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須長和広(from quasimode)『MIRROR』リリースライブ記念インタビュー
quasimodeのベーシストであり、aikoや松任谷由実など数々のポップ・スターのサポート・ミュージシャンとしても活躍する須長和広。そんな彼が、いま自分の表現したいことを詰め込んだという初ソロ・アルバム『MIRROR』を9月9日にリリースする。ミュージシャンとして成長する中で「quasimodeだけでは表現できなかったこと」と感じたという音楽とは果たしてどういうものなのか? 『MIRROR』リリースから2週間後の9月21日にはビルボードライブ東京にて、さらにその後10月1日にはビルボードライブ大阪にて、本作のリリース記念ライブを行う彼に、現在の心境や、作品への思いについて話を聞いた。
何回か聴いて頂いて、何かしら残ればいいなって思っています
――まずは、ソロ・デビューアルバムのリリースおめでとうございます!いまは発売日を待つという状況だと思いますがどんな心境ですか?
須長和広:とても楽しみなんですけど、同じくらい緊張していますね。このアルバム『MIRROR』を聴いてくれた方からどういう反応があるのかなーっていう緊張と、不安と楽しみが入り混じっている感覚ですね。
――もう須長さんの周りの方はアルバムを聞いていると思いますが反応は?
須長和広:私のことを良く知っている人にはもう渡したんですけど、「須長っぽさが出ていていいね」って言ってくれています。
――「須長さんっぽさ」って?
須長和広:私は、自分のことを「ふわっとしている」と思っているんですよ(笑)良くも悪くも「つかみどころがない」とか「何考えているかわかんない」とかよく言われるんですけど、自分でもそう思っているし、周りに言われてもそれが悪口だと思わないので、その感じが音に出ているって言ってくれているんだと思います。
--浮遊感があるみたいな感じですかね?
須長和広:抽象的というか、バシっと何かを提示するよりも、聴いた人の中で自由に解釈できるような。つかめそうでつかめないみたいな。何回か聴いて頂いて、何かしら残ればいいなって思っていますね。私がそんな曲が好きなので多めになっています(笑)。
――なるほど(笑)。あとこのアルバムのジャケット写真も特徴的ですよね。白黒でベースを掲げていらっしゃいますが。
須長和広:ジャケットは平間至さんに撮影して頂いたんですけど、自分の想像以上のものを撮ってもらえました。ジャケットの雰囲気をものすごく気に入っていて、抽象的な曲が多いアルバムのイメージを、ビジュアルで具体化してくれたと思っています。
――アルバムの制作はどれくらいだったんでしょう?
須長和広:構想からレコーディングを終えるまで、およそ1年半ほどかかりましたね。ちょっと曲を溜めきれなくって(笑)。
――ソロでのアルバムっていうのは前から興味があったですか?
須長和広:そうですね。やっぱりquasimodeだけでは表現できなかったこともやりたいなって思っていたし。30歳を超えてから、quasimodeだけではなく、やっぱり自分のもっと深い部分を表現したいなって常々思っていて、その気持ちがどんどん強くなってきていたので、今回それが実現できて良かったですね。
――年齢と共に、そうゆうのって変わったりしますよね。
須長和広:本当にそうですね。20代の時は、バンドもやって、仕事もしっかりこなして、楽しくベース弾ければいいやって思っていたんですけど、今となってはそれだけじゃ足りないし、もっとこうしたいっていう気持ちも生まれてきて。いつも音楽に触れていると、興味が変わったり、新しい刺激も増えて視野も広がって。そう思うのは自然かなって思うので、その気持ちに従って制作しました。
――アルバムはポップスというイメージで作られたんですか?
須長和広:ジャズというよりは、自分なりのいい曲を書いて、その中で歌詞も曲も演奏も表現できれば、というイメージで曲を書いたので、その辺を聞いてもらえたらうれしいですね。
――では、その歌詞のお話しも聞きたいんですけど、ブログを拝見させていただいた時に、「暗い歌詞しか基本書けない」って書いてあったんですけど、これは?
須長和広:先行でリリースしている曲が「リズム」というタイトルなんですけど、アルバムの中で最後に歌詞をつけた曲なんですよ。他の曲が暗すぎるので、明るい曲がないと暗い人だと思われるなと(笑)。それで、明るい曲を書いてみようと思ったんですね。そういった意味で、「リズム」しか聴いたことない人に、全部明るい曲しかないと思われるのも困るって思って、ブログに書きました(笑)。
――「暗めの歌詞が多いよ」っていうニュアンスだったんですね(笑)。
須長和広:でも、やっぱり日頃からハッピーな曲よりも、憂いのある曲がどちらかというと好きですね。
ソロだと自由にできるのが強みですよね、
その分責任も重い(笑)
――今回の『MIRROR』は全13曲になっていますが、特に思い出深い曲を教えてください。
須長和広:4曲目の「The Butterfly」は、イメージとコード進行と歌詞が一緒に出てきて、すぐに完成したんです。歌詞もすらすら書けました。曲作りをしていて、いくら作業しても出てこない時ってあるんですよ。ただ、たまに神様が降りてくるときがあって(笑)。その感覚でしたね、貴重な経験でした。
――その日にバシっとハマった感じだった(笑)。
須長和広:他だと、1曲目「Coexistence」はかなり悩みましたね。いま7拍子でやっているんですけど、最初4拍子でやっていて。その後、なんか普通だなと思って5拍子にしたんですよ。それもそれなりにハマッたなと思ったんですけど、もうちょっとイケるかもと思って、7拍子にしたらすごく良くなったんです。あと、「空が落ちて」っていう曲も最初は4拍子で割とアダルティなロックっぽくしていたんですけど、なんかあまり面白くないなと思って、それで3拍子にしたらハマりがよかった(笑)。本当にいろいろやってみました。バンドだとみんなの意見を尊重するんですけど、ソロだと自由にできるのが強みですよね、その分責任も重い(笑)。
――大橋トリオさんやMaya Hatchさんなどがアルバムに参加されていますが、これは自分からオファーを出したんですか?
須長和広:そうですね。大橋さんに関しては、昔から付き合いがあって、仲良くさせてもらっています。前々から「いつか必ずソロ・アルバムを作るので、そのときは参加してもらえませんか?」っていう話しをさせてもらっていて、改めて正式にお願いしたら快くOKしてくれて。大橋さんは演奏やプロデュースで参加する事は多いけど、歌で他の人の作品に参加するってあんまりないから「良いんですか?!」って感じでした(笑)。大橋さんには、デモを何曲も提出したんです。大橋さんのアルバムになさそうな曲で、大橋さんが歌ったら合いそうだなって曲を当てていったから、なかなか通らなかった(笑)。大変でしたけど、是非参加して頂きたかったので頑張りました。
--「この曲、どうでしょうか?!」みたいな感じで何回もデモを出したんですね(笑)。
須長和広:そんな感じです(笑)。sugar meさんに参加してもらった「Step Into The Sky」っていう曲は、可愛らしい女性の声の感じが合うかもしれないと思って、デモを聞いてもらったら快くOKしてもらいました。どうせならデュエットしようと思って、途中若干デュエットみたいになっています。あと、神谷洵平さんとKan Sanoくんは、このアルバムのレコーディングでドラムとキーボードを全部担当してもらっているんですけど、自分の歌だけだと飽きるし、他のゲストの声も入れたほうがいい!って話して、2人に「歌ってみる?」って聞いたら、「いきなりすぎて動揺しているから1日考えて連絡する」って言われて。それで連絡が来たら「参加する」って言ってくれて、2人に歌ってもらいました。神谷さんは雰囲気のいい歌声だったので、曲とハマりがよかった。初めて歌を録ったって言っていました(笑)。
――ボーカル・デビューじゃないですか(笑)。
須長和広:Kanくんも最近歌い始めたって言っていて、日本詞で歌ったのは初めてって言っていましたね。いまKanくんは、彼自身のアルバムを作っていて、日本語で歌っているようなので、そのきっかけになったのかなと勝手に思っています。Maya Hatchさんは、デモを聴いてもらったら「楽しそう」って言ってもらえて参加して頂きました。歌詞もすごく考えてくれて、自分とMayaさんのイメージをすり合わせて、最後の最後まで考えてくれました。
――そんな渾身のアルバムのリリースライブが9月21日にBillboard Live TOKYO、10月1日にNAGOYA Blue Note、10月2日にBillboard Live OSAKAで行われます。どんなライブにしたいですか?
須長和広:構想真っ最中ですね。ギターの椎谷さん以外は、皆さんそれぞれ歌う曲があるのでそれをフィーチャーして、勿論演奏でもフィーチャーして、そんなライヴにできればいいなって思っています。私はベーシストで、歌っていますけど、あくまで演奏も楽しみたいし、お客さんにも両方楽しんでもらえたらいいなと思っています。その辺もリハとかで詰めていきたいですね。
――ライブに向けてはどんな気持ちになっていますか?
須長和広:楽しみと緊張、両方ですね。アルバムをリリースしてから2週間くらいのライブなので結構緊張します(笑)。いろいろな方が来てくれると思うので、いまの須長和広を見てもらえたらうれしいです。
MIRROR
2015/09/09 RELEASE
UCCQ-1046 ¥ 3,300(税込)
Disc01
- 01.Coexistence
- 02.リズム
- 03.Spicy featuring 大橋トリオ
- 04.The Butterfly
- 05.空が落ちて
- 06.Step Into The Sky featuring sugar me
- 07.Showtime
- 08.After The Storm
- 09.Suzanne featuring 神谷洵平
- 10.Help Me
- 11.Spring Wind featuring Kan Sano
- 12.ミレニアルズ
- 13.Everywhere featuring Maya Hatch
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