2021/03/29
宇多田ヒカルの新曲「One Last Kiss」が絶好調だ(【表1】)。3月10日リリースのこの曲は、3/22付のHot 100では3位、そして3/29付では首位を獲得している。初週のみベスト3に入るというのは瞬発力のあるアーティストであればよくあることかもしれないが、次週まで持ちこたえるというのはよほどの底力がないと不可能だ。さらには2週目も上位をキープするだけでなく、強豪を抑えて1位まで上り詰めるのは普通ではありえない。
ただし、この楽曲はヒットすべき要素も事前にしっかりと仕込まれている。というのも、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソングという強力なタイアップがあるからだ。とはいえ単にタイアップが付いているだけでは大ヒットになるとは限らない。しかし、映画そのものが大きな話題となったことから必然であると同時に、彼女はこれまでにもエヴァンゲリオン映画関連のタイアップがあるため、リスナーにとっても、取ってつけたようなものではなく、納得の行くタイアップなのだ。
チャートの構成要素を見ると、ダウンロードが2週連続1位、ストリーミングが先週の3位から今週は6位と少し順位を落としているが、相変わらずこの2つが強い。シングルとしてフィジカルでのリリースがないにもかかわらず、しっかりと結果を出せるのは見事としかいいようがない。おまけに、ラジオのオンエア回数、動画再生数、ツイッターでのつぶやき数などでもベスト10内を推移している。そういった意味でも、ただファンだけに認知されているというのではなく、世間的にもヒット曲としてしっかりと認識されている証拠でもある。
宇多田ヒカルのようなアーティストは特例だろうが、確実にリスナーの基盤を作り、なおかつ大型タイアップがあってメディアやSNSを巻き込むことができればビッグヒットにつながる。「One Last Kiss」はそのお手本としても申し分のない一曲なのだ。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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