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2021/04/20

<ライブレポート>岡野昭仁が“歌い続ける決意”のソロライヴ、才能溢れる若手から歌い継がれる名曲までカバー

 ポルノグラフィティの岡野昭仁が4月11日、配信ライブ【DISPATCHERS】を開催した。

 昨年12月にポルノグラフィティが行ったライヴ【CYBERロマンスポルノ’20 ~REUNION~】は、「今までとは違った新しいカタチで同じ時間を一緒に楽しんで頂きたい」という想いのもと、有観客と配信のハイブリッド形式で実施。それに続く今回の配信ライヴは、岡野が掲げるプロジェクト『歌を抱えて、歩いていく』の一環となるもの。1月にリリースされた新曲「光あれ」に端を発するこのプロジェクトは、コロナ禍の時代に向けたポジティブなメッセージであると同時に、岡野自身がミュージシャンとしての自分と向き合い、自身の音楽キャリアをアップデートし続けるという決意表明でもある。それゆえにこの日のセットも、ポルノグラフィティの楽曲やソロワークスに加え、多くのカバー曲が組み込まれたチャレンジングな内容となっていた。

 配信がスタートすると、まず岡野はループマシンでアコギの音色と歌声を重ねていく。やがてセットアップが整うと、2005年リリースのポルノグラフィティのシングル「ROLL」へ。ミニマルなフレーズのループに乗せて、岡野の力強く突き抜けた歌声が、閑散とした東京キネマ倶楽部の静寂の中でより一層に響く。「【DISPATCHERS】始まりました。楽しんでいきましょう!」と挨拶すれば、続く「Zombies are standing out」はアコギ1本の弾き語りのパフォーマンス。さらに3曲目は、「久しくライブでもやっていない」という「愛なき・・・」。2001年リリースのアルバム『foo?』に収録されたこの曲について、岡野は制作当時を振り返り、作詞に苦労したエピソードも話した。

 ここからの岡野曰く「歌で日本の音楽シーンを辿っていく」セクションでは、カバー曲を次々と披露していく。1曲目はKing Gnuの「白日」。メンバーの井口理とは『オールナイトニッポン』で初対面を果たし、その際にポルノグラフティの楽曲でコラボレーションしており、そうした関係性を踏まえた“カバー返し”の選曲だ。編成はポルノグラフィティのサポートでもお馴染みのギタリスト、tasukuを加えたコンビで、岡野はハンドマイク・スタイルで難解なメロディを歌いこなしていく。

 言うまでもなく近年を代表するヒットソングであり、次世代アーティストによる新潮流を象徴するような「白日」に続き、2曲目のカバーは、こちらも注目のライジング・ポップスター、藤井風の「優しさ」だ。岡野は「“何なんw”を初めて聴いたときにびっくりした」「いよいよ新世代のどえらい才能がどんどん出てきとる」「俺が歌ったことのないコードの中でメロディを歌っている」と大いに刺激を受けたことを明かしつつ、繊細さが際立つヴォーカルで新鮮な一面を覗かせた。

 岡野がアコギ、tasukuがエレキのギターデュオ編成で、山崎まさよしの1997年のシングル「One more time,One more chance」を披露したのち、配信は場面が変わって野外へ。桜の木の下で披露したのは、スピッツが1994年にリリースした「空も飛べるはず」。木々のさざめきや小鳥の鳴き声も聞こえてくる中、<きっと今は自由に空も飛べるはず>というラインがどこまでも爽やかで開放的だ。「白日」と「優しさ」がフレッシュな才能から受ける新鮮なインスピレーション源であるならば、こちらの2曲は時計の針を巻き戻す温故知新のクラシックであり、引き続き野外で披露された、岡野が故郷の因島を想って書いたポルノグラフィティの「Aokage」も、そのセピア色のノスタルジアに拍車をかけていた。

 上京当時の思い出が蘇るという渋谷の夜景をバックに歌ったのは、浜田省吾、春嵐、水谷公生によるユニット、Fairlifeの「旅せよ若人」。岡野がフィーチャリング・アーティストとして参加した楽曲であり、すべてを投げ捨ててでも「旅立て若者よ」と歌うこのメッセージ・ソングは、岡野にとってミュージシャンとして始まりの地とも言える渋谷、楽曲のメッセージ性、そしてコロナ禍によって窮屈になっていく現代社会、その3つの点が繋がり、大きな意味が生まれた一幕だったのではないだろうか。

 再びバラエティ豊かな楽曲のカバー・セクションへ。かつて玉置浩二とともに歌った際、その歌声に改めて圧倒された思い出があるという安全地帯の「ワインレッドの心」に続き、ヨルシカの「だから僕は音楽をやめた」以降は女性ヴォーカルの楽曲を連投。椎名林檎の「丸の内サディスティック」、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」、そしてDREAMS COME TRUEの「未来予想図Ⅱ」といった時代を越えて愛される3曲を、しっかり岡野昭仁のカラーに染めて歌い上げてみせた。

 「歌を届ける。僕はそれぐらいしかできないんです」「辻村有記と楽曲を作ったのが僕の中で強いきっかけとなった。ポルノグラフィティとは違う、自分が歩んできた音楽人生とは違うエッセンスが僕の中に取り込まれるんじゃないかという確信を持ちまして」とプロジェクト発足の経緯を話す岡野。そうしてできあがった新曲「Shaft of Light」、そして作詞にヨルシカのn-buna、作曲に澤野弘之を迎えたプロジェクト第1弾楽曲「光あれ」の2曲でフィナーレ。ポルノグラフィティとしてのデビューから20年以上、現役のシンガーとして走り続けてきた岡野昭仁は、まだまだ進化する。そんな期待を抱かせるにはじゅうぶんなほど、この日のパフォーマンスは本当に野心的で、瑞々しいエネルギーに満ちていたのだ。


◎公演情報
【岡野昭仁 配信LIVE2021「DISPATCHERS」】
2021年4月11日(日)
<セットリスト>
1. ROLL
2. Zombies are standing out
3. 愛なき・・・
4. 白日
5. 優しさ
6. One more time,One more chance
7. 空も飛べるはず
8. Aokage
9. 旅せよ若人
10. ワインレッドの心
11. だから僕は音楽をやめた
12. 丸の内サディスティック
13. 真夜中のドア~stay with me
14. 未来予想図Ⅱ
15. Shaft of Light
16. 光あれ

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