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2020/04/16

『The New Toronto 3』トリー・レーンズ (Album Review)

 1992年生まれ、カナダ・トロント出身。2009年に初EP『T.L 2 T.O』をリリースし、翌2010年には5作ものEPを発表。以降、ミニ・アルバムの発表とレーベルの移籍を繰り返し、2015年に<インタースコープ・レコード>と契約を交わす。同レーベルからリリースしたデビュー曲「Say It」が、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で23位、R&Bチャートで5位にランクインするヒットを記録し、翌2016年にはソング・チャート19位、R&Bチャート2位を記録した「Luv」が大ヒット。一躍シーンに躍り出た。

 アルバム・チャートの功績を振り返ると、その2曲が収録された1stアルバム『I Told You』(2016年)が米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で4位、ラップ・アルバム・チャートで自身初のNo.1を獲得。2ndアルバム『Memories Don't Die』(2017年)は、Billboard 200で3位、ラップ・チャートで2位を記録し、同年発表した3rdアルバム『Love Me Now?』で、ラップ・チャート2作目となる1位を記録した。2019年にリリースした4thアルバム『Chixtape 5』では、Billboard 200の最高位となる2位をマークし、R&B/ヒップホップ・チャートでも自身初のNo,1デビューを果たしている。

 本作『The New Toronto 3』は、その『Chixtape 5』に続く自身5作目のスタジオ・アルバムで、2015年にリリースしたミックステープ『The New Toronto』~『The New Toronto 2』(2017年)の続編にあたる。本作で<インタースコープ・レコード>との契約が切れるため、同レーベルから発売される最後のアルバム、ということになる。

 シンガーとしても折り紙付きのトーリーだが、ヘヴィーなヒップホップ・トラックの1stシングル「Broke in a Minute」では、見事なラップ・スキルを披露。今さらではあるが、彼の強みは歌とラップいずれも上級レベルの実力を誇ること。この曲では、ゴールドチェーンを纏って札束を仰ぐMV含め、ラッパーとしてのパフォーマンスを存分にアプローチした。

 タイガやソウルジャ・ボーイの作品で知られるC.P DUBBによるプロデュース曲「Do The Most」も、アッパー&ドープなヒップホップ・ソング。冒頭では畳みかけるようリズミカルに、フックではファルセットを交えてラップする。曲にフィットしたイケイケなミュージック・ビデオでは、見事なダンス・パフォーマンスも披露。コアなソング・ライティング力含め、何でもできるマルチプレイヤーなんだと感心してしまう。

 一方、弦の音を効果的に使った哀愁メロウ「Who Needs Love」では、ラップを交えて“歌の上手さ”をアプローチ。低音で攻め立てるラップもすばらしいが、高音で甘く振舞うボーカルワークもグレイト。これだけの実力をもちながら評価が低いと、往年のファンが不満を漏らすのも無理はない。歌モノでは、「48 Floors」(2018年)にもクレジットされていた米カリフォルニア出身のシンガー・ソングライター=Mansaとのコラボレーション「10 Fucks」も絶品。

 とはいえ、新章のはじまりをフーディーに表現したオープニング曲「Pricey & Spicy」~お気に入りの一曲と挙げたゴリゴリのトラップ「The Coldest Playboy」、総合格闘家コナー・マクレガーのスピーチからはじまる「Stupid Again」等、アルバム・トータルでみるとラップ曲が大半を占める。新型コロナウイルスを歌詞に用いた問題曲「Dope Boy's Diary」や、デビュー・アルバム『True 2 Myself』(2019年)が好調の、米NY出身の若手ラッパー=リル・ティージェイとの共演曲「Accidents Happen」も強烈。

 ピアノベースのジャジーなミディアム「Letter to the City 2」は、第一弾『The New Toronto』に収録された「Letter to the City」の続編曲。プロデュースも、前2作や『Memories Don't Die』~『Love Me Now?』にも参加しているC-Sickが担当している。その他、NVR DRMの「Vulnerable」(2016年)を使用した「P.A.I.N」や、宗教っぽい歌詞や早回しがカニエ風の「Msg 4 God's Children」、アリアナ・グランデのデビュー作『ユアーズ・トゥルーリー』(2013年)で注目を集めた米LAのプロデューサー・チーム=ラスカルズとの共作「D.N.D.」等、トリー・レーンズ“らしさ”を貫いた曲が満載。売れ線ではないが、やってやった感はひしひし伝わる。

 なお、本作には「Adidas」という曲があるが、カバー・アートで抱きかかえた子供の編み込みには、アディダスのトレードである3本ラインが施されている。

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