2020/08/24 12:00
2020年7月20日、「ビルボードライブ横浜」がついにオープンした。こけら落し公演はMISIAの「MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2020」。ニューヨークを拠点に活動している黒田卓也(Tp)を中心にした凄腕ミュージシャンとともに、ジャズ、R&B、ファンクなどをクロスオーバーさせたサウンド、そして、“ソウルシンガーの真骨頂”と称すべきボーカルを間近で堪能できる貴重なステージが繰り広げられた。
神奈川・横浜のKITANAKA BRICK&WHITE内にオープンした「ビルボードライブ横浜」。当初は4月12日にバート・バカラック公演で初日を迎える予定だったが、新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言により、開業は延期。7月20日に予定より99日遅れで正式オープンに至った。公式HPでは、シャカタク、カーク・フランクリン、SWV、ラスマス・フェイバー、タキシード、ザップによる祝福メッセージ動画を公開。SNS上でも音楽ファン、アーティストからのお祝いの言葉が拡散された。
この日のライブは、定員の半数の約150席で開催。座席は観客同士が向かい合わないように配置され、各テーブルには消毒用のボトルが置かれた。また入場時の検温、手の消毒などが行われ、十分な換気が行われるなど、“ウィズコロナ”のライブ仕様となった。
記念すべきこけら落とし公演の開幕は、18時。まずはバンドメンバーが登場。黒田卓也(Tp)をはじめ、大林武司(Pf)、TOMO KANNO(Dr)、中林薫平(Ba)、池本茂貴(Tb)、西口明宏(Sax)が定位置に付き、黒田の指揮のもと、インストナンバーが演奏される。しなやかなスウィング感をたたえたアンサンブル、シックなホーン・セクションの音色が広がり、生演奏でしか味わえない、なんとも心地いい空気が生まれる。そして、ついにMISIAがステージへ。深い青緑のドレスに身を包んだMISIAは、マスクを付けたまま最初のナンバー「CASSA LATTE」(アルバム「MISIA SOUL JAZZ BEST 2020」収録)を披露。華やかなグルーヴを放つサウンドとともに伸びやかボーカルを響かせ、早くも大きな感動が生まれる。フェイスシールドを着用した最前列の観客も気持ちよさそう身体を揺らし、この貴重なライブを楽しんでいた。続いてはMarvin Gayeの名曲「Mercy Mercy Me」(1971年/アルバム「What’s Going On」)のカバー。環境問題をテーマにしたこの曲は、2020年の世界においてさらに重要な意味を持っている。ややレイドバックしたビート、高揚感とメッセージ性を併せ持った歌、トランペットのソロ演奏とMISIAのフェイクの絡みも素晴らしい。
「みなさん、ようこそいらっしゃいました。大きな声は出せないのですが、拍手だったり、手拍子だったり、足踏みだったり、踊りだったり、どうぞ体中でライブを楽しんでいただけたらと思います。なによりもまず、ビルボードライブ横浜のオープン、おめでとうございます!」という挨拶とメンバー紹介を挟み、手拍子による“コール&レスポンス”から「あなたにスマイル」へ。ゴスペル・フィーリングを感じさせるアレンジとメロディ、そして、<世界は今 希望を歌う あなたに>。コロナ禍の外出自粛期間中、“すべての人に音楽を通して「スマイル」を届けること、日々をより楽しく過ごすこと”を目的とした「あなたにスマイルプロジェクト~大切な誰かにスマイルを届けよう~」を実施したMISIA。この曲が持つポジティブなパワーはこの日も、オーディエンスの心と身体に強く作用していたはずだ。
マスクを外し、ここからはスロウ・テンポの楽曲が続く。まずは新曲「さよならも言わないままで」。TBS「音楽の日 2020」(7月18日放送)でも披露されたこの曲は、コロナ禍の収束を願って制作された楽曲。憂いに溢れたトランペットの音色、切なさと力強さを併せ持った旋律、そして、この過酷な時代を生きる人々の姿、大事な人との別れを綴った歌詞がひとつになった「さよならも 言わないままで」は間違いなく、この日のライブの大きな聴きどころだった。
中林がウッドベースを演奏、オーセンティックなジャズの風味をたっぷりと含んだアレンジで「What A Wonderful World 」(Louis Armstrong)をカバー。さらに豊かな叙情的を「眠れぬ夜は君のせい」に続き、本編ラストの「Everything」へ。言わずと知れた名曲だが、“SOUL JAZZ”スタイルでアレンジされ、さらに多彩なボーカル表現が込められている。特にサビのフレーズにおける、感情が零れ落ちるような歌声はまさに圧巻。メロディの背景にあるソウルミュージックのテイストが強く押し出されていたことも印象的だった。
アンコールの拍手に迎えられ、再びステージに登場したMISIAとバンドメンバーは、「陽のあたる場所」を披露。1998年のリリースから20年以上経っているが、この曲が持つ魅力はまったく色褪せていない。深みを増したバンドグルーヴと自由にラインを描くボーカルに合わせ、観客も楽しそうに手を鳴らし、身体を揺らしている。音楽を介したピュアな一体感が、確かにそこには存在していた。
「状況が早く収束して、ここがたくさんのお客さんでいっぱいになって。次にお会いするときは、みんなで大きな声を出し合えるように、祈りながら歌い続けていきたいです」。そんな言葉からはじまった最後の曲は「アイノカタチ」。たくさんの“アイノカタチ”に寄り添い、穏やかで温かい気持ちを与えてくれるこの曲もまた、いまの時代に必要なナンバーだ。
大きな拍手のなか、笑顔で手を振りながらステージを去ったMISIA。ジャズ、R&B、ソウルなどが有機的に結びついたサウンド、祈りにも似た深い思いと感情を解き放ってくれるパワーを兼ね備えた歌。この時代に必要不可欠な音楽を真っ直ぐに届けてくれた、きわめて意義深いライブだったと思う。
Text:森朋之
Photo:Santin Aki
◎公演情報
【MISIA SUMMER SOUL JAZZ 2020】
2020年7月20日(月)- 21日(火)※終了
ビルボードライブ横浜
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