2020/11/05 19:00
ベビー服、子供服の専門店・西松屋のCMソング「好き好き大好き」が話題を集めている。色とりどりの服を着た子供たちが笑顔ですべり台を下りてくる映像とともに、軽やかなメロディと「誰かにとってのオシャレは/誰かにとってオシャレじゃない」というフレーズが飛び込んでくるこの曲は、視聴者からも注目の的。SNSでも、「好き好き大好き」に対する感想、エピソードが数多く見受けられる。
「子供達の笑顔と曲がマッチしてて見てて元気になるね」
「可愛い~。覚えやすいフレーズ。皆で歌いたーい」
「耳に残る~ 頭の中 好き でいっぱい」
「『好き好き大好き』を一緒に歌った口で、全身ピンクになった娘コーデについて余計な事を言ってしまう 「これでいいの!」と言って出かけて行きました」
「“好き好き大好き”私は私でいいって思えてめっちゃ好き!」
「なんだろ?今の曲なのに懐かしさを感じるっ」
表現の仕方はそれぞれだが、この曲を聴いた人たちがポジティブで明るいメッセージを受け取っていることは間違いない。「好き好き大好き」を歌っているのは、吉田山田。シンプルな言葉で本質を貫く歌詞、素朴で耳なじみがいいメロディが一つになったこの曲は、彼らの音楽の魅力を改めて伝えることになりそうだ。
まずは吉田山田のキャリアを簡単に紹介しておきたい。吉田結威、山田義孝のシンガーソングライター2人による吉田山田(ちなみに2人は高校の同級生)は、2005年から音楽活動をスタートし、2009年にシングル「ガムシャランナー」でメジャーデビュー。日々の生活の中で疲れ、葛藤を抱えながらも、懸命に生きる人々の姿を歌った「メリーゴーランド」、<もっと強く今を生きるのさ><夢を膨らまして>というフレーズが響くポップチューン「魔法のような」などのスマッシュヒットにより、“ストレートな思いを伝える男性デュオ”として確実に存在感を強めていく。2013年にリリースされた「日々」も、吉田山田の代表曲の一つ。NHK「みんなのうた」のために書き下ろしたこの曲は、老夫婦の人生を振り返り、<涙の数だけ きっと幸せな日々>という願いを描いた楽曲。“泣ける曲”として話題を集め、ロングヒットを記録したこの曲によって、彼らの歌は幅広い層のリスナーに浸透した。
デビュー10周年を迎えた昨年は、47都道府県ツアーを開催。さらに今年の春に初のベストアルバム「吉田山田大百科」をリリースするなど、アニバーサリーを祝う活動を行った。デビュー12年目を迎え、新たなスタートを切った吉田山田の最新曲であり、彼らの本質をしっかりと描き出した楽曲が「好き好き大好き」だ。
<誰かにとってのオシャレは/誰かにとってオシャレじゃない>というキャッチーなフレーズではじまる「好き好き大好き」。<あぁどうせなんか言われんなら/好きなモノを着よう><誰かにとってはゴミでも/誰かにとってお宝だ>という歌詞も心に残るが、この曲の根底にあるのは、“あなたはあなたでいい”“自分らしく日々を生きよう”というメッセージだろう。
男らしく、女らしく、子供らしく、大人らしく、長男なんだから、もういい年なんだから――この社会には“〇〇らしく”という制限が数多く存在している。決められた常識の範囲内で生きるほうがラクなのかもしれないけど、「本当はちょっと違うのにな」という小さな違和感を抱えている人も多いだろう。また、SNSの発達もあって、常に人の目を気にしなくてはいけない状態を窮屈だと感じている人もいるはず。そんな現状のなかで吉田山田は「好き好き大好き」という楽曲を通し、<人の目なんか意識しなくていい。もっと自由に生きようよ>と訴えかける。好きな服を着ることも、自己表現。誰かのためではなく、自分のために好きな服を選ぼうと歌う「好き好き大好き」は、人が生きていくなかで、もっとも大切なことに直結しているのだと思う。
印象的なギターリフ、UKギターロックを想起させるバンドサウンド、“好き”を50回以上連呼するサビのフレーズなど、アレンジ、楽曲構成にもしっかりと個性が現れている。その中心にあるのはもちろん、二人の歌声だ。生来のポップネスをたたえた山田のボーカル、そして、骨太な手触りの吉田の歌声が織り成すコントラストは、デビュー10周年を超え、さらなる魅力を放っている。歌い手のエゴを押し付けるのではなく、聴き手に歌を手渡すようなパフォーマンスも素晴らしい。
吉田山田は10月30日放送の『やまだひさしのラジアンリミテッドF』(Tokyofm)に出演した際、「好きってエネルギーをもう一度大事にしたいなと思って。(吉田と)出会った頃のことを思い出したり、自分という人間も、父親と母親の“好き”から生まれたんだなと思いを馳せながら、シンプルですけど“好き”というひと言に思いを込めました」(山田)「“好きこそものの上手なれ”で始まったことが、“好きだけでやっていけると思うなよ”という言葉も増えるじゃないですか。なんでこんなにがんばってたんだなと忘れてしまうし、この曲ではストレートに(“好き”という)思いを込めた曲になりましたね」(吉田)とコメント。二人のリアルな感情が反映されていることも、「好き好き大好き」が共感を集めている理由だろう。
11月20日(金)には、吉田山田がデビュー前から出演してきた高田馬場四谷天窓から無観客ライブを開催。「好き好き大好き」によって改めて注目を集めている吉田山田の今後の活動にも大いに期待したい。
Text:森朋之
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