2012/10/23 21:16
昨年の夏フェス時に突如結成、強い政治的メッセージと激しい個性のぶつかり合いで観客に強烈なインパクトを残した斉藤和義×中村達也による無頼派ユニット“MANNISH BOYS”。待望のデビューアルバムをひっさげ、豪華ゲスト陣とともに行われた全国ツアーの最終公演が10月22日、新木場STUDIO COASTにて行われた。
まずは名古屋、札幌と一緒に公演を行った阿部真央のステージで幕開け。普段はバックにバンドを従え、元気いっぱいにステージを動き回っている彼女も、今回は弾き語りでギター一本でステージに立つ。もともとシンガー・ソングライターなのだから一人でステージに立つことに恐れはないだろうし、これまでもアウェイな場所で凄まじい演奏を披露してきた。とはいえ、大先輩のステージ。多少は気遅れしてしまうのかと思っていたが彼女の底力は想像を超えていた。変幻自在の歌声は超満員の会場をあっという間に魅了した。ポップでキュートに歌ったかと思えば、情感たっぷりにパワフルで深みのある歌声を聴かせてくる。「他のアーティストを観にきたファンの方に観て頂けるのは嬉しいことですし、初めての方と一緒にライブを作り上げることができるのは素晴らしい経験です。」と語り、ライブでのみ披露される名曲「母の唄」で彼女の出番は終了し、圧倒された観客は大喝采を贈った。
続いて登場したのは細美武士。登場したというよりもサウンドチェックを行っているスタッフと思っていたら本人だった。「準備しようと早めに出てきたら全部セッティングしてあった。なんて素晴らしいスタッフなんだ。」と語り、ゆっくりと演奏がスタート。アコースティックギター一本ながらコーラスのエフェクトがかかったマイクを使い分け、ギターもパーカッションのようにループを造り、カバー曲から、ELLEGARDEN、the HIATUSと自身の楽曲を披露。中盤にはウエノコウジがベース、堀江博久がキーボードでサプライズ出演。ELLEGARDENの「Make A Wish」では「震災の時、この曲の歌詞がインターネット上に出回って、知らない人達からも良い歌詞と言ってもらえて嬉しかった。実際に被災地で歌ったらもの凄い大合唱で返してくれた。だから今日のお客さんたちにも負けないように歌って欲しいです。」と語り、会場には大合唱が響き渡った。この後登場する先輩たちにしっかりと会場を温めてバトンを渡した。
そしていよいよ彼らの登場である。マディ・ウォーターズの「MANNISH BOY」に乗せて例のお揃いのつなぎを着た2人が姿を現すと、阿部、細美の熱のこもったパフォーマンスですでに高揚している観客たちが凄まじい熱気とともに波のようにどっとステージに向かって押し寄せる。SEに続いて斉藤和義のフライングVから繰り出されたマディのふてぶてしいリフが二人の貫録をより引き立てる。「たっちゃん」「かずちゃん」と、お互いを呼びあう姿は、ともにステージに立つ、この瞬間を噛みしめているようにも見えた。なんだかいかにも最終日らしい光景。ちなみに彼らはこの日のことをこう呼んでいた…“マニッシュ小学校卒業式”。つなぎのみならず髪の色までお揃いの姿で登場しファンを驚かせたツアー初日から約一か月、その金髪も「根元が伸びてきた」とのこと。“Ma Ma Ma MANNISH BOYS!!”のシャウトでアルバムのオープニングを飾る「MANNISH BOYSのテーマ」を皮切りにアルバムからのナンバーを立て続けに披露。中村達也のマシンガンのようなドラムと、斉藤和義の研ぎ澄まされたギター・カッティング…改めてその相性の良さを痛感する。ユニットによっては“静”と“動”といったような対極同士が化学反応を起こし名演を繰り広げることも少なくない。彼らについても、そのキャリアを見る限り“似た者同士”とは言い難いが、MANNISH BOYSとしてステージに立つ二人は確実に同じ衝動を同じ熱量でぶつけ合っている。
アルバムからの楽曲が続く中、斉藤和義の楽曲「バカにすんなよ!」では細美武士も参加し、それぞれの“バカにすんなよ!”なエピソードを披露。斉藤は自分の息子が自分以上に達也に懐いているという話、細美は川崎出身の元彼女に自身の出身地である千葉を嘲笑されたという話を披露。そしてなかでもここ一番の笑いを誘ったのが、達也のエピソード。若い頃、モヒカン頭で彼女とディズニーランドに行ったところ「インディアン・カットの方はご入場頂けません。」と制止され、やむなくグーフィーの帽子を被って入場したそうだ…うーん。想像も出来ない(笑)。後半は、キーボード&ベースに堀江博久を迎え、より厚みを増したサウンドでメロディアスなナンバー「LOVE&LOVE」「Oh Amy」などを、フィナーレに向け畳み掛けていく。そしてスピード感と遊び心が絶妙に交差する「あいされたいやつらのひとりごと~青春名古屋篇~」では、決めフレーズ“にけつッ!”の大合唱が会場に響き渡った。
暗転ののち斉藤と達也がパートを入れ替えて演奏する「ないない!」でアンコールに突入。彼らの楽曲の中でも特にメッセージ性の強いこのナンバー、斉藤のドラムに乗せてヤツらの“調子のいい”メッセージを読み上げた後、その紙を破り口の中に放り込む達也のパフォーマンスに観客もますますヒートアップ。ゲスト含む出演者全員がオンステージしての一大セッションの後、バンジョーの音色が印象的なアルバムのクロージング・ナンバー「ざまみふぁそらしど」で熱狂の一夜は幕を閉じた。
気付けばオープニングから約3時間半。音楽が放つ熱気と衝動を浴び続けた、実に爽快な夜だった。このライブをもってMANNISH BOYSとしての活動は一区切りとなるが、いつの日か“マニッシュ中学”に進学したその姿で我々の前に戻ってきてくれると信じたい。
【MANNISH BOYS presents CRAZY FRIENDS’ COMING TO TOWN】
日時:2013年10月22日(月)
会場:新木場STUDIO COAST
ゲスト:阿部真央、細美武士
http://www.kazuyoshi-saito.com/mannishboys2012
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