2020/09/25
9月21日に、メジャーデビュー15周年、結成20周年を迎えたPerfume。2019年のこの日から1年をアニバーサリーイヤーとして、メンバーは初の4大ドームツアーを含めたさまざまなチャレンジをしてきた。
その半ばでコロナ禍に見舞われ、ドームツアーのファイナルであった東京ドーム公演は中止に。お祝いムードは一時ステイホームの波に埋没。が、今やエンタメ界を引っ張る立場でもあるPerfumeは、みんなをワクワクさせることをあきらめなかった。静かに現実を見つめつつ、チーム一丸となって水面下でアイディアを練り、「今、私たちにできること」に向けて準備を重ね、9月の頭から「Perfume 15th & 20th anniv with you all」と銘打ったアニバーサリー最終章となるプロジェクトを続々と発表。その締めくくりとなったのが、デビュー記念日当日、7時間に及ぶ長尺で行われた【“P.O.P”(Perfume Online Present)Festival】だ。
オンラインと聞けば、無観客ライブ配信を思い浮かべる人がほとんどだと思うが、【POP FES】はその名の通りフェス。Perfumeのライブ演出をデジタル技術面で支え続けているライゾマティクスとのタッグで、オンライン上に夢のような世界を出現させた。アクセスすると、そこはいくつもの建物できたフェス会場になっていて、有料コンテンツが観られるメインブースだけでなく、多彩なトーク番組が楽しめるバラエティトークブース、これまでの衣装の詳細が展示されたコスチュームブース、特製グッズ売り場、脱出ゲームが楽しめるコーナー、さらにはフードコートと、無料エリアも大充実。そのどこに行ってもPerfumeがいて、テーマごとに違う3人の表情が観られて、しかも、タイムテーブルが微妙に被ってるからどこに行くか迷って忙しい。つまり、まるごとPerfumeワンダーランド状態のフェスというわけだ。
どこに行ってもPerfumeがいるということでお察しの通り、事前収録のコンテンツも多い。有料エリア、無料エリアで別々の企画を提供するソロのトーク番組は、収録の利点を最大限に活用するカタチで、どれも時間をたっぷり使い、いい意味でゆるく、だからこそメンバーの素の表情も見られてディープだった。「かしゆかの寝ても覚めても猫」は、同じ猫好きの坂本美雨と中川翔子をゲストに、延々猫と戯れながら「猫吸い」を語り合うという癒し場面の連続。のっちの「のっちは○○とゲームがしたい!」は、対戦相手に当選したファンを、のっちがホラー系バトルゲームで「ありがとうございます」と不敵な笑いでやっつけるというシュールさ。あ~ちゃんの「あ~ちゃんプレゼンツ恋愛ドラマなトークがしたい! 女子会スペシャル」では、恋愛リアリティーショー「ドラ恋」の大ファンを自称するきゃりーぱみゅぱみゅや桃、ちゃあぽんと胸キュンの女子トークを展開したあと、あ~ちゃんが本人びっくりのサプライズに遭うという展開に。「あ~ちゃん×かしゆか×のっちの女子部屋 ガールズトーク」では、お泊りセットを見せ合いながらのPerfume3人のパジャマトークなど、もう、ファン垂涎ものとしか言いようがない。
番組と番組の間には、「トイレ休憩ができるように」と音声だけのコーナーも挟み込まれるのだが、これはこれで生だから貴重で、きっと個室にケータイを持ち込む人も多かっただろう。生といえば「Perfumeとちょっと遅めの夏祭り」の浴衣姿も、それぞれ粋で眩しかった。カラオケで、のっちがポルノグラフィティの「ミュージック・アワー」を、あ~ちゃんがWhiteberryの「夏祭り」を熱唱すると、その上手さに驚きと賞賛のコメントもあふれた。常日頃、ライブでリアルとバーチャルをナチュラルに行き来するPerfumeだからこそ、このフェスの生と収録の行き来も違和感なく成立し、視聴者を楽しませることができたんじゃないだろうか。
そうそう、会場が一望できるトップ画面には点描で観客が表示され、総来場者数が増えるたびに点も増えていく。さらに、来場者がそこにある4色の「EMOTION」ボタンを押すと、点が色づいていくという視聴者参加型の仕掛けも。オープニングで、かしゆか がそのシステムを紹介する際、会場マップの点描を差して、「この粒がみんなね」と発言するや、「俺たち粒なんだ」といった「粒」コメントが、【POP FES】上の赤丸急上昇トレンドワードになったのも面白かった。「フェスに参加している」という観客自身の意識や、見えない観客同士の一体感が、オンライン上でどう生まれていくかを見た気がして、とても興味深かった。
クライマックスは、ラストのパフォーマンス【Perfume Imaginary Museum “Time Warp”】。3人がスタジオに入り、最新シングル「Time Warp」ミュージックビデオの最後の場面と同じセットの前に立ち、レトロなテレビにVHSテープを差し込むところから、シーンはいきなり2月26日の東京ドームにジャンプ。中止を知って呆然の立ち尽くす人々のドキュメント映像が流れ、視聴者はあの日のやり場のない気持ちに一瞬引き戻される。するとその一人ひとりの思いが、光の「粒」となって地球を駆け巡る。その様子を宇宙から眺める3人。「遥か遠いキミへ 届けたい きっと祈りに近い物語~」と「STORY」が流れ、今度はあの日誰もいない観客席で、いつもは観られないステージの光景を見て拍手するメンバーのドキュメント映像が。そこで現れたのは、デジタル化された東京ドームだった。「もう一度あの日から始めよう」という3人の声。つまり、幻のあの日を、観客の思いと自分たちの思いを合わせて、大切な記念日のこの日、アップデートしたカタチで再現しようというのだ。まさに心で作る「Time Warp」。ライゾマティクスの技術をフル稼動させたバーチャルではあるが、セットの骨組みができるところから1曲目「GAME」までは、もう4大ドームツアーのまんま。しかも、目の前にはくっきりとして3人がいる。おうち特等席で3人を独り占めできるのだから、これはもう至福の時間以外の何物でもない。
そんな驚きと感動のオープニングから、今度はこのフェスならではの「Imaginary Museum」へとワープ。曲ごとに想像上のミュージアムの部屋を移動していくというカタチでパフォーマンスは進行した。これは、「採った全データを使ったPerfumeミュージアムみたいなものをいつか作りたい」と常々発言している真鍋大度(ライゾマティクス)らしいアイディアと言えよう。お馴染みのライブ演出を基本としながらも、リアルな空間上では不可能なデジタル表現はさながら「エレクトロ・ワールド」。縦横無尽な角度から3人を見られるのもまたデジタルの恩恵で、特に俯瞰からの映像は新鮮だった。3Dなのか、それ以上なのかもうわからない世界だが、とにかくビビッドで美しい。
最後の最後、今回のパフォーマンスは全てグリーンバックで作った合成画面であることを、後半のパフォーマンスを終えた本人たちがいたずらっぽくバラすという場面があった。つまり、拡張現実の中をグリーンバックで行き来しながらパフォーマンスするという超高難度な挑戦だったわけだ。これはもう立ち位置からダンスの微細な動きまで正確さを極めるPerfumeと、Perfumeのファンと言って憚らないライゾマチームのデータ蓄積とクリエイティビティが合体しなければ成り立たない離れ技。デジタルとの親和性の高いPerfumeの一番すごいところを、記念すべき自分たちのオンライン・フェスの一番の見所に持ってきたのはさすがだった。
「みんなで作った歴史なんだということをパフォーマンスしながら思い、すごく幸せな気持ちになりました」とのっち。「可能性はまだまだ探せばたくさんあるんだなと思いました」とかしゆか 。あ~ちゃんからは、「会えないのは寂しいですが、負けずに、私たちらしくできることをやっていきたいと思います」と、今後に向けた力強い言葉も聞くこともできた。困難な時代でも、いや、こんな時代だからこそ思いもよらない可能性があるということを、Perfumeは【POP FES】で身をもって示してくれた。ツッコミたくなるようなほのぼのとした世界と、ゴリゴリに尖った最先端テクノロジーとを行き来しながら。本当に現代の女神と呼びたいスーパーウーマン3人なのである。長きに渡る活動でも色褪せない魅力の理由を、あらためて知るフェスでもあった。現時点で総来場者数は10万人を突破。メイン・ブースのアーカイヴは9月30日の23:59まで、チケットもまだ購入できるので、見逃した方はぜひ!
Text by 藤井美保
◎【Perfume Imaginary Museum "Time Warp"】セットリスト
01.Intro
02.Opera
03.GAME
04.エレクトロ・ワールド
05.GLITTER
06.Chrome
07.edge
08.Visualization
09.再生
10.Time Warp
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