ハリー・スタイルズの新作『ファイン・ライン』が初登場1位を記録した、今週の米ビルボード・アルバム・チャート。

　本作は、2017年5月にリリースしたソロ第一弾『ハリー・スタイルズ』に続く、2作目のソロ・スタジオ・アルバム。初週ユニット数は478,000で、そのうち393,000がアルバムの純粋な売上枚数、83,000がストリーミングによるユニット数(SEA)、楽曲単体によるユニット数(TEA)は3,000だった。

　この記録は、9月7日付チャートでテイラー・スウィフトの『ラヴァー』(今週10位)が打ち出した869,000ユニット、9月21日付チャートでポスト・マローンの『ハリウッズ・ブリーディング』(今週4位)が記録した489,000ユニットに次ぐ、2019年にリリースされたアルバムとして3番目に高い週間ユニット数で、男性ソロ・アーティストによるポップ・アルバムとしては最高記録となる。

　男性ソロのポップ・アルバムでは、2015年12月5日付チャートでジャスティン・ビーバーの『パーパス』が獲得した、初週649,000ユニット以来の高記録。ハリーが所属する＜コロムビア・レコード＞の作品としては、2016年5月14日付チャートでNo.1デビューを飾った、ビヨンセの『レモネード』(653,000ユニット)以来の最高週間ユニット数となる。コロムビアのある＜ソニー・ミュージックエンタテイメント＞のアルバムとしては、昨年の8月18日付チャートで1位を記録した、トラヴィス・スコットの『アストロワールド』(537,000)以来の好成績。

　ハリー・スタイルズは、前述のデビュー作『ハリー・スタイルズ』に続き2作連続で同チャートNo.1デビューを果たしている。イギリス出身の男性ソロ・アーティストが、デビュー・アルバムから2作連続で首位を獲得するのは、意外にもハリー・スタイルズが初の快挙。また、1991年にニールセンが集計をはじめて以降、イギリス出身の男性ソロ・アーティスト最大の週間セールスを記録している。英国出身の全アーティストとしては、アデルの『25』(2015年)が記録した338万枚が歴代最大の週間ユニット数で、グループとしてはビートルズの『ザ・ビートルズ1』(2000年)が記録した、126万枚が歴代最高の週間セールスとなる。

　前作『ハリー・スタイルズ』の初動ユニットは230,000で、2作目となる『ファイン・ライン』では倍以上の数字を叩き出した。セールスが高かった理由としては、昨今主流となっているライブ・チケットとの連動、公式ウェブサイトでのグッズによる売上等が挙げられる。また、LPの売上も好調で、393,000枚のうち28,000枚がレコード盤によるセールスだった。ニールセンの集計がスタートした1991年以降のレコード盤による週間セールスとしては、ジャック・ホワイトの『ラザレット』が記録した40,000枚(2014年6月14日付)、34,000枚を売り上げたパール・ジャムの『バイタロジー』(1994年11月27日付)、アデルの『25』が記録した31,000枚(2015年12月24日付)に続く、歴代4番目の高セールスとなる。

　2019年にリリースされたアルバムの中では、登場1週目にして6番目に高い総売上枚数を記録した『ファイン・ライン』。つまり、それだけアルバムが売れていないということも付随して言える。2019年、アルバムの純粋な売上枚数が最も高かったのは、テイラー・スウィフトの『ラヴァー』で、累計枚数は105万枚。年間1位を記録した、ビリー・アイリッシュの『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー？』等は、ユニット数の内訳ほとんどがストリーミングによるものだった。

　ワン・ダイレクションのメンバーでは、ナイル・ホーランの『フリッカー』(2017年)と、元メンバーのゼイン・マリクによる『マインド・オブ・マイン』(2016年)も同チャート1位を記録している。なお、ゼインは2ndアルバム『イカロス・フォールズ』(2018年)の最高位が61位と大きく後退し、先日リリースしたリアム・ペインのデビュー作『LP1』も初登場111位と勢い振るわなかった。ルイ・トムリンソンは、年明け1月末にソロ・デビュー作をリリースする予定。

　続いて2位には、カントリー・シンガーのブレイク・シェルトンによるコンピレーション・アルバム『Fully Loaded: God's Country』がデビューした。初動ユニットは96,000で、そのうち83,000枚がアルバムの売上枚数とセールスが圧倒的に高かった。ハリー・スタイルズ同様、アルバムの売上にはコンサート・チケットの還元が含まれている。

　本作は、『Loaded: The Best of Blake Shelton』(2010年 / 最高18位)、『Reloaded: 20 #1 Hits』(2015年 / 最高5位)に続くベスト・アルバム第三弾で、ベスト盤としては最高位を更新した。オリジナル・アルバムを含めると、2011年の6thアルバム『Red River Blue』と、2014年の9thアルバム『Bringing Back the Sunshine』の2作が首位獲得を果たしていて、TOP10入りは通算12作目となる。アルバムからはカントリー・ソング・チャートで1位を記録した「ゴッズ・カントリー」が大ヒットし、アルバムのプロモーションに繋げた。

　以下、マイケル・ブーブレの『クリスマス』が6位、ペンタトニックスの『ベスト・オブ・ペンタトニックス・クリスマス』が7位、マライア・キャリーの『メリー・クリスマス』が8位にそれぞれ上昇し、その他のホリデー・アルバムも売上、ストリーミングを伸ばしている。今週と次週のチャートが、ホリデー・アルバムのピークとなるだろう。

Text: 本家 一成

※関連リンク先の米ビルボード・チャートは、12月27日以降掲載予定となります。

◎【Billboard 200】トップ10
1位『ファイン・ライン』ハリー・スタイルズ
2位『Fully Loaded: God's Country』ブレイク・シェルトン
3位『プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル』ロディ・リッチ
4位『ハリウッズ・ブリーディング』ポスト・マローン
5位『アナと雪の女王2』サウンドトラック
6位『クリスマス』マイケル・ブーブレ
7位『ベスト・オブ・ペンタトニックス・クリスマス』ペンタトニックス
8位『メリー・クリスマス』マライア・キャリー
9位『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー？』ビリー・アイリッシュ
10位『ラヴァー』テイラー・スウィフト