2021/01/18
伝説的音楽プロデューサーのフィル・スペクターが2021年1月16日に死去した。享年81歳だった。今もなおアーティストに影響を与え続ける、彼の代名詞にもなった豪奢な“ウォール・オブ・サウンド”と呼ばれる手法を確立し、1950年代から数多くのヒット曲を手がけた一方で、2003年に自身の邸宅で女優のラナ・クラークソンが死体で発見された事件で、2009年に殺人罪で19年の実刑が確定したため、服役中だった米カリフォルニア州ストックトンにある医療刑務所でその波乱の人生を終えた。
スペクターは50年代から70年代にかけて米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”を席巻し、TOP10入りした19曲のうち5曲が首位を獲得した。初めてのNo. 1は、ザ・テディ・ベアーズの「To Know Him Is To Love Him」(邦題:逢った途端にひとめぼれ)で、ビルボード・チャートそのものが発足されてから約4か月後の1958年12月にNo. 1を獲得し、3週間その座を譲らなかった。この時、彼はまだ19歳の誕生日を迎えていなかった。
続いて彼は、60年代にプロデューサーとしてクリスタルズの「He’s a Rebel」と、ライチャス・ブラザーズの「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」(邦題:ふられた気持ち)の2曲でNo. 1を獲得、70年代にはザ・ビートルズの「The Long and Winding Road」/「For You Blue」と、バンド解散後に故ジョージ・ハリスンの「My Sweet Lord」/「Isn’t It a Pity」で獲得している。「The Long and Winding Road」は、ザ・ビートルズがバンド名義で獲得した全20作の最後のNo. 1ソングで、スペクターのプロダクションがポール・マッカートニーとの間で遺恨を残し、バンドの解散の一因にもなったと言われている。
米ビルボードが、プロデューサーとしてフィル・スペクターが記録した“Hot 100”ヒット40曲のランキングをまとめている。この40曲のうち、6曲ずつで「He’s a Rebel」を含むクリスタルズと、「Be My Baby」を含むロネッツが並び、次にライチャス・ブラザーズが5曲で続いている。TOP10の中には「Unchained Melody」が「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」と共にランクインしている。
また、ザ・ビートルズの「The Long and Winding Road」と共に故ジョン・レノンが4曲、故ジョージ・ハリスンが3曲で続いている。
スペクターがプロデュースした楽曲は、なんと今年もチャート・インしていることから、その驚異的な影響力がうかがえる。彼の初No. 1となったザ・テディ・ベアーズ「To Know Him Is To Love Him」は、1958年8月4日に“Hot 100”が発足した直後の9月22日付のチャートで初登場した。そして彼がプロデュースしたホリデー・ソング、ロネッツの「Sleigh Ride」とダーレン・ラヴの「Christmas (Baby Please Come Home)」が、2021年1月2日付のチャートでそれぞれ13位と19位に再浮上し、以下のランキングでは28位と36位に入った。
◎プロデューサーとしてフィル・スペクターが記録した“Hot 100”ヒット40曲
(曲名、アーティスト名、ピーク順位(週数)、ピーク達成日)
1位 「To Know Him Is To Love Him」ザ・テディ・ベアーズ / 1位(3週) / 1958年12月1日
2位 「My Sweet Lord/Isn't It A Pity」ジョージ・ハリスン / 1位(4週) / 1970年12月26日
3位 「You've Lost That Lovin' Feelin'」ライチャス・ブラザーズ / 1位(2週) / 1965年2月6日
4位 「He's A Rebel」クリスタルズ / 1位(2週) / 1962年11月3日
5位 「Instant Karma (We All Shine On)」ジョン・レノン / 3位 / 1970年3月28日
6位 「Be My Baby」ロネッツ / 2位 / 1963年10月12日
7位 「The Long And Winding Road/For You Blue」ザ・ビートルズ / 1位(2週) / 1970年6月13日
8位 「Unchained Melody」ライチャス・ブラザーズ / 4位 / 1965年8月28日
9位 「Imagine」ジョン・レノン、プラスティック・オノ・バンド / 3位 / 1971年11月13日
10位 「Da Doo Ron Ron (When He Walked Me Home)」クリスタルズ / 3位 / 1963年6月8日
11位 「Corinna, Corinna」レイ・ピーターソン / 9位 / 1961年1月9日
12位 「Then He Kissed Me」クリスタルズ / 6位 / 1963年9月14日
13位 「I Love How You Love Me」パリス・シスターズ / 5位 / 1961年10月30日
14位 「Ebb Tide」ライチャス・ブラザーズ / 5位 / 1966年1月8日
15位 「Pretty Little Angel Eyes」カーティス・リー / 7位 / 1961年8月7日
16位 「Zip-a-dee Doo-dah」ボブ・B・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ / 8位 / 1963年1月12日
17位 「Just Once In My Life」ライチャス・ブラザーズ / 9位 / 1965年5月15日
18位 「Second Hand Love」コニー・フランシス / 7位 / 1962年6月9日
19位 「Black Pearl」ソニー・チャールズ&ザ・チェックメイツ・リミテッド / 13位 / 1969年7月5日
20位 「What Is Life」ジョージ・ハリスン / 10位 / 1971年3月27日
21位 「Uptown」クリスタルズ / 13位 / 1962年5月26日
22位 「He's Sure The Boy I Love」クリスタルズ / 11位 / 1963年2月16日
23位 「Power To The People」ジョン・レノン、プラスティック・オノ・バンド / 11位 / 1971年5月1日
24位 「There's No Other (Like My Baby)」クリスタルズ / 20位 / 1962年1月6日
25位 「Walking In The Rain」ロネッツ / 23位 / 1964年12月5日
26位 「Baby, I Love You」ロネッツ / 24位 / 1964年2月1日
27位 「Wait Til' My Bobby Gets Home」ダーレン・ラヴ / 26位 / 1963年9月7日
28位 「Sleigh Ride」ロネッツ / 13位 / 2021年1月2日
29位 「Bangla-desh/Deep Blue」ジョージ・ハリスン / 23位 / 1971年9月11日
30位 「Why Do Lovers Break Each Other's Heart?」ボブ・B・ソックス&ザ・ブルー・ジーンズ / 38位 / 1963年3月30日
31位 「He Knows I Love Him Too Much」パリス・シスターズ / 34位 / 1962年3月10日
32位 「Do I Love You?」ロネッツ / 34位 / 1964年8月1日
33位 「(Today I Met) The Boy I'm Gonna Marry」ダーレン・ラヴ / 39位 / 1963年5月11日
34位 「(The Best Part Of) Breakin' Up」ロネッツ / 39位 / 1964年5月16日
35位 「Puddin N' Tain」ジ・アレイ・キャッツ / 43位 / 1963年2月16日
36位 「Christmas (Baby Please Come Home)」ダーレン・ラヴ / 19位 / 2021年1月2日
37位 「Every Breath I Take」ジーン・ピットニー / 42位 / 1961年9月11日
38位 「Mother」ジョン・レノン、プラスティック・オノ・バンド / 43位 / 1971年1月30日
39位 「Under The Moon Of Love」カーティス・リー / 46位 / 1961年11月27日
40位 「Hung On You」ライチャス・ブラザーズ / 47位 / 1965年8月21日
プロデューサーとしてフィル・スペクターが記録した“Hot 100”ヒット40曲は、ソング・チャート“Hot 100”における実際のチャート・アクションから算出し、No.1が最大値となる逆ポイント・システムを採用した。時代とともに算出方法が変化しているため、チャートにおけるターンオーバー比率を考慮し時代ごとに調整されている。
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像