2020/08/04 12:00
コロナ禍により今年は4月クールのドラマの多くが7月クールへと延期されたが、それに伴いドラマの主題歌のリリースなどにも影響が出ている。そんな中でうまくリリース・タイミングを調整しながら結果を出している楽曲はいくつかあるが、2020/8/3付のHot 100で8位を記録している米津玄師の「感電」はもっとも成功している楽曲のひとつだろう(【表1】)。
この曲は、綾野剛と星野源のダブル主演で話題となっているTBS金曜ドラマ『MIU404』の主題歌。本来であれば4月にリリース予定だったはずだが、ドラマの延期に合わせて7月6日に配信リリースされた。米津玄師の特徴としては、いまだにストリーミングが解禁されていないことだ。もともとボカロやネットカルチャーでブレイクしたアーティストなので、ストリーミングとの相性もいいはずなのだが、そこは頑なに守り続け、配信はダウンロードのみとなっている。当然のように、ダウンロードのチャートでは2週連続で首位、3週目も2位と見事な成績だ。
それと同時に、彼の楽曲で常に話題性が高いのはミュージックビデオだ。今回もドラマの3話目が終了した直後の7月10日にYouTubeで公開されて、話題を呼んでいる。今年の8月で閉園するというとしまえんでロケしたことや、謎のティーザー動画などの効果もあって、あっという間に3千万回を超える再生数となった。ストリーミングでの配信がない分、グレーユーザーは自然とYouTubeへ流れることになるが、そこに何度も見たくなるユニークな映像を仕掛けておくことで、リピーターを増やしているのだ。
加えて、今回は8月5日に2年半ぶりのアルバム『STRAY SHEEP』のリリースも控えており、その先行シングルとしての効果も高いはず。間違いなくアルバムは大ヒットするだろうが、その期待値を上げるためにもこのシングルは重要だ。実際にツイッターでは話題が持ち上がるたびにポイントを大きく稼いでおり、ダウンロードと動画再生数との相乗効果でチャート上位をキープしている。この後もアルバム・リリースへとつなげつつ、メディアの露出を始め様々な話題を作っていくのだろう。そうすることで、楽曲のチャートアクションも多少の上下はあるだろうが、長くチャートの上位に残り続けることが予想される。もともと彼の楽曲はロングヒットの傾向が強いので、しばらくこの曲を耳にする機会は続きそうだ。
アルバム『STRAY SHEEP』は「Lemon」を始めヒット曲や話題曲が並び、大ヒット作となることは間違いない。それでも、事前の露出のコントロールによって、どこまで売り伸ばせるかが左右されるだろう。そういった意味においても、「感電」は非常に効果的な先行シングルなのではないだろうか。アルバムがどこまでビッグヒットとなるのか、そして「感電」自体はどのようなチャートアクションをするのかを、今後も注目しておきたい。
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