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【FUJI ROCK FESTIVAL '15】総力レポート
7月24日~26日から新潟県・苗場スキー場で開催され、約11万人の音楽ファンが一同に会した【FUJI ROCK FESTIVAL '15】。晴天に恵まれた今年のフジロックには、ヘッドライナーのフー・ファイターズ、ミューズ、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズをはじめ、200組以上の海外・日本人出演アーティストが出演、今年も様々な感動とドラマが生まれた3日間となった。
骨折した経緯を映像&スライドショーで丁寧に説明してくれた、永遠のロックンロール小僧デイヴ・グロール、完璧なステージングで観るものの度肝を抜いたミューズ、「Don’t Look Back in Anger」で感動的なフィナーレを演出してくれたノエル兄貴らのヘッドライナー勢はもちろん、まさに異次元!ネクストレベルなライブを繰り広げたFKAツイッグス、最高にダンサブルなセットで苗場を躍らせたベルセバや恐るべきキッズ=ザ・ディストリクツ、さらにはトッド・ラングレンの衝(笑)撃のステージまでBillboard JAPAN編集部が総括レポート!
12:50~
デビュー以来、着実に人気を伸ばし、いまやアークティック・モンキーズやフォールズらUKロックのビッグ・アクトの後続集団先頭に控えるスター候補生となったザ・ヴァクシーンズ。今回のフジでは<GREEN STAGE>の出演の大役を得たが、そのステージングは間違いなくステージのサイズ感に見合うものだった。サポートメンバーを加えて厚みを増したウワモノと、タイトなビートを軸とした演奏は現代版ウォール・オブ・サウンドの優れたバリエーション。加えて、最新アルバムからの新曲「ドリーム・ラヴァー」ではダビーなアレンジを効かせるなど、単なる“ロック野郎”では片付けられない音楽的な深みが魅力だと思った。加えて、非常に印象的だったのが、大げさな身振りを交えて歌うヴォーカル、ジャスティン・ヤングのパフォーマンス。ロックの系譜におけるシアトリカルな歌な手の系譜に連なる、笑えて泣けるヴォーカルだ。シャンソンからの影響を感じるヴィブラートも、シンガーとしての個性を感じて興味深かった。
14:00~
今年出演した若手バンドの中で、その計り知れないポテンシャルを見せつけてくれたのが、米フィラデルフィアを拠点に活動する20代そこそこのキッズ、ザ・ディストリクツだ。哀愁漂う激シブな歌声とチョビ髭が魅力の(?)フロントマンのロブがハーモニカをプレイする「Funeral Beds」や「Long Distance」などアメリカーナにも通ずるゆったりとしたナンバーで固めた序盤から、イントロで大歓声が上がった「4th and Roebling」などでジワジワと会場を温め、ラストは8分強のナンバー「Young Blood」で烈々たるジャム・セッションに突入。佳境に入ると、ロブが「It's a long way down from the top to the bottom~」の感傷深いリフレインとともにギターを荒々しくかき鳴らしながら、ステージ上を野獣のごとく暴れまくり、観客の盛り上がりは最高潮に。これこぞ“ライブ・ミュージック”と言わんばかりに、身魂をもって表現してくれた彼らへの熱のこもった拍手は撤収が始まっても、しばらく鳴り止まず。この直後にMTVのブースで行われたミニ・ライブで最後にロブがソロで情緒たっぷりに披露してくれた「Suburban Smell」も秀逸で、感銘すら覚えた。これからが本当に楽しみなバンドに出会えた気がした。
16:20~
今回、ほぼ唯一のヒップホップ勢の参加となり、恵まれたシチュエーションとは言いづらかったジョーイ・バッドアス。実際、序盤は会場の雰囲気を掴むのに腐心していた印象があった。だが、一度調子に乗り出せば、やはりそこは未来の大物候補。DJと、さらに地元のクルー<プロ・エラ>の同僚ラッパー、Nyck Cautionも引き連れたパフォーマンスで、どんどん観客を引き込んでいく。曲間に何度も要求される「プロ!プロ!プロ!プロ!プロ!プロ!プロ!エラ!」というコールもすっかり耳に馴染んだ。生音のサンプリングによる浮遊感のあるトラックも気持ちよかったし、一曲一曲がサクッと終わるセットリストも興味深かった。こういう若手のヒップホップ・アクトを日本でももっと観たい!
17:50~
最近すっかりオールバックが定着したフロントマンのティム・ウィーラーが自らセッティングをしながら、トレードマークのフライングVを片手に「Shining Light」のコーラスを歌ってくれるというプチ・サプライズから幕開けしたアッシュのステージ。8年ぶりの新作『カブラーモ!』収録の「Evel Knievel」でライブがスタート。1992年からかれこれ20年近く一緒に活動していることもあり、ティム、マーク、リックの3人による息がピッタリの豪快な演奏が序盤から炸裂。新作からの楽曲は4割、残りは過去6作品からのヒット・ナンバーで構成されたファン歓喜のセットリストということもあって、過去の曲をプレイした際の盛り上がりが半端なく、新曲をやや申し訳なさそうに紹介する姿には、彼らの謙虚&ファン思いな人柄も伺える。ラストは、名曲「Girl From Mars」~「Burn Baby Burn」の観客を巻き込んだ大シングアロングでフィニッシュ。「Sometimes」とか「Jesus Says」とか、もっと聴きたい曲たくさんあったよ~、と名残惜しい部分もあったが、90年代から今日に至るまで良曲を書き続けている数少なきUKロック・バンドだ、というのを改めて実感させられた1時間だった。
18:50~
こちらの心配心など軽くへし折る圧巻の極悪非道ステージ。レミーの声もしっかり出ているし、フィル・キャンベル(gt)、ミッキー・ディー(dr)の演奏力も抜群で(ソロ・コーナーもすごかった!)、間違いなく今回のフジのベストアクトの一つ。メタラーからもハードコア好きまで、幅広いリスナーに最大限のリスペクトを贈られる彼らだが、その楽曲の多くはいわゆるブルースの進行に基づいていることにも改めて気付かされ、非常に興味深かった。やっぱり根っこは少年期に聴いたロックンロールやR&Bなんだな、と思うと泣ける。演奏後は、3日間でこの日のみ設置されていた花道を歩いて客席近くまで移動。メンバー全員で揃ってお辞儀を披露するという謙虚な場面も。あんなにヘヴィなステージを展開されて、そこまでされたら、それはもう大好きになっちゃうよな~。
21:00~
エモーショナルなステージだった。言うまでもなく、いまやフー・ファイターズは世界一のロック・バンド。そんなバンドのフロント・マンが、いまだに10代の男の子のように何度も「Do you love rock'n roll?」と客席に問いかけていた。そのことに少なからず胸を打たれてしまった。
ライブは予想どおり足を骨折してしまったデイブのための玉座付きセット。しかも、その玉座が花道を前後に動きまくる。さらに、ライブ中盤には懇切丁寧な紙芝居形式の映像で、骨折と玉座の制作の経緯が語られた。隙あらば、とにかく笑いを取ろう。みんなを楽しませよう、という気概がすごい。
演奏曲はとにかくオールタイムベストな選曲で、「Everlong」から始まり、「Pretender」や「My Hero」などキャリアの名曲がずらり。その演奏の多くで50年代から続くロックンロールのリフやメロディーが何度も顔を出すところも、自分たちがロックンロールの系譜の中にしっかり居ることを言外に宣言しているようで最高だった。アンコール最後は「Best Of You」。大サビ前のブレイクではタイミングを引っ張り過ぎて若干つんのめるような感じになっていたが、これだけのビッグ・アクトが未だにぎこちなく、前のめりになっているのも、やっぱりめちゃくちゃ稀有なことだと思う。
22:00~
裏がフー・ファイターズということもあり、観客が少なめ…なのもお構いなしで、のっけからハイテンションなステージで観客の心を鷲掴みにしたルディメンタル。グループのコアは4人だが、ドラムや管楽器を担当する生バンドに加え、アルバム参加のゲスト・ヴォーカルのパートを歌うシンガー4人という大所帯。9月には新作のリリースを控えていることもあり新曲を数多く披露し、初めて聴く曲も多数あったが、ドラムンベースの鋭敏なビートと生楽器の心地良い音色に揺られ、不思議と体が動く。ラストの大ヒット・ナンバー「Feel The Love」では、観客から自然とシングアロングが沸き起こり、メンバーの満面の笑みとともに最高にユーフォリックなフィナーレを迎えた。前評判でライブが素晴らしいというのは聞いていたが、ただダンサブルなだけでなく、こんなにも音楽性に満ちた“生身”なステージを披露してくれるとは。11月には初の単独公演も決定、是非この機会に彼らのライブ力を生で感じて欲しい。
13:20~
<GREEN STAGE>から観た客席を「圧巻の景色」と評した彼女。そのMC中の朴訥とした人柄と、演奏中の没入具合はとても同一人物とは思えない。しかも、彼女だけじゃない。アンソニー・ジャクソンもサイモン・フィリップスも、演奏時の没入の度合いが尋常でない。それは常人には思いもつかないスピードで長距離マラソンをするアスリートのイメージにも通じていた。演奏後のお客さんのリアクションも、歓声というよりため息やざわめきに近いというか。優れたアクトの出ることが多い<GREEN STAGE>ではあるが、この日、上原ひろみトリオがもたらした緊張感と昂揚はやはり格別のものだったのではないだろうか。
14:30~
この日、ある意味ダークホースとも言える素晴らしいステージを繰り広げたのがアクアラング。フェスの場らしいお祭り感のある盛り上がりというよりも、ジワジワと観衆を引き込んでいくようなパフォーマンスだった。ステージメンバーも、本人の弾く鍵盤とサポートの1名だけ。特に、ドラム無しで演奏される曲がいずれも素晴らしく、「Somebody To Love」などは白眉と呼べるパフォーマンスだった。今回、フジの出演は10年ぶりだったということだが、ファンの待望感も極めて高いステージだったように思う。別日のASH等もそうだったが、CDが売れづらくなっている現在の状況下で、しかし、こうして長く愛されているアーティストの来日公演をどのように実現していくかは今後も引き続き重要な課題だろう。その意味でも、やはりフジのような場はずっと続いて欲しい。
15:20~
2013年にfun.のフロントマンとして、<GREEN STAGE>を熱狂の渦に巻き込んだネイト・ルイス。今回はリリースされたばかりのソロ作『グランド・ロマンティック』を引っさげ、これまでのキャリアを凝縮したヒット曲満載のステージで魅せてくれた。どこまでも広がる青空のもと、天性のポップ・ヴォーカリストと称されるネイトの伸びのある歌声が映える「Great Big Storm」でライブがスタート。プリンス「Let's Go Crazy」のカヴァーやfun.以前にメンバーとして活動していたオルタナ・ポップ・バンド、ザ・フォーマットの「Oceans」などレアなナンバーも披露しながら、フロントマンとしての持ち前のカリスマ性で瞬く間に観客を自身の世界へ引き込んでいく。一番のハイライトは、新作からの先行シングルとなった「Nothing Without Love」~fun.の大ヒット・ナンバー「We Are Young」の流れで、一丸となってコーラスを歌う観客の歌声が苗場の山々に響き渡る、まさに圧巻の光景。ひとつ心残りがあるとしたらピンク姐さんとのコラボ・トラック「Just Give Me a Reason」が聴けなかったことだが、来年1月の単独公演では必ず披露してくれるはず…。ヴォーカリスト、そしてソングライターとしてさらなる飛躍を遂げたネイトの今後に大いに期待したい。
17:20~
こちらは3年ぶりの出演、星野源。初出演は10年以上前にSAKEROCKで。SSWとしては苗場食堂が初出演だったというのでまさにフジ叩き上げ。そんな彼が今回は1番大きなステージで「化物」や「夢の外へ」のような気骨の隠れる曲を演奏するのだから胸がすくような気分もある。ドラムに伊藤大地、ギターに浮雲こと長岡亮平らを迎えた鉄壁のバンドに支えられ、その中で実に朗らかに歌う星野源は、どこまでも慈愛に溢れたソウルシンガーのようだった。アップテンポな曲が並ぶ中、しっとり歌われたバラード「くだらないの中に」には胸が打たれてしまった。
18:00~
こちらも活動再開にともない久々の来日となったスーパー・ファーリー・アニマルズ。しばらく新作がなかったこともあり選曲はやはりオールタイム・ベスト。とは言え、約1時間のセットの中で徐々に盛り上げていくようなセットで、いわゆるお祭りモードとはひと味違うスタンスが垣間見えるのが心強い。3声のボーカルを活かした繊細なコーラスワークが映える曲も多く、その点でも特徴的なステージだったと思う。ラストに披露された「The Man Don' Give A Fuck」ではメンバー4人がステージ袖に引っ込み、このままアウトロかと思わせて、毛むくじゃらのモンスターのような着ぐるみやロック・スター風の衣装に着替えて再登場、そのまま大サビに雪崩れ込むという賑やかな展開を見せ、大いに盛り上がった。ユーモア面でも一等賞でしたね。
19:20~
音圧とストロボのドラッグ。デッドマウスのライブを観た第一印象はそれ。しかも、今回の日本公演はまだ控えめなステージ・セットだったと聞く。全く恐れ入るが、それでも、あれだけの爆音で、しかも洪水のような照明を浴びさせつつ、徹底的な四つ打ちで攻め立てられたら、その恍惚に抗うのは難しいだろう。当日はいかにもデッドマウス目的のお客さんも多く、そんな彼らが例えば前述のファーリーズのステージ等を怪訝そうな顔で見てるのも新鮮だった。そういう意味では、間違いなく新しいお客さんをフジに呼んだし、フジの光景を、日本のロック・フェスの光景を一歩変えるステージになっていたと思う。こういうアクトはどんどん起用して欲しい。
21:30~
3日間の内、最も来場者数が多かった土曜日。この日のヘッドライナーを務めたミューズが、その一番の理由と言っても過言ではないだろうか。なぜなら、これまで幾度となく、それもかなり頻繁に日本でライブを行っているにも関わらず、またライブが観たいと思われせてくれる、そんな魅力が彼らのステージにはあるからだ。
新作『ドローンズ』から「Psycho」で始まるものの(毎回映像もかなり作り込んでる)、すぐさま「 Supermassive Black Hole」やマシューの超絶ギタープレイが炸裂する「Plug In Baby 」など往年のヒット曲を演奏してしまうのも、自分たちのライブに自信があるゆえだろう。「ニホンニコレテサイコー!」の掛け声とともに「Dead Inside」、「Hysteria」と続き、「Munich Jam」ではクリスとドムによるスリリングで豪快なジャム・セッションが繰り広げらる。マシューがピアノの前に腰掛けると、まさかの「Apocalypse Please」が披露され、天にも昇る高音ファルセットとピアノの調律が観客を包み込む。刻々と迫る終演の時間を吹き飛ばすような大合唱が「Time Is Running Out」で沸き起こると、巨大な黒いバルーンが会場を埋め尽くした「Reapers」で本編ラストに。「今年は紙吹雪を使うアーティストが少ないな~。」と思っていると、アンコールに突入し、「Mercy」でこれでもかというほどの大量の紙吹雪が投下され、「このためにとってあったのか。」と妙に納得。ラストは、クリスのハーモニカによるイントロとともに「Knights of Cydonia 」でバシッと締め、演奏、演出、華―どの点においても非の打ち所がない、一瞬たりとも目の離せないステージで、ヘッドライナーの堂々たる風格を存分にアピールしてくれた。
22:10~
<WHITE STAGE>の音響を味方につけ、2月の来日公演を遥かに上回る、最高にハッピーでダンサブルなステージで多くのファンを魅了したベル・アンド・セバスチャン。サラが奏でる透明感溢れるフルートの音色とともに「Nobody's Empire」でライブがスタート、日本人ストリング隊&トランペット奏者も絶妙なエッセンスを加えている。2曲目の「I'm a Cuckoo 」では、早くもジャケット脱ぎ捨て、ボーダーのタンクトップ姿(荷物をなくされて、東京のH&Mで調達したそう)で軽快なステップを踏むスチュアートとともにオーディエンスも思い思いに小躍りしながら、「I'd rather be in Tokyo~、Watch the Sunday gang in Harajuku~」のコーラスをシングアロング。新作がダンス・ミュージックに傾倒した作品ということもあり、日本では超久しぶりの「Electronic Renaissance」も披露され、<WHITE STAGE>は巨大なダンスフロアと化す(スチュアートのクネクネダンスもこの日一番の仕上がり)。「Lord Anthony」の途中で観客の中に飛び込んでいったスチュアートに帽子を被せ&マスカラを塗ってあげる場面や「The Boy With The Arab Strap」の観客をステージ上に呼び、一緒にダンスするお決まりのコーナーでは、ダンサーたちがスチュアートに再び帽子を被せ(今度は重ね帽)、眼鏡をかけ…完全に遊ばれてる。40代後半になっても、本当に“twee”を体現してるな~、スチュアート(もちろんいい意味で)と思いつつも、移り変わりの激しい音楽シーンの中で、デビュー当時からのエヴァーグリーンな輝きを失わない稀代な存在だというの改めて認識させられたマジカルなステージだった。
12:40~
もはやすっかり<WHITE STAGE>がお似合いになったcero。大好評のアルバム『Obscure Ride』を経過してさらにタイトになった演奏で、ロック・バンドによるファンク・ミュージックとしては最上級の演奏を披露した。新たなキラー・チューンである「Summer Soul」や「Orphans」に夏の日差しの中、オーディエンスが楽しげに揺れ、かと思えば『My Lost City』の楽曲はすっかりアンセムとして定着していた印象。中でも素晴らしかったのは新アレンジで披露された「exotic penguin night」。アウトロの盛り上がりはあの!!!をも彷彿とさせた。ヴォーカル、高城の「全国ツアーの最後にフジロックが入ってて、僕たちは打ち上げだと思ってやってるのでみなさんも楽しんで下さい。ガンガン酒飲んで!」という緩いMCにも自信が滲んでいた。既に中野サンプラザやビルボードライブでのライブが決まっている彼らだが、さらなる成長を経て次はどこに向かうのか本当に楽しみだ。
14:20~
まさかの全編エレクトロ/トランス・アレンジ、しかも1DJに2ダンサーを引き連れ、自らも華麗な(?)ステップを決めながら、大半の曲をハンドマイクで披露するというスタイルに話題の集中したトッド。(椎名林檎も「トッド・ラングレンのステージ観ました?」とイジっていた。)個人的に、それと同じくらい驚いたのはその歌が未だに十分すぎるほどに力強かったことかも知れない。持ち時間を少し残して退場し、これで終わりかと思いきや、一人ステージに残ったDJが観客を煽って、アーティスト・サイドからアンコールを促すという斬新過ぎる展開にも度肝を抜かれた。自分の世界を持ってる人はやっぱりすごい。
14:30~
トップバッターを飾った昨年の【Hostess Club Weekender】では、アグレッシヴでタイトなパフォーマンスを見せてくれたサウス・ロンドン出身の4人組、ザ・ボヒカズ。大入りの<RED MARQUEE>ではメンバー自身によるセッティングから、そのまま観客とのコール&レスポンスでライブがスタート。前回の来日時にプレイしていたデビュー・シングル「XXX」や「Where You At」など男気溢れる直球なロックンロール・チューンのみならず、波打つギター・サウンドにとコーラスが思わず口ずさみたくなるほどメロディアスな「The Making Of」や「To Die For」など、より“聴かせる”ミッドテンポなナンバーがセットに加わり、さらに幅広いバンド・サウンドが提示されていたのが印象的だった。曲間では、フロントマン、ドミニク・マクギネスが日の丸が描かれた扇子をパッと開き、拍手&笑いを誘ったり、恒例の「ツギハー」(ちょっと下手になってた?)も飛び出し、愛嬌たっぷりに観客を煽る。ラスト「Swarm」のイントロが鳴り響くと「待ってました~!」とばかりにクラウドサーファーが続出、ライブの手応えを目の当たりにし、いつもはクールなメンバーからも自然と満面の笑みが溢れでる。いよいよ再来週リリースされるデビュー・アルバムへ向けてさらに期待を募らせてくれる大満足なセットだった。
16:20~
アメリカン・ルーツに深く根ざしつつ、現代的なポップ・センスも持ち合わせたアクトが並んだこの日の<RED MARQUEE>。その代表的なアクトの一人がこのジェニー・ルイスだ。そのステージは3人ないし2人のギターを含む最大6人編成。さらに歌のコーラスに関してはほぼ全員が参加するウワモノの厚みが何より印象に残った。演奏中、何度も楽器を入れ替えるバンド・メンバーの音楽的な素養の深さもとても印象的。加えて、ジェニールイス自信のステージングも強烈にキュートだった!今回は6年ぶりの来日だったが(そんな人達ばっかりだけど)、従来の熱心なファンに加えて新たなファンも獲得し、次の来日は遠い未来では無さそうだ。
17:20~
三日間でもトップレベルの動員になった椎名林檎のステージ。一曲目に「丸の内サディスティック」を持ってくるなど、要所に代表曲を配しつつ、抜群に統率された名うてのミュージシャン・チームと鉄壁のパフォーマンスを繰り出した。ステージ中はほとんどMCもなく、それが逆説的に自信を示すようなステージだな…と思っていたら「長く短い祭」では大胆な衣装チェンジも披露。それまで来ていた白いワンピース・ドレスを脱ぎ捨て、青い水着のようなレオタードに着替え客席を盛り上げた。数少ないMCでは前述のように同日のトッド・ラングレンのステージについても軽く触れるなど、本人も久々のフジを楽しんでいた様子。ジャッジの難しさはあるが、こういう日本人アクトももっと観てみたい。
18:20~
ザ・ロックンロール・ショー! 実に10年ぶりのフジとなったライアン・アダムスのステージは、ルーツ・ミュージックを昇華した滋味をいたるところに滲ませつつ、「Gimme Something Good」から「Shakedown on 9th Street」まで、ロックンロール音楽の持つロマンスやスウィートさが全力で溢れ出すようなステージだった。事前に各所で話題にはなっていたけど、やっぱりめちゃくちゃライブが上手い。更に言えば、コーラス1つ、リフ1つとった時の演奏の完成度が極めて高い。当たり前に思われそうだが、これほど一つ一つのピッチを正確にコントロール出来ているロック・ミュージシャンって、実はそれほど多くない。そのことは彼の万能感溢れるステージを確実に下支えしていたと思う。いわくつきだったフジのステージで、ようやくそのライブの素晴らしさを証明し切ったライアン・アダムス。早い再会を期待しよう!
19:40~
新作『Lantern』を引っ提げてのライブとなった今回のステージ。いまやカニエ・ウェストの最有力コラボレーターの一人とあって、そのアルバムも豪華なゲストが集っていたが、そうした印象からすると今回のステージはかなりストイックな印象だった。バンドは本人を含めて3人。パッドやシンセサイザーも駆使しつつ、矢継ぎ早にビートを繰り出すスタイルで次々とフックを作る。欲を言えば、ゲストラッパーやシンガーを入れたスタイルでのライブも観てみたかったが、それはぜひ次の来日に期待しよう。
20:30~
この日の<RED MARQUEE>大トリは、今アイスランドで最も勢いのある若手バンド、オブ・モンスターズ・アンド・メン。北欧的な冷たい空気が張り詰めたステージと今か、今かとメンバーの登場を待ちわびるテント内の熱気との温度差がまさにピークに達した瞬間にステージ上にメンバーが。オープニングは、最新作『ビニース・ザ・スキン』の中でも一際ダークでムーディーな「Thousand Eyes」。日本を意識した(?)オリエンタルなガウンを身に纏った紅一点のナンナが豪快に叩くフロアタムの鼓動とストリングスの音色が絡み合い、壮大なサウンドスケープが描き出されていく。テントいっぱいの観客を狂喜乱舞させた、彼らのブレイクのきっかけとなった「Little Talks」のみならず、新曲の「Empire」などでも、すかさず手拍子やシングアロングが沸き起こるのには驚かされたが、これぞOMAMのライブの醍醐味であり、生でしか体感できないオーディエンスの一体感と高揚感を存分に感じさせてくれた。
21:30~
フジロック最終日を締めくくるのはノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ。12年の同イベントでヘッドライナーを飾ってから3年ぶりの出演。しかも、今年の4月に武道館2日間を含むジャパンツアーを行っていたばかり。そんなに久々でもない来日。大物アーティスト来日の<ありがたみ>が薄れてしまっても仕方のないスケジュール。筆者の周囲でも「こないだ見たし(笑)」など、3日目のノエル兄さんを見逃す気満々のやつらばかりだった。正直、FKAツイッグスも気になるところだった。が、一発目に「Everybody’s on the Run」で、「俺のステージから逃げてんじゃねえ!」と見逃す気満々のやつらを一蹴。ソロ・プジェクト2枚も成功し、前回の来日公演を含むツアーも順調にこなし、バンドの真ん中に立ってステージを進めていく兄さんの姿は自信に満ち溢れていた。
ラストの「Don’t Look Back in Anger」は勿論、「Fade Away」、「Champagne Supernova」、「Whatever」などオアシスナンバーも惜しみなく披露。大合唱から口ずさむ人々を見てオアシスファンだけじゃなく、音楽ファンの宝物なんだなとしみじみ。それと同時に「If I Had a Gun…」や「You Know We Can't Go Back」、「Riverman」と現在進行中の彼の音楽が「そもそもオアシスの曲、書いてるの俺なんだぜ?」と進化を続けていること目の当たりにさせてくれたのだった。「これで今年のフジロックも終わりか」という寂しさとかも全て含めて最高のステージだった。他の観てた人たちも「やっぱり観て良かった。」そう思ったはず。<ありがたみ>度数の高いアーティストも嬉しいけど、こうして大自然の中で、大合唱を巻き起こし、観客を沸かせてくれるアーティストはそんなに多くない。(だからヘッドライナーなのだけど)加えて、これほどの盛り上がりは各所で素晴らしいステージを生み出したアーティストたちと、その環境とタイミングを造り上げたフジロックフェスティヴァルなんだな。と改めて思い知らされるのでした。
21:40~
衝撃的なステージだった。アート領域からアンダーグラウンドまで、2015年のダンサーとしてのリズム感覚を完全に内在した身体が歌うとこうなるのか! と完全に打ちのめされた。もちろん、ダンサーだから必ず歌が上手いわけではない。彼女の場合、元々持ち合わせているリズムの感覚が桁違いで、それがあらゆるパフォーマンスに奏功しているのだろう。歌の表現力も別格。自分の曲とは言え、あれほど高度にトリッキーなトラックの上でああいう風に歌える人って世界でもそれほどいないのではないだろう。ライブ全体も抑制の効いた前半からゲスト・ダンサーとのヴォーグのパフォーマンスを経て、後半に向けてよりダイナミックになっていく構成となっていて、その制御感も完璧。引き連れたバンドメンバーも、基本的にはパッドでの演奏だったが、非常によく訓練されていた。加えて、音響面の充実した<WHITE STAGE>のポテンシャルを完全に引き出すようなサウンドにもなっていて…と書き出すと切りがないほどに素晴らしかった。デビュー・アルバム1枚で<WHITE>のトリ、というのも全く道理にかなっている。書いているいまも正直、分かってないことが多すぎて、あと5回は観たい! 興奮しまくっている。
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