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globe(小室哲哉)『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』インタビュー



globe(小室哲哉) 『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』 インタビュー

 globeやHYDE/木村カエラ/倖田來未/坂本美雨/TRF/AAAなどカバーアルバム『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』参加者は勿論、日本の音楽シーンを支えるトップアーティストたちの話にも言及。その音楽人生における世界に向けたラストミッションについても語ってくれた。日本……いや、世界の音楽シーンの未来を占うインタビューとなっているので、ぜひご覧頂きたい。

「また自分に寄り添ってくれる音楽を作ってくれよ」っていう気持ち

--globe20周年を迎えた8月9日に新宿ステーションスクエアでイベントを行って以来、今年は様々な場所でglobeの音楽を精力的に発信していますが、どんな感慨を持ってひとつひとつのイベントやプロジェクトに臨んでいますか?

※globe / 「FACE(20th Special Edit Version)」
※globe / 「FACE(20th Special Edit Version)」

小室哲哉:他のアーティストの20周年とは事情が違っていて、精力的にツアーをやったり、ベストアルバム+新曲を作ったり、そういうあたりまえのことが出来ていないんですけど、それでも出来ること。ミッションをひとつひとつ形にしていたらもう年末になっていました。TM NETWORKの30周年プロジェクトのときのようにそこまでglobe漬けという感じではなかったんですけど、それでもglobeを通していろんなことを皆さんに思い出してもらった年であることは間違いない。それぞれの学生の頃のはなし……まさに歌詞(Precious Memories)通りなんですけど(笑)。あとは来年でここ数年続いていた様々な周年が終わるので、そこでもう1回ぐらいは何かしらglobeの足跡を残していくつもりでいます。

--8月9日のイベントでは、客席からは「ありがとう!」「おめでとう!」といった歓声がいつまでも鳴り止まず、デビューから20年経った今もglobeは愛され続けているんだなとしみじみ感じたんですが、小室さんはいかがでした?

globe(小室哲哉)『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』インタビュー

小室哲哉:僕の立ち位置がTM NETWORKとは違っていて、やっぱりglobeの場合は「=KEIKO」だったので、あそこにKEIKOがいないっていうのはちょっと残念……というよりは、かなり残念。あそこでひょっとしたら登場できるんじゃないか? この年には復活するんじゃないか? みたいな期待もしてくれていたと思うので、そこらへんは……間に合わなかったって言い方も変なんですけど、だんだんだんだん治っていくような病気でもないし、いまだに「どうなのかな?」っていうのが正直なところなので。そんな状況でもglobeに注目してもらえるのは嬉しいというか、感謝しています。

--実際、あの日のイベントは現場でもネット上も大盛況でした。

小室哲哉:改めてこのソーシャルの時代で皆さんのレスポンスを直接聞いて、あの時代に一気に数百万枚、延べで考えたとしても1000万人近くの人がいっぺんに聴いてくれていた時期があったというのは、今から考えると凄いことだったなと改めて感じました。今の音楽業界で考えたら、1日とか1週間で何百万人が同じ曲を聴くなんて有り得ない訳ですから。でもそれは実際に起きたことだったんだなとは、このタイミングで改めて実感してます。

--特に1stアルバムを誰もが一斉にCDショップへ買いに行った現象は、当時で言えば『ドラゴンクエスト』のソレに遜色ないものでしたからね。何百万枚のCDが一瞬で売り切れるという。たしかに今は有り得ない。

小室哲哉:音楽でそういう状況っていうのはないですよね。1stアルバムは出荷時点で200万枚を超えていたので。

--globe20周年プロジェクトを走らせたのは正解だったと感じている?

小室哲哉:うん。それで誰が一番良かったなと思っているかと言ったら僕だと思う。実績とか業績とかもあるかもしれないですけど、それに対しての責任も僕にはあるので。globeを聴いてくれた、そこにお金や時間を費やしてくれた人たちの「また自分に寄り添ってくれる音楽を作ってくれよ」っていう気持ちに応えたいというか、そういう前向きな気持ちにさせてもらえたことは大きい。「あのときそうだったね」っていう思い出で終わらせないようにしてくれた。なので、待ちながらも前に進む。そういう刺激をもらえたので、良いことをやらせてもらったなと思ってます。

--また、10月25日には、中国・上海のアカデミーシアターでピアノコンサートを開催。こちらは実現してみていかがでしたか?

小室哲哉:15年ぐらい前、2000年ぐらいまでは海外での活動が多くて、なんとか「アジアのアーティスト」「アジアの音楽」というポジションを作りたかったんですけど、気付けばあっという間にK-POPがアジアを席巻することになって……どんなに緩く考えても、質も実績も両方ともK-POPが席巻して成功しているのは間違いないと思うんです。特に上海という場所はK-POPにとっても一番大事な主要都市、東京と同じような街になっているので、その中で自分ももうちょっときめ細かくアプローチしていきたいなと思っていて。やっと来年ぐらいから本業というか、音楽プロデューサーに戻れるので、それで急いでK-POPに追いついて、同じようなレベルのところには持っていきたい。日本を通り越してアメリカのものを吸収して発展している場所とは言え、日本のことも意識はしている訳なんで。大事なマーケットですから。しかも僕のことも業界の人間はみんな知っていて、ちょっと忘れられていたけど、ちょっと動けば「また小室哲哉もアジアに進出してくんのかな?」って思うとは思うので、すごく長い道のりですけど、なんとなく土壌やインフラみたいなものは出来がってるし、僕もそこに少しは種を蒔いてきていたので、20年後の東京オリンピックまであと4年、このタイミングで動くのはちょうどいいかなって。何かやれる実感があるので。

--ピアノコンサートについての質問がとんでもないビッグプロジェクトの話になって返ってきて驚いてます(笑)。

※globe / Love again
※globe / Love again

小室哲哉:10月に上海に行ったときはピアノコンサートをやって、あとはゆっくり観光するぐらいのイメージだったんですけど、全くそんな感じになれなくて。少なくとも東京よりは確実にネット社会だし、エンターテインメントに飢えてもいるので、そのエネルギッシュさは東京のほうが全然劣っていると感じたので。あと、テレビ番組のロケでベトナムに行ったんですけど、そのときは中1ぐらいの女の子の部屋を覗かせてもらって。そしたら壁中がK-POPのアーティスト。1枚だけテイラー・スウィフトだったんですけど、日本人はゼロなんですよ。「ん~、これはイカンな」と(笑)。「もうちょっと僕が出来ることがあるだろうな」とすごく思って。TM NETWORKの映像作りでジャカルタに行ったときも「こっちは盛り上がってるなぁ~」って感じたんですよ。単一民族じゃないからなのか分かんないんですけど、日本よりジャンルが雑多なんですよね。みんな、いろんなものが好き。日本もそうなんですけど、遠めで見ると「日本は日本っぽい」ってなっちゃう。そういうアジアの諸国は欧米みたいにきっちりジャンルが分かれているところもあるので、それだけ意外と優れてるんじゃないの?って。日本に追いついていると云うよりは、簡単に追い越されちゃうんじゃないの?って。そうやって今年はあらゆるところでアジアの勉強はしてきたなって思います。

--前回のインタビューでは、アジア規模でのどでかい凄いフェスが出来たら……みたいな話も飛び出しましたが、アジア全体の音楽市場にはまだまだ明るい未来があると感じている?

小室哲哉:そうですね。全世界が狙ってるマーケットだなっていうのはすごく感じました。日本みたいにエンターテインメントに対しての法規制が厳しくないので、だからフェスとかも「東京じゃ出来ないけど上海なら出来る」みたいな事例がある。簡単に欧米のものがアジアには行けちゃう。「なんでオランダとかスウェーデンのDJは日本には来ないけど、中国には行くんだろうな?」って思っていたんですよ。一般的な感覚だったら上海より東京に行くじゃないですか。でも向こうは人口も多いし、ニーズもあって、欧米のそのままのフォーマットでやれる。それは実際に行って感じました。

--人口も多くて、自由度が高くて、経済的にも潤っているってなると、エンターテインメントをする身からすると最強のエリアですよね。

小室哲哉:最強のエリアですよ。東京のエンタメ好きの人口を軽く超えられる街が山ほどあるので。

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僕のラストミッションみたいな感じになると思います

--今はアジアに留まらず、きゃりーぱみゅぱみゅやBABYMETALといったポップアイコン中心に日本のアーティストがワールドツアーを敢行する例も増えてきましたが、この流れにはどんなことを感じていますか?

globe(小室哲哉)『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』インタビュー

小室哲哉:決して悪いことではないし、とても素敵なことだとは思うんですけど、でもまだサブカルチャーなので。分母がデカいんで、3万人でももしかするとライブハウスぐらいの規模感なんですよね。0の数がふたつぐらい違うイメージを持ってないと勘違いしてしまう。なので、全然良いことだとは思うんですけど、それに対してK-POPはメインストリームに行こうとしているので。それが出来ているのは今アジアの中ではK-POPだけなので、日本でももっとメインストリームを狙えるものが出来てもいいんだろうなとは思ってます。そこらへんを勉強できたことは小室哲哉プロデュースワークにおいてタメになりましたね。どこにフックをかけるべきなのか、どんなものが求められているのか、そういった部分も含め。

--小室さんは今までも海外進出に関しては様々な形でアプローチされてきましたが、今は状況的に受け入れられる、土壌を作れる予感がしている?

小室哲哉:そうですね。しかも日本のインポートだけじゃなくて、コンテンツのエクスポートというもので行かざるを得ないとも思ってます。日本の音楽業界全体の市場を考えても、確実にパッケージビジネスはマーチャンダイズみたいなものになりつつある訳で。あとは、今なら日本を空けても空けなくてもソーシャルのおかげで「どこにいるのか」はそんなに心配しなくていい状況もあるし。これが20年前、globeとかでドカっと3ヶ月とか半年とか空けるともう「全く見なくなったね」みたいな状況になっちゃいましたけど、今はそこまで考えなくてよくなったので。そこらへんを見据えて動かないと、日本のエンタメ業界をもう1回、ピーク時だった98年のような状況に持ち上げていくことは出来ないんじゃないかなって思います。

--では、小室さんがアジア中を駆け回る未来も近い?

小室哲哉:自分がパフォーマンスするという形ではないかもしれないですけどね。そのアジアに対しての動きの中でひとつだけ助かったのは、僕が90年代から10年ぐらい日本でやってきたことを、今、アジアで一番決済力がある人たちも「J-POPはこういうものなのか、凄いな」って体験している。実際に話しても90年代の僕の音楽の話になるんですよね。「そんな古い話、知らないでしょ?」って言っても「いやいや、凄い時代でしたよ」って言ってくれる方が相当数いるので、そこはすごく助かりますよね。ここ10年は日本の音楽シーンよりK-POPのほうがアジア諸国的には面白かったし、それは欧米から見ても、ヨーロッパのDJたちから見ても、アメリカのヒップホップアーティストたちから見ても同じことで「今は日本より韓国のほうが面白い」ってなっていたので、時代の流れ的には、僕らの時代、そのあと引き継いでK-POPの時代……で、次どうすんの?っていうのが今なんですよ。音楽の最後の大事なマーケットで何が主流になるのか。

--そこに小室さんが絡んでいく?

小室哲哉:「そこに絡めるか絡めないか」っていうところは、僕のラストミッションみたいな感じになると思います。

--今回のカバーアルバム『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』にも世界規模で戦っているアーティストは多数参加されてますが、それぞれどんな基準や想いからカバーしてもらうことになったラインナップなんでしょう?

※HYDE / 「DEPARTURES(#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」
※HYDE / 「DEPARTURES(#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」

小室哲哉:これまで曲を提供していたりとか、知り合い同士だったりとか、プロデュースしてきた仲だったりとか、どこかしら何かしら絡みがあって参加してもらったケースがほとんどで、梅田彩佳(NMB48)もDiVAへの楽曲提供で元々繋がりがあっての参加なんですけど、HYDEだけは違って。globeがフルで活動していたとき、ずっとアメリカにいたんですけど、その間にGLAYやLUNA SEA、L'Arc~en~Cielといったバンドが日本を席巻しているって聞いて、それまで全く知らなかったんですよ。帰ってきたら「すげぇことになってるな」と思って、そのときに「こういう子たちが出てくるんだったら、日本の音楽もこれからアジアとかガンガン行くんだろうな」って。その中でもHYDEは「YOSHIKIと一緒で、間違いなく世界へ行くんだろうな」って感じがしていたんですよ。

--あの時点で気付いていたと。

小室哲哉:で、YOSHIKIはどんどんどんどん海外へ進出していったし、HYDEも海外で頑張っていると思いますし、その中でYOSHIKIとはV2とかいろいろやったりもしていたので、HYDEとも絡んでおきたいなって。いずれまた何かお願いすることが出てくるかもしれないし、そう考えて今回アプローチしたら「良いものを作ろう」っていうことで、メールでのやり取りではあったんですけど、結果的に相当なやり直しとかもしたりして、久々じゃないですかね。1曲に対してあそこまで時間を費やしたのは。「もうちょっとだね」みたいな感じで納得がいくまで詰めていく。それで次元の違うものがひとつ出来たので、この先、何か協力できることがあったらいいなとも思ってます。間違いなくこのアルバムを牽引してくれたのはHYDEの「DEPARTURES」だし、今回は明らかに協力してもらったので。

--「FACES PLACES」をカバーした木村カエラ。彼女とはどんな流れで制作していったんでしょう?

※木村カエラ / 「FACES PLACES(#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」
※木村カエラ / 「FACES PLACES(#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」

小室哲哉:彼女も「globeが好きだ」と公言してくれていたみたいで。カエラちゃんとは実際に一緒にスタジオに入って、一緒に制作して、ボーカルディレクションとかも一緒にやったんです。あたりまえですけど、皆さん、自分のスケジュールがある訳で、どうにかスケジュールをこじ開けて参加してくれているんですよ。その中でカエラちゃんも念入りに打ち合わせして、丸々1日スタジオに入ってくれたりして、そこで自分のイメージみたいなものを共有して「こういう仕上がりだったらいいな」というものを目指していったんですけど、久々にプロデュースワークを思い出す感じでしたね。「木村カエラ節をどうにか出したいな」みたいな。「globeの曲を歌いました」で終わらせるんじゃなくて「木村カエラが歌うとこうなるよ」というものが作れたかなと思ってます。

--「木村カエラ節」と仰いましたが、元々彼女にはどんなイメージを持っていたんでしょう?

小室哲哉:自分を相当持っているので、自分のやりたくないものはやらない。それで全然お構いなし。自分のやりたいこと、自分がクリエイティブしたいものをしっかり持っているんだろうなと思っていて。だからヒット曲をもっとどんどん出したり、お茶の間に今以上に浸透していけるタイミングもいくらでもあったと思うんですけど、別にそんなことは気にしない(笑)。ゴーイングマイウェイなイメージでしたね。それこそが「木村カエラ節」だし、そういう子なんだろうなっていうのは今回もつくづく感じました。だから彼女もまさしくアーティストと言える人の中のひとりでしょうね。

--同じく日本を代表する女性ポップスターである倖田來未にはどんなイメージを抱かれていましたか?

※倖田來未 / 「Wanderin’ Destiny (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」
※倖田來未 / 「Wanderin’ Destiny (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」

小室哲哉:デビュー時から知っていて、今よりもっと若いときに1曲提供していたので、今回のカバーアルバムに向けて動き出すときに「何か歌ってよ」「自分に合う曲を見つけておいて」って振ってはいたんですよ。そしたら「何歌おうかな?」ってすごく楽しそうにしていたので、もうあとは自分の世界観でやってもらえたらなと思っていたら、本当に自分の世界観を崩さず「Wanderin’Destiny」をカバーしてくれて。これだけのアーティストが参加してくれたアルバムなので、これが90年代とか00年代前半だったら日本中が面白がってくれただろうなとは思うんですけど、今は本当に情報過多なので「globe、歌ってたんだ?」って感じにあっという間になってしまう。そこはちょっと残念なんですけど、それも分かっていながらやってくれた。そういうところじゃなくて「面白そうなプロジェクトだ」ってことで参加してくれたので、今後自分が20周年を迎えるときとかに「そういえば、globeの20周年のときにカバーしたなぁ」ってひとつの足跡として感じてもらえたらいいなとは思ってます。

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「おまえが頑張り続けてくれないとglobeすら無くなっちゃうよ?」

--足跡という意味では、倖田來未の「Wanderin’Destiny」などは自身のライブで歌い続けてもらいたいですよね。ただでさえドラマティックな曲なのに、それをさらに倖田來未らしくドラマティックかつエモーショナルに仕上げているので、これがアルバムの中だけに収まるのは勿体ない。

小室哲哉:そうですよね。「くぅちゃんに作った曲なのかな?」って思うぐらいハマってると思います。

--また、昨年【小室哲哉 featuring 坂本美雨 ビルボードライブ東京】に感動させて頂いた身からすると、坂本美雨の参加、しかも「Precious Memories」のカバーはとても嬉しく思いました。

※坂本美雨 / 「Precious Memories (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」
※坂本美雨 / 「Precious Memories (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」

小室哲哉:美雨ちゃんは出産が控えていたので、出産前に歌っておきたいというところで、夏前に1番手でやってくれたんですけど、楽曲をすごく大切にしてくれているのが伝わってきました。凄いお父さん(坂本龍一)とお母さん(矢野顕子)を持っている人が僕の楽曲を好きでいてくれて、お父さんお母さんの音楽の素養からしたらすごく稚拙なものだと思うんですよね、僕の音楽は。でも何故か好きでいてくれて。今一緒に「#RUN」という楽曲でスペシャルユニット(小室哲哉feat.神田沙也加(TRUSTRICK)&tofubeats)を組ませてもらってる神田沙也加ちゃんも、実は凄いフリークで。それも今年知ったんです。なので、本当に「発見」の年でしたね。みんな、やっと教えてくれた。

--今年になってこぞって情報解禁(笑)。

小室哲哉:今年が情報解禁年だったんでしょうね(笑)。「へぇー」「そうだったんだね」って言うことが多かった一年でした。

--坂本美雨さんはデビューして間もなく小室哲哉フリークであることを公言していましたよね。それを教授がシニカルなネタにして話したりしていて(笑)。

小室哲哉:そんな教授がまたゴールデン・グローブ賞にノミネートされたりして。なんかすごく良い関係ですよね。ミュージシャンシップというか、音楽をやり続けているみんながいて良かったなって思える年でしたね。ちょっと話が逸れますけど、つんく♂が音楽を続けているのも良い伏線だと思いますし。

--つんく♂さんが声帯摘出をした後、小室さんは「一緒に何かやっていこうと強く約束しました」と仰っていましたよね。

小室哲哉:そうですね。つんく♂本人やスタッフも含めて「何か形にしたいな」というのは思っているので、まだ具体的には見えていないんですけど、何かこの先出来たらいいなと思っています。

--また、今作『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』には、TRF、hitomi、AAAといったTKワークスの歴史を語る上で欠かせない面々も参加していますが、自身の曲を多く歌い届けてきてくれた面々にglobeの曲をカバーしてもらうのはどんな感覚でした?

※TRF / 「wanna Be A Dreammaker(#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」
※TRF / 「wanna Be A Dreammaker(#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」

小室哲哉:AAAはここ数年の実績としては一気に人気者、トップアーティストの仲間入りが出来たらしいので、そういう意味ではフルプロデュースという形ではなかったですけど、僕のワークスの代表的な存在にもなったのかなと。なので今作にも参加してもらって。あと、TRF、hitomi、この2組はもう完全に同じ時代を一緒に駆け抜けたアーティストだし、TRFは僕のスターター的な役目を担ってくれた人たちだし、何が感謝っていまだに居続けてくれている。エネルギッシュにやり続けてくれていることが嬉しいですよね。そこまで見越して人選した訳じゃないんですけどね。何十年先まで見越して決めた訳ではないんで。

--ただ、皆さんがそう思っていたかは分からないですけど、華々しい小室哲哉プロデュース時代があって、その時代を超えていこうとする物語がそれぞれにありましたよね。それが各アーティストを強靭にした部分はあるんじゃないかなって。

小室哲哉:「何とか自立しなきゃ」「親離れしなきゃ」みたいな気持ちはすごくあっただろうし、それがパワーになって頑張ってこれたのかなとは思いますね。だって【a-nation】のTRFを観てても思いますけど、あの場で披露している曲をオンタイムで聴いていた世代は減ってきている訳で、お父さんお母さんたちがオンタイムで聴いていて、それを教えてもらった子供たちが楽しんでいる状況。でもそのあいだずっとTRFは実体というか、生で歌い踊り続けていて、別に誰かに引き継いでいる訳でもないですから、そこは感謝しなきゃいけない。そういう意味では、今回のアルバムは僕の思い出のアルバムをプレゼントしてもらったような感覚もあります。

--あと、おそらく意外な人選と思われたであろう梅田彩佳(NMB48)。彼女は宮本亜門ミュージカルでも活躍していたメンバーではありますが、そうした経歴も知ってのオファーだったんでしょうか?

※梅田彩佳(NMB48) / 「Sa Yo Na Ra (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」
※梅田彩佳(NMB48) / 「Sa Yo Na Ra (#globe20th -SPECIAL COVER BEST-)」

小室哲哉:梅ちゃんも象徴的なひとりとして参加してもらってるんですけど、同じ時代にずーっと第一線から落ちないでやってきたあきもっちゃん(秋元康)。彼がプロデュースしているAKB48グループの中から繋いでもらったんですけど、梅ちゃんは総選挙メンバーの中で唯一の昭和生まれらしいんですよ。あとは全員平成生まれ。最後の昭和生まれ……という意味でもアルバムの最後の繋ぎに相応しいなって。

--そこからラストの小室さん自身による「Feel Like dance (Piano Solo) 」へ入っていくという。

小室哲哉:正直、この1枚のアルバムには入りきらないというか、僕のフリークがクリエイターの中にはたくさんいるんですよ。特にシンセや打ち込みを使う人たちの中にはもっと濃いフリークがいる。そんな彼らがプロデュースしている人たちもまだまだたくさんいて、そういう人たちが入りきらなかったんですけど、それがきっと20周年第3弾アルバムになるのかなって思っています。いわゆる業界の表舞台じゃなく裏側で「小室哲哉がいたから面白くなった」と思ってくれているクリエーターとやりたいなって。だから、今回のアルバムでは、僕は即興に近いピアノソロをサラッと。「まだ「Feel Like dance」とかもあるよ?」っていうフリみたいな感じで最後に入れることにして。

--予告編なんですね。

小室哲哉:ですね。

--その次の展開も楽しみなglobeですが、小室さんは今回の20周年プロジェクトでどんなことが成し遂げられたらいいなと思っていますか?

※globe / Feel Like dance
※globe / Feel Like dance

小室哲哉:「小室哲哉には使命があるよ」「だからglobeが出来たんでしょ?」みたいな感じのことを皆さんから言われるような、そういう感じで締められたらいいのかなと思ってます。「globeはいわゆるバンドとは違うんだから、君はそうじゃないんだから、待ってるあいだにあなたがいろいろ頑張らなきゃいけないんだよ。だからいろいろやってね」っていう感じで、新しいエンタメ、アジアのマーケットの話もそうですけど、「いろいろ示してよね」という使命感を僕に与えてもらえるといいのかなって。あと、本当のglobeファンに対しては、3人のglobeというものを変に焦らしてもしょうがないとは思っていて。それだけは僕も本当に裏も表もなく分からないので、だったら僕が「おまえがglobeっていうのを作ったんだろ?」「おまえが音楽業界で頑張り続けてくれないとglobeすら無くなっちゃうよ?」みたいな感覚で動いていきたいと思ってます。

--今回のインタビューは、これまで以上に小室哲哉の覚悟や生き様を感じました。

小室哲哉:20代~30代半ばぐらいまではやりたいことをやっていて、そこからいろんなことがあって、やっぱり自分の音楽人生の中での使命感と責任感みたいなものがどんどんどんどん増えてきて、圧倒的に増えてきたんですよね。良い意味での使命感というものを与えてもらってきたと思うので、それを最後まで全うしたい。だから実はすごくプレッシャーを感じています。ただ、60年代、70年代に活躍された方もギリギリ知ってるし、2015年現在バリバリ現役の子たちのこともなんとなく知ってる、そういう両面を見てきている僕みたいな人間が少なくなってきているんで、そういう意味でも使命感は増してるし、自分がやらなきゃなとは思ってますね。

Interviewer:平賀哲雄
Photo by munemuranaoya

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