2020/10/10
レゲエを日本の音楽シーンに根付かせた立役者のひとりであり、老若男女に愛される楽曲をこれまでいくつも生んできたMINMI。2020年夏にデビュー18周年を迎えた彼女が、自身のレーベル初となるオリジナルソング「imacoco」を10月10日に配信リリースした。
夢に向かって突き進んでいく素晴らしさを体現してきたMINMIだが、そのずっと走り続けてきた日々の中で気付いた「imacoco」の重要性。「将来こうなりたいと未来ばかり見ていてはダメ。今ここで愛を持って出来る事を味合う。ベストを尽くす。楽しむ。その等身大の自分の積み重ねの中で、ある日気づく、いつしか憧れた夢や理想の中に生きている事を―――」そんなメッセージが今作には込められている。
Billboard JAPAN.comでは、そんな「imacoco」リリース直前にMINMIへのインタビューを敢行。新型コロナの影響もあり、世界が激動している2020年“イマココ”から語ってくれた言葉たち、ぜひご覧いただきたい。
◎MINMI「imacoco」インタビュー
<コロナ禍で音楽業界が崩壊したら……それでも音楽は成り立つ!?>
--2020年は新型コロナの影響でオンラインライブを行うアーティストが増えています。ただ、画面越しに観るライブは、会場で観るライブと比べてエモーションを感じ取りづらかったりするじゃないですか。でも、先日のMINMIさんが挑戦したオンラインライブ【MINMI 18th Anniversary Online Premium Live“challenger”】には涙させられました。
MINMI:よっしゃー! ありがとうございます。私もオンラインライブにはそういうイメージを持っていましたが、いざ18周年のライブをオンラインでやってみたら、すごく「繋がっている」と感じることができました。観てくれている人たちの気持ちがちゃんとそこにあると感じて。だからカメラのレンズに向かって歌っている感覚じゃなくて、その場には居ないけど、ちゃんと心が繋がっている人たちに向けて歌っている感覚でした。生のライブ会場に居るときと何ら変わらず「魂を込めて歌いたい」というモードになれたんですよね。
--コロナ禍がこれまで経験した災害などと違ったのは、何かを良くする為に頑張るアクションを制限されたことだと思うんです。「家の中でじっとしてください。誰とも会わないでください。」という自粛要請があって。ゆえにオンラインでありながら「繋がり」を強く感じさせてくれたMINMIさんのライブは泣けたんだろうなと。
MINMI:コロナの影響で時代はどんどんバーチャル化に進んでいって、すべてがオンラインになるんじゃないか。そんな風に言われたりしていますけど、私はアナログ的なモノやライブ感のあるモノが好きなのですが、新曲「imacoco」を歌いながら、「会っている、会っていない」「そばにいる、そばにいない」そういう次元を超えて繋がれることもあるんだなと思って。絶対に生身のライブのほうが好きだし、それがベストだと思っているけど、この時代だからこその繋がり方の面白さも感じている。私がLAに住んでいても、日本に居るファンと気持ちと気持ちで繋がれるということを実感しました。
--その「繋がり」をオンラインであっても強く感じさせられるのは、MINMIさんの人間性によるところも大きいと思いますよ。リアルとオンラインのライブの熱量もそうだし、直接こうして会話するのとSNSで会話するときのテンションもそうだし、MINMIさんはそこが変わらない。どうしたってハートフルじゃないですか。
MINMI:ハハハハ!
--コロナ禍で音楽業界が崩壊するかもしれない。そんな話題が飛び交っていた時期に、もしそうなったら「路上や公園で歌うので、そのときは来て下さいね。そこに遊びに行くよーなんて、アーティスト仲間達が集まったりして。仕事なくなったし、一緒に楽しくやろうよーなんて、新しい仲間もできたりして。逆にみんなで支え合えたりして」とMINMIさんはツイートしたんですよ。あれが書けるのは、MINMIさんしかいない。
MINMI:素でそう思ったんですよね。私は大きなフェスで数万人の前で歌わせて頂いていて、それはそれで素晴らしいことだけど、もしフェスが出来なくなるのであれば、キャンプファイヤーしながらギター1本で歌えばいいし、そこに来たい人だけ来て感動をシェアできるのなら、それで良いじゃんと思うんですよね。そういうことを言うと「落ち着け」とスタッフに止められるのですが(笑)、でも根本的に「場所があって、音が奏でられて、そこに人が集って」これだけで音楽は成り立つと思っている。
--音楽の根源的な話。音楽がビジネスとして成立する前の話ですよね。
MINMI:そうですね(笑)。
--誰かが音を鳴らして、それが気持ち良いから人が集まって、みんなで飲み食いしながら楽しむ。以上っていう(笑)。
MINMI:だけど、お弁当は売ります!
一同:(爆笑)
--お弁当で稼ぐのですね(笑)。
MINMI:手作りなので、ちょっと割高で!
<2020年「酷い年だけど、新しい発想へ転換できる年にしたい」>
--とは言え、新型コロナのパンデミックが起きて、様々な自粛要請が発令されたばかりの頃はMINMIさんも戸惑ったと思います。実際、どんなことを考えたりしましたか?
MINMI:マネージャーと究極の話を先にしちゃったんですよ。失うことを怖がって怯えているよりも、いろんなモノが無くなってしまった状況を想定してどうしていくか考えておこうと。それで「田舎に住んで、音楽だけ奏でられるようにしておいて、自分たちなりに農業をしている人たちのお手伝いをしよう」なんてことを話したりしていました。食べることと、屋根があるところに住むこと。プラス音楽ができたら「それで私たちは幸せだよね」って。きっとそこには音楽仲間も来てくれるだろうし。もちろん、実際にそうなったら厳しい世界だとは思います。やったこともない農業に携わるなんて簡単なことじゃないと思うし。でも、何を失くしても、それで食べられる、眠れる、音楽を奏でられるのであれば、そういう生活をしようと。だから、いろんなモノを捨てるかもしれない覚悟でいようと。結構早い段階でそういう話をしていました。
--最初に究極のシミュレーションをすることから始めたんですね。
MINMI:ちょっとした村みたいなモノを作って、そこで音楽仲間のみんなとそれぞれに得意分野のお仕事をする。「私の家はみかんを作ろう」「じゃあ、ウチは米を作ろう」みたいな感じで物々交換をしながら生活して、そこには簡単なステージを作れる制作の人もいて、週に1回ぐらいみんなで音楽を奏でる。「それはそれで楽しいかもしれないね」って少しウキウキしてくる感覚もあって。そんな半分現実、半分夢見がちな話をしたりする中、私がちょっと幸いだったのは、LAに移住していたことでした。コロナ禍になる以前から、日本に住んでいたときとは違う暮らしをする覚悟はしていて、それもまだ1年目だったので、海外で活動の場を切り開いていくのは簡単じゃないと思っていたし、人脈づくりや仕事づくりに2,3年はかかるし、何も出来ない状態での生活をすでにスタートしていました。だからコロナ禍でも前向きになれたのかもしれない。
--なるほど。
MINMI:あと、そんな状況下でも、後輩のダンサーだった子がオンラインライブを企画したりしていて、それで「実験的にやってみないか?」と背中を押してくれて【MINMI 18th Anniversary Online Premium Live “challenger”】を開催することが決まりました。そのライブをすることが決まったあたりから、コロナ禍で頑張っちゃいけない、エネルギーをセーブしなきゃいけない状態から一気に解き放たれていくと、どんどん力も湧き上がってきて。タイトルに“challenger”と付けたように、自分が新しいことにチャレンジしていくことで「それをみんなにシェアしたい」という気持ちも芽生えてきた。ずっとコロナ禍でいろんなモノが停滞してしまっていたけど、この2020年を逆にスタートの年というか、時代や環境が変わっていくなら、自分の発想も変えてトライしていく。そういう年として2020年を捉えたいなと思ったんです。すごく酷い年だけど、すごく新しい発想へ転換できる年にしたいなって。
--MINMIさんらしい前向きな発想だと思います。
MINMI:元に戻るのではなくて、ここからまだまだ世界は変わっていきそうな気がするから、そこに対して「“challenger”でありましょうね」という気持ちにはなっている。
--そのオンラインライブ“challenger”でも仰っていた「何度でも言うよ、あなたはあなたのままでいい」というメッセージ、ありのままの自分を見せていく生き方の提案、今回の「imacoco」の歌詞もそうですけど、これからの時代に向けた新しい価値観がMINMIさんの気付きの中で次々とアウトプットされている印象を受けます。
MINMI:うれしい。平賀さんがそう言ってくれるのなら、すごく「そうなのかな」って思えてくる。私、最近『Natural』(※2006年発売の3rdアルバム。インタビュアーの平賀がMINMIを積極的に取材するようになったきっかけの作品でもある)を振り返っていたんですよ。
<新しい価値観の提案「imacoco」~ナチュラルな夢の叶え方>
--それは何でですか?
MINMI:私「imacoco」を作ったわりに、そんなに“イマココ”で生きられていないと思って(笑)。“イマココ”じゃなくて「明日どうなるかな? 来年どうなるかな?」ってやっぱり考えちゃうし、「去年はああだった。10年前はこれができた」とか思っちゃうし、全然“イマココ”に生きられていない。でも“イマココ”を大事にすることがすごくキーポイントだと感じていて、「そんな余計なことを考えていないで、今出来ることを集中してやろうぜ」って自分自身に対して思っていることでもあります。だから「imacoco」という曲をメッセンジャーとしてみんなに「今ここに生きることが大事です」って上から全然伝えられる感じではなくて、これは『Natural』のときもそうでしたね。
--『Natural』もMINMIさんがナチュラルに生きられていないからこそ、これからはナチュラルに生きていきたいと思って作った作品でしたよね。
MINMI:「Natural」という言葉をジャマイカで聞いて、人はナチュラルな状態でいられることが最も素晴らしいと教わって「すごい! 素敵だ!」と思っただけど、何をどうすればナチュラルに生きられるか分からなかったり、まだ全然雲を掴むような感じだったんですよね。だから「Natural」という表題曲の歌詞に対して「全然、等身大じゃないな」と思うことのほうが多くて。でも「いつか自分は自分らしいなと思える人になっていたい」と思っていて、実際にあの頃より今のほうが確実に自分らしくステージに立てているし、自分の言葉を臆さずに人に伝えられるようになっているし、あの歌詞の中にあるように、少数派でも自分の感じていることを堂々と伝えようと思えているし、すごくナチュラルに生きられている実感がある。ということは、きっと「imacoco」もいつか「イマココ」という言葉と一緒に生きられる日が来るのかなと思っていて。
--今は「imacoco」という価値観をリスナーに対してはもちろん、自分に向けても提案している。それがやがて自分の生き方へと「Natural」のように昇華されていく。
MINMI:それがすごく楽しみ。本当に「イマココ」で生きていきたいと思っているので。私、ある人に「私はミュージシャンとして世界で活躍したいです」と話したときに、例えば「グラミー賞を受賞したい」とか「こうなりたい」に集中しすぎちゃダメって言われました。私、昔は「デビューしたい」とずっと思ってデビューして、ファンの方々にも「The Perfect Vision」に書いてあるように「夢っていうのは、自分でVisionを持って、そのVisionを信じて近付いていく。そうやって叶えるものだよ」って言ってきたのですが、初めて「そうしちゃいけないよ」って言われたんです。何故なら「そうやって夢を叶えたときに、その位置を失うプレッシャーを感じるから」って。実際、私もそういうプレッシャーはすごく感じていました。
--夢を掴んだ人たちの宿命ですよね。
MINMI:じゃあ、どうすれば良いか。「今日できることに愛を注いで、ベストを尽くす。その延長線上にあなたがかつて憧れた場所はあるでしょう。そうやって辿り着いたその場所はあなたにとってすごくナチュラルで、プレッシャーにはならないはずだから」
--たしかに。無理やり掴んだ夢ではないから、愛を注いで、ベストを尽くした日々の結果だから、その場所にナチュラルに存在することができる。
MINMI:それも「imacoco」に通ずるというか、私が「イマココ」をすごく大事にしたいと思ったきっかけ。ついつい「ここに必ず辿り着きたい」と思って無理をしてしまうけど、「イマココ」を大事に生きていれば辿り着けるという発想が今は重要な気がしています。
--今回の「imacoco」もひとつの分岐点になりそうですね。
MINMI:そう言ってもらえると嬉しいです。2020年、そして、これからって不思議なワクワク感を感じています。子供の頃に観ていた映画の世界みたいだなって思っていて。世の中がオンライン化されていくことも、これからAIがどんどん活用されていくことも、ちょっと映画っぽいじゃないですか。その中で、私たちに何が出来るかと言ったら「imacoco」で歌っているようなことでしかないのかなと思っていて。それが今いちばん重要なメッセージな気がしているし、私は今回の歌詞の中で「世界中が星座のように繋がっている」というフレーズが最も気に入っていて、世界を俯瞰で見たときに、人と人、街と街とがすべて繋がっているような気がして「遂にこの時代が来た」みたいな。なので、この曲「imacoco」に見合う自分になれるように「イマココ」を生きていきたいなと思っています。
取材&テキスト:平賀哲雄
◎MINMI feat. T-SPICE『imacoco』
2020/10/10 RELEASE
https://linkco.re/FrMDZpMY
◎『imacoco』MV
https://youtu.be/vOW5Opac98I
◎MINMIからのメッセージ:
自身のレーベル“masterbeau”
より初となる作品
“imacoco”をリリース
2020年 時間も距離も超え
街中が繋がるスピードは加速している
アナタの“イマココ”
ワタシの“イマココ”
過去でも未来でもなく
今を生きようと歌う
メッセージソング
MINMI OFFICIAL HP
http://minmi.jp
FREEDOM 公式HP
http://freedom-aozora.com
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像