2021/05/18 18:00
TikTokやYouTubeといった動画プラットフォームで人気を集めるP丸様。をご存知だろうか? P丸様。は、動画投稿サイトで公開している自作のショートアニメが話題を集め、YouTubeチャンネル登録者数が150万人を超える“マルチエンターテイナー”で、イラストに加えて企画、脚本、アフレコから編集まで、全てのクリエイティブ作業を自身で手掛けており、まさしくマルチな才能が注目を集めている。TikTokではシンプルな線画やあるある動画など、より短尺のカジュアルなコンテンツも親しまれており、フォロワー数は80万人以上、総いいね数は2,000万にも届く勢いだ。
すでに作り手として確固たるポピュラリティを獲得しているP丸様。だが、このたび1stアルバム『Sunny!!』をリリースし、シンガーとしてのキャリアを本格的にスタートさせた。3月17日に発売されたアルバムの初週売上は8,523枚で、Billboard JAPANの週間アルバム・セールス・チャート“Top Albums Sales”では10位に初登場。その歌声にもたしかな求心力が宿っていることが証明された。
近年、動画プラットフォームを主戦場として様々なコンテンツを発信するクリエーターと、そこで形成される熱狂的なファン・コミュニティの存在感は、特に2010年代以降のポップ・カルチャーを語るうえでは無視できない規模にまで成長している。代表的な例として挙げたいのが、莉犬、ジェル、さとみ、るぅと、ころん、ななもり。の6人組動画配信者ユニット、すとぷりだ。歌ってみた、ゲーム実況、運動会、流行りのインターネット・ミーム系チャレンジなど、あらゆる企画でファンを楽しませる彼らは、これまでに3作のフルアルバムを発表しているほか、メンバーそれぞれのソロ作品もコンスタントにリリースしている。コロナ禍の影響で残念ながら中止にはなってしまったものの、2020年8月には東京ドームでの単独公演が決まっていたのだから、その人気は紛れもなく本物だろう。ちなみに、すとぷりのオフィシャル・ファンブック『すとろべりーめもりー』には、P丸様。が手掛けた4コマ漫画が掲載されたこともある。
すとぷり4コマ漫画
— P丸様。 (@p_ma_ru) March 30, 2019
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そんなすとぷりのメンバー、ななもり。がプロデュースを手掛けたのが『Sunny!!』だ。加えて本作には大森靖子、尾崎世界観(クリープハイプ)、神聖かまってちゃん、TeddyLoidなど、気鋭のミュージシャンたちが制作陣として迎えられている。<あーもうなんかいやになったっぽい/いきんでもクソしか出ない>と痛烈な言葉から始まる1曲目「ならばおさらば」は、作詞・作曲を尾崎世界観、アレンジをキタニタツヤが務めたナンバー。前述の歌い出しに連なる大いに“毒”を含んだリリックを読めば、なるほど尾崎世界観の作家性がたしかに炸裂していると手応えを感じつつ、<誰の歌でも歌う「歌ってみた」じゃあるまいし/誰かれかまわず愛してみるなよ>というラインは、実際に数々の歌ってみた動画をアップしてきたP丸様。が歌うからこそ面白いアイロニックな表現だ。
ほかにも、オートチューン・ボーカルがむしろ中性的な歌声の魅力を浮き彫りにしているフューチャー・ベース「Me」(作詞・作曲・編曲:ポリスピカデリー)や、ハチャメチャな言葉遊びとトラックメイクがP丸様。流のハイパーポップとして結晶化したような「メンタルチェンソー」(作詞・作曲・編曲:かいりきベア)など、エレクトロ・ミュージックのトレンドを取り込んだナンバーも聴きどころ。また、大森靖子による「登録者いらん愛くれ」や、の子(神聖かまってちゃん)による「とっても大好きっ!」などでは、楽曲提供者の強烈な個性との化学反応も楽しめる。
ナナホシ管弦楽団が手掛けた「シル・ヴ・プレジデント」は現在、TikTokで大流行中だ。2021年4月5日~11日を集計した“TikTok HOT SONG Weekly Ranking”で10位に初登場した同曲は、4月26日~5月2日集計週で見事1位に輝いた。YouTubeのミュージックビデオ再生回数は1,000万回を超えている。バズのきっかけは、<だ・だ・だ・大統領になったらね/まずは君を捕まえるね>と歌い始めるサビでのフィンガー・ダンスがミーム化したこと。また、同曲を使ったP丸様。本人のイラスト動画も順調に再生回数を積み重ねており、この機に動画クリエーターとしての知名度もさらに拡大していくもしれない。
こうした収録曲のバイラル・ヒットや音楽性のバラエティ、その中でたしかに開花しているP丸様。の歌い手としてのポテンシャルも含めて、『Sunny!!』は多彩なクリエイティブを展開するP丸様。のデビュー作に相応しい、ひたすら野心的でカラフルなムードを宿したアルバムだ。それを分かりやすく象徴しているのが、鮮やかな色彩がまき散らされた背景に、真っすぐ力強い眼差しのP丸様。とアルバム・タイトルの『Sunny!!』が躍動する、秋赤音が手掛けたジャケットのアートワークだろう。まるで統一性を見せないそのカオスこそ、P丸様。のクリエーターとしての限りない可能性を示している。
◎リリース情報
アルバム『Sunny!!』
2021/3/17 RELEASE
<初回限定ボイスドラマCD盤(CD2枚組)>
STPR 9021/2 3,000円(tax out.)
<通常盤(CDのみ)>
STPR 1011 2,500円(tax out.)
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