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2019/10/19

<ライブレポート>JUJUが“JUJUの日”にツアーファイナルを開催 デビューから15年の歴史、それ以上を披露

 JUJUが10月10日の“JUJUの日”に、東京国際フォーラム ホールAにてホールツアー【-15th ANNIVERSARY- JUJU HALL TOUR 2019「YOUR REQUEST」】のファイナル公演を開催した。

 【-15th ANNIVERSARY- JUJU HALL TOUR 2019「YOUR REQUEST」】は、“あなたとつくる究極のリクエストライヴ”をテーマに、デビューからこれまでのオリジナル楽曲に加え、昨年末に第3弾をリリースしたJAZZ『DELICIOUS』シリーズ、カヴァー『Request』シリーズ、洋楽カヴァー『TIMELESS』等から楽曲リクエストを募り、ファンと共に作り上げる全国ホールツアー。6月15日に開催された埼玉・サンシティ越谷での公演を皮切りに、全国で44公演を開催した。そして今回、東京国際フォーラムで開催される公演は45公演目にしてファイナル。本記事はその公演についてのレポートである。

 「私は15年前、歌うのが怖くて仕方ありませんでした。もっともっと遡れば子供のころから本当にビビりでヘタレで、歌うのは大好きなのに人前に出るのは非常に苦手な子供でした。そして大人になって、2005年からJUJUとしてコンサートをやらせていただいているんですけど、その当時は恐怖でしかなかったです。でも、この15年の間に、本当にいろいろなタイプのライヴをやってきました。。それをやる度にみなさんが足を運んでくださって。それを繰り返していくうちに15年で何が変わったかというと、あんなに恐怖でしかなかったライヴが、今の私にとって一番好きなことになりました」

 「この夜を止めてよ」「If」を披露すると、JUJUは挨拶とともにこのように語った。そして、「If」で座席から立ち上がって大いに盛り上がっていたオーディエンスは、この言葉を語るJUJUを静かに見守っていた。この後に歌った曲は「ナツノハナ」「奇跡を望むなら...」の2曲。「ナツノハナ」は2007年、「奇跡を望むなら...」は2006年のリリースである。明言していないのであくまで推測になるが、当時この曲をライヴで歌っていたJUJUは、まだ人前で歌うことが怖かったかもしれない。ただ、どちらにしろ、今のJUJUから発せられるファルセットから怖さを感じ取ることはできなかった。

 次は、JAZZ『DELICIOUS』シリーズからの楽曲が披露された。そもそも、JUJUという名前の由来はジャズサックスプレイヤーであるウェイン・ショーターのアルバム『JUJU』から来ている。12歳でジャズシンガーを志していたJUJUの歌い方はジャズのセクションに入ると先ほどとは打って変わり、ビブラートがアクセントとして効いた、歌い上げるというより歌い落とすものになった。曲そのものや言語が変わる以上、歌い方が変わるのは当然のことかもしれないが、冒頭4曲とその次に披露した3曲という歌い方が全く異なると言っていい計7曲を、どちらもシンガーとしてJUJUは歌いこなしていたのである。

 そして、本公演は「スナックJUJU」のセクションへ移り、JUJU、ではなくスナックJUJUのママはカヴァー曲を2曲披露。中森明菜「DESIRE -情熱-」のイントロが鳴り始めた瞬間から、オーディエンスは再び立ち上がって大きな歓声をあげ、手拍子を始めた。ママは子供のころからスナックという場所が大好きであり、毎週末のように大人たちに連れられては、すみっこで焼うどんを食べながら大人たちがどんどん飲んで歌っている姿を見て、「大人って楽しそうだな」と思っていたそうだ。そして、会場のオーディエンスから運よくクジで選ばれた一人が、リクエストメニューから小林明子「恋におちて -Fall in love-」をリクエスト。ママはもう大人であり、楽しそうに歌い、さらにオーディエンスを微笑ますほどの力を持っている。

 再びJUJUが登場すると、今度は“ジュジュ苑”のセクションとなり、こちらもカヴァー楽曲を次々披露していった。ジュジュ苑は2008年に12ヶ月連続で開催したマンスリー・カヴァー・ライヴ【ジュジュ苑】からスタートした企画であり、2014年にはさいたまスーパーアリーナでデビュー10周年を記念した【JUJU SUPER LIVE 2014 -ジュジュ苑 10th Anniversary Special-】を開催。約2万5千人を動員した。本公演では、中島みゆき「糸」、ベット・ミドラー「The Rose」、槇原敬之「もう恋なんてしない」をバンドメンバーによる立体的なサウンドにのせて、ラグジュアリーさを醸し出しながら披露した。次に披露された松任谷由実「ANNIVERSARY」は、会場内のオーディエンスの中から運よくJUJUとのジャンケンで勝ち残った一人と一緒にデュエット。スナックのカラオケが好きだというJUJUからは、ステージに立っているときも鬼気迫った感じや感情が過剰に前景化している雰囲気が感じられず、歌うことそのものの気持ちよさが伝わるものだった。「ANNIVERSARY」でJUJUが松任谷由実のモノマネを少し入れていたのも、その象徴だろう。

 “ジュジュ苑”のセクションが終わり終盤に差し掛かっていく公演。「Hot Stuff」「PLAYBACK」「What You Want」と、2010年代中盤にリリースされたダンスチューンを続けたメドレーを披露した。そしてJUJUの代表曲ともいえる「やさしさで溢れるように」が披露されると、一番のサビではJUJUは歌わずオーディエンスだけが歌った。そして、会場にクライマックスを迎えた雰囲気が漂うと、本編最後に披露したのは2019年にリリースした「ミライ」。この曲を最後にしたのには理由があった。15周年イヤーの際に突如として表れた大きな壁に背を向けたくなったとき、「ミライ」のレコーディングで歌詞を初めて見ると自分の感情が見透かされたような気持ちになったそうだ。「前を向く方法」と「会いに行きたい人がいることの幸せ」を教えてくれた「ミライ」を、JUJUは端正に歌い上げた。

 アンコールでは、実は10年前に出来上がっており、今回のツアーで育て上げ、本公演日に配信リリースした「Woman In Love」をまず披露した。そして、JUJUは、2020年の春にスーパーベストアルバムのリリース、そして秋にアリーナツアーを開催することを発表。大きな歓声が会場にこだました。ファンのおかげでライヴが楽しいものになったJUJU。「みなさんと出会えたことが私にとって一番の宝物です」と語ったJUJUは、そのラブレターとして「ありがとう」を披露し、本公演は終了した。

 今回の公演はJUJUとして活動した15年、そしてニューヨークで暮らしていた時代や子供のころのスナックでの記憶などが、リクエストという形をとったことで奇しくもすべて詰まったセットリストになっていることは一目で分かることだろう。人前で歌うことが苦手だったJUJUが、この15年で一番好きなことになった。そして、好きだった歌うことは、好きなままであり続けた。そしてなにより、本公演でJUJUは自らの楽しかった・苦しかった歴史を自らの口で伝えた。喋ることで、そしてセットリストに反映することで自らの歴史を伝えることがステージで出来てしまう人には、説得力のある強さを感じ取れる。15年という期間において、人前で歌うことが一番好きになったのは、決して人前で歌うのに慣れたからではないだろう。そう思わせるほどの、ステージ上での立ち振る舞いだった。


Text by Akihiro Ota


◎公演情報
【-15th ANNIVERSARY- JUJU HALL TOUR 2019「YOUR REQUEST」】
2019年10月10日(木)
東京国際フォーラム ホールA

<セットリスト>
1. この夜を止めてよ
2. If
3. ナツノハナ
4. 奇跡を望むなら...
5. Take Five
6. Englishman In New York
7. My Favorite Things
8. DESIRE -情熱-
9. 恋におちて -Fall in love-
10. 糸
11. The Rose
12. もう恋なんてしない
13. ANNIVERSARY
14. Hot Stuff ~ PLAYBACK ~ What You Want
15. やさしさで溢れるように
16. ミライ
Encore1. Woman In Love
Encore2. ありがとう

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