江頭美保:でもどうなるのかやってみたい。最上のアイデアが出たんじゃないですか。

--そういった企画を次々実現していくと、他に同じ道を歩んでいるユニットもいませんし、世界的な人気ユニットになっていきそうな気もします。

松浦梨沙:とりあえずアメリカは踏みたい。イギリスは行けたので、次はアメリカを目指したいね。踏むだけでいいからさ。

1966カルテット インタビュー
▲奥から:林はるか 江頭美保 花井悠希 松浦梨沙

花井悠希:カーネギー・ホールの入り口で。

松浦梨沙:入り口でいい! あと、武道館の入り口でいいからやりたい。

--それもうちょっとしたゲリラですよ(笑)。格好良いですけど。

松浦梨沙:なんかのコンサートの前でやっちゃう!

一同:(笑)

松浦梨沙:でもビートルズも新しいことを恐れずやっていった人たちだと思うので、それは見習いたい。

花井悠希:音楽も時代がどんどん変わっていく中で新しいことがどんどん無くなってきてるというか、技術が進歩した分いろんなものが似てきてしまってるところもあって。だから難しいとは思うんですけど、ビートルズの時代とは全然違う感じにはなっちゃってるけど、話題性とかも含め、時代を切り開いていけたらなとは思います。

--そんなどこまでも夢膨らむ1966カルテットなんですが、6月18日 銀座・王子ホールにて【ザ・ビートルズ来日50周年記念ライブ】を開催、5月26日にはビルボードライヴ大阪、6月26日には名古屋ブルーノートでのライブも控えております。

松浦梨沙:来日50周年ですから、あの武道館ライブに行った人も行ってない人も「わぁ!こんな感じだったのか!」ってなるライブがしたい。なので、ビートルズ満載でお届けしたいと思ってます。

花井悠希:あの武道館を彷彿とさせるライブを楽しめることって今はないと思うので、私たちの演奏で体感してもらえたらなって。お客さんのリクエストにも応えていけたらと思ってます。ビートルズの曲は誰でも楽しめると思うので、ぜひ来てほしいです!

--では、前座のドリフターズも再現する?

一同:(笑)

松浦梨沙:それは尺的にムリなので、会場に早めに来て想像してください(笑)。

Interviewer:平賀哲雄
Photo:外林健太

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