2020/07/21
日本武道館でのラストライブをもって、10年の歴史に幕を閉じたSuGのフロントマン・武瑠が、2018年1月31日より3D音楽プロジェクト・sleepyheadをスタート。山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)、SKY-HI、TeddyLoid、Katsuma(coldrain)など錚々たる面々とのコラボレーションを実現したり、カジノ型ライブ【BEAT GAMBLES】を開催したり、原盤使用フリーとする楽曲シェアプロジェクトを立ち上げたりと、固定概念に捉われない音楽活動に勤しんでいる。
そんなsleepyheadによる新たなアプローチ。元々はV系シーンからデビューした武瑠だが、定型に収まった表現を一切求めず、様々な音楽ジャンルの壁をクロスオーバーし、圧倒的な色気と猟奇を孕んだロック×ダンスミュージックの有機的融合も実現してきた。そして、この度、自身のブランド・million dollar orchestraの10周年と連動した創作を進める中で、自閉症と共に生きる文学的フリースタイルラッパー・GOMESS、型破りの鋭い感性を持った若手最有力ラッパー・(sic)boyと邂逅し、異種コラボナンバー「WHY NOT」を完成させた。
三者揃い踏みでのインタビュー、ぜひご覧頂きたい。
◎武瑠×GOMESS×(sic)boy対談インタビュー
<元々SuGのファンでもあって ポスター飾ってましたもん!>
--ここまで明確なHIPHOPアプローチに挑み、その相方としてGOMESSと(sic)boyを選んだ理由から聞かせてもらえますか?
武瑠:2月末ぐらいに【EDEN】というイベントに行ったとき、今までなかったようなヒップホップ像というか、SMチックでフェティッシュな感じと、マリリン・マンソンみたいなエグい感じが融合した新しいヒップホップを体感して、それがすごく楽しくて「このカルチャーは今の自分に近いな」と思ったんです。その翌日ぐらいにちょうど良いトラックがあったんで「ぶっ飛んだ曲を作ってみよう」と。で、ちょうどブランドの10周年の映像を撮ることが決まっていたので、その曲のPVみたいにしようと。そのときに、たまたま(sic)boyが俺のSNSをフォローしてきて、彼の作品を聴いてみたら格好良かったのでリフォローして、いきなりDMで「次の曲、一緒にやらない?」みたいな(笑)。
(sic)boy:きっかけはインスタントな印象を受けるかもしれないんですけど、自分は元々SuGのファンでもあって、武瑠くんのブランドの10周年というタイミングで一緒に作品を創れたというのは、俺的にすごく大きな一歩でもあって。レジェンドがこんな見知らぬ顔の自分に曲を預けてくれて「めっちゃ光栄です!」って感じだったし……『SHOXX』(ヴィジュアル系専門音楽誌)とか毎回買ってたんで……本当にエイサップ・ヴァイヴスって感じです!
武瑠:どういうこと(笑)?
(sic)boy:俺、SuGの『不完全Beautyfool Days』のポスター飾ってましたもん! 兄貴と2人で部屋を分けていたんですけど、こっちがSuG、あっちはクリロナ(クリスティアーノ・ロナウド)のポスターで「ふざけんな! かかってこいよ! ぜってぇに負けねけぇぞ!」みたいな。
武瑠:すべてのパラメーターで勝てない(笑)。
(sic)boy:そんぐらい、俺からしたらレジェンド。
GOMESS:プリプロで3人揃って初めて会った日の夜に呑んだんですよ。その流れでカラオケに行ったら、(sic)boyがベロベロの状態で「俺、武瑠さんの前でSuG歌っていいッスか?」って。「歌ってください」じゃないんだって(笑)。
武瑠:でも、やるよね? 俺もDIR EN GREYのShinyaさんと清春さんの前で「すみません」って歌ったことある(笑)。
GOMESS:俺、ずっとニコニコしながら武瑠さんと(sic)boyが肩組んで歌っている姿を撮ってました。
(sic)boy:俺、airpodsひとつ失くしましたもん。しあわせすぎて。
一同:(笑)
<「この人は本当にラップが好きなんだな」って思いました>
武瑠:そんな(sic)boyと違うタイプのラッパーにも参加してもらいたいなと思ったんですよね。で、以前参加してもらった「ぼくのじゃない」のカバーがとにかく印象的だったGOMESSが加わったら「面白い化学反応が生まれそうだな」と思って、DMで誘った数日後に会って、もうその場で「プリプロしてみる?」みたいな。その時点で2人ともめっちゃ良くて! 勉強になりましたね。それぞれの違う味のラップを聴いていたら「俺のパート、もうちょっと練ったほうがいいかな?」って思い直したりもして。
GOMESS:スタジオでめちゃくちゃ悩みながら自分のヴァースを録っていましたよね。武瑠さんの曲なのに「どう? このフロウ」ってフィーチャリング風情の俺に聞いてくるんですよ。フィーチャリングされる側の奴が「これで良いっすか?」って聞くのは分かるんだけど(笑)。
--完成形は武瑠くんの脳内にあるわけですからね。
GOMESS:でも話を聞いていたらすごく高次元なところで悩んでいたんですよ。最近、バンドマンのボーカルと仲良くなることが多いんですけど、そこにはひとつ共通点があって。みんな、ヒップホップが好きだったんだけど、何かしらの理由でラッパーにはなれなかった、或いはならなかった人たちなんです。で、武瑠さんは完全にそういうタイプの人なんですよね。なので、フロウに対して悩む感じとかも、例えば「ここはこのダルさのまんまだけど、ここはもうちょっとソリッドに、アタック短めに発音したほうが良いんじゃないか」みたいな。それはいわゆるバンドのボーカルがラップを取り入れたときに悩むようなレベルじゃないんです。ラッパーがフロウに悩んでいるときの様だったんですよね。だから「この人は本当にラップが好きなんだな」って思いました。
武瑠:速さとか装飾で誤魔化さないやつだったから沼にハマっちゃって(笑)。今まで得意とするのがメロとブレスが混じっていて、それでいて言葉数が多いやつだったんですよ。なのに、いきなりあんなハダカみたいなラップに初めて挑戦したから分かんなくなっちゃって! 2時間ぐらいかかったんじゃないかな?
(sic)boy:そのとき、俺はスタジオに行けなかったんですよ。
GOMESS:でも結果的にすごく良いモノになったから。
(sic)boy:逆に異世界感があって良かったッスよね。自分だけ2人と別にレコーディングすることになったんですけど、そこで生まれた場違い感が俺なりの12小節にはあって、それが逆に面白いというか。
GOMESS:声の重なり方的にもさ、俺が(sic)boyのヴァースを聴いて思ったのは、後半でメロが付いてるからアポカリプスみたいなさ、恐怖の大王襲来みたいなさ、ヤバさが際立ってんだよね。コーラスワークもめちゃくちゃ良いし。
武瑠:上ハモがめっちゃ効いてる。少しクラシック的な要素の重ね方をしていて、俺もめっちゃ良いと思った。
GOMESS:あれが完全に(sic)boyのラップと合っていて。そこから急に俺のヴァースになった途端に……
武瑠:超ドライ!
GOMESS:声ひとつで進んでいくからね。
(sic)boy:3人それぞれのリアルな空間を構築していくようなヴァースの回し方。
<新型コロナで何も出来なくなって思ったんですよね>
--今回の「WHY NOT」は、武瑠くんの攻め続けてきた歴史においても、最も振り切った音楽アプローチですよね。ファンがどう感じるかとか、全く意識していないんだろうなって。
武瑠:だからPV撮る曲ではないですよね。今までの流れから考えても。
GOMESS:本来、B面ですよね。
--でも、武瑠くんは今回「自由に捨てたい自分の命」と歌っていますから。他人に選ばせたくない人ですから(笑)。
GOMESS:2回言いますからね!
武瑠:新型コロナで何も出来なくなって思ったんですよね。気を付けるも何も……「いや、そこは自分で選ばせてくれよ!」って。それはマジで思ったんで。
GOMESS:ラッパーも同じフレーズを2回使うときって全然あるんだけど、あそこまでちゃんと意味を持たせている人ってそんなに多くなくて。でも、この曲の場合は「これが言いたいんだよ。だから2回言うんだよ!」っていう確固たる意志を物凄く感じる。
武瑠:ベタベタに強調しているからね。
GOMESS:序盤で「自由に捨てたい自分の命」と伝えて、そのあとに(sic)boy、俺と挟んで、みんないろいろ言ってきたけど、最後に「俺たちが何を言いたいか分かるか? これだよ!」ってもう1回言う。それが良いんだよね。
武瑠:そもそも2人に頼む前に実はフルコーラスすべての歌詞をこちらで書いていて、でも、ぜんぶわざと削ぎ落して「自由に捨てたい自分の命」を強調しようと思って。もっと今っぽいフレーズとかもあったんだけどね、「スト缶みたいな恋がふさわしい」とか。
GOMESS:2020年というか、令和にここまで早く対応している詞を書く人ってなかなかいないなって。だから武瑠さんとは以前からご一緒したくて。ただ、俺はSuGをちゃんと通ってきていないんですよ。姉ちゃんがファンだったから何曲か聴いていただけですし、2014年に【MUSHIFEST2014】(https://bit.ly/3fCh3E4)で1回だけ対バンしていますけど、ヒップホップばかり聴いて育った自分としては「姉ちゃんが好きなだけあって格好良いんだな」ぐらいの印象だったんですよ。でも、sleepyheadになってからビジュアルイメージも曲も面白くて「何やるんだろう?この人」みたいな。それで一方的にツイッターでフォローしたりしていたんですけど、2020年に入ってすぐ「ぼくのじゃない」のカバーの話が来て。でも、俺、嬉しい反面、悔しかったんですよね。あれって50人ぐらいの人がそれぞれにカバーするプロジェクトだったんですよ。俺は常にオンリーワンでナンバーワンだと思って生きて来たから。
--なるほど。
GOMESS:でも、最終的にオリジナルのリリックを書いてラップを乗せたのは俺だけだったんです。悔しかったから、めちゃくちゃ気合い入れて1ヴァースも2ヴァースもしっかり書いたし、自分の自信作を作るつもりで臨んだんですよね。ラッパーとして1回認めてもらわないとダメだと思ったから、いわゆるカバーで終わらんようにしたかったんです。
武瑠:めちゃくちゃ良かった。
GOMESS:そしたら今回呼んでもらえたので、すごく嬉しいんですよ。
<結果、持続化給付金が一発で無くなりました(笑)>
--この対談がアップされる頃には公開されている「WHY NOT」のPV。その世界観がどんなイメージから構築されていったのかも教えてください。
武瑠:たまたま新型コロナのタイミングと合っちゃっただけで、それ以前から考えていた設定なんですけど、地上が汚染されて、みんな地下室でしか暮らせなくなっちゃった世界。で、人間って「こうしなきゃいけない」の逆が贅沢になるじゃないですか。地上は防護服を着なきゃいけないけど、地下だと何も着なくていい。だからみんなハダカなんですよ。ハダカで生きていて、そこに地上の調査隊が帰ってきたら服を着ているから「え? ハダカがいちばん贅沢なのになんで服を着てるの?」と思うわけですよ。そこで「昔の人類はファッションで自分の個性を出したりしていたらしい」と知る……みたいな感じの映像を「WHY NOT」のPVと合体させたんですけど、sleepyhead史上2番目ぐらいじゃないですかね、ここまで予算注ぎ込んだの(笑)。
--相変わらずクリエイティブ至上主義ですね(笑)。
武瑠:オリジナルセット3つも組んで、本当に超大規模なんですよ! こんな時期にあんなに予算使ってPV撮る人いないと思ったから「逆張りでいいや!」と思って。だから制作会社に不安がられましたもん。「今、誰も撮ってないですけど、大丈夫ですか?」って。それでも「いや、もうバカになってやっちゃいましょう!」みたいな。結果、持続化給付金が一発で無くなりました(笑)。実際、自分でも何やってんのかよく分かんないんですけど、1回バカにしないとダメだなと思ったんですよね。予算を気にして中途半端なモノ作っても仕方ないし、ここで攻めるのは勝手に自分の役目だなと思って。今はみんなリモートのライブ観て、アレはアレで良いんですけど、正直退屈じゃないですか。あんなの、誰がどうやっても限界があるんです。どんなに良いミュージシャンがやっても「じゃあ、ライブDVDでよくね?」ってなっちゃう。で、みんな、めちゃくちゃ作り込んだ世界観のモノは予算が回収できないからやらないのであれば、誰もが「YouTubeでいいや」と言っているときだからこそ、俺がソレをやろうと思って。
--武瑠くんらしい、新型コロナ以降の世界に対するアンサー。
武瑠:million dollar orchestraの10周年ですし、音楽だけでは出来ない、物凄いクオリティの映像に仕上げたので、いろんな人に観てほしいですね。
Interviewer:平賀哲雄
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