Billboard JAPAN


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2020/09/04 12:00

<ライブレポート:前編>【野宮真貴、還暦に歌う。】が遂に開催 鈴木雅之とのデュエットでロマンチックに夜を染めた初日公演

 今年3月に還暦を迎えた野宮真貴のアニバーサリー・ライブ【野宮真貴、還暦に歌う。~赤い口紅の女と黒いサングラスの男たち~】が、8月19日・20日にビルボードライブ東京にて開催された。ここでは日本の音楽界を代表する”黒いサングラスの男たち”こと鈴木雅之と横山剣(クレイジーケンバンド)をゲストに迎えた2日間のステージのライブレポートを前後編にてお届けする。本記事では19日公演の模様を紹介。

 新型コロナウイルス感染症対策用の座席レイアウトが配された客席にライブ時の注意事項のアナウンスが流れる。マスク着用の鑑賞スタイルとはいえ、これから始まるステージへの期待に満ちた空気感は変わらない。開演前、スクリーンに映し出されたのは、野宮真貴への還暦のお祝い映像コメント。シティボーイズの斉木しげる、GLIM SPANKY、小薮千豊、HEESEY(THE YELLOW MONKEY)、高橋幸宏と、彼女のキャリアと幅広い交流をうかがわせる。

 バンドのメンバーが静かにステージに上がって間もなく、「マッセメンシュ」のクラシカルな赤いドレスに、”miss maki nomiya 60”のタスキをかけた野宮真貴が登場。大きな拍手に包まれる中、ピチカート・ファイヴのヒットナンバー「SWEET SOUL REVUE」から軽快にステージがスタートした。「“野宮真貴、還暦に歌う。”へようこそ」。本来は彼女の誕生日、3月12日に開催されるはずだったがコロナ禍のために延期。「ライブが実現するまで歳を取るのをやめると宣言していたので、今日ようやく時計の針が動き出しました」と、晴れやかな笑顔がこぼれる。「私のお祝いの還暦ライブでもありますが、今日は皆さんと幸せを分かち合う日にしたいと思います」という言葉を添えて歌われたのは、ジャジーで小粋なアレンジに仕立てられた「東京は夜の七時」。この曲をまた東京の夜に生で聴ける幸せを客席の誰もが感じたのではないだろうか。煌めく東京のイメージを歌い継ぐように披露されたのは、荒井由実の「中央フリーウェイ」。ユーミンがムッシュかまやつのために書き下ろしたこの曲は、2015年のビルボードライブでの「野宮真貴、渋谷系を歌う。」で亡きかまやつ氏と一緒に歌った思い出のナンバーだ。

「私が生まれたのは1960年。11歳のときに父がステレオを買ってくれて、生まれて初めて聴いた洋楽がカーペンターズでした」。そこで知ったのがバート・バカラック。渋谷系のルーツでもあるバカラックのメドレーを「当時のアレンジで」初披露!  
 カーペンターズの初のナンバーワン・ソング「Close to You(遙かなる影)」に始まり、「Knowing When To Leave(去りし時を知って)」、「Make It Easy On Yourself(涙でさようなら)」、「I'll Never Fall in Love Again(恋よ、さようなら)」、「Do You Know The Way to San Jose(サン・ホセへの道)」など全7曲のメドレーには聴き惚れてしまった。彼女が11歳のときに初めて聴いたアルバム『Carpenters』のバカラック・メドレーが還暦の晴れの場で再現されたのである。Smooth Aceのコーラスとの息もピッタリで、あらためて”渋谷系のクイーン”の存在感を思い知らされる。
 ピチカートの『ロマンティーク96』に収録され、彼女に当て書きしたような歌詞の「三月生まれ」を歌い終えると袖に捌け、お祝い映像コメントPart2が流れる。のん、夏木マリ、鮎川誠に続いて、小西康陽からは「これからもどんどん若々しい曲を歌ってください」のコメントが寄せられた。客席がどよめいたのは、「Maki、Happy Birthday!」とフルメイクでメッセージを贈ったKISSのポール・スタンレー! 15歳からの生粋のKISSファンでもある彼女にとって、これはとびきりのサプライズ・プレゼントだったはず。

〈19日ゲスト、鈴木雅之とは大滝詠一の名曲をともに〉
 「ケイタマルヤマ」のフリルをあしらった赤のドレスにお色直しした野宮真貴が、バンドの演奏するKISSの「I Was Made For Loving You」のイントロに乗って登場。スパム春日井率いるロマンティックスのメンバー紹介に続いて、”黒いサングラスの男たち”の一人、スペシャル・ゲストの鈴木雅之をステージに招き入れる。お祝いの言葉に続いて、野宮の「今日のデートの待ち合わせは何時?」という問いかけに続く鈴木の「待ち合わせは夜の七時じゃなくて、渋谷で5時ね!」というMCをはさみ、二人が歌ったのはもちろん「渋谷で5時」。野宮真貴も2016年に自身のアルバム『男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。』でクレモンティーヌと一緒にカヴァーし、鈴木もコーラスで参加。以来、親交が深まった二人。この日のアレンジはシュガー・ベイブを彷彿とさせる野宮アルバム・ヴァージョンで聴けたのが貴重だった。コール&レスポンスができない状況を鑑みて、鈴木は「Hey!と言ったら1拍、Hey! Hey!で2拍」と客席にニューノーマルのレスポンスを指示。ベテランらしい気遣いで会場の空気を盛り上げてくれた。「ここでもう1曲、大人のラヴソングを」と、二人のデュエットで「ロンリー・チャップリン」を渋谷系アレンジで聴けたのも嬉しい選曲だった。
「還暦はゴールじゃなくてスタートライン。目指せ!古希ソウル」という鈴木にとっても2020年は記念すべきデビュー40周年イヤー。コロナの影響でツアーが延期となり、なんとこの日が今年初のライブだというが、ここで1980年のデビュー曲「ランナウェイ」を歌ってくれるとは! ロングドレスからミニスカートの早変わりを見せた今宵のヒロインもSmooth Aceとともにコーラスに加わり、フリ付きで歌うという何とも贅沢で大人の遊び心に富んだ演出で観客を魅了した。
「今夜は本当にありがとうございます」。身にまとったケイタマルヤマによる「還暦スペシャル・赤いちゃんちゃんこ」も、彼女にかかればハイファッションになるという着こなしを見せて、「最後に私が生まれた1960年の大好きな映画『ティファニーで朝食を』から『ムーン・リバー』を歌います」。日本語詞を付けたのは小西康陽。ロマンチックな歌詞と年齢や時代を超えた彼女の魅力が伝わってくる珠玉の選曲だった。

 アンコールで三たびのお色直しをして、歌われたのがピチカートの1998年のナンバー「20th century girl」。《私が好きな服は 20世紀の服》という歌詞がスタイリストの間山雄紀が手がけたシルバーのリボンやドレスとも相まり、レトロ・フューチャーな雰囲気を醸し出す。ライブでは毎回鮮やかな衣装替えで目を楽しませてきた彼女だが、今回は長年懇意にしているデザイナーやスタイリストがスペシャルな衣装をあつらえ、彼女の還暦を祝福。「洋服に愛されている人が着ると、服が生き生きと立ち上がり、ぐんぐんと輝きを増す瞬間があります」とケイタマルヤマが言っているように、野宮真貴とは音楽だけでなくファッションにも愛された稀有なシンガーなのだ。続いて披露されたのは彼女の代表曲「Twiggy Twiggy」。1981年のソロ・デビュー作に収録され、ピチカート時代には海外で圧倒的な人気を博したこの曲は、”歌うバービー・ドール”として世界中で愛された彼女の存在なくして成立しない。
 アンコールでも登場した鈴木雅之は、「ここで大滝詠一さんの曲を歌いませんか?」と囁き、まさかの「夢で逢えたら」のデュエットが実現! 数多くのカヴァーで知られ、1996年にはラッツ&スターが大ヒットさせた日本のポップ史に残る名曲を歌う二人に誰もが夢見心地になった時間だった。

 横山剣(クレイジーケンバンド)がゲスト出演した20日の公演の模様は明日9月5日に掲載予定。なお、本公演の模様は9月30日、フジテレビNEXT ライブ・プレミアム/フジテレビNEXTsmartにて『野宮真貴、還暦に歌う。~赤い口紅の女と黒いサングラスの男たち~<完全版>』として放映される。

Text:佐野郷子/Kyoko Sano
Photo:Masanori Naruse


◎8月19日セットリスト
ゲスト:鈴木雅之
1 SWEET SOUL REVUE
2 東京は夜の七時
3 中央フリーウェイ
4 バート・バカラック・メドレー
Close to you~Knowing when to leave~Make it Easy on yourself~Always Something There to Remind Me~I’ll never falling love again~Walk on by~Do you know the way to San Jose
5 三月生まれ
6 渋谷で5時 duet with 鈴木雅之
7 ロンリー・チャップリン duet with 鈴木雅之
8 ランナウェイ with 鈴木雅之
9 ムーン・リバー
EN1 20th century girl
EN2 Twiggy Twiggy
EN3 夢で逢えたら duet with 鈴木雅之
EN4 陽の当たる大通り

◎公演概要
【野宮真貴、還暦に歌う。~赤い口紅の女と黒いサングラスの男たち~】
8/19 Guest:鈴木雅之
8/20 Guest:横山剣(クレイジーケンバンド)

野宮真貴(Vo)
山本真央樹(Dr)
石田純(Ba)
真藤敬利(Pf)
スパム春日井(Key)
Smooth Ace(Cho)

◎フジテレビNEXT番組概要
『野宮真貴、還暦に歌う。~赤い口紅の女と黒いサングラスの男たち~<完全版>』
放送日時:2020年9月30日(水)21時~
フジテレビNEXT ライブ・プレミアム/フジテレビNEXTsmart
https://otn.fujitv.co.jp/nomiya/

◎野宮真貴プロフィール
野宮 真貴(MAKI NOMIYA)  ミュージシャン/エッセイスト
ピチカート・ファイヴ3代目ヴォーカリストとして、90年代に一世を風靡した「渋谷系」ムーブメントを国内外で巻き起こし、音楽・ファッションアイコンとなる。現在は“渋谷系とそのルーツの名曲を歌い継ぐ”音楽プロジェクト「野宮真貴、渋谷系を歌う。」を行うなど、ソロアーティストとして活動。2020年は還暦イヤーを迎え、音楽、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍している。
ベストセラー・エッセイ「赤い口紅があればいい」「おしゃれはほどほどでいい。」(幻冬舎刊)
ソロベストアルバム「野宮真貴 渋谷系ソングブック」、ピチカート・ファイヴベストアルバム「THE BAND OF 20TH CENTURY: Nippon Columbia Years 1991-2001」が好評発売中。
9月下旬には還暦後、初となるモバイルファンクラブ「おしゃれ御殿」をローンチする予定。
http://www.missmakinomiya.com/

◎鈴木雅之プロフィール
1980年 シングル「ランナウェイ」でシャネルズ、メジャー・デビュー。ミリオンヒットを記録。
1983年 グループ名をラッツ&スターに改め「め組のひと」「Tシャツに口紅」など多くのヒット曲を残した。
1986年 「ガラス越しに消えた夏」でソロ・ヴォーカリストとしてデビュー。「もう涙はいらない」「恋人」など数多くのヒット曲を送り出す。ベストアルバム『Martini(マティーニ)』は(Ⅰ)(Ⅱ)それぞれミリオンセラーを記録。
2011年 初カヴァーアルバム『DISCOVER JAPAN』が【第53回輝く!日本レコード大賞】の「優秀アルバム賞」を受賞。
2016年 【第58回耀く!日本レコード大賞】「最優秀歌唱賞」を受賞。
2017年3月 【第67回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)】を受賞。
同8月 大森本場乾海苔問屋協同組合より「大森海苔親善大使」に任命される。
2019年9月 「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」が10万ダウンロードを突破し、音楽配信ゴールドに認定される。
2020年2月 配信シングル「たとえ世界がそっぽ向いても」がiTunes R&B/ソウルチャート1位を記録。
同4月 デビュー40周年記念アルバム『ALL TIME ROCK ’N’ ROLL』をリリースし、音楽チャートを席巻。
同8月 シングル「DADDY ! DADDY ! DO feat. 鈴木愛理」のミュージックビデオは1600万再生を突破。
2021年4月 今年延期されたツアー「ALL TIME ROCK ‘N’ ROLL」を開催予定。
名実ともに「ラヴソングの王様」である。
https://www.martin.jp/

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