下手したら一週間で解散って何!?

－－The Sketchbookの結成は、アニメ「SKET DANCE」で開催されたオーディション（※1）がきっかけなんですよね？

多田宏：はい。僕は20歳くらいからギターを始めたんですけど、昨年のオーディションの時からベースに変わったんですよ。主人公のパートがベースボーカルだったので。

小原莉子：私は高校1年生の頃から始めたんですけど、18歳から音楽学校に通うようになって、ちゃんと弾くようになって。

－－渡邊さんは家に凄い漫画の棚があるんですよね？

渡邊悠：おぉ、それは最近のブログを読んでくれたんですね！（笑） そうなんですよ、元々好きでハマッていたアニメ「SKET DANCE」のオーディション情報をネットで見つけたので、運命的なモノを感じたんですよ。

－－あと、小原さんはこうして話しているとおしとやかな感じなので、ギターを弾いている時とのギャップがありますね。

小原莉子：えー、そうですか!?（笑） 正直、自分の中ではあんまり変化がなくて、弾いてる時は曲に集中していて、そのことしか頭にないんですよ。それが欠点でもあるんですけど、ギターを弾いてる時が本当の自分なのかなって思いますね。

渡邊悠：でも、莉子ちゃんは普段から色んなことに対して頑固で、僕らは“ラストサムライウーマン”って呼んでるんです（笑）。ギターを侍の刀のように、絶対に手放さないんですよ！ 店で店員さんから「楽器をお預かり致しましょうか？」って声をかけてくれても、絶対に渡さない。そういう信念のようなものが、ギターにしても音楽にしてもあると感じてます。

小原莉子：私はあんまり意識してないんですけど、弾く時も一回一回全力で、最高のプレイをしたいので気を抜きたくないって気持ちがあるんです。ギターを手放さないのは……、ぶっちゃけけっこうなお値段がしたし、一生使うつもりで苦労して手に入れたギターなので……、はい（恥ずかしそうに）。

－－また、皆さんは各々別の土地で、まったく異なる音楽活動をしていた3人です。オーディションで決定したバンドとなると、どうやって関係性を築いていくものなのでしょうか？

渡邊悠：確かにオーディションに受かるまでは赤の他人でしたし、音楽をやる上での意見の相違はあるんですけど、それがひとつの刺激になりますし、むしろぶつかり合いをするようにしていますね。

多田宏：言いたいことはちゃんとに言う。音楽に関してはシビアに考えてますね。

－－小原さんは唯一の女性メンバーになりますが、そこでの苦労というのは？

小原莉子：あんまり人懐っこい性格ではないので、最初は溶け込めるかなって不安がありました。でも、バンドってそれこそ毎日一緒にいる感じになるので、段々本当の気持ちとかを話せるようになってきて、ふたりに失礼かもしれないですけど、今では男というよりも仲間って気持ちの方が大きいです。

－－The Sketchbookは結成直後、着うた（R）と着うたフル（R）のDL数と、ファンからのメッセージ数が、共に1万を超えないと即解散、という試練が課せられました。当時はオーディションに合格したばかりなのに……って想いもあったと思うのですが？

小原莉子：それは3人とも思いました……（笑）。

渡邊悠：特に僕は、「本当に何だよ……」って（笑）。レコーディングが終わって「さあ、これからライブを頑張るぞ！」ってタイミングで解散っておかしいじゃないですか!? しかも、そのノルマが、デビューから一週間後だったんですよ？ 「下手したら一週間で解散って何!?」 って思ってたんですけど、そこはふたりが逞しくて、「言われたからにはやるしかないし、やるなら中途半端じゃダメだ！」って。バンドとして仲間として引っ張ってくれた部分はありますね。

－－ただ、1万という数字って、当時は全然想像つかない部分もあったのでは？

多田宏：その企画を伝えられた後、実際にライブをやってみても1日に300通くらいのメッセージしか集まらなかったりで、「うわ、リアルな数字だな……。ヤベェ」って気持ちになりました（笑）。そのプレッシャーで潰されそうになったけど、やらないと解散しちゃうし、諦めたらそこで終わっちゃう。この3人でやりたいって夢があったからこそ、やり切れた所はあるし、それがきっかけでお互いのことをより深く知って結束が強くなった。バンドとして成長したような気がします。

渡邊悠：今となっては、やってよかったと思いますね。今となっては、ですけど（笑）。

原作とリンクしている部分も表現していける

－－では、デビューシングル『道』と『クローバー』が、アニメ「SKET DANCE」のオープニング、エンディングとして、初めてオンエアされた時の心境というのは？

小原莉子：初めて観た時は信じられなかったです。もっと実感が湧くと思ったんですけど、凄すぎて「ホントなのかな……」って気持ちになってしまったというか、唖然としてしまいました。何回もリピートしていくうちに冷静になってきて、その分どんどん興奮していくというか（笑）。

多田宏：正直、僕はボーカルなので、劇中のキャラクターとの違いが一番分かりやすい訳ですよね。カイメイ・ロック・フェスティバルっていうのは原作でも人気のエピソードなので、ファンの方々の期待は大きい。「何だよコイツ……」みたいなイメージを持たれたらどうしようって気持ちはありました。 でも、意外に「吉野裕行さんかと思った」って意見もあったりして、それは本当に嬉しかったですね。The Sketchbookとして、原作とリンクしている部分も表現していけるような気がしたというか。

渡邊悠：僕は作品自体が好きでしたし、バンドで頑張る夢もあったので、そのふたつが重なって純粋に超感動しました！ 初めてテレビで流れた時は家族と一緒に観ていたんですけど、「これが僕らのバンドだよ」ってことを応援してくれる周囲に示すことができたのが嬉しかったです。

－－そして、2月1日にはアニメ「SKET DANCE」第4期オープニングテーマに起用されるシングル『Message』をリリースします。今作では、多田さんが初めて作詞に挑戦しています。

多田宏：やっぱり歌いやすいというか、素直に感情が入る所はあるかもしれませんね。もちろん、『道』や『クローバー』も想いを込めて歌っていますけど、それこそ1万DLなどの企画を乗り越えた上でのシングルなので、そういう気持ちが自然と乗った部分もあると思います。

小原莉子：宏くんの詞を始めて見た時に、言葉がストレートに感じられました。素直さが伝わってきたというか、スーッと心に入ってきました。

渡邊悠：やっぱり自分の音楽性を出せるってことは、バンドマンとして素直に嬉しいことなんです。だからメンバーの宏くんの歌詞が採用されたことによって、僕たちのモチベーションは上がりましたね。

－－また、作曲はtatsuoさんが担当されていますが、彼はゴールデンボンバーの楽曲アレンジや楽器演奏も担当している方なんですよね？

多田宏：tatsuoさんは他のアーティストも手掛けている中で、僕らThe Sketchbookをイメージして曲で表してくれる。色んなことを考えて作ってくれているんだなって。tatsuoさん自身がやっているバンドはもっとゴリゴリだったりするんですけど、僕らに合った曲を書いてくれるのが凄いなって。

小原莉子：最初に『道』を頂いた時に、自分自身もああいう楽曲をやってきたこともあって、やりやすかったんです。tatsuoさんから提供頂いている楽曲は、自分の好きなギターフレーズがたくさん入っていて大好きです！

－－実を言うと、最初にThe Sketchbookのパーソナルデータを紐解いた時、あんまり良い印象を持たなかったんですよ、「オーディションで選ばれたバンドかー……」って。

渡邊悠：うん、それは分かります。

－－だから初めて『道』のイントロからAメロまでを聴いた時は驚きました、「え、凄いじゃん！」って。

渡邊悠：オーディションに受かって、最初の曲だって『道』を渡された時、凄いテンションが上がりました。僕も不安だったんですよ、「どんな音楽ができるんだろう……」って。でも、『道』が僕自身、凄く好きなジャンルのロックだったので、それも運命的というか、tatsuoさんが提供してくれることになって本当に良かったなって。不安に感じていた音楽性の部分が、一気に解消されたというか。

－－では、皆さんにとってシングル『Message』はどのような1枚になりましたか？

多田宏：これまでは用意して頂いた、敷いてもらったレールの上を行く中で、全力を出してきた作品だったと思うんです。今回は、そこにプラスアルファとして、僕の歌詞であったり、それぞれの意見を汲み込んでもらえたので、3人の気持ちやスタイルを出せるようになってきたのかなって。

小原莉子：それこそ1万DLっていう試練を乗り越えられたのは、ファンの皆さんの応援があったからですし、それが無ければThe Sketchbookは2012年を迎えることができなかった訳ですよね。『Message』の歌詞は、大切な友達に贈る言葉、って感じなんですけど、その中には応援してくださったファンの方々への感謝の気持ち。自分たちが頑張っている姿を見てもらって、元気になってもらえたらっていう気持ちも込めています。

渡邊悠：本当に莉子ちゃんの言う通り、デビュー直後に試練がある中で、ファンの方々からメッセージを手渡ししてもらったり、ライブで同じ時間を共有することによって、「この人たちがいるから、僕らも頑張れるんだ」って気持ちを得られたんです。 そうした経験を得た僕たちなりの、The Sketchbookなりの成長。みんながいたからこれが出せるんだっていう気持ちの集大成として、『Message』を届けたいと思っています。