2021/03/29
元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンと鬼才 スパイク・リー監督がタッグを組んだ音楽映画『アメリカン・ユートピア(原題:AMERICAN UTOPIA)』が、ピーター・バラカンによる字幕監修のもと5月7日よりTOHOシネマズシャンテ、シネクイント他で日本公開される。
グラミー賞受賞アーティストのデイヴィッド・バーンは、2018年にリリースしたアルバム『アメリカン・ユートピア』のワールドツアー後、ステージをブロードウェイのショーとして再構築して翌年秋から開始。その斬新な内容が大評判となり、映像化を考えたバーンがスパイク・リーに声をかけ、この新たなスタイルのライブ映画『アメリカン・ユートピア』が完成したという。
今作はアメリカではHBOにて配信のみの公開となったが、「圧倒的な傑作」と評したローリング・ストーン誌が“20年度のベスト映画”第3位に選出するなど高い評価を得ている。
注目はその“ショー”の内容だ。冒頭、オーディエンスを前にステージ上に現れたデイヴィッド・バーンは、脳みその模型を手に「人間の脳は成長と共に衰えていく」という研究結果があることを紹介。ショーを通じて、人種問題、銃問題、コミュニケーションの大切さ、選挙の重要性…といった現代社会の問題を、自身の楽曲とウィットに富んだMCを用いて問い掛け、“人間の脳が成長と共に衰えていっている”ことをシニカルに表現していく。
また、その楽曲を奏でるバンドや舞台も非常にユニークだ。鎖のカーテンで囲まれた舞台上には、通常のライブコンサートとは異なり何もない。シンプルなグレーのスーツに身を包んだ出演者達(=デイヴィッド・バーンと様々なジェンダー/国籍の11人のミュージシャン)は、パントパイムや現代アートの手法も取り入れたダンス/パフォーマンスをしながら、ワイヤレスで繋がれた各楽器を演奏する。一見、音源に合わせてあてぶりをしているのかと疑ったが、各プレイヤーはライブ同様にちゃんと生で演奏しているのだ。
ショーのなかで披露される楽曲は、アルバム『アメリカン・ユートピア』から5曲、トーキング・ヘッズ時代の9曲を含む全21曲で、クライマックスではジャネール・モネイによる“ブラック・ライブヴズ・マター”を訴えたプロテストソング「Hell You Talmbout」をカバーし喝さいを浴びる。ジェンダーレス/多国籍ミュージシャンを率いている点は人種問題への回答だが、それにしても優れたプレイヤー達が集まり、相当な準備をして臨んだステージであることは想像に容易く、文字通り全身を使った素晴らしいパフォーマンスで会場、そして劇場内のオーディエンスを魅了する。
それにしても、撮影当時67歳というデイヴィッド・バーンは全く年齢を感じさせず、11人の演者と一糸乱れぬ動きでステージ上を縦横無尽に動き回りながら歌うのが印象的だ。そして何よりも、このユニークなショーを遂行した彼のバイタリティと才能に感銘を受けるとともに、デイヴィッド・バーンという人物がいかに優れたエンターテイナーであるかを再認識できる。日本のアーティストはなかなか発想しない表現手法であり、特にアメリカでは、これまでの彼の音楽家としての功績も踏まえ、トランプ政権下での分断や厳しいコロナ禍のもと鮮烈に響いたことだろう。
良質な音楽とパフォーマンスにより、あくまで“エンターテイメント”として楽しさを提供しつつ、現代社会に問題を投げかける“エンターテイメント”の意義深さを提示した映画『アメリカン・ユートピア』は、5月7日にTOHO シネマズ シャンテ・渋谷シネクイント他全国ロードショー。
◎公開情報
映画『アメリカン・ユートピア』
2021年5月7日(金)TOHO シネマズ シャンテ・渋谷シネクイント他全国ロードショー
監督:スパイク・リー
製作:デイヴィッド・バーン、スパイク・リー
出演ミュージシャン:
デイヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ジャルモ、ティム・ケイパー、テンダイ・クンバ、カール・マンスフィールド、マウロ・レフォスコ、ステファン・サンフアン、アンジー・スワン、ボビー・ウーテン・3世
2020年/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/5.1ch/107 分/原題:DAVID BYRNE`S AMERICAN UTOPIA/字幕監修:ピーター・バラカン
ユニバーサル映画 配給:パルコ 宣伝:ミラクルヴォイス
americanutopia-jpn.com
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