どんな子が生まれても精一杯愛する

－－先日【MTV VMAJ 2009】でもMINMIさんの姿は拝見させて頂いているんですが、あのレッドカーペットでの衣装、個人的には昨日の出演アーティストの中で一番可愛かったと思います。

MINMI：いぇ～い！！！ 良かった（笑）。ありがとうございます！

－－そんな感じでいろんな現場でMINMIさんの活動は見てるんですが、インタビュー自体はアルバム『Natural』リリースタイミング以来、約3年3ヶ月ぶりとなります。公私ともに最もいろんなことがあった期間だと思うんですが、『Natural』の頃の自分と今の自分、どんなところが変わってると思いますか？

MINMI：お母さんになりました（笑）。

－－存じております（笑）。

MINMI：でもそれが一番大きいかな。それによって強くなったり、しっかりしようと思ったり、人に対して優しい気持ちが増えたりした。妊娠したり出産したりした中で成長したのかなって思う。実際に子供を生んでみると「人って存在していることがあたりまえじゃない」って分かるんです。子供ができてから生まれるまでってすごく不安だし、無事に健康に会えることがあたりまえじゃないって感じるし。だからこそ無事会えたときには感動する。それを感じてからは世間の子供たちも今まで以上に宝物のように感じるし、私達だってその中の一人だと思うようになりました。あと、妊婦さんって胎児が障害をもっている可能性があるかどうかの検査受けることができるんです。それを人生で初めて受けるってなったときにも「あ、健康ってあたりまえじゃないんだ」って改めて思ったんです。簡潔に言えば“命が尊い”ってことに気付いた。それはお母さんになったからこそだと思う。

－－なるほど。ちなみにMINMIさんは『Natural』でその文字通り“Natural”な生き方を提示した後に、結婚に出産じゃないですか。どれだけ音楽と人生が密接なんだ？この人は！って、当時思ったのを憶えているんですが。

MINMI：なるほど！ 今初めて気付きました（笑）。偶然ですね。でも実際にあのアルバムがあったから出産への恐怖を和らげたところはあって。女の人、もっと言えば動物の雌という生き物はみんなそういう力を持ってるから、自分も大丈夫って思ったんですよね。

－－じゃあ『Natural』という生き方を教えてくれたラスタマンにも感謝しないとね。

MINMI：そうですよねぇ！よく覚えてますね、その話！

－－で、僕はその変化したMINMIを活動再開後のライブで感じていて。それは【FREEDOM 08】のZepp Tokyo公演で『キセキ』という歌を聴いてなんですけど、改めてあの歌が誕生した経緯を教えてもらってもいいですか？

MINMI：話が重複しちゃうんですけど、妊婦時代に先程お話しした検査があって。その検査をしたいですか？と聞かれて「もしこの検査で障害があると分かったら自分はどうするんだろう？」って思っていた時、私の旦那は難病を抱えた子供とそのお母さん応援するプロジェクトに奔走していました。その親子の人達がすごい輝いてて、私は病気であろうと命は輝いてると感じたんです。いろんな選択肢があるけれど、病気に限らず、自分の思っていたような子供じゃなくても受け止めれる母親になりたいと思いました。仮に音楽好きじゃないとか、親の期待を裏切る子であっても愛したいってね（笑）。そして自分も子供のときにそんな風に親に受け止めてほしいっと思ってたし。そんな子供の視点で書いたのが『キセキ』。で、この曲を作り終わる頃には、もう検査もする必要ないと思えていたし、もしどんな子が生まれても精一杯愛するのが、その子を授かった私の役目って肝が座っていました

－－あの日のライブっていうのは、それまでずーっとみんな熱いテンションで踊りまくってて、完全なるお祭り状態。そこでいきなりピアノの弾き語りでバラードを歌い出す。なかなかレゲエのイベントでは難しいことだと思うんですが、それでもあの歌をあの日みんなに届けなきゃと思ったのは、今話していたような想いを伝えたかったから？

MINMI：あの瞬間は、あそこまでの1年間私はお母さんになるための生活しかしていなくて、その日々から生まれたモノを聴いてもらうことが大事かなって思ったんです。今回の『アベマリア』もそうなんですけど、今の等身大で感じていることを伝えていけるのって今しかないじゃないですか。もちろん10年後も歌えるんですけど、今思ってて歌うっていうのは今しかできないことかなと思って。

－－ちなみにあの日の『キセキ』のライブ音源をそのまま今回のシングルに収録しようと思ったのは？

MINMI：私にとってもあの日の歌っていうのは、今話した想い以外にもいろんな想いがあって。妊婦の友達が遊びに来てくれていたり、早産で多分長く生きられないって言われていた子のお母さんが来てくれていたりして、特に想いも熱くて。あと、ライブ後に「MINMIの『キセキ』っていう歌を探したけど見つからない」っていうファンの声もあったので、今回ライブバージョンをそのまま入れようと思ったんです。

みんなもホヤホヤポカポカしてくれたら

－－その『キセキ』同様、今のMINMIだから生み出せた曲『アベマリア』についても話を覗っていきたいんですが、自身では仕上がりにどんな印象や感想を？

MINMI：よくできたな～って（笑）。

－－元々は花嫁となる親友に向けて作られたメッセージソングなんですよね？

MINMI：その前に、友達に私たちのウェディングパーティーをやってもらって、そのときにみんなに向けて自分の作文を読んだんですね。みんなへの感謝とか、神父さんや牧師さんの宣言をどうすれば果たせるのか？とか。その作文が元になってるんです。で、曲を作ってるときに友達が結婚することが決まったので、その曲をぜひ歌わせてもらおうと思って、いろんな友達と花嫁になる前の心境とかを語り合って完成させたのが『アベマリア』ですね。

－－で、冒頭の「ウェディングベルの方をお願いします」っていう声とかベルの音は、実際にその結婚式の音であると？

MINMI：そうなんです！よく分かりましたね！ そのときは曲やPVに使おうとは思ってなくて、普通に参加しててビデオを回してて「ウェディングベルの方をお願いします」カンカン！って鳴って、私「ワァ～！」って言っちゃうんですよ。そこも今作に入れちゃってるんですけど。で、その式が終わった後に音源でウェディングベルとかサンプリングCDとか探すんですけど、あれが一番良い感じの鐘で。

－－その結婚式でこの曲を披露した際の反応はどうだったんでしょう？

MINMI：冒頭の部分はちょうど扉が開いた先に友達が立ってて、もう泣きそうで。「お父さん、お母さん、ありがとう」みたいな歌詞に自分が感動してしまって。でもビートが入ってくるところから、みんなノリが良い人達だったのもあってすごくノってくれて。新郎新婦も一緒にノってくれて。ざっくばらんな雰囲気になって、成功したんじゃないかなと。

－－ちなみに、その曲を書くために使用した作文、具体的にはどんなことが書かれていたんですか？

MINMI：どんなこと書いてたっけ（スタッフに訊ねる）？

スタッフ：決意みたいな。「旦那さんとは分身と思って生きていきます」とか。普通の花嫁の気持ちではなかった。

一同：（爆笑）

スタッフ：花嫁より花婿みたいな。ただ「幸せにしてもらいます」だけではなかったですね（笑）。

MINMI：私、結婚するのをネガティブに考えていた人なんですよ。「仲悪くなったらどうしよう？責任もてない」とか、そっちばっかり考えて。だから「何があっても 波がたっても 気合いで絆つないで 乗り越えよう」みたいな歌詞が出てきたんだと思います。ただ「こうありたいな」って思うことを書いてるんで、この曲を聴くとグサって刺さるときがあるんです。「ムカつく！」って思ってるときにこの曲の「許せます様に～♪」っていうフレーズが聞こえてくるとホヤホヤホヤ～ってなっちゃう（笑）。

－－あと、この『アベマリア』のPVはどんな仕上がりになっているんでしょう？

MINMI：素敵なところがいっぱいある。涙あり笑いありで、私も作ってる途中に感動できたし。あとミュージックビデオでダンス曲をやるのが結構久しぶりだったので、イチからダンサーの友達とかと「どう踊ろうか？ここはこうしようか？」っていう話し合いをしながら作り上げた楽しさもあったし。歌詞に添ったミニミュージカル的なところもあるので、楽しみにしててください。

－－そのPVも含め、この『アベマリア』は世にどんな風に響いてほしいと思いますか？

MINMI：私と同じようにこれを聴いてホヤホヤホヤ～と（笑）気持ちを柔らかくしてほしい。私自身も初心を思い出すような曲なので、みんなもホヤホヤポカポカしてくれたら良いなと思います。

－－今作の『アベマリア』や『キセキ』を聴いてると、リアルな描写というか、感じたことや経験したことをそのまま歌に変えて歌っていく。その純度がどんどん高まっている印象を受けるんですが。

MINMI：そうですよね。それこそ『Natural』以降の傾向だと思います。もちろんお話ベースで作る歌もあるんですけど、今回は出産後第1作目で、移籍後第1作目なので、等身大の今言えることっていうのを大切にしたかったんですよね。

キャッキャ！キャッキャ！はしゃぎます

－－そうした歌がライブでどう響くのかもすごく楽しみです。

MINMI：あの、個人的な相談みたいになっちゃうんですけど（笑）『アベマリア』をライブでどうやろうかな？と思っていて。ちゃんと男性にも響くか分からなくて。響きますかね？

－－結婚がリアルに感じられる男性にはかなり響くと思いますよ。嫁の両親のことを考えたりするのがリアルな人には（笑）。そこでプレッシャーを感じていたりする男の背中すらもこの曲だったら押してくれるかもしれない。

MINMI：良いですね、それって！ この曲を聴いて「結婚したくなった」って男の人が言ってくれるとすっごい嬉しい。

－－あと、結婚する人のお父さんお母さんにとっても泣けるフレーズが多い曲なので、ソカのビートに乗せてる曲だったりするけど、どの世代にも響く可能性を持ってる面白い曲だと思います。

MINMI：良いこと言った！

－－（笑）。あとあらゆる世代と言えば、今作にはもう1曲、素晴らしいナンバーが収録されています。『A Natural Woman』。今回このカバーを収録しようと思ったのは？

MINMI：出産前にこの曲を聴いて、女性としての力を改めてもらったんです。ちょうどその頃にメアリー・J. ブライジがキャロル・キングとファーギーと来日して、この曲を歌ってて。それを私は、子供を生む一週間ぐらい前にコンサートに行って聴いて、決心がかなり付いたんです。だから私も力を込めてこの曲を歌おうと思って。

－－実際にレコーディングしてみていかがでした？

MINMI：憧れがこの曲にもメアリー・J. ブライジにもあったからハードルが高く感じていたんですけど「私はパワーをもらったんだから、あんまり考えずに歌おう」と思って。で、レコーディングで楽器を演奏する人のために仮歌をまず録ったんですけど、最終的に本番よりもそっちの方が変に力が入ってないから良いってなって、仮歌をそのままリリースすることになったんです。だから本当に何も考えていないテイク。

－－それにしても凄いシングルですね。この3曲が今後MINMIのレパートリーに加わると考えると、ライブでもいろんな見せ方ができるようになりそうですよね。『キセキ』を披露すればライブに深みが出るだろうし、『A Natural Woman』を披露すればそのライブに広がりが出るだろうし。それで『アベマリア』が『サマータイム!!』や『シャナナ☆』なんかと立て続けに披露されたら、もう完璧じゃないですか。

MINMI：今、突然セットリスト組まれた感じがしたんですけど！今のリストもらおう！

－－（笑）。

MINMI：また個人的な相談なんですけど、夏フェスで『キセキ』ってアリですか？

－－アリだと思いますね。夏フェスはみんな有名で盛り上がる曲を畳み掛けますけど、その中に『キセキ』のような明確なメッセージソング、一人でも多くの人に聴かれることに意味のある歌が組み込まれるのはとても有意義だと思います。あの【FREEDOM 08】で『キセキ』を披露したときも、ちょっと偉そうですけど、表現者として在るべき姿だと感じましたし。

MINMI：分かりました、参考にします！ 観に来てくださいね！

－－責任取って盛り上げに行きます（笑）。ちなみにそのフェスもある今年の夏はどんな夏にしたいと思っていますか？

MINMI：去年は【FREEDOM 08】だけでしたけど今年はもっと増えるんで、私自身も満喫しようと思って。キャッキャ！キャッキャ！はしゃぎます、みんなと。

－－それと、まだ気が早いかもしれないですが、次なるオリジナルアルバムはどんな内容になるんですかね？

MINMI：まだこれからの話になるんですけど、良い感じになりそうな予感はしてます。