2020/06/13
今週のHot Albumsは、初登場となったmiletのファースト・アルバム『eyes』が首位を獲得した。miletは昨年3月にデビューしたばかりなので、まだ新人といってもいいだろう。よって、初のアルバムがいきなり1位というのは快挙である。
もちろん、miletはこれまでのシングルでも上位にランクインという結果を出している。とはいえ、テレビドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』の大型タイアップとなったデビュー曲「inside you」のHot100における最高位は11位(【表1】)、同じくテレビドラマ『偽装不倫』の主題歌だった「us」の最高位は14位であり(【表2】)、いずれもトップ10にはランクインしていない。そう考えると、やはりアルバムの首位獲得は見事としかいいようがない。
ただ、miletの場合は、一過性のプロモーションではなく、地道に積み上げてきたことの成果がアルバムに結実したといえる。それぞれのグラフを見ればわかるが、「inside you」ではダウンロードに加えてしっかりとフィジカルのCDを売り伸ばしているし、「us」ではリリース後も粘り強くストリーミングの再生数を稼いできた。昨今のアーティストの中には、フィジカルでの反応は薄いがストリーミングでは上位というようなどこかに特化したヒットが多いが、miletの場合はバランスが良い印象がある。
また、チャート上では見えないが、コロナ禍の露出が厳しい状況においても各媒体へのプロモーションがきめ細かく行き届いているし、本人もTwitterでアルバム収録曲を弾き語りで披露する企画を行うなど、あらゆる場面でユーザーがmiletの名前や楽曲に触れる機会が多く、そのことが結果に結びついたといえる。
Hot100では、YOASOBIや瑛人のように配信のみのリリースでSNSをきっかけにでブレイクするアーティストや楽曲が増えている。しかし、その現象だけにとらわれるのではなく、ベーシックなプロモーションを積み重ねることで結果を出すという手法もまだまだ有効であることを認識しておきたい。miletの『eyes』の成功は、基本をおさえることの重要性を物語っている。Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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