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2019/10/21

『Woptober 2』グッチ・メイン(Album Review)

 これだけ精力的に、途絶えることなく作品を発表し続けるアーティストも珍しい。2005年<トミーボーイ・レコード>から発表した1stアルバム『Trap House』でデビューし、2009年に<アトランティック・レコード>へ移籍。14年のキャリアで、14枚のスタジオ・アルバム、50作以上のミックステープを発表してきた、米アトランタを代表するラッパー=グッチ・メイン。自身のアルバムだけでなく、人気アーティストの作品にも月一ペースで参加し、ヒット曲を多数輩出している。

 ここ数年は特にその活躍が目覚ましく、初の全米首位に輝いたレイ・シュリマーとの「Black Beatles」(2016年)~ミーゴスをフィーチャーした「I Get the Bag」(2017年)~ブルーノ・マーズ&コダック・ブラックとコラボした「Wake Up in the Sky」(2018年)と、シングル曲が立て続けにチャート上位にランクインしている。今年6月に発表したばかりの14thアルバム『Delusions of Grandeur』も7位に初登場し、通算6枚目のTOP10入りを果たしたばかり。

 本作『Woptober 2』は、その『Delusions of Grandeur』からわずか4か月でリリースされた、通算15作目のスタジオ・アルバム。発売前には、ファッション・ブランド=Gucci(グッチ)とのコラボレーションを発表し、ミラノで開催された2020年春夏コレクションに登場したことも話題となった。アルバム・ジャケットには、キャンペーンで使用された70年代ソウルのカバーにありそうな、レトロで洒落た写真が起用されている。

 オープニング曲は、前月にリリースされた先行シングル「Richer Than Errybody」。ダベイビー&ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインという勢いのある若手2人をゲストに迎え、レックス・ルガー(カニエ・ウェスト、ワカ・フロッカ等)がプロデュースを担当したこの曲は、ずっしり重たいビートにラジオでは到底流せそうもないリリックを乗せた、グッチ・メインらしい一曲。これがシングルとして発表されちゃうんだから、アメリカという国はある意味偉大。

 2曲目も、シングルとして直前にリリースされた「Big Booty」。ビジュアル、パフォーマンス共にインパクト絶大のフィーメール・ラッパー=ミーガン・ジー・スタリオンをパートナーに、タイトルからも予想できる卑猥なワードを連呼する。歌詞のツッコミどころはさておき、ツー・ライヴ・クルーの「Hoochie Mama」をサンプリングしたマイアミっぽいサウンドは最高。この曲には、カーディ・Bの「Bodak Yellow」や、21サヴェージの「A Lot」などをヒットさせたJ・ホワイトがプロデューサーとして参加している。

 1週間前に公開されたリル・ベイビーとのコラボ曲「Tootsies」は、単調ながらも両者の独特な歌い回しが頭の中でループする、中毒性高めの傑作。ドレイクやポスト・マローンなどの人気アーティストを手掛ける米アトランタ出身のプロデューサー=ロンドン・オン・ダ・トラックが手掛けた次曲「Big Boy Diamonds」には、前述のコダック・ブラックがフィーチャリング・ゲストとして参加した。

 クエヴォが参加した「Came from Scratch」は、ミーゴスまんまのトラップ。歌詞含めここまで同調だと若干退屈になるが、ある意味期待を裏切らない仕上がりといえなくもない。この曲は、ブロックボーイ・JB&ドレイクの「Look Alive」を大ヒットさせたテイ・キースがプロデュースを担当した。ミーゴスからは、テイクオフが参加した「Wop Longway Takeoff」という曲がある。この曲には、グッチ・メインが創設した<1017・ブリック・スクワッド・レコード>所属のラッパー、ピーウィー・ロングウェイも参加していて、プロデューサーには同レーベルの専属であるオナラブル・C.N.O.T.Eがクレジットされている。

 米ルイジアナ州バトン・ルージュ出身のラッパー、ケヴィン・ゲイツとコラボした「Bucking the System」では、ドラッグ~セックス・ネタを控え、リアリティのある闇社会について歌っている。ケヴィン・ゲイツのパートとコーラス部がインパクト絶大のこの曲は、人気プロデューサーのゼイトーヴェンがプロデュースを務めた。ゼイトーヴェンは、OJ・ダ・ジュースマンをフューチャーした「Last Night」という曲も担当している。

 フューチャーやミーゴスなどを手掛けるDYと、故エクスエクスエクステンタシオンやリル・ウージー・ヴァートなどを担当したTM88によるプロデュース曲「Highly Recommended」、彼らにサウスサイドを加えた「Time to Move」、メトロ・ブーミンが全面プロデュースした「Break Bread」も、期待通りのグッチ・メイン節が炸裂。前作からたった4か月で発表されただけはあり、若干の寄せ集め感は否めず、グッチとのコラボ感も一切醸していないが、守りに徹しないのがグッチ・メインの良いところ、でもある。


Text: 本家 一成

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