2020/09/11
井上道義(総監督・指揮)、野田秀樹(演出)による歌劇『フィガロの結婚』の再演が決定し、コメントが到着した。
本作は、時代設定を黒船が来航した当時の日本に置き換え、伯爵や伯爵夫人、ケルビーノは原曲通りイタリア語で歌い、フィガ郎(フィガロ)やスザ女(スザンナ)たちは日本人という設定のもと日本語で歌うというもの。オペラの常識に縛られず自由な発想で演出された『フィガロの結婚』は、2015年初演時には、東京芸術劇場のほか、全国各地で14公演が行われ、“日本で上演されたオペラのヌーヴェルバーグ”として話題となった。
そして、オペラファンのみならず演劇ファンからも再演が望まれていたことから、2020年10月30日に東京芸術劇場の30周年を記念し再演が決定。チケットは9月19日より先行発売、9月26日より一般発売となる。
◎井上道義コメント(総監督・指揮)
野田秀樹さんにこのオペラを演出していただくことは僕の長年の夢だった。
彼は、『マクベス』での経験からか「オペラは金輪際やらない!」と
公言していたので本当に口説きは大変だった。
その苦労のために俺は癌になったと言うのは全く悪い冗談だが…。
しかし2015 年全国14公演は今思い出すにもチャレンジングな、
生きていて良かった経験だった。
彼の演出法がワークショップを繰り返し、
そこからアイディアをまとめ上げる方法だと知らなかったが、
自作台本を演出してきた作家とすれば、
それ故、真に誰にも出来ない多角的なあの舞台が出来上がった。
6 年経った!またやる!
現場で何が起こるか聴いてくれ、見てくれ。今は今しか無いのだ。
◎野田秀樹コメント(演出)
5年前に全国10箇所を回ったこの「フィガロの結婚」は、熊本で千秋楽を迎えた。
終演後、ライトアップされていた熊本城を見ながら、
私は、このまま終わるには惜しいオペラだ、
再演を熊本城に誓った。それから半年後、
地震で熊本城の天守閣の瓦や石垣が崩れていく映像をいたたまれない気持ちで見た。
今年、その天守閣が再び人々の前に姿を見せたそうだ。
その時を同じくして、この「フィガロの結婚」が人々の前に、
天守閣さながら姿を現すことができることに至福の喜びを感じる。
私は、このコロナ禍で人の心と生活が、当たり前のように崩れている事を憂慮している。
当たり前のように「マスク」をして、当たり前のように「新しい生活様式」などと口走っている。
いつの日か、そんなことが「当たり前ではない」ということが
「当たり前」になる暮らしに一刻も早く戻りたい。
それは、ほとんどの人々が同じ思いだろう。
劇場もまだまだ、本来の劇場の姿には程遠い。
この「フィガロの結婚」が少しでも「当たり前」に戻っていく先駆けとなればと切に願う。
その願いが、この「フィガロの結婚」の歌手たちの「肉声」にのって、
演者たちの「肉体」に宿って、市松模様の客席に届くと信じている。
私たちは、生の肉体を、肉声を、人々の前に届けてこそ、
「舞台を生業なりわいとする者」と言える。
それが私たちの「当たり前」なのである。
◎公演情報【モーツァルト/歌劇『フィガロの結婚』~庭師は見た!~】
2020 年10 月30 日(金)18:30 開演/11 月1 日(日)14:00 開演(予定)
東京芸術劇場コンサートホール
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