2019/10/17
2019年10月16日、テイラー・スウィフトがNPRの人気ライブ・シリーズ『Tiny Desk Concert』に登場し、公共ラジオ局の小さなオフィスにぎゅうぎゅう詰めになった約300人の観客の前で4曲を弾き語りで披露した。
普段は60,000人規模のスタジアムで、多くのダンサーを従えた大規模なライブ・パフォーマンスをするポップ・エンターテイナーである彼女だが、実はこのようにこじんまりとした空間でのアコースティック・ギターとピアノの演奏も難なくこなす音楽家であることがあらためてわかる、ファンにはたまらないセッションとなっている。
チェックのハイウェスト・スーツにワイン色のベルベット・カットソーを合わせた姿で登場した彼女は、黒いアコースティック・ギターを肩にかけながら、“インターネットで一番気に入っている場所”であるという米NPRのオフィスが米首都ワシントンD.C.にあることから、「ここ2週間ほどで何かエキサイティングなことあった?何か変化が起きるかもしれないとか?」と、トランプ大統領の弾劾手続きに言及した。そして、4曲しか披露できないことに悩んだと明かしつつ、「この機会を利用して、自分がこれらの曲を書いた時点ではどんなサウンドだったのかをみんなに見せてあげようと思って」と意図を説明し、「だから私だけなの。ダンサーはいないんだ、ごめんね」とジョークを飛ばして場を和ませた。ニュー・アルバム『ラヴァー』は、全曲をまず一つの楽器で書き上げたと彼女は明かしており、「そういうわけで、“ラヴァー”からアコースティックで演る楽曲を選ぶのは楽しかったんだ、もともとそこから全部始まっているから」と話している。
1曲目の「ザ・マン」については、“10年程前から毎日7億回くらい考えていた”という、世間に蔓延るダブル・スタンダードについてようやく形にできた楽曲だと説明している。「このことについて曲が書けるかな?このことについて手短でキャッチーな曲を書く方法があるかな?どんな角度から書けばいいかな?」と自問自答した末、“もし自分が男性だったら自分の人生はどうなっていただろう?まったく同じことをしているだけなのに、人々はどう言うだろう?”と想像するのが一番楽しい方法だろうと思い至ったそうだ。
次にテイラーはピアノを弾きながら、アルバムのタイトル・トラックを披露した。何も思い浮かばない時の曲作りの苦労についてしばし語った彼女は、「ラヴァー」に関しては正反対で、“まるで努力をしないで書いたかのような”理想的な楽曲だったと明かしている。真夜中に突然アイデアが浮かび、パジャマのままピアノによろよろとたどり着いてあっと言う間に書き上げたそうだ。一番気に入っている歌詞は“ギターの弦でできた指の傷痕”についての箇所で、実際に子どもの頃にギター練習のし過ぎからできた傷を表していると同時に、メタファーとしての傷であると説明している。誰かが自分の手をとって共に歩んで行くならば、生きてきたことで積み重ねてきた手の(心の)傷ごと握ってもらわなければならない、という意味があり、「曲作りって精神浄化作用があると言うか、セラピーみたいなものなんだ」と明かしている。
再びギターに持ち替えて披露した3曲目は「デス・バイ・ア・サウザンド・カッツ」。インタビュアーやレポーターなどから一番多く受けてきた質問が、「もしあなたが幸せになったら、何について曲を書くのですか?」というもので、数多くの“破局”がテーマの名曲を生み出してきた彼女にとって、切実な問題だったそうだ。ただ、“とてもハッピーでロマンティックな”今回のアルバム『ラヴァー』を制作していた時、友人の恋愛相談に乗ったり、映画や本からもインスピレーションを得たことで、“恋愛の切なさ”を表現する歌詞がたくさん生まれたのだと明かしている。
アコースティック・ライブの最後を飾ったのは、秋のコンサートにふさわしい『レッド』(2012年)からの人気曲「オール・トゥー・ウェル」だ。テイラーは、このアルバムの制作時からこの曲が一番気に入っていたものの、あまりにも個人的な体験を歌っているためヒットはしないだろうと思っていたと話している。ファンのおかげで思いがけずに息の長い曲になったことを嬉しく思っていると、彼女は感謝の言葉でライブを締めくくっている。
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