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Do As Infinity『ETERNAL FLAME』 インタビュー
つくづくドラマティックなバンドである。今作のオープニングを飾る『ETERNAL FLAME』は、これまでの長い旅路と、これから始まる長く激しい物語を思わせる、6分23秒の大作だ。大渡亮のギターがもう二度と折れる事のない信念を表現し、伴都美子のボーカルはすべての困難に立ち向かう覚悟を歌う。再結成後、Do As Infinityを一生続けていく宣言を掲げた2人だが、改めてその想いを音楽にしてこのアルバムに刻んでいる。また、そこから展開されるストーリーも感動的なモノになっているのだが、私がこれ以上語るのもナンセンスなので、Do Asのご両人にガッツリと今作の魅力を語ってもらうことにしよう。
「その焔を消さない」という意思表示
--前回のインタビューでは、解散や再結成の理由、【a-nation】での復活劇から『∞1』に至るまでのストーリーについてガッツリ語って頂きましたが、ニューアルバム『ETERNAL FLAME』を聴いて「またここから長くて激しい冒険が始まるんだな」と改めてしみじみ感じさせて頂きました。
大渡 亮:僕も「また新しいアルバムがとうとう出来たんだなぁ」って。今作で通算7枚目になるんですけど「解散していた期間もあったのに、7枚もアルバムが出せるグループなんだなぁ」と改めてDo As Infinityの歴史だったり存在の大きさを感じましたね。
伴 都美子:あと、7枚目ではあるんですけど、1stアルバム的な感覚もありますね。
大渡 亮:3年ぶりの作業ということもあり、使う楽器とか気持ち的なこととか、やっぱり変化している部分が随分とあったので、レコーディングの初日から僕の中でもリニューアル感はありました。
--今作は1曲目のタイトルトラックからとんでもないことになってて。まさに長く激しい冒険を想起させる楽曲ですが、この楽曲を作ったこと、世に打ち出すこと自体もかなりの冒険なんじゃないですか?
大渡 亮:ウチのいわゆるボスがいまして、そのボスから「組曲的な長編を1曲目にやるのはどう?」っていう提案があったんです。それをJ-POPシーンでやるのはある意味洋楽っぽくて、格好良いことだなと凄く思いまして。
--この1曲だけである意味、1枚のアルバム分の熱量だったりメッセージがありますよね。2人の見せ所も満載だし、全英語詞ですけど何を言わんとしているのかも伝わってくるし、この曲が完成したときは「凄い曲を作ってしまった」と感動もひとしおだったんじゃないですか?
伴 都美子:うん、格好良い曲が出来たと思います。今まで聴いたことのない、私の中でも新しい曲になりました。
--タイトルもそうですが、改めて2人が「俺たちは何があってもこの先、Do As Infinityを続けていく」ということを音楽として表現した楽曲のようにも感じられました。
大渡 亮:僕らはアルバムタイトルの頭文字をいつも"しりとり"で決めていて(1st『BREAK OF DAWN』~2nd『NEW WORLD』~3rd『DEEP FOREST』~4th『TRUE SONG』~5th『GATES OF HEAVEN』~6th『NEED YOUR LOVE』)、今回は頭文字"E"から今の自分たちに相応しいキーワードを探していったんです。その結果『ETERNAL FLAME』に着地したときに、リニューアル感もあって、そして「その焔を消さない」という意思表示もできる素晴らしいタイトルだなと思い、みんなと満場一致で決めたんです。だからそのタイトルを冠した楽曲にも、当然ながら「焔を消さない」的な想いが込められていると思います。
--しかもその作曲を再結成後のツアーを共に走ってきた石田匠さんが務めているのも、Do Asフリークからするとドラマティックで。
大渡 亮:面白いところですよね、そこは。組曲みたいな作品というところで彼にオーダーを出したんですけど、作家さんとしても優秀な人なので、こちらのリクエスト+αをしっかりと形にしてくれて。良い曲を作って頂けて、本当にラッキーでした。
--PVも素晴らしい世界観で。ファンであれば「あの場所にいたい」と思わせる光景で、そこでは亀田誠治さんもベースを弾いてて。
大渡 亮:そうですね。実際に鍵盤以外はあのPVに出演していた面子で。ほとんど一発で録っていった曲なんですけど、そのレコーディングの様子をそのまま撮ったようなPVになったと思います。
--ライブでは高い集中力を必要としそうですね。
大渡 亮:テンポチェンジが1曲の中で随分とあるので、そこはアイコンタクトやバンドのルールをいっぱい決めていかなきゃイカンなと思ってるところです。でも非常に楽しみですね。
--その"ETERNAL FLAME"は1曲目以降も高いテンションで燃え盛っていきます。様々な要素があって、それぞれの方向に振り切れているアルバムだと思うんですが、その要素のひとつとして、これまでにも増して何かを深く考えさせる社会的なメッセージ。『Perfect World』や『名もなき革命』などがその代表格だと思うんですが、こうしたメッセージを歌うのはどんな感覚ですか?
伴 都美子:責任を感じますし、今回のアルバムってどの曲もテンションが高いんですよね。音にしても歌詞に込められたメッセージにしても。そういう意味では暑苦しい(笑)、平均温度の高いアルバムになったなと感じています。
大渡 亮:再結成して、伴ちゃんも僕もスタッフもよりDo As Infinityを客観視できるようになった、その影響はあると思います。「このグループだったらそれを無理なくやれる」っていう判断ができるようになった。それは自信と言ってもいいかもしれないんですけど。垢抜けたポップソングをやって、チャート上位を賑わして、みんなでパーティーしていく感じのグループというよりは、ロックが持っている激しさや切なさ、強さが伴ちゃんの声を通して再生されるのがDo As Infinityの良さだって、客観視しても思える。だから自然と温度の高い曲が増えていくんですよね。
Interviewer:平賀哲雄
伴ちゃんか俺が倒れてしまうまで
--『生まれゆくものたちへ』もそうですが、確かにDo As Infinityの魅力、2人の熱量が自然と上がる曲を再結成後のDo Asは前面に打ち出してますよね。今作の1曲目が大作になっているのもそうですし。
大渡 亮:もちろんチャートも意識しなきゃいけないことだとは思うんですよね、プロフェッショナルとして。だけど無理なくDo Asらしいモノをやっていくってことが、この再結成第1弾の作品としては良いと判断した結果だと思います。
--また、今作のもうひとつの特徴として『ナイター』や『his hometown』といった誰かの人生や生活が鮮明に感じられるリアルソングの存在があります。いずれも生々しいまでの感情や光景が浮かび上がってくるんですが、こうした楽曲の表現力もかなり増してますよね。
伴 都美子:歳取ったからかな(笑)。
--それもあるかもしれませんが(笑)。
伴 都美子:(笑)。
大渡 亮:Do Asがよくやってきた『遠雷』とか『タダイマ』あたりの流れですよね。ショートストーリーというか。
伴 都美子:『ナイター』もPV録ったので、もうすぐどこかでご覧頂けると思います。
--『his hometown』などは本当に伴ちゃんが田舎に帰って感じたことを歌っているような、そんなリアリティを感じさせる曲だと思うんですが、自分ではどう思いますか?
伴 都美子:パッと聴きは可愛らしい曲なんですけど、実は決断の歌だったりして。彼の生まれた街で暮らしていくっていう。そういう或る1人の女の子の気持ちを歌った曲ですね。
--また、リアルな曲と言えば『焔』。この曲はDo Asへの思い入れが強い人であればあるほど、涙なしでは聴けない歌だと思います。歌詞を手掛けた亮さんにこの曲に込めた想いを聞かせてもらいたいんですが。
大渡 亮:再結成して、いろんな方々の手によって新しいDo Asがまたスタートしたと思うんです。ただ、当事者である僕と伴ちゃんの強い想いをリアルに描いた曲が、せっかくのアルバムなので1曲ぐらいあってもいいだろうと思って。いつもはやはり「曲としてどうなのか?」に拘って皆さんにお伝えしたい気持ちがあるので、シングルとかでは「再結成のことを記録したい」という欲はなかったんですけど、オケ録りのときに「この曲の詞を書かせてくれ」って何故か挙手したんですよ。そこから試行錯誤していく中で、僕と伴ちゃんのリアリティが1個でもないと復活作にならないような気がしたんです。多分それが無くても気に入られてスゥ~っと流れていくんですけど、本当にそのまま流れて終わってしまうような気がして。もちろん『ETERNAL FLAME』っていう曲にも僕らのリアリティはあるんですけど、日本語で当事者から見た『ETERNAL FLAME』みたいな曲もちゃんと残したくて。いろんな想いを乗り越えてのDo As再始動であったことは事実だし。あの日の【a-nation】で伴ちゃんと再びステージに立ったとき、凄い歓声に包まれて一瞬スローモーションになって。まぁそれは自分に酔っていたと言えばそれまでなんですけど(笑)「またここから歩き始める」っていう感覚になったんです。あの年は再結成イヤーでいろんなライブをやってきたんですけど、あの瞬間はやっぱり掛け替えのない感じでね。その想いをしたためたのがこの曲。まぁ上手く表現できているか分からないですけど、この曲調には合ってるのかなって。コアなファンに響いてくれたらいいですね。もし今度の武道館でこの曲をやることがあれば、いろいろ共有できるなとも思ってるし。
--個人的にこの曲を聴いて胸に込み上げるモノがあったのが「もしも再び疲れ果てて 歩けなくなってしまったら 今度は君を担いででも 約束の地を目指す」というフレーズで。これは大渡 亮の決意表明ですよね。
大渡 亮:そうですね。やっぱりもう解散はしちゃいけないと思うんですよ(笑)。休むことはあったとしてもね。解散っていうモノがいろんな人に影響を与えて、再結成っていうモノがいろんな人に影響を与えることもよく知ったので。それでもやりたいと思って選んだのがこの道なので、もう伴ちゃんか俺が倒れてしまうまではやっていきたいなって思ってるんです。
--伴ちゃんはどうですか?
伴 都美子:う~ん、亮くんが倒れたら私、担げるかなぁ?
一同:(笑)。
大渡 亮:最近、筋肉太りしてまして。
伴 都美子:鍛えておこうと思ってます。
--この曲ってさっき言ったフレーズを伴ちゃんがエモーショナルに歌うことで、その後の「何処までも行こう 友よ」というフレーズが2人の約束のように響くんですよ。そしてその響きはファンとの約束にもなるっていう。
大渡 亮:いろいろとその辺はしたたかに考えてます。
--(笑)。
大渡 亮:まぁでも結局どんな曲を出しても、どんなライブをやっても、評価されたりするのは伴ちゃんであり、僕なので。どうしてもこの再結成については僕と伴ちゃんで何か言いたかった。よりリアリティを持たせたかったっていうのが凄く強くありました。このままサラ~っと過ぎたくなかった。だから1曲だけでもそういう想いが入ってる曲を入れたかったんですよね。"ETERNAL FLAME"という素晴らしきキーワードもあったんでね、それを僕なりの解釈で描いたつもりです。僕から見た"永遠の焔"をみんなと共に分かち合えれば幸いですね。
Interviewer:平賀哲雄
デビューシングルをあれから10年経った今
--そして『生まれゆくものたちへ』。今作のラストをこの曲で飾ろうと思ったのは?
伴 都美子:みんなでそれぞれ曲順を考えたんですけど、複数最後の曲の候補がある中で、なんかしっくり来たんですよね。
大渡 亮:僕は違う曲を挙げていたんだけど(笑)あまりによくハマっていて、それで採用になったんです。再始動をすることになって一発目のレコーディングがこの曲だったんですけど、Do As Infinityの未来を感じさせつつも、ベーシックも踏まえている。今までにあるようでなかった、面白い雰囲気の曲なんですよね。で、メッセージも厳かな感じだったので、アルバムの最後にも適していたのかなって。そもそもシングルとして作った曲だけど、このアルバムのコンセプトにも合っているし、良い具合に最後にシリアスになれるんじゃないかなと思いましたね。
--この先のDo As Infinityの様々な場面で重要な役割を持つ曲になりそうじゃないですか?
大渡 亮:そうですね。メロディが素晴らしいですし、自分たちの定番になると思いますね。
--あと、今作のボーナストラックには『Tangerine Dream ~10th Anniversary~』なる音源が収録されています。今回この曲を新しく蘇らせようと思ったのは?
大渡 亮:これはね、いろいろアイデアがあったんですけど、今年10周年であるということがまずあって。デビューシングルをあれから10年経った今の僕たちが歌う、そして演奏するのが良いだろうと。もう本当にシンプルな理由です。今年の9月29日で丸10年、僕と伴ちゃんが会って10年経った年でもあるので。
伴 都美子:ド初心に戻る、っていう感じです。
大渡 亮:より上手に出来ているのか、大人っぽく成りすぎているのか分からないですけど、そういう10年後の変化を楽しんでもらえる作品だと思います。
--この曲も今聴くと「ひたむきに求めて傷つき 駆けていた 揺れてる時代を あの頃 僕らは」とか、Do Asの今の視点で歌ってるように聴こえるから不思議だなと思って。
大渡 亮:このグループの、この曲を発表した以降の歴史に重なるキーワードが満載の曲ではあると思います。この曲があってその後の流れができてるなとしみじみ思いますね。僕もコーラスで歌ってるんですけど、歌い甲斐のある曲です。今回のレコーディングでもすごく気持ちが入りましたね。
--Do Asってそういう曲が多いですよね。発表したリアルタイムとは違う意味を数年後に歌ってるときには持たせられる。特に再結成後はそう思う曲がいっぱいありますね。
大渡 亮:そう感じてもらえるのは有り難いです。やはりすごくポップなグループではないんですよね。じっくり聴いてもらえて成立する曲が多いグループだと思うんです。まぁ今後いろんなタイアップがあったりして、すごくポップな『魔法の言葉~Would you marry me?~』みたいな曲をやることもあると思うんですけど、基本的にはあんまり無理をせず、地に足を付いた活動をしていければいいのかなって。それでこその再結成だと思いますし。もう僕も伴ちゃんも30代ですので、変に焦らないでじっくりと音楽活動ができたらいいなと思います。
--11月には武道館ライブもありますが、このアルバムが加わったことで、Do As Infinityのライブにどんな影響や変化が生まれるのかも楽しみなところです。
大渡 亮:そうですね。僕的にはこのアルバムを聴いてみたときに、これまでと違う流れを作れているのはやっぱりメロディメーカーの違いだと思うんですよ。で、今後ライブをパッケージしたときに良い意味でオーソドックスな、起承転結がよりしっかりしたモノを創れるんじゃないかって今思ってます。今回のアルバムは奇を衒ったというよりかはメロディの素晴らしさが際立った曲が多いし、素晴らしきボーカルアルバムだと思っているので、ライブでも伴ちゃんの個性がすごく反映されやすいんじゃないかな。それはいわゆるロックバンド然とした、ベーシックなライブが構築しやすいということでもありますし。来年仕切り直してまたツアーはやると思いますが、今年それを見せられるのは日本武道館が最初で最後だと思うんですよね。なので今言った起承転結のあるライブをしっかりと創っていきたいなと思います。
--ちなみに今作のサウンドプロデューサーである亀田誠治さんも武道館ライブには登場するんでしょうか?
大渡 亮:あの人、忙しいんだ!
--ですよね(笑)。
大渡 亮:彼の周りもまたいろいろと新しい動きがあるみたいで、僕らに割いてくれる時間があれば来てくれるんじゃないですかね。
--あと、武道館後のDo As Infinityはどうなっていくんですかね?
伴 都美子:乞うご期待。
--(笑)。
大渡 亮:武道館やり終えて伴ちゃんも僕もアイデアが出てきたり、どういう風に見られたいか、見ていきたいかも感じると思うんですよね。なのでまずは武道館ですね。今から待ち遠しい限りです。
--では、その約束の地 武道館で再会を果たすみんなへメッセージを。
伴 都美子:アルバム『ETERNAL FLAME』を聴いてもらって、武道館ではDo Asの10周年をみんなとお祝いできたらなって思います。
大渡 亮:じゃあ、ちょっと格好良く行くか。……消すことのできなかった小さな炎を、俺たちと一緒にデカくしよう!!……的な(頬を赤らめながら)。
Interviewer:平賀哲雄
ETERNAL FLAME
2009/09/30 RELEASE
AVCD-23922 ¥ 4,180(税込)
Disc01
- 01.ETERNAL FLAME
- 02.最後のGAME
- 03.Perfect World
- 04.名もなき革命
- 05.ナイター
- 06.Feelin’ The Light
- 07.メラメラ
- 08.Piece Of Your Heart
- 09.北風
- 10.his hometown
- 11.焔
- 12.生まれゆくものたちへ
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